僕がこの図書館で働く理由2
前回の続き。
相変わらず不定期の亀更新ですね……
図書館で働き始めて2週間位が経った。ここでのアルバイトは思っていたよりも楽で飽きるものではなかった。
まずはここに来る常連客が5人いる。
1人目は前田 数さん、いつも決まった時間に来て決まった時間に帰るというかなり時間に厳しい人だ。
職業は数学の学者らしい。
2人目は井上 忠信さん、この人は火曜と木曜にだけ来てファンタジー物を読んでいる。1冊読む毎に感想を僕に言いに来る変わり者だ。
本人は作家だと言っているが本当かはわかった物ではない。
3人目は子日 若葉さん、この人は船好きで船についての資料などを纏めている。
職業は歴史の学者で主に船関連の物を調べているらしい。
4人目は祭川 小鞠さん、後で紹介する人の双子の姉でいつも論文などを閉館ギリギリまで読んでいる。
職業は科学者で本人が書いた論文もあるらしい。
最後は祭川 熊子さん、先ほど紹介した小鞠さんの双子の妹で機械関連の本を手当たり次第に読んでは散らかす困った人だ。
職業はエンジニアでたまにこの図書館の機械関連を修理に来てくれているらしい。
この5人共この図書館を気に入っているらしく暇があればからなずここに来て話たりなどの交流を持っているらしい。
どこが気に入ったのかを聴いたところ、「面白い人が沢山来るから好き」だそうだ。
やはり頭の良い人は考え方が変わっているっと言ったところ「僕さんも変わり者だ」と返されてしまった。
どうやら僕もこの図書館で出会った人達が好きなんだと思いながら作業を始めた。
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ある程度作業が終わり、椅子に深く座りながら体を伸ばしていると今日までで1度も見たことのない女性の利用客がこちらに向かって歩いてきていた。
「すいません… ここって噂の図書館ですよね?」
この利用客は噂を聴いてここまで来たようだ。
「そうですよ、それではあそこの席に座ってもらえますか?」
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この女性の名前は和田 霧雨さん。どうやら大切な物を無くしてしまい、どうしてもその大切な物を見つけたいらしい。
「こんな事を聴くのは悪いとは思うのですが少しいいですか?」
僕は和田さんから聴いた事をメモを見ながら質問する。
「何を無くしたのか分からないと探しようがありません。もう少し具体的に教えて頂けませんか?」
今分かっているのは3つ。
1つ目は探しているのは生き物である事。
2つ目はその生き物が居なくなって2ヶ月立つ事。
そして3つ目がとても大事な事。
たったのこれだけだ。
和田さんは何か重大な事を隠している。
普通なら一緒に探し物をする場合、その探し物についての情報を共有するのだがこの女性は詳しい事を言いたがらない。
「願いを叶えてくれると言うからここに来たんです。 これくらい叶えてください!」
和田さん…… それは無理を言い過ぎだ。
この場所は何でも願いを叶えてくれる訳じゃない。
「和田さん、貴女は少し勘違いをされていませんか?」
「……何をですか。」
和田さんの表情が、悲しみで満ちている。
僕は和田さんの顔を見つめ、真実を話していく。
「ここは何でも願いを叶えることはできません。 ここで出来るのは話を聴いてそれについてアドバイスをする事だけです。」
これがこの図書館での真実。 願いを叶えるのではなく相手に気付かせて喜んでもらう。
それがいつしか願いを叶える図書館と呼ばれる様になっていたのだ。
「そんな……」
悲しいだろうが仕方のないことなのだ。 どうしようもない。
「まぁまぁ、僕さんも焦らなくてもいいじゃないか。 のんびり話を聴いてあげましょう。」
「相変わらず時間通りですね、前田さん。」
僕が振り向くと数学の本を持った前田 数さんが立っていた。
今回はここまで。
次に続きます。