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悠宮探久~リオスの不思議なラビリンス~  作者: 和本明子
◆7章 暗闇に光を灯し、これから進むべき道を照らした場所
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 なんとか火草を見つけたリオスとフィオ。フィオは、リオスの服の片袖を破った布切れにこねた火草を擦りつけた。それを道中で拾った木の枝に巻きつけて、松明は完成した。


「多分これで、暫くは火が持つと思います。長い時間は持たないので、気を付けてね」


 そして、松明を手にしたリオスたちは、暗闇のフロアに続くトンネルの前に立っていた。


「それじゃ、フィオ。危険だったら、すぐに逃げるんだ。あのフロアには、危険なモンスターがいるから」


「うん、分かっているわ。リオスもリオスで、気を付けてね」


 最終確認をしつつ、暗闇への道に足を踏み入れた。


 入口から光が届く範囲までは、松明に火を付けないで進んでいく。やがて、暗闇が覆い何も見えなくなる所まで辿り着くと、フィオは前回ラビッグに対して使用した火の魔法「ファイロル・グロブ!」を唱え、松明に火を着けた。


 松明の小さな灯火が暗闇を照らす。

 前回とは違って、リオスの足は力強く確実に歩んでいく。


 辺りを警戒をしつつ進んでいくと、松明の明かりは、あるモノの姿を照らしだした。


 リオスたちと同じように二本足で立つ人型であり、全身に毛が生えて、手には棍棒を持っていた。そして凶悪な形をした仮面を被り、その素顔を拝見することは出来なかったが、異形な姿と雰囲気に、自分たちと同じ者ではないと識別した。


 そして、この異形なる者が前回自分を襲ってきた“ダークファイター”だと、リオスは推測した。


「ゴブリンみたいなものですね……」


 フィオが呟いた。

 ダークファイターは鋭い眼光でとリオスと視線が合うと否や、ダークファイターが襲いかかってきた。

 ダークファイターは手にしていた棍棒を勢い良く振り下ろす。


――ガッツーーン!


 リオスは皮の盾で攻撃を防ぐ。だが、ダークファイターの攻撃は続く。

 ダークファイターの棍棒に注意しつつ、リオスは皮の盾で受け止めるものの、重い衝撃が伝わってくる。

 そう何度も受け止められるものではない威力だ。


 リオスも攻撃に出る。

 手にした松明をダークファイターに突き出す。燃焼部分が体に触れれば、火傷を負わされるだろう。

 ダークファイターは、危険ものだと察知し軽快にかわす。

 しかし、


「ファイロル・グロブ!」


――ドォーン!


 火球がダークファイターに命中する。

 フィオが唱えた魔法であった。


 よろけるダークファイター。相当なダメージを受けているようだ。

 続けてフィオは呪文を唱えだす。


 ダークファイターは、フィオに狙いを定め襲いかろうとするが、リオスが立ちふさがる。


 これは、リオスたちの作戦だった。


 リオスが攻撃を防ぎつつ、フィオが魔法で攻撃をする。魔法を発動させるための詠唱時間をリオスが稼いでいるのである。


 ダークファイターは邪魔となるリオスを排除しようと棍棒を振り回す。

 だが、先ほど同じくリオスは皮の盾で攻撃を防いでいく。


 防御に集中すれば、ある程度の攻撃を防げた。


 そして、


「ファイロル・グロブ!」


――ドォーン!


 フィオの魔法攻撃がダークファイターに命中する。

 リオスがダークファイターの動きをある程度止めてくれているので、狙い易かったのである。


 二発も火球を受けたダークファイター。

 足下がおぼつかず、苦しむ声を漏らしていた。


 あと一発でも火球を与えれば、倒すことができる――と、リオスが油断した時だった。


 突然ダークファイターは猛然と走りだす、リオスに突っ込んできたのである。


――ドッシーン!


「うわッ!」


 タックルを食らわされ強い衝撃を受けたリオスは、後方にふっ飛ばされる。そして、その衝撃で手にした松明を手放してしまった。


 遠方に転がる松明。

 リオスの周囲が暗闇に包まれると、ダークファイターはその闇に紛れ、姿を消した。


「しまった!」


 ダークファイターが逃亡するよりも、再び闇に乗じて、攻撃をしてくる可能性の方が高いと判断する。

 身構えるリオス。

 すると、ダークファイター足音が聴こえてくる。


 皮の盾で、自分の顔を覆い隠す。だが、ダークファイターが攻撃してくる、ましてや近付いて気配を感じられない。


 むしろ、自分から遠ざかっていくようだった。


――逃亡?


 いや、ダークファイターはフィオを狙っている、とリオスは感じた。


 この暗闇。

 ダークファイターにとっては攻撃のチャンス。それは自分に攻撃を仕掛けて相手を仕留めるチャンスでもある。


 リオスは辺りを見回した。


 フィオの姿が見えなければ、ダークファイターの姿も見える訳が無かった。

 だから、


「フィオ! 逃げるんだ! 敵は、フィオを狙っている!」


 叫んだ。

 しかし、反応が無い。


 ふと、遠くに見える入り口から漏れていた光が遮られた。

 その理由は、入り口との直線上にダークファイターが重なったからだ。


 一か八か、リオスは咄嗟にその方向へと走りだす。手を差し出しながら。


 その手に何かが触れた。

 毛むくじゃらな感触が手に伝わる。


 ダークファイターだ。


 リオスは瞬時に羽交い絞めで、ダークファイターの動きを止めた。

 暴れるダークファイター。


 ダメージを負い、普段の力は出せないでいるが、それでも強い力に長時間抑えることは出来ないであろう。


「逃げるんだ! フィオ!」


 リオスは叫ぶ。自分が抑えている間に、このフロアからの脱出を望んだ。

 だが、フィオは背を向けなかった。


「炎の精霊よ。我の声を聞き、業炎の火を集いて紡ぎ……」


 呪文を唱えるフィオ。いつもよりも長く、難解な言葉を織り交ぜる。

 そしてフィオは両腕を掲げると、巨大の火の玉が上空に出現したのである。


 太陽のように熱く燃える火球は、その火で辺りを照らし、リオスたちの姿を照らし出す。


 フィアはリオスに目を配らせ、


「ファイレーゴ・イートゥ・スーノ!」


 そう叫ぶと共に両腕を、リオスたち目掛けて振り下ろした。


 特大の火球がリオスたちに迫り来る。


 肌に感じる熱が徐々に熱くなっていき、リオスはギリギリの所で手を離して、横へと跳び避けた。


 火球がダークファイターに直撃し、火柱がそそり立つ。

 ダークファイターは炎の中で、もがき苦しみ、やがて地に倒れた。まだ身体は燃えていた。


 息も絶え絶えになり、額に汗が浮かべるリオス。


「フィ、フィオ! 危なかっただろう!」


「あ、ゴメンゴメン! だって、攻撃のチャンスだと思って」


 リオスがダークファイターの動きを封じたお陰で、フィアは協力な魔法を唱えられる時間を稼ぎ、火球を狙いやすかったのである。

 その事についてリオスは、何となく理解していたが……。


「たく……。素直に逃げてくれれば良かったのに……」


「私が逃げたら、リオスが危険だったんじゃない?」


「なんとか逃げているよ」


「そう? まぁ、障害物を倒せたんだし。結果が良ければ、全てOKでしょう!」


 あっけらかんと答えるフィオ。茶目っ気たっぷりの表情に、リオスは今回はと、目をつぶったのであった。

 そうこうしていると、ダークファイターが燃え尽きてしまい、辺りを照らしていた火(明かり)が消えると共に、再び闇に包まれて真っ暗となったのである。リオスが本当に目をつぶった訳ではない。

 そして暗闇でフィオの姿が見えなくなった。


「フィオ、大丈夫?」


 身を案じる声を投げかけたものの、返ってきたのは、


『よくぞ、ダークファイターを倒したわね』


 その声は、フィオの声とは違って、低く重い声だった。別の人間の声。

 声が聞こえた途端、リオスは金縛りに合い、身動きが取れなくなってしまった。ただ、口は動く。


「フィオ……じゃないよな? 誰だ?」


『……私は、この迷宮ラビリンスを創造した者……』


「っ!? 創造した者? 何が目的で?」


『……それは、まだ語るべきでは無いわね』


「それはどういう事だ?」


『……それを知った所で、アナタに何の意味が無いからよ』


「此処に、オレを連れてきたのはオマエか?」


『……そうよ』


「なんで?」


『理由を述べるとしたら、ただ、私が楽しむため』


「楽しむため?」


『……これ以上は内緒ね。また、こうやって1階層をクリアしたのなら、教えてあげる。だけど、こんな早い内にあの娘を救うとはね。想定外だったわ……』


 淡々と語る謎の声に、リオスは状況を把握するため、黙ってその声に耳を傾けていた。


『でも、まぁ。そういう想定外があるのも一興。次も楽しみにしているわ……』


「ま、待て!」


『私に会いたかったら、この迷宮の何処にいるから、探し当ててみなさい。楽しみに待っているわ。アナタもゆっくりとじっくりと、この迷宮を楽しんでね。それじゃ……』


 声が聞こえなくなると、リオスの金縛りが解け、自由に身体を動かせるようになった。そして、天井から光が灯り、フロア全体が照らされた。


 突然、明るくなったことで、今まで暗闇に目が慣れていたこともあり、あまりの眩しさにまぶたを閉じる。


 そして、ゆっくりとまぶたを開けて明かりに慣れさせる。ようやくリオスは、視力を取り戻して辺りを見回す。

 暗闇のフロアは、草木といった自然物などは無く、ただ平坦な地面が広がっていた。


「はー、突然明かりが点いて、ビックリしましたね」


 リオスは振り返ると、フィオの姿を確認する。


「フィオ。君は、さっきの“声”を聞いたかい?」


「声?」


 首を傾げるフィオ。


「ほら、この迷宮を創造した者の声が聞こえてきただろう?」


「そうなんですか? 私には、何も聞こえてきませんでしたけど……」


 驚愕するリオス。

 あれほど、確かにハッキリと聞こえてきたのに、それを聞こえなかったのはおかしいと思う。

 だがフィオは、そんなリオスをよそに――


「あっ! 見てください! 扉がありますよ!」


 奥に見える扉へと駆けていった。

 取り残されたリオス。


「さっきのは、オレだけに呼びかけてきたのか……」


 疑問に思うも、あれこれ考えても答えが出る訳は、リオスは一先ずフィオの後を追った。

 如何にも重く固く閉ざされた扉の前にするリオスとフィオ。


「開きますかね、この扉?」


 何気なくフィオが扉に触れると、


――ゴゴゴゴッッ――


 重い音を響かせ、観音開きの如く開いたのであった。


「……開きましたね」


「ああ……」


 リオスは、慎重に扉の奥を覗う。

 すると先には、下へと降りる階段が続いていた。


「階段……。どうやら、ここから降りれるみたいだな」


「降りてみます?」


 フィオが確認を取る。

 リオスを振り返り、フロアを見渡す。


 この扉以外に、他の扉などは無い。

 つまり、この先を行くしかないのだ。


 そしてリオスは、迷宮の創造主の言葉を思い出す。


「“こうやって1階層をクリアしたのなら”か……」


 リオスは確信を持って、扉の奥へと進み行く。


「リオス?」


「行こう。これはオレたちが進むべき道……新しいフロアへ続く道だ」


 率先として行くリオス。

 その後ろ姿をフィオは見つめ、ちょっと頼もしさを感じつつ、後を追いかけていった。




 ◆◇◆このフロアでの戦果◆◇◆


 2階層の道が開かれた。


To Be Continued ‥‥ ?

ご拝読していただき、ありがとうございます。

和本明子です。


そして、誠に勝手で大変申し訳無いのですが、諸々の事情で、この物語はここで中断することになります。


元々、半年以内で1階層をクリアする(この話しまで書き上げる)予定だったのですが、軽く2年以上掛かってしまいました。


ちょっと制作ペースやストーリーなどの進行が宜しく無いと感じており、一旦腰を据えようと思いましての決断です。


再開がいつになるか分からない状態です。申し訳ありません。


ただ、他の作品も執筆したりしていますので、宜しければそちらの方をご拝読いただければと。


楽しんで貰えるように頑張っていきます。


これまで、ご拝読して頂き本当にありがとうございました。

そして、他の作品も宜しくお願いいたします。


和本明子でした。

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