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悠宮探久~リオスの不思議なラビリンス~  作者: 和本明子
◆4章 心通じる者と言葉通じるモノに出会い、人心地を感じた場所
10/17

-1-

リオス

 目が覚めたらエデンの小部屋に居て、なぜ、ここにいるのか解らない。

 記憶を喪失している。

 出口を探している。


▼所持しているもの

・ショートソード×1

・リンゴ×1


 リオスは暗闇の通路を進んでいた。

 ヒヒが塞いでいたトンネルの中だ。


 真っ暗ではあるが、リオスはそれほど不安を感じていなかった。

 なぜなら、奥の方で一点の光が見えていたからである。


 だが、警戒は怠らない。ショートソードを握る手の力は緩めない。

 もし何かの物陰が見えれば、りんご(ヒヒとの戦闘の後、拾い直した)を投げて、探りを入れることも頭に入れて。


 だが何事も無く、トンネルの終わりに辿り着く。


 外の眩しさに思わず、目を瞑る。

 そしてゆっくりと光に慣れて、辺りを見回した。


「ここは……」


 そこは、外では無く。前のフロアと同じような場所だった。


 天井が有る空に、辺りは木や草が生い茂っていた。

 リオスはガクっと肩を落とし、一息吐いた。


 ここでジッと立っていても、何も起きはしない。

 とりあえず、いつもの通りに探索をし始めるのであった。


   ***


 草木を刈り取りつつ、時々、木の幹に目印となるような傷を付けながら進んでいく。

 前のフロアと同様な景色が続き、リオスの気持ちがだれてきていた。


「まさか、こういう場所が延々と続くんじゃないだろうな……」


 そんな不安を漏らしていると、ある変化を感じた。


 奥に進むごとに、肌寒くなっていくのだ。

 そして地面に霜が降りており、白くなっている。


「なんだ、急に……」


 先へと進んでいく度に、より寒さが厳しくなくなり、雪景色が濃くなっていく。


 リオスは自分の身をさすりながら寒さを堪えつつも、その足を動かし続けた。

 いや、身体を動かし続けないと、寒さで眠くなってしまいそうだった。


 やがて拓けた場所に出ると、真っ先に大きな“氷柱”がそびえ立っていたのが見えた。


「なんだ…、あれ?」


 ゆっくりと氷柱に近づく。

 そして、その中に一人の少女が、氷漬けにされているが見えた。


 異様な光景に、一驚を喫するリオス。


 だが、氷漬けされた少女は清楚な雰囲気を醸し出しており、真っ白な景色も相まって、幻想的で神秘的な光景に思わず見惚れてしまった。


 そしてリオスは、無意識に氷柱に触れる。


 手に冷たい温度が伝わり、


『助けて……』


 声が、リオスの頭の中に響いてきたのであった。


 思わず氷柱から手を離し、氷柱……その中で眠る少女を凝視する。


「なんだ、今の声は?」


 聴こえてきた声が、氷の少女のものではと思い、再び氷柱に触れてみたが、今度は声を響いてこなかった。


「まだ、生きているのか……」


 初めて出会った人間……助けたいという意識がリオスの中に生まれていた。

 そして、ショートソードで氷柱を切りつけたり突いたりして、氷を削っていく。


 削り取れる量は微細で、巨大な氷の中から少女まで到達するまで、どれだけ時間がかかるか解らない。

 だから、より強くより速くショートソードを振るう。

 そして、限界は早い内にやってきた。


――パッキィーン!


 ショートソードの刃が折れてしまったのだ。


「えっ!?」


 折れた刃先が、力無く落ちる。

 そして折れたショートソードを見つめ、愕然とするリオス。


 すると、背後の草場からガサガサと物音がした。


 リオスは振り返り、身構える。

 ショートソードが折れた現状では、明らかに攻撃力が低下している。


 もしヒヒのような魔物だったら……。


 後ろに氷柱が有るからではないが、リオスは背筋が寒くなった。

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