衝撃の事実
「お互いのため?」
天死の言ってることに疑問を覚えた。俺も死んだからそこの住人になるんじゃないかと考えたからだ。
「そう。だから最初、生まれ変わり受付センターって言ったんだよ。本当は生きていたときのプラスマイナスによって、これからのことを決めるセンターなんだけどね。理由分かる?」
「分かる訳ないだろ。説明してくれ」
「はいはい。対処だよ対処」
「対処がどうしたって言うんだ?」
「対処の内容。それは君の2回目の人生を異世界でエンジョイ!ってことなんだよ」
「…はい?」
「だ・か・ら〜っ!君は異世界に転生出来るっていう訳なのっ!」
「…マジっすか?」
「マジっす」
天死の言うことに驚くと同時に興味がわいた。
(天死の同僚のせいで死んだ見返り…っていったらまずいか…。まぁ、その代わりに異世界に転生させてもらえるわけか…)
俺は大のファンタジー好きだ。しかもRPGとかのゲームときたら、何時間でも遊んでしまうゲーマーだ。
(でも…そういう世界じゃなかったら?)
探偵がよくしそうな右行って〜左行って〜、という動作をした。それを2回した後、天死の方をちらっと見た。そして、思わぬ物が見えてしまった。
(何で今まで見えなかったんだろうか…)
「勿論、君の好きなファンタジーの世界だよ。魔法、剣……」
「なぁ…ちょっと聞いて良いか?」
「ん?」
「天死って…天界管理局総合統率社リーダーって書いてあるけど……」
「あぁこれ?こんなん肩書きだけだよ。って言っても、実際ここでは一番えらいんだよ?」
こんな役職着きたくなかったんだけど先代がね〜、という声はもう聞こえていなかった。
(マジ?…一番えらいんだよ?って何でそんな奴が俺の担当なんだよっ!)
そんな心の叫びを聞いたのか、天死が答えをくれた。
「代々、崇高な魂には一番えらいのが就くというのが決まりなんだよ。でも、今回のことで君がいなくなったから改正するのが大変だったんだよね〜」
「事前に対処しといてくれよっ!…それと崇高な魂って?」
「そうは言っても、今回のことは本当にいきなりすぎたから無理だったんだ。ごめんよ?あと崇高な魂っていうのは、その世界に2人いるかいないかという魂なんだよ」
「そんなに希少なのか?」
「希少だね。なにせ世界を変える力を持つからね」
世界を変える力……
(そんなに壮絶な力があったのか?こんな普通の高校生だった奴に?)
自分の手のひらを見てみる。いたって変わったところはない。他もいたって普通だった。思考も生活も。何もかもが普通、普通、普通…。
そんな思考の渦に入り込んでいた俺に、天死は手をさしのべた。
「起こってしまったことはしょうがない。ならば、これからを楽しく生きていきなよ」
「あ…あぁ」
天死は椅子から立ち上がり、本棚に向かって歩き出した。
「それで、何かリクエストはある?何でも言ってみて。それに…これが君にしてあげられる最後のことだから。後のことは君次第だからね」
そう言いながら天死はある1冊の本を取り出した。それに何て書いてあるのか読めなかった。
「これはサイナスという世界の物だ。君はこれからそこの住人、云わば転生してもらう事になる。んで何か思いついたかい?」
「そうだな…。といっても実際に何があるんだ?」
「君が思いつく物はたいていあると思うけど…。言うのは時間がかかるからパネルで見て決めちゃって」
天死が持っていた本に手をかざすと、目の前にパソコン大のモニターが出てきた。画面には項目ごとにチェック欄がある。どうやらこれに書き込めって感じらしい。
「立っているのは疲れるだろうから座っていいよ〜」
近くにソファーみたいな椅子があったので、遠慮なく座らせてもらうことにした。