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悠宮探久~リオスの不思議なラビリンス~  作者: 和本明子
◆3章 無機質な獣と暴れ狂う野獣、そして戦う術を閃いた場所
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-1-

 暗闇のフロアで、暗闇からの敵により、酷く痛めつけられたリオスは、一度エデンの小部屋にて身体を休めた。


 エデンの小部屋に、最初から備えられている質素でボロボロになっていたベッドで、一夜寝たら、ある程度身体の痛みが引き、傷が癒えていた。


 何故? 誰が? この場所にこんな部屋を造り、ベッドとかの家具が置いたのか、リオスは起きる度に思った。


「まぁ、あるのなら使わせて貰うけど……」


 そして、簡単な身支度……ショートソードを手に取り、部屋を後にしたのであった。


   ***


 先日発見したリンゴの木に辿り着くと、赤い実を一個採り、そのまま口にした。

 これが、リオスの食事だった。

 噛りながら、木に残っている実の数を数える。


「ひぃ…ふぅ…みぃ……」


 そんなに多く残ってはいなかった。

 もし、ここのを全部採ってしまったら、今後の食事に悩まされてしまう。

 それを回避するためには、他の場所でも果物が実った場所を見つけておかないといけない。

 新しい目標を定めつつ、もう一個、実を採ったのである。


「さてと……」


 前回、ここから南に向かった先には、あの暗闇の場所だった。

 なので今回は、東に行くことに決めた。


   ***


 行く先を遮る草木を刈り取りながら進んでいく。

 ショートソードも手に馴染み、軽やかに足下付近を振っていくと、


――ガッキィーン


 金属音が響いた。

 剣先に、何やら固いものが当たったようだった。


「なんだ?」


 よくよく見ると、地面にある金属物体が落ちていた。

 その物体は、まるで鋭い牙を持った野獣が、大きく口を開いているような形状をしていた。


 そう、これは“トラバサミ”と呼ばれる罠の一種だった。

 リオスの頭の中に、またしても言葉と、それが何であるか浮かんだのである。


「こんなものも落ちているのか……」


 不思議に思いつつも、いつ危険の目に遭ってもおかしくない状況であることに、冷や汗をかいた。


「迂闊に触らない方が良いだろう。ヘタに触って、挟まれたらケガどころじゃないからな……」


 そんな独り言を呟くと、ひと息を吐いた。そして、一段と気を引き締めると、トラバサミを避けつつ、先へと進んでいった。


   ***


 慎重かつ丁寧に奥へと進んでいくと、拓けた場所に出た。


 辺りを見渡すと石の壁が広がっていたが、ある場所で穴が空いているのが見えた。

 南側の場所で見たような、トンネルだった。


 リオスは、その場所へと行こうとしたが、トンネルの入り口付近に一匹の野獣が鎮座しているのが見えた。


 思わず木の陰に身を隠すリオス。


「あれは……」


 遠目から様子を窺う。


 野獣……全身が毛に覆われ、体長はリオスの半分以下ではあるが手足は長く、それと同じように長い尻尾を振っている。

 獣の表情は鋭い目付きで、今にも噛み付きいてきそうな牙をチラつかせていた。


 それは“ヒヒ”に似た獣であった。


 そのヒヒの近くを、あの凶暴な小動物―ラビッグ―が通りかかろうとすると、ヒヒは突然、ラビッグに飛びかかり襲いかかったのだ。


 長い手を振り下ろし引っ掻く。


 突然の攻撃にラビッグは傷を受けるも、負けるものかと反撃に出たが、ヒヒは素早い動きで避けた。

 そしてヒヒは、すかさずラビッグに噛み付く。


 ラビッグは痛みと、ヒヒから逃れるために激しく暴れたが、ヒヒの牙は深く食い込んでおり、逃れることは出来なかった。


 やがてラビッグは動かなくなり、ヒヒはおもむろにラビッグを食し始めたのだった。


 眼前で繰り広げられた弱肉強食の光景に、リオスは一気に青ざめてしまっていた。


「なんだ、あの野獣は……」


 自分がなんとか撃退したラビッグを、ものの数分で仕留めてしまったヒヒに少し怖気付いてしまった。


 あの野獣に近づいただけで、ラビッグの様に襲いかかってくるのは、先ほどの出来事で容易に想像できる。


 ならば、あの野獣がトンネル付近から立ち去ってくれることを祈るしかなかった。


 だが―――


 ヒヒはトンネルの前に居座って、その場から動かなかった。そこが絶好の狩場なのか、身体を丸めて身を休めている。


 リオスは、あのトンネルの先に行かなければならない。


 あの野獣を撃退すれば良いだけのことだが、先ほどのラビッグとの戦いを見れば、こちらが無事で済む訳がないのが想像できた。


 隙を見て通り抜けるという手段もある。

 しかし、あのトンネルの先で、また暗闇で、また凶暴な野獣が待ち受けているかも知れない。


 前回は辛くも逃げ出すことが出来た。


 また、そういった事態に遭遇した場合、逃げ出した時にヒヒが待ち構えていれば、助かる確率は低い。


 ならば、危険の可能性を少しでも排除した方が、まさしく身の為だった。


 ヒヒは身を丸め、眠っているかのように横になっている。


――この隙を突き、一刺しすれば――


 その考えが浮かぶと、リオスはショートソードの柄を握る手に力が入った。


 そして、静かにゆっくりと足を動かし始めた。

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