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▼所持しているもの
▽フロシキ
・ショートソード(壊)×1
・ポコポコの草笛×1
「さて、火草は何処にあるのか……」
リオスは寒さで震える身体を摩りながら、辺りを見回しながら進み行く。
氷柱の少女を救うべく、ポコポコが求める『火草』を探していた。
「確か、赤い草って言ったよな……」
辺りは、白い霜や雪に覆われている。適度に草場に積もった雪などを払いのけては、草の色を確認するが、今の所、普通の草ばかりだった。
氷柱から離れていくほど、白から緑へと変わっていく。
すると、あれほど感じていた寒さも緩和していった。
寒さの原因は、あの氷柱の影響だと改めて思い知る。
そして、所々で魔物たちも現れるようになっていき、リオスは折れたショートソードでなんとか撃退していった。
暫く進んでいくと、遠目の方で赤く茂った草が見えた。
「おっ、あれか……」
急ぎ足で、そこへ向かっていく。
真っ赤な草が辺り一面に茂っており、リオスは何気なく草をもぎ取ろうとした時だった。
蛇が、突如姿を現したのだ
その蛇の胴体は、リオスの太ももぐらいの太さがある、いわゆる大蛇の部類に入る蛇だった。
「うわわわっっっっーーーーー!!!!!」
リオスは思わず大声を出しながら、飛び仰け反る。
ヘビの皮膚は赤く、それが周りの赤い草と同化しており、それでリオスはヘビの姿を見落としてしまっていたのだった。
そしてショートソードを構えて、赤いヘビを睨んだ。
「そうか、こいつがポコポコが言っていたレッドスネークってやつか……」
レッドスネークも舌をチョロチョロと囀り、リオスのことを伺っている。
リオスが右へ動くと、レッドスネークはそちらの方向へ顔を向け、リオスが左に動けば、同じく顔を動かす。
「ここは先手必勝!」
一太刀でも入れたら退いてくれればと、淡い期待を抱きつつ、リオスは飛び掛り、ショートソードを振り落とす。
だが――
グニョッとした手応え……硬い弾力が手に伝わり、刃を跳ね返した。
「なっ!?」
レッドスネークの身体は硬いゴムの如く。
一太刀入れる所か、ダメージすら与えることが出来なかった。
それはショートソードの刀身が短くなったのも影響していた。
刀身が長ければ、振り下ろす時に遠心力が生まれて、より勢いをつけることが出来たが、短くなった短剣では、リオスの腕力だけとなってしまう。
そうこうしている内に、今度はレッドスネークが攻撃を仕掛けてくる。
大きく口を開けて、リオス目掛けて突進……頭身を伸ばして、噛み付こうとしてきた。
リオスは身体を反らし、間髪のところでかわす。
だが、レッドスネークは顔の向きを変え、再びリオスに襲いかかる。
「わっ!」
レッドスネークの攻撃に、なんとか身体を反らし続けてかわしていくそして。一旦、距離を取ろうとレッドスネーク……そして、赤い草に背を向けて走った。
リオスは、後を追いかけてくると予想していたが、ふと振り返るとレッドスネークは、赤い草が茂っている地帯から離れようとしなかった。
「あそこが縄張りみたいなところか?」
追いかけてこないことを良いことに、息を整え、次の行動を考えようした時だった。レッドスネークはおもむろに赤い草を食べ始めた。
そして、リオスに向けて口を開けると、『炎の息』を吹いてきた!
予想外の遠隔攻撃に、リオスは咄嗟の判断で横へと飛び転ぶ。
「な、なんだ!? そんなことも出来るの……かっ!」
間髪入れず、レッドスネークは第二撃の『炎の息』を繰り出してきた。
直線上に向かってくる火の柱が、リオスの横を掠める。
強烈な熱さを肌に感じると、リオスが着ている服の一部が燃えているのに気がついた。
「ヤベ!」
消化するために手で燃える箇所を叩いては、火をすり潰すように地面に転がる。
なんとか火は消し止めたものの、肩の部分が燃えて皮膚の軽い火傷を負ってしまい、ジンジンとした痛みが響く。
「ハァハァ……なんだ、一体……」
だが、リオスには答えは想像できていた。
火草――読んで字の如く、あの草を食べると、あんな風に火を吹くことができるのだと。
「確かに、あの草があれば氷を溶かせそうだな……」
なんとしてでも手に入れる、と気持ちを高めた。
だが、ある事に……いや、無い事に気づく。
「あれ?」
手に持っていたはずの、ショートソードが失くなっていた。
火を消すことに躍起になっていたために、何処かで落としてしまっていたのだ。
素手で、あのレッドスネークを倒すことは容易では無い。
レッドスネークに警戒しつつ、瞬時に辺りを見回しショートソードを探す。
そしてまた、ある異変にも気づく。
焦げ臭い匂いが漂ってきたのだ。
燃えた肩口からだと思ったが、そうじゃない。
一部からではなく、全体的から漂い始めている。
よくよく、辺りを見渡して見ると―――
深い緑の木々が炎の海に包まれていた。