再誕生、レディン
ここはサイナス。
今日、1組の夫婦から1人の男の子が生まれた。待望の第2児である。
「奥さん、頑張りましたね。元気な男の子ですよ!」
「シャル、良くやったな!」
ベッドに横たわっている女性、シャルロア・セドリル・バルナード。傍らに立って女性に話しかけている男性、エドガード・セドリル・バルナード。
シャルロアは疲れきっていたが、頭を少し上下に振り、目を潤ませた。そして、かすれた声で「私の子は?」とエドガードに問いかけた。
「ほら、ここにいるよ」
エドガードは傍にいた侍女から赤ちゃんを預かり受けた。その子は泣き疲れたのか今は眠っていた。
「まぁ…かわいい子。きっと将来はあなたのように立派な子になるわ」
「そうだな。そうなると良いな」
エドガードは赤ちゃんをシャルロアの横に置き、赤ちゃんの頭を撫でた。
「エド、この子の名前…」
「それなら心配ない。もう決めてあるよ」
「まぁ。それで?」
「レディン、と」
「レディン…」
シャルロアはレディン、レディンと呼びながら撫で続けた。
「シャル、身体に障るからもう休んだ方が良い。お休み」
「えぇ、そうするわ。お休み、エド…」
よほど疲れていたのか、言い終わると同時に寝息が聞こえてきた。
「さてと…」
エドガードは赤ちゃん、を侍女に任せ、生まれたことをレディンの兄、ジーアスに伝えるべく足を運んだ。
(この人たちが俺の親か…)
もといた世界では"誠也"と名付けられたが、ここサイナスでは"レディン"と名付けられた。
ちらっと見えた顔から、とても温厚なイメージの夫妻の間に生まれたんだと認識した。
(これからはこの人たちが俺の親……しかし、疲れたな……)
泣きながら思考していたが、泣き疲れたのかだんだんと意識が暗闇の中に落ちていった。
『どう?新たなスタートは』
ふと暗闇の中から小さな白い光が見えてきた。そこから聞こえてきた声は聞き覚えのあるものだった。
(…天死か……)
『なに?その残念そうな声は〜。…じゃなくって、こっちについての感想は?』
(まぁ、いいんじゃないか?まだ生まれたばっかで分かんねぇけどな…)
正直、生まれたばかりで何も分からないのに、なんやかんや聞くのは間違ってるとは思った。が、あの両親の表情を思い出して、生まれて良かったという念が湧いてきた。
『それは良かった良かった。それで、後1年位は寝てるだけの生活だから、話し相手になってあげるよ〜』
(なってくれんでも良いわっ!それよりも仕事をせいっ!)
『えぇ〜、せっかく人が好意を持って言ってあげてるのに…。それにね、仕事という仕事は無いから大丈夫だよ〜。特にこれといったことがなければね〜』
こんなのが本当にリーダーとして勤まっているのかとよくよく考える。結論としては…
("否"だがな)
『ねぇ、何の話し?』
――その日から俺はエドガード、シャルロア夫妻の息子となった。3歳上の兄、ジーアスも含め、俺の家族はこの3人だ。
もといた世界では母親との2人暮らしだったから、家族が増えて嬉しかった。
生まれてから1年位は天死の言ったとおり、どれだけ寝ても寝足りないのか、毎日がすごく眠かった。
起きて寝ては天死と(強制的に)話し…と過ごしていった。