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悠宮探久~リオスの不思議なラビリンス~  作者: 和本明子
◆5章 赤く、強く、熱く、激しく、燃えて、優しい温もりを感じた場所
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▼所持しているもの

▽フロシキ

・ショートソード(壊)×1

・ポコポコの草笛×1


「さて、火草は何処にあるのか……」


 リオスは寒さで震える身体を摩りながら、辺りを見回しながら進み行く。

 氷柱の少女を救うべく、ポコポコが求める『火草』を探していた。


「確か、赤い草って言ったよな……」


 辺りは、白い霜や雪に覆われている。適度に草場に積もった雪などを払いのけては、草の色を確認するが、今の所、普通の草ばかりだった。


 氷柱から離れていくほど、白から緑へと変わっていく。

 すると、あれほど感じていた寒さも緩和していった。


 寒さの原因は、あの氷柱の影響だと改めて思い知る。

 そして、所々で魔物たちも現れるようになっていき、リオスは折れたショートソードでなんとか撃退していった。


 暫く進んでいくと、遠目の方で赤く茂った草が見えた。


「おっ、あれか……」


 急ぎ足で、そこへ向かっていく。

 真っ赤な草が辺り一面に茂っており、リオスは何気なく草をもぎ取ろうとした時だった。


 蛇が、突如姿を現したのだ


 その蛇の胴体は、リオスの太ももぐらいの太さがある、いわゆる大蛇の部類に入る蛇だった。


「うわわわっっっっーーーーー!!!!!」


 リオスは思わず大声を出しながら、飛び仰け反る。


 ヘビの皮膚は赤く、それが周りの赤い草と同化しており、それでリオスはヘビの姿を見落としてしまっていたのだった。


 そしてショートソードを構えて、赤いヘビを睨んだ。


「そうか、こいつがポコポコが言っていたレッドスネークってやつか……」


 レッドスネークも舌をチョロチョロと囀り、リオスのことを伺っている。

 リオスが右へ動くと、レッドスネークはそちらの方向へ顔を向け、リオスが左に動けば、同じく顔を動かす。


「ここは先手必勝!」


 一太刀でも入れたら退いてくれればと、淡い期待を抱きつつ、リオスは飛び掛り、ショートソードを振り落とす。


 だが――


 グニョッとした手応え……硬い弾力が手に伝わり、刃を跳ね返した。


「なっ!?」


 レッドスネークの身体は硬いゴムの如く。

 一太刀入れる所か、ダメージすら与えることが出来なかった。


 それはショートソードの刀身が短くなったのも影響していた。

 刀身が長ければ、振り下ろす時に遠心力が生まれて、より勢いをつけることが出来たが、短くなった短剣では、リオスの腕力だけとなってしまう。


 そうこうしている内に、今度はレッドスネークが攻撃を仕掛けてくる。

 大きく口を開けて、リオス目掛けて突進……頭身を伸ばして、噛み付こうとしてきた。


 リオスは身体を反らし、間髪のところでかわす。

 だが、レッドスネークは顔の向きを変え、再びリオスに襲いかかる。


「わっ!」


 レッドスネークの攻撃に、なんとか身体を反らし続けてかわしていくそして。一旦、距離を取ろうとレッドスネーク……そして、赤い草に背を向けて走った。


 リオスは、後を追いかけてくると予想していたが、ふと振り返るとレッドスネークは、赤い草が茂っている地帯から離れようとしなかった。


「あそこが縄張りみたいなところか?」


 追いかけてこないことを良いことに、息を整え、次の行動を考えようした時だった。レッドスネークはおもむろに赤い草を食べ始めた。


 そして、リオスに向けて口を開けると、『炎のファイヤーブレス』を吹いてきた!


 予想外の遠隔攻撃に、リオスは咄嗟の判断で横へと飛び転ぶ。


「な、なんだ!? そんなことも出来るの……かっ!」


 間髪入れず、レッドスネークは第二撃の『炎の息』を繰り出してきた。

 直線上に向かってくる火の柱が、リオスの横を掠める。


 強烈な熱さを肌に感じると、リオスが着ている服の一部が燃えているのに気がついた。


「ヤベ!」


 消化するために手で燃える箇所を叩いては、火をすり潰すように地面に転がる。

 なんとか火は消し止めたものの、肩の部分が燃えて皮膚の軽い火傷を負ってしまい、ジンジンとした痛みが響く。


「ハァハァ……なんだ、一体……」


 だが、リオスには答えは想像できていた。

 火草――読んで字の如く、あの草を食べると、あんな風に火を吹くことができるのだと。


「確かに、あの草があれば氷を溶かせそうだな……」


 なんとしてでも手に入れる、と気持ちを高めた。

 だが、ある事に……いや、無い事に気づく。


「あれ?」


 手に持っていたはずの、ショートソードが失くなっていた。

 火を消すことに躍起になっていたために、何処かで落としてしまっていたのだ。


 素手で、あのレッドスネークを倒すことは容易では無い。


 レッドスネークに警戒しつつ、瞬時に辺りを見回しショートソードを探す。

 そしてまた、ある異変にも気づく。


 焦げ臭い匂いが漂ってきたのだ。


 燃えた肩口からだと思ったが、そうじゃない。

 一部からではなく、全体的から漂い始めている。


 よくよく、辺りを見渡して見ると―――


 深い緑の木々が炎の海に包まれていた。


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