行く(逝く)1分前
まず「人種」という項目をタッチしてみる。すると「人間」・「エルフ」・「獣人」・「魔族」・「龍族」……とあった。
(確かに言うよりこっちの方がいいな)
「本当に何でもいいのか?」
「好きにしていいよ。ちょっとチートかもしれないけどね」
(それじゃあ…)
俺は「エルフ」と「龍族」を選んだ。いわゆるハーフと言うことだ。「人間」も捨てがたかったが、「龍族」は人型もとれるとあるのでそれにした。
次の項目は「スキル」。これまたタッチすると沢山出てきた。魔法から一般技術まで。ありとあらゆる種類があった(数え切れないほど…)。
その中で、「全魔法」・「魔力上昇」・「精霊魔法」・「索敵」・「剣術」・「身体能力上昇」・「自然回復」の7つを選んだ。「エルフ」のハーフであっても、精霊魔法が使えない場合もあり得ると思って、「精霊魔法」は入れておいた。
(マジでチートすぎる……つうか、最強じゃね?これ……)
そんな事を考えつつ、次々に項目を開け、設定をしていく。
最終的にはこうなった。
「エルフ」と「龍族」のハーフ
「全魔法」・「魔力上昇」・「精霊魔法」・「索敵」・「剣術」・「身体能力上昇」・「自然回復」
美形(少し)
兄弟か姉妹がいること
・
・
・
・
等々。
(流石にダメかな……)
「良いんじゃない?それでいい?」
背後から声が聞こえた。
(気づかなかった……)
いつの間にか背後にいた天死は、最終確認画面を見つめていた。
「天死……さすがにこれはチートすぎね?」
「いや、大丈夫だと思うよ?……多分」
「多分じゃねぇかっ!」
ボケをかます天死につっこむ俺。コンビ結……
(成な訳あるかっ!つか、天死となんて無茶だ!組みたくもねぇっ)
今だに画面を見ている天死。
「ちょっとチートかもしれないけど、異常ってことですむから大丈夫大丈夫!多分じゃないから安心してよ誠也君」
「えっ?本当か?」
「うん。でも、ちょっと人生大変かもよ?色々と」
「そんなん構うもんか。大変な方が生き甲斐があるし」
「本当の本当の本当?」
「…くどいっ!」
そんなわけで。
天死にさっき決めた通りの情報を魂に書いてもらった。
「はい。これでもう行けるよ(逝けるよ)」
「サンキュー天死。あと何か変な意味入ってないか?」
「気のせいだよ〜」
とは言ったものの、見えないので不安になる。自分自身では変わったということをまだ実感できていない。ということは、行ってから(逝ってから)しか分からないということだ。
「で、どうやって行くんだ?」
――――ドンッ
「ひぎゃっ!」
奇声が出てしまったのはしょうがない。なんたって、いきなり背中を勢いよく押してくる人(?)がいたんだから。何もしようがない。
俺はそのままの勢いで倒れ込んだ。
「ってぇ〜、何すんだ天死!」
「行ってらっしゃい(逝ってらっしゃい)誠也君。元気でね〜」
「は?何を言って……」
その声が掛け声だったかのように、俺の倒れている辺りの地面が、一瞬にして消え去った。
当然浮かんでいられるわけもなく、真っ逆さまに落下するのみである(羽があれば別だったが…。それは言うまでもない)。
「うわぁぁぁああああ!」
その姿が見えなくなったあと、一人残った天死。
「また生まれたら会いに行くとしますか。それまで元気で、誠也君」