第3話 いざ異世界(地球)へ
◇想像のスキル◇
「俺が持つスキル、それは"想像創造"だ」
俺は勇気を絞り出して、女にこの事実を告白した。
しかし、返ってきた言葉は、俺の想像の斜め上をいくものだった。
「そうぞー…そーぞー…?何ですかそれは?」
…まあ無理もないか。
女の元いた世界のことは知らないが、そんなスキルの概念すらもない世界かもしれないしな。
そう思った俺は、スキルの内容を事細かく説明してやることにした。
「まず俺のスキルは、どのクラスのスキルでもない。あまりにも特別なため、周りからは"G級スキル"と弄られている」
「G級スキルですか…。アルファベットの順で考えれば、私のF級スキルの方が強いですが」
女は俺の想像していたような、分かりやすい受け答えをしてくれた。
だが、その考えは"間違っている"。
「それは、俺が周りに一度もこのスキルの本質を見せていないからだ。」
「本質?」
「ああ、このスキルの本当の能力は、"俺が想像できることであれば、どんなことでも実現できる"という能力だ。まあ周りには、花を咲かせるスキルと言っているけどな」
俺のスキルの真相を聞いた女は、絶句してしまった。
そりゃそうだろうな。
こんなS級スキルよりもチートなスキル、信じろっていう方が難しい。
「信じられないなら何か試してみるか?」
俺が提案すると、女は静かに頷いた。
まあ照明にはこれが一番手っ取り早いからな。
そう思い俺は、女にスキルの能力を見せるために、俺は冷蔵庫から、卵を1つ持ってきた。
「ここに一つの卵があるだろ。俺が卵を片手で握りつぶそうとしても、卵は割れることはない。そこまでは分かるな」
「はい。元いた世界で母から教わったので」
俺の問いかけを、女は不思議そうに答えた。
「じゃあ今から俺は目をつむり、卵を片手で割るところを脳で想像してみる。そしてそれが終わって目を開けば、これで想像創造は完了だ」
「はあ?」
女は、まだイマイチ理解できていないような反応を見せた。
だから俺は、無言で卵を片手で掴み、握りしめてみる。
すると卵は跡形もなく割れ、殻と卵白と黄身が、床に勢いよく落ちた。
それを見て女は、さらに声を失う。
「どうだ?俺のスキルについて分かってくれたか?」
「はい。よく分かりました…」
女は力無く頷く。
理解してくれたようなので、俺はさらにスキルの説明を続ける。
「こんな感じに基本何でもできるスキルだが、実は弱点もあるんだ」
「弱点?」
「ああ。このスキルは、"俺が頭で想像できることしか創造できないんだんだ。例えば俺がこの世界にないものを創ろうとしたとしても、そのアイデアが浮かばなければ創れないってことだ。逆に思い浮かべば、概念でも物でも何でも創り出せる」
まあ俺の好奇心は常人の倍はあるので、発想力は他人と比べ物にならないくらい高いのは黙っておく。
「そして俺は、お前の勇者召喚の瞬間を見ていた。だからお前を元の世界に戻すゲートも容易に想像できる。だから多分、お前を元いた世界に帰れる思うぞ」
俺がそう言うと女は、もの凄い勢いで俺に食いついてきた。
「本当ですか!?」
まさか本当に帰れるとは思っていなかったのだろう。
女は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「ああ、だがそのためにはお前の元いた世界のことをある程度知っておく必要があるんだ。教えてくれるか?」
俺がそう聞くと、女は嬉しそうに頷いた。
それから俺達は互いの名前や、世界についての情報共有をした。
どうやら女の名は、"エンドウ・キョウカ"というらしく、元々は"地球"という球体の世界に住んでいたらしい。
俺達の世界では、"世界平面説"が主流のため、その話を聞いた時はかなり驚いた。
他にもキョウカは、様々な信じがたい情報を話してくれた。
キョウカの住む地球は、"コンピューター"という不思議な生命体?が存在すること、地球の外にも膨大な世界が広がっていることなど、そのどれもが、俺にとっては非現実的なものだった。
そしてその話は、俺の好奇心を刺激するのには十分過ぎた。
ある程度話が終わった後、俺は目を閉じて、俺達の住む"ゲールプレリア大陸"から"地球"を繋ぐまでのゲートを想像した。
結果は大成功。
すぐにでも俺は、ゲートを出せれるようになった。
「キョウカの世界に行くためのゲートができた。今からでも帰るか?」
俺が早速キョウカに聞くと、キョウカは力強く頷いき、口を開く。
「こんな最悪な世界、一刻も早く離れたい!お願いします!」
「そうか」
俺はキョウカの返答を聞くと、部屋の扉を思い切り開け、畑の近くの庭に出た。
そして俺はゲートを開く儀式をしながら、キョウカにあることを尋ねた。
「なあキョウカ、帰る前に俺の願いを1つ聞いてくれないか?」
するとキョウカは驚いたような顔をしたが、すぐに俺に笑顔を向けて、
「バルトさんは私の命の恩人なんですよ。何でも言って下さい!」
と言ってくれた。
本当で素直ないい子だ。
「そうか、ありがとうな」
そう言い俺はゲートを完全に広げた後、キョウカの手を掴んだ。
するとキョウカは焦ったような顔をし、口を開いた。
「あの〜、なんで私は手を掴まれているんですか?」
赤面しながら訪ねてくるキョウカ。
その疑問を聞いた俺は、キョウカの手をそのまま引っ張りながら口を開く。
「そんなの決まってるだろ、今から俺と一緒に地球に行くんだよ!」
言い終わるのと同時に、そのまま俺達はゲートの中に思い切り飛び入った。
「えっ、ちょっと、えー!」
あまりの急な展開に、キョウカは叫ぶことしかできていない。
そしてそのまま、彼女は気絶してしまった。
すまないなキョウカ。
俺の好奇心は他人は愚か、俺自身ですら止めることができないんだ。
俺はキョウカに申し訳なさを覚えたが、それ以上に、"地球"についての好奇心に胸を躍らせながら落下していった。
バルト・ガールトン
"スキル"想像創造・・・?級スキル
エンドウ・キョウカ
"スキル"?・・・F級スキル