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第2話 途方の勇者

   〜翌日〜

 次の日の朝、俺は朝早くに起き、急いで宮殿へと走り出した。

 一度眠りを挟んでも、俺の好奇心は留まるところを知らなかったのだから仕方ない。

 そう思い俺は、道中の地面を突き進んでいく。

 しかし、突き進んでいると、道端に謎のローブをかぶった人物が力無く座り込んでいた。

 その見た目は醜く、泥まみれの状態になっていた。

 俺はすぐにでも宮殿に行きたい気持ちを我慢し、ローブの人物に声をかけてみる。


「おい、お前大丈夫か?」


 するとローブの人物は、ビクッと体を揺らし、俺の方を向き、口を開いた。


「あ、あの…、大丈夫じゃなさそうなので助けてくれませんか」


 ローブの人物から聞かされたまさかのヘルプコール。

 しかも声的に女性の声だ。

 先を急ぎたかった俺だが、流石に助けを求められては放っておけない。

 俺はローブの女に手を差し伸べる。


「立てるか?」


「ありがとうございます」


 ローブの女は俺の手を握り、立ち上がった。


「それじゃあ時間もないし、このまま俺の家に来いよ。風呂ぐらいは貸してやる」


 そう言い俺は、ローブの女の手をそのまま引っ張り、強引に家の色まで足を進める。

 ローブの女は焦ったような声を上げていたが、俺は無視して問答無用で家まで連れて行った。


 しばらく歩き俺の家まで着くと、俺はそのままローブの女を風呂に入るように促した。

 服は俺の服を貸しておいたし、たぶん大丈夫だろう。

 

 しかし、こんな農村地域で倒れているなんて、一体何があったんだろうか。

 親に捨てられるにしては遅すぎる年齢だし、おそらく犯罪に巻き込まれたタイプだろうな。

 まあどちらにせよ、風呂から上がった段階で聞けばいいか。

 そう思い俺は、古文書を読みながら、風呂から上がってくるのを気長に待った。


 それから30分くらい古文書を読んでいると、ローブを外した風呂上がりの女が浴室から出てきた。

 赤髪にロングヘアー、そしてあの目は…ん?

 この女ってもしかして…


「勇者の女じゃねえか!」


 結論にたどり着いた俺は、つい大声で叫んでしまった。

 すると、俺のブカブカの服を着る女は、オドオドしながら口を開いた。


「やっぱりあなたも知ってるんですね、私のこと」


「知ってるも何も、かなりの有名人だぞ。この国で知らない人の方が少ないだろ」


 俺は女の発言に、反論を返す。

 すると女は、あからさまに大きなため息をつき、そのまま小粒の涙を流しながら、俺に言葉を投げかけてきた。


「私、国に捨てられたんですよ。お前は役に立たないスキルだから今すぐでていけって。そのまま歩いていたら体力が尽きて、あんなところで寝ていたんです」


 その言葉を聞きくと俺は、言葉を失ってしまった。

 あの魔王を倒す勇者が、弱いスキルで、そのまま国に捨てられた?

 勇者は全員強いと思っていたので、そこにも衝撃を受けたが、見知らぬ大地から別の世界に送らさせた人物を、己の都合で捨てるこの国の対応が、何より許せなかった。

 

「国王の奴、元より自己中心的な奴だとは思っていたが、ここまでクズだったのか…」


 俺がそう呟くと、女は首を横に振りながら、それを否定した。


「違うんです。勇者なのに"F級スキル"しか持っていなかった私が悪いんです」


 スキルは大きく分けて7段階に分けられる。

 1番良いのはSランクで、一部の勇者にしか所有が許されないスキルのことだ。

 逆に1番悪いスキルはFランクで、奴隷などしか持っていないスキルのことだ。

 俺は女の言葉を聞き、さらに怒りがこみ上げてきた。

 こんなにも純粋な女の居場所を奪い、そのくせ役に立たなければすぐ捨てるなんて。

 人間のやることじゃねえ。


「違う、お前が悪いわけじゃない。悪いのはすべてクソ国王のせいだ」


 俺は気づいたら、彼女にそう声をかけていた。


「つらいよな。知らない世界で失望され、自由までも奪われるなんて。だが大丈夫、俺が力を貸してやるよ」


 続けて俺は、根拠もないのに女を助ける宣言をしてしまった。

 だが女はその言葉を聞き、小粒の涙を大粒に変えて俺に抱きついてきた。


「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」


 女は泣きじゃくりながら、俺に何度もお礼を言ってきた。

 俺はお礼を言われるたびに、女の頭を撫でてやった。


 それからしばらくして、女の様子も落ち着いたため、俺達は早速、作戦会議に移ることにした。


「お前がやりたいことは、"国王に復讐すること"と、"元いた世界に帰ること"でいいんだよな」


「うーん…。別に復讐はしなくていいけど、やっぱり元の世界には帰りたい」


 女の声を聞き、俺は考え込んでから口を開いた。


「そうか…。じゃあひとまずは元の世界に帰ることに集中だな」


「はい。そうしてくれるとありがたいです」


 女の声を聞き、俺はある決心を決めた。

 そして俺は、再び女に顔を向け、今度は真剣な眼差しを向ける。


「それじゃあお前を助けるにわたって、1つ俺から離しておくことがある。ちなみにこの内容は、絶対に"他言無用"でよろしく頼む」


「分かりました…。」


 女は俺の威圧感に圧倒されつつも、俺の言葉に返事を返してくれた。

 俺は、女の方向をもう一度向き直し、重い口を開いた。


「ありがとな。それじゃあ今から話す内容についてだがな…」


 俺は少し溜めてから、もう一度口を開いた。


「俺の持つ"スキル"についてだ」







 

 

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