心の癖
誰しも「自分に精神疾患はない」と信じている。
しかし、人という生き物は、誰もがどこか欠けている。
それは極度の心配性かもしれないし、
計画性のなさ、あるいは批判的な性格かもしれない。
人の多様性には光と影があり、どちらか一方だけを切り取ることはできない。
それを理解せずに、自分の欠点には盲目的で、
他人の傷ばかりを見つめ、
「あいつはおかしい」
「自分はまともだ」
と決めつける。
そんな心の癖を、誰もが抱えている。
それは自分を優位に保ちたいという本能なのかもしれない。
だが、その視線の積み重ねが、
世界を静かに悲しみで満たしていく。
私はこう考える。
「我々は漏れなく精神疾患を抱えている」と。
なぜなら、その偏りこそが人間の証だからだ。
かつて偉大な思想家や芸術家たちも、
常識では測れぬ歪みを宿していた。
その歪みが、この世界を変えた。
人は決して完全でも高尚でもない。
誰もがどこか欠けていて、
どこかで他人と噛み合わずに生きている。
その事実を受け入れたとき、人はようやく楽に生きられる。
それぞれの欠けを認め合うとき、私たちは他人にも、自分にも少しだけ優しくなれると思う。




