転生直後、生まれる前
―――ボチャンッ!
俺が落ちたところは、音からして水のあるところらしい…
(って溺れる!水面どこだ!)
モガくがいっこうに水面が見えない。空気を求めて必死に両手両足を使う。上へ上へ…
(上ってどっちだ?)
モガくのは良いが、どこに向かえば空気があるのか、それさえ分からなくなっている。自分の状態が把握できない。
(もう…無理……)
とうとう口に、鼻に水が入ってきた。しかし…
(…?平気だ……何で?)
水が体の中に入ってきても息苦しくはない。そもそも、自分は自分で息をしていない。
(…どうなってる?)
『それはね〜、君は今産まれてくる前だからだよ。元誠也君』
(て…天死!?何でおまえの声が聞こえてくるんだ?)
頭に直接天死の声が聞こえてきた。しかも問いかけた質問に答えてきた。
『また君の担当になっちゃったんだよね〜。だからまたよろしくね〜』
(…よろしくって言われてもなぁ…)
『と言うより、させてもらったって言った方がぶなんかな?』
(してもらったんかい!職権乱用じゃね!?)
『あぁ、そこは心配いらないよ。僕、一番偉いから』
(そのことだよ!…そもそも、何で俺なんかの担当にまたなったんだよ…)
『ん?楽しそうだから。ついでに言うと、聞きそびれた事があったからまた担当にしてもらったんだ。担当じゃないと会えないし、話しも出来ないから』
からからと笑いながら言っている。こっちの気持ち、考えていないな。
(…第一に楽しそうだからと言ったお前が担当なんて……他の人に変えてくれ…)
『もう無理だよ〜。決まっちゃったんだから』
天死がそうに言ったのならば、他の人は従うしかないのだろう。完璧独裁者だ…。
(んで、聞きそびれた事って何だ?)
『あぁ。そうそう、忘れてた』
(忘れんなよ!つか忘れんの早っ!)
相変わらずツッコミどころ満載な天死。疲れんだよ?ツッコミ入れんの。
『聞きそびれた事はね〜、記憶どうするって事なんだけどさ。どうする?消すんなら産まれると同時に消えるようにするけど…』
(ん〜。…いいや。このままで良いよ。どうせさ、あっても無くても関係ないなら消す必要ないし)
記憶はあっても無くても関係ない。ならば、今までの記憶から生きていくというのも悪くはない。強いて言うなら、ありのままの俺でいたいから残す。そう結論づけた。
『分かった。それと、自我はハッキリするまで曖昧にさせとくから。あと、基礎能力、身体能力は上乗せしといたから。記憶力も上昇してるよ。僕の独断で』
(…さらにチート感増したな……。あと、独断て……)
天死ってこんなに横暴だったんだなと認識をした。今までよく天界機能してたなと同情した。
『さて、もうすぐ君は産まれる頃だろう。だから最後に…でもないけど、いつでも僕を呼べば話せるようにしたから。何かあったら呼んでね〜』
頑張ってね〜と言いながら天死の声が遠ざかった。
一人ぽつんと残された俺は、この後どうするのか分からなかった。
(天死はもうすぐ俺が産まれる頃って言ってたよな…。というか、呼べば話せるようにしたからって何だよ!?頼んだ覚えないんだが…)
―――グイッ
いきなりどこかから押される感じがした。
(うわっ!…く…苦し……!)