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ゆたかの怪奇列島第7章「二番」  作者: こうた


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第5話「それぞれの答え」

静けさが戻る。

さっきまでの喧騒が嘘みたいに——

街は、いつもの顔を取り戻していた。

観光客の笑い声。

子どものはしゃぐ声。

何もなかったかのように。

だが——

少しだけ違う。

どこか、考え込むような空気。

「……終わったな」

ゆたかが空を見上げる。

ななが肩を回す。

「しんどい終わり方やな」

神父が静かに言う。

「明確な勝利ではありません」

一拍。

「ですが、必要な結果です」

そのとき。

ゆっくりと歩いてくる影。

桃太郎

もう——

さっきまでとは違う。

顔に迷いは残っている。

だが。

それを隠していない。

そのまま、受け入れている。

ゆたかが軽く手を上げる。

「どや」

桃太郎は、少しだけ考える。

そして——

「……まだ分からない」

正直な言葉。

ななが苦笑する。

「またそれかいな」

桃太郎も、わずかに笑う。

ほんの少しだけ。

「だが」

一拍。

「決めたことはある」

ゆたかが目を向ける。

「なんや」

桃太郎は言う。

「選ばれたことに、意味を持たせる」

風が吹く。

静かに。

ななが頷く。

「ええやん」

神父も言う。

「主体的な選択です」

桃太郎は続ける。

「そして」

一拍。

「選ばれなかった者を、見ないふりはしない」

その言葉。

少しだけ重い。

だが——

逃げていない。

ゆたかが笑う。

「それでええ」

一拍。

「完璧なんかいらん」

ななが腕を組む。

「むしろ不完全な方がマシや」

神父が小さく頷く。

「人間的です」

沈黙。

穏やかな時間。

そのとき。

子どもの声が聞こえる。

「桃太郎強いー!」

「鬼やっつけたんやろ!」

無邪気な声。

桃太郎がそちらを見る。

少しだけ。

複雑な表情。

だが——

すぐに、目を戻す。

もう逃げない。

そのとき。

ゆたかがふと呟く。

「なあ」

ななが振り向く。

「なんや」

ゆたかは空を見たまま言う。

「二番ってさ」

一拍。

「別に悪くないな」

ななが笑う。

「今さらかいな」

ゆたかも笑う。

「一番だけやと、しんどいやろ」

神父が言う。

「比較の構造そのものが問題です」

一拍。

「順位は本質ではありません」

桃太郎が、その言葉を聞く。

そして——

小さく頷く。

納得ではない。

だが。

受け入れ始めている。

そのとき。

風が変わる。

ほんの一瞬。

冷たい気配。

ゆたかが目を細める。

「……来るな」

ななも気づく。

「またか」

神父が空を見上げる。

「はい」

一拍。

「次は——都市です」

遠く。

見えないはずの場所。

だが。

確かに感じる。

ざわつき。

歪み。

人の集まる場所。

東京。

ななが肩を鳴らす。

「まためんどくさいの来るで」

ゆたかが笑う。

「そらな」

一拍。

「人多いとこは、だいたい濃い」

桃太郎が言う。

「行く」

短く。

だがはっきりと。

もう迷いはない。

完全ではない。

だが——

“自分で選んでいる”。

ゆたかが頷く。

「ほな行こか」

風が吹く。

今度は前へ進む風。

それぞれの答えを持ったまま。

次の場所へ。

■ 第7章「二番」 完

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