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2.画策する公爵令嬢のひとりごと


 私はベルサージュ公爵家の長女、アデリンと申します。

 先日、長年の婚約者であった第二王子と無事、婚約解消と相成りまして、晴れて自由の身を謳歌している今日この頃。あんなお荷物と縁が切れ、これ以上ない喜びを噛み締めております。


 それもこれも、アリア・テオドール様のおかげ。積年の苦しみ、悲しみ、絶望、諦め、そのすべてを笑いで払拭してくださったアリア様。このご恩、一生涯忘れることはありませんわ!


 その後も、アリア様の快進撃は留まることを知らず、リリアン・ロシャス子爵令嬢、フェリシア・アスペン伯爵令嬢を華麗に救っていらっしゃいます。無自覚に。


 ええ私、しかとこの目で女神アリア様のお裁きを見たいがために、常にアリア様の行動に注目し、一定の距離を保ちつつ、陰からアリア様のご様子を見守り続けているのですわ。それはもう、毎日の日課として。


 そんな時、従妹であるシルフィから、悩みを打ち明けられましたの。


 昨年、シルフィはスクレランサス公爵家からの申し出で、嫡男ジョシュア様との婚約が整いました。スクレランサス公爵家は、停滞している事業にバーベイン侯爵家からの援助を望み、シルフィとの婚姻を頼み込んできたという経緯です。


 ところが、当のジョシュア様は、乳母の娘を大事な幼馴染だからと優先し、婚約者との親睦を深める定例のお茶会にも幼馴染を同伴する、病弱な彼女の具合が悪くなったからとドタキャンを重ねる、等の所行を繰り返し、あまりにもシルフィを蔑ろにしているというではございませんか。


 しかも、幼馴染のほうもひと癖ありそうな娘で、ジョシュア様が気づかない時を狙って、シルフィに勝ち誇った表情を見せるといいます。その幼馴染は、先代のスクレランサス公爵が現役でいらした当時、仕えていた執事の孫娘にあたります。その執事の生家は子爵家でしたが、三男だったので少年の頃から執事見習いとして公爵家に入ったため、身分としては平民です。


 立場を弁えないどころか、シルフィを見下すような態度の幼馴染。加えて、それを咎めないばかりか、当たり前のように幼馴染を優先し、シルフィに不義理な行いを重ねるジョシュア様。

 耐えきれなくなったシルフィが、ジョシュア様に物申したところ、「幼馴染は家族のようなものだから、君もそのように思ってくれ」などど意味不明なことを言ったとか。

 

 話を聞いた私は、本当に腹が立ってしまいましたわ。シルフィは、決して気弱なタイプではなく、むしろしっかりしていると申しますか、気が強めな性格ですので、今回のことでそこまでの心配はしておりません。⋯⋯白状してしまいますと、私の気持ちが収まらないのです。


 私の可愛い従妹になんて事しやがるのかしら、という思いももちろんございますが、それ以上にお花畑な小物をぎゃふんと言わせたいという、煮えたぎる熱情がふつふつと⋯⋯。そう、できることなら成敗したい!


 ええ、自覚しております。公爵令息と幼馴染から、例の第二王子&お花畑女と同じ匂いがするからですわ。


 しかも私、このような安っぽい匂いにピッタリの消臭剤を知っているのです! いえいえ、「消臭剤」なんて畏れ多いですわね。いわば女神の聖水スプレー。下品なお花畑臭もアホな小物臭も、たちどころに浄化せしめる最恐兵器! おほほ、いいことを思いつきました。香ばしくなってまいりましたわ!


 そこで私は、最適な舞台を整えるため、まずシルフィに作戦を話し、次にアリア様ご本人にご相談を持ちかけることにいたしましたの。


 すると、さすがアリア様の脇を固めるサルーシャ様とリリアン様。アリア様がぽやんとしている間に、お二人は私の意図を120%汲み取ってくださいました。



 そして日を改めて、今度はアリア様抜きで作戦会議が開かれることに。


「アデリン様、貴女は立派なストーカーですね」

 作戦会議に入る前に、いきなりサルーシャ様から爆弾が投下されました。


「おほほ、褒めても何も出ませんことよ」

 もちろん、“開き直る” 一択ですわ。やましい気持ちなんてございませんもの。


「そのストーキング、合法的にするおつもりはありませんか? 秘密結社 “アリーを見守る会” にご興味は? 今なら会員番号No.3の栄誉がもれなく⋯⋯」


「会員になりますわ‼︎」

 淑女としたことが、食い気味に答えてしまいました。


 かくして私の、秘密結社メンバーとして初の作戦が決行されることとなったのですわ。


 都合良くシルフィが婚約者ジョシュア・スクレランサス公爵令息から人気のカフェへのお誘いを受けたので、これはチャンスとばかりに私たちも揃って現場に向かうことに。頭が沸いてる婚約者は、自称病弱の幼馴染を連れて来るに決まっております。


 シルフィには、私たちがタイミングを合わせてそのカフェに行くので、アリア様をシルフィたちのテーブルにうまいこと誘導するよう、事前に指示いたしました。


 そうして訪れた決行当日。

 もう、ワクワクが止まりませんわ! お花畑ども! 最恐兵器の聖水シャワーを浴びて、いい声でぎゃふんと泣くがよろしくてよ!!

ありがとうございます。

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