文番(もんばん)
園児時代、藤乃は門番になりたいなどと、ほざいておりました
現実世界と幻想世界の狭間にある『語りの出入り口』を固める役割、その名も『文番』。
出入りの利用をする存在には限りがあり、『文番』はそれを見極める質を持っている。
早速、朝から『語りの出入り口』を利用するであろう存在が姿を現し、『文番』の顔付きが厳しいモノへと変化した。
「通りたければ、鍵文、通り名、用件を云うべし‼」
現れた存在の姿は人が良さそうな細身の女性。
けれど見た目は関係なく、『語りの出入り口』を利用する場合は、決まりに従わなければならない。
「『開け、表紙の門』、通り名『カイセイ』、用件は逃亡した作者の『小田氏』を連れ戻すために参りました‼」
女性が名乗る『カイセイ』という通り名には、確かな聞き覚えがある。
ここでピン、ときた為、彼女には同情が生まれてくる。
「毎回、大変だな」
「慣れてますから」
『カイセイ』とは現実世界の出版社で編集を勤める女性で、『小田氏』とはスランプで毎回逃亡をはかる人気作家だ。
彼の逃亡を阻止しようとする彼女の顔色からは、予想以上に疲れが現れていた。
「入って良い‼」
「ありがとうございます」
疲れながらも『小田氏』を連れ戻しにいく『カイセイ』が通りすぎる瞬間、『文番』の胸はチクン、と痛んだ。
(今頃、探してるだろうな)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「にいに~どこ~?」
探していた。
幻想世界の出入り口で『文番』の業務を勤める間、兄である彼と遊びたがっている二歳の妹が。
兄の部屋の隅から隅まで、必死に探しているのだ。
「にいに~、あしょんでえ~」
兄が入っているライトノベルの側で、妹は彼を呼び続ける。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
空から妹の声が聞こえた。
〈にいに~〉
胸が再び痛んだ。
(済まない、リサ。
ウチは貧しいから、兄ちゃんが稼がないと食べていけないんだ!)
〈どこ~?〉
『待ってろ、後二時間したら交代だから、それまで待っててくれな‼』
兄貴は辛いよ。
〈あしょんでえ~〉
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