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悠宮探久~リオスの不思議なラビリンス~  作者: 和本明子
◆5章 赤く、強く、熱く、激しく、燃えて、優しい温もりを感じた場所
13/17

-2-

   ***


 燃えゆく壮絶な光景に、リオスを呆然としてしまう。

 だがすぐに、肌に感じる熱い空気に我を取り戻した。


 先ほど、レッドスネークが放った火の息が、木々に燃え移ってしまっただろう。

 その火はじわじわと周りに広がっていく。


 やがて火草地帯に火が到達すると、その火の勢いが増した。

 どうやら火草には、燃焼を増幅させる成分があるようだ。


 瞬く間に、辺りとレッドスネークは炎に包まれていった。


 異常かつ危険な状況。

 ここでジッとしていたら、焼き死んでしまう。


 リオスは火の手から逃れるために、安全の場所を求め走った。


「逃げるって……何処に?」


 とにかく、この木々が生い茂る場所から離れることが最優先である。

 リオスは未知の道ではなく、来た道を逆走していく。


 もし未知の道の先が行き止まりでもしたら、そこで一巻の終わりだ。


 なので、来た道を戻ることが正しい判断だと、自分の中で導きだした。

 それにあの氷柱の影響で、霜が地面などを覆ってくれているお陰で、火の侵攻を若干ではあるが弱めてくれていた。


 だが、火の勢いは留まることはない。

 次々と火が燃え移って行く。


「このフロアから出た方が良いよ、な」


 自分自身に言い聞かせるように、このフロアの出口(自分が入ってきた入り口)へと駆けていく。


 走っていく中、火はまるで生き物のように揺らめき、時に火が手のような形になり、リオスを掴もうとしてきたりした。


 それに、ここは広大ではあるが室内である。

 燃え盛る炎で熱されて、室内の気温が徐々に高くなっていき、ヒドく蒸し暑くなっていく。


 身体はその暑さから守るように、汗が滝のように流れ出す。そして額からこぼれ落ちる汗が目に入ってきて沁みたりもした。


 しかし、汗で守れるのも限度はある。

 このフロアから一秒でも脱出しなければ、脱水症状云々よりも、熱でやられてしまう。

 そして木々などから発生した煙も充満していき、視界を遮っていく。


 何処を進んでいるの解らない中を、リオスは己の直感で進んでいく。

 それとも、直感的に助かる場所を求めてしまっていたのだろうか。


 リオスはある場所に辿り着いた。

 そこは、あの少女が眠る氷柱が在る広場だった。


 前に訪れた時は身が凍えるほどの寒さだったが、今は辺りが炎に囲まれているため、寒いなどという感想が有る訳が無かった。

 だが、氷柱の周りにいることで、幾分かは暑さを緩和してくれた。


 それに、周りには可燃物が無いからか、氷柱まで炎は侵攻してこない。

 ここにいれば、炎からは凌げることができるかも知れないが、熱された空気はそうはいかない。


 だからリオスは氷柱に抱きつくように身体を引っ付けた。

 極寒の冷たさが肌に伝わる。


 しかし、あまりの冷たさに、いつまでも感じていたいものではなかった。

 氷柱から引き離れるものの、外気の暑さにこたえると、再び氷柱に身体を引っ付ける。今度は背中だ。


 それを繰り返しつつ暑さを凌いでいくと、やがて氷柱の側面が溶け始めて、雫が滴ってきたのである。


 これ幸いと、リオスはその水滴を舐めては、水分を補給をした。

 少し落ち着いてきたことで、リオスは気付く。


「火が消えるまでに、もしこの氷の柱が溶けてしまったら……」


 そうなれば、リオスは蒸し焼けになってしまう。

 リオスは祈るしか無かった。火が消えるまで氷柱が存在してくれることに……。


 だが、ふと思った――


「氷が溶ければ、彼女を救いだせるんじゃ……」


   ***


 どのくらい時間が経っただろうか。

 そんなに長くは経ってはいないが、熱さと寒さで、リオスの体力は思う以上に奪われ、意識が朦朧していた。


 吸う空気が熱く、激しい喉の乾きを誘発させる。

 熱いと感じれば、氷柱に身を預けた。


 それを繰り返した。


 やがて、周辺の火は衰え始め、炎よりも白い煙の方が多くなっていた。


 リオスは何とか炎の海を耐え抜いたのであった。


 そして、氷柱は――


「全部、溶けなかったか……」


 形を保って存在していた。

 だが、高くそびえ立っていた氷柱はリオスの背と同じぐらいの大きさまでになっていた。


「もう少し火を当てれば、全部溶けそうだったのに……」


 自然と氷柱に手を置いた。

 冷たかったが、柔くなっているような感触が手に伝わる。


 リオスが手を置いた場所が、うっすらと手形の跡が残っていた。


「もしかして……」


 拳を丸めると、力を込めて氷柱を殴った。


――パッキィーン


 氷柱にヒビが入り、一部が砕けた。

 氷柱は溶けて、非常に脆くなっていたのである。


 リオスは夢中になって何度も殴った。

 ヒビ割れ、氷の欠片が散乱する。


 何度も殴り破砕していくと、遂に少女の身体が氷からあらわになった。


 リオスは残りの氷を払いのけ、少女の身体に触れる。

 氷の中に閉じ込められていたにも関わらず、優しい温もりがリオス手に伝わってきた。


「生きている……」


 それは、命の温もりだった。

 この温かさなら、いつまでも感じていたと、リオスは思った。




 ◆◇◆このフロアでの戦果◆◇◆


 ショートソードを失った。

 フロアの大半が炎に包まれ、灰となった。


 氷柱の少女を救いだした。

 


To Be Continued ‥‥

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