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悠宮探久~リオスの不思議なラビリンス~  作者: 和本明子
◆6章 君の名を知った場所
15/17

-2-

「何処に行ったんだ?」


 リオスは部屋中を探し回る。


 机の中もベッドの下も、目に付く場所、人が隠れられる場所を探したけれど見つからなかった。


 念のためにと、もう一度探して見る。

 それでも見つからなかった。


 その結果、考えられることは――


「まさか、この部屋から出た? どうして……あっ!」


 当のリオスも目覚めた時は見知らぬ部屋に不審に思い、部屋を出る行動を起こしたのである。


「そりゃ、そうだよな……。ということは、あの娘は部屋を出て、外に……」


 自分と状況が違うのは、扉にカギが掛かっておらず、知能がある者ならば開けられることが出来る。


 リオスは直ぐに部屋から出て、辺りを見回してみたが、少女の姿は見当たらない。


 少女が何処に行ったか、心当たりが有る場所なんて有る訳が無い。

 勘を頼りに探し回るしかなかった。


「くそっ……こんなことなら、あの娘が目覚めるまで待っていれば良かった……」


 後悔をしても時間が戻ることは無い。

 リオスは、謎の少女を探してフロアを駆け巡った。


   ***



 そして、リンゴの樹の前へとやってきた。

 もしかしたら、リンゴの甘い香りに誘われているかもと思ったが、そこには誰もいなかった。


 走り回ったリオスは、息も絶え絶えになりつつ、リンゴの樹にもたれかかった。


「本当に、何処に行ったんだ……クソっ!」


 見つからない苛立ちと自分の不甲斐無さに、思わず樹の幹を叩いた。

 僅かに樹が揺れると、上空から――


――「わっ! わっ! わわわ~!」


 奇声が聴こえると、大きな物体が落ちてきたのである!


「えっ! うわわわわっ!」


――ドッシン!


 大地に衝撃音が響く。

 リオスはその物体の押し潰され、下敷きになってしまっていた。


「痛たた……な、なんだ、一体?」


 状況を確認……落ちてきたものが何かと確認すると、それは――


「君は……」


 リオスが救いだした謎の少女だったのだ。


「きゃっ!」


 謎の少女は飛び上がり、リオスから距離を取った。そして警戒するかのように身構え、言葉を発する。


「あ、あなたは何者なんですか?」


「何者かって……」


 ポコポコにも訊かれたことだが、まだ自分が何者なのかは解らない。だから、あの時と同様に、現時点での自分の事とこれまでの経緯について語った。


「オレの名前はリオスだ。ここを脱出するために辺りを探検していて、その最中に氷漬けになった、君を見つけたんだ」


「氷漬け……?」


「そう。それで、氷漬けになった君を助けだして、あの部屋……多分、君が目を覚ました場所に連れていって介抱していたんだよ」


 真実を話しているが、謎の少女に氷漬けになっていた記憶が無ければ、嘘のような話しだろう。

 しかし、少女には覚えがあった。


「氷漬け……そう私……失敗して氷漬けになったんだ。すっごく冷たくて、寒くて……ずっと、ずっと眠っていた……。だけど、暖かな風を感じるようになって……そして、眩しい光が私に注ぐ夢を見て、眼を覚ましたら、あの部屋で…」


 少女はリオスの顔を、マジマジと見入る。

 そしてリオスの手を手に取った。


「……あなたが、助けてくれたんですか!」


「た、助けたというか、まぁ結果的に……」


「でも、助けてくれたんでしょう! 助けてくれなかったら、私は永遠に氷の中で眠っていましたよ!」


「えっ……えっと……」


 少女が語る内容にいくつか疑問に思い、訊きたいことが沸き立つ。

 その中で特に訊きたいことを尋ねようとした時だった!


「っ! 危ない!」


 そう叫ぶと否や、リオスは少女の前に立った。


「えっ!?」


 リオスの突然の行動に驚く少女。

 だが、リオスの方を向くと、その行動の意味を理解した。


「あれは……」


 長い耳をピンッと立てて、鋭い爪と牙を持った凶暴な小動物……二体のラビッグが、リオスたちの前に立ちはだかっていたのだ。


 リオスはショートソードを手に取ろうとしたが、武器は前回の件で無くしていたことに気付く。


 ショートソードがあればラビッグが二体でも、難無く撃退することは出来ていたであろう。


 素手では、鋭い爪と牙を持つラビッグを相手にするのは難しい。


 現状を踏まえて、選択肢は逃げるしかなかった。


 リオス……自分一人だけなら、なんとか逃げることは出来る。

 だが、今は――


 リオスはチラっと少女を見る。


 そして、決断した。


「君は早く、あの部屋に戻るんだ!」


「えっ!?」


「ここはオレに任せて、さぁ行くんだ!」


 少女を逃すための時間稼ぎに、身を挺することを決めた。


 そんなリオスの覚悟を知ってか知らぬか、ラビッグの一体がリオスに向かって襲いかかってきた


 リオスは腕を交差して身構えた――その時だった。


「ファイロル・グロブ!」


 背後から突然聞こえた言葉と共に熱を感じ、火の球がラビッグの一体に直撃したのである。


 身体に火が着き悶え苦しむラビッグ。

 もう一体のラビッグは、仲間が火ダルマになっているを見て怯え、そのラビッグはリオスたちに背を向けて逃げ出したのである。


 そして、燃えたラビッグはそのまま力無く倒れ絶命した。


 リオスはゆっくりと振り返り少女の方を見た。

 すると少女は、何に気にすることはなく普通の顔を浮かべている。


 おそらく少女が繰り広げたであろう、先ほどのことについて、自然と訊いた。


「い、今のは?」


「今のは“魔法”です」


「ま、魔法……?」


「はい。なんとかしないといけないと思っていたら、ふとあの魔法の呪文を思い出して唱えてみたんです」


 耳慣れない言葉と内容を事も無げに語る少女に、リオスは戸惑う。

 そして、それに対しての感想は――


「君は一体……何者?」


 自分とは違う“何か”を会得している少女に、疑念の眼を向ける。

 だが、少女はそれに気にすることはなく。


「あっ! そういえば、私の自己紹介がまだでしたよね」


 優しく微笑み、手を差し伸ばした。


「私の名前は“フィオ”といいます。助けてくれてありがとう、リオス!」


 あどけなく朗らかな表情に、リオスは思わず差し向けられた手に伸ばそうとすると、


――グルルルグキュルルル♪


 少女フィオのお腹の虫が、盛大に鳴り響いたのであった。






 ◆◇◆このフロアでの戦果◆◇◆


 リンゴ を2つ手に入れた。


 氷漬けになった少女の名前フィオを知った。


 未知なる力…“魔法”の存在を知った。


To Be Continued ‥‥


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