-1-
▼所持しているもの
▽両手
・謎の少女
▽フロシキ
・ポコポコの草笛×1
氷漬けになっていた謎の少女を救い出したリオス。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
レッドスネークの炎の息が発端による火災は、フロアの大半を燃やし尽くし、そこに生い茂っていた草木や実っていた果実を全て灰にした。
リオスは謎の少女を抱えながら、その光景を眺め――
「これは、オレの所為じゃないよな……」
致しかないとはいえ、少々の罪悪感を感じてしまっていた。
ただ、その犠牲があったからこそ、リオスの腕の中で眠る少女を救い出せたのだと、自分の中で納得することにした。
これから、どうするか?
ひとまずエデン小部屋に、連れていくことにした。
少女は目を覚ます気配は無く、武器も無い。ここで目覚めを待つよりは、唯一の安全地点である場所に避難した方が良いと考えた。
エデン小部屋に向かおうとした時、リオスはある事が胸を掠める。
「あっ……。もしポコポコが、あの場所に居たとしたら……」
ポコポコが真っ黒焦げになった悲壮的なイメージが脳内に浮かぶ。
リオスは首をブルブルと横に振り、イメージを振り払った。
「大丈夫だろう……多分」
根拠の無い言葉を口にしつつ、リオスはその場を後した。
***
リオスは魔物たちに遭遇することは無く、無事にエデンの小部屋に辿り着くことが出来た。
そして謎の少女を静かに丁寧にベッドの上に寝かせると、優しく少女の寝顔を見つめる。
移動中、謎の少女は起きること無く、こうして今も眠っている状態だ。
息はちゃんとしている。
時折、寝言のようなものが漏れたりもした。
確かに、謎の少女は生きている。
このまま少女が目覚めるまで待つことにし、壁に身体を寄り掛けると――
――グキュルルル♪
盛大にお腹の虫が鳴ってしまった。
エデン小部屋に戻ってきたことで、安心して緊張の糸が緩んでしまったからだ。
「そういえば、丸一日も何も口にしていないよな……」
何か食べ物をと思ったが、食料は備蓄していなかった。
少女が目覚めるまで我慢しようとしたが、少女もお腹を空かせているのではと気遣い、
「何か食べ物を取ってきた方が良いかな……」
そもそも、自分の方がお腹が空き過ぎて我慢が出来る状態ではなかった。
リオスは食べ物を取りに外に出ようとした時、ふと手が止まる。
エデン小部屋の扉は、外側からカギをかけることは出来なかった。
チラっとベッドの上で眠る少女の方を見る。
「目覚める前までに戻ってくれば大丈夫だ」
そう言い残し、リオスはエデン小部屋を後にした。
***
リオスが向かった先は、あのリンゴの樹。
現時点で、食物が簡単に手に入る場所であった。
このフロアでは、ここ以外に果実などが実っている所を見つけることは出来ないでいた。
なので、謎の少女を見つけたフロアで、何か食べられる物も探したかったのだが、その目論見は灰となってしまった。
今になって、その事に対して気持ちが沈む。
でも、その代わりに少女を助けられたのだから――改めて、前向きの気持ちを取り直す。
「さてと……」
樹に実っている果実を、三つもぎ取った。
自分の分と少女の分。そして、ポコポコの分。
「これを喜んでいたし、またこれで物々交換でもしてくれれば……」
リオスはふと樹を見上げる。
手を伸ばして届く範囲の果実は、この三つだけだった。
残りの果実は樹に登らないと取れない。
もっと取って置きたかったが、エデンの小部屋に残してきた少女のことが気掛かりだった。
目的のものは手に入ったので、リンゴを頬張りながら、早急にエデンの小部屋へと戻ることにした。
道中で魔物に遭遇したものの、戦う武器を持っていないリオスは、草陰に隠れたりしてなんとか逃げつつ、エデンの小部屋へと戻ることができた。
だが、部屋に入り中を見渡すと、リオスは叫んだ。
「いない! あの娘が、いなくなっている…!?」
ベッドに寝かせていた少女の姿が、何処にも無かったのであった。