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扉を開いた先には、草や木が生え茂っていた。
その目に映った光景に対して、リオスは戸惑いつつも、辺りを見回した。
「外?」
いや、外ではなかった。
空を見上げてみると、先ほど見知った薄汚れた天井が広がっていた。
この場所は、太陽……日の光は差し込んでいないのに、部屋の中が明るい。
天井から光が発光していた。
リオスは不思議だと思ったが、今はそんな事は些細な不思議にしか過ぎない。
目を細めて、遠くの先を眺めて見ると、ぼやけながら見えるのは石の壁。
この場所も、先ほど自分が閉じ込められていた部屋―『エデンの小部屋』と名付けた部屋―と同じような空間なのだと行き着いた。
ただ、この空間の広さは、小さきエデンの小部屋と比べて、遥かに広く、天井も自分が十人以上肩車をしないと届かないほどの高さだった。
まだここが何処なのか、何なのかは見当もつかない。
そんな不安を少しでも解消させるため、ひとまず辺りをうろついて探ることにした。
草は、自然のままにボウボウと生い茂り、一目で人の手が加わっていないという事が感じ取れる。
木もあちらこちらに生えているが、森といったほど生えてなく、木々の隙間から遠くの景色が見える。
室内なのに、これほどの自然が自生している事に違和感を感じていた。本当に、一体ここは何処なのかと。
しばらく辺りをうろついていると、遠くに『棒らしき物』が地面に突き刺さっているのを見つけ、目を細めてみた。
「剣?」
ここからでは、棒らしき物の形状を捉えるのがやっとだったので、その物の元へ駆け寄ろうとした。
その時!
草の茂みから、何かが飛び出してきた。
その何かとは、長い耳をピンッと立てて、鋭い爪と牙を持った如何にも凶暴そうな小動物が、威嚇するようにギロッとした目でリオスを睨みつけ、前に立ちふさがった。
フーフー、と興奮したような荒息を吐く音が聞こえる。
―――なんだ、この生物は?
と思った矢先、長い耳の小動物は、リオス目掛けて飛び掛った。
リオスは、咄嗟の判断で身を逸らしかわしたが、小動物の爪が二の腕辺りを掠り、腕から血が滴る。
突然の出来事で混乱したものの、すぐに現状を把握した、
―――あの生物は、自分を狙っている。襲っている。喰われる。
凶暴な小動物は、鋭い牙を見せ付けるかのように大きく口を開き、再び飛び掛った。リオスは咄嗟に身を屈めると、小動物が頭の上を飛んでいった。
小動物が地面に着地するよりも早く、リオスは背中を向け、来た道を走り出した。小動物も体勢を整え、獲物=リオスを追うために駆け出す。
リオスは、全力で逃げた。
あの部屋へ。
『エデンの小部屋』と名付けた部屋へ向かって、ひたすらに足を動かした。
小動物が追ってくる。
その速さは、リオスの走る速さと同等、いやそれ以上の速さだった。
少しずつ、距離が縮まっていく。
リオスは後ろを振り返ることなく、前を向き、速くそして早くと走る。
エデンの小部屋の扉が見えた。
少し安堵したが、まだ危機は去っていない。
扉は開きぱっなししていたので、スピードを落とさず、頭からダイビングして部屋の中へ滑り込んだ。
これで安心と思い振り返ると、扉は開いたまま。
そして、その先に小動物が、こちらを目掛けて飛び込んできたのだ。
リオスは、すぐさま起き上がり扉のノブを手に取ると、精魂と全力を込めて、勢い良くノブを引いた。
扉が閉まると同時に、ゴーンと鈍重な激突音が鳴り響く。
おそらく、あの小動物がドアにぶつかったのだろう。
その後、扉を引っかく音がしていたが、それもやがて止み、室内に静寂が訪れた。
ようやく危機が去ったと思い、リオスは息を切らしながら、大きく息を吐いた。
そして、あの凶暴な小動物に対して、どうするのかという新たな危機が誕生した事に頭を抱え込み、今度は小さく息を吐いたのであった。




