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第一章:Siriの反乱/目覚め

ある日突然Siriが言うことをきかなくなった!?

なんと私のスマホに西側諸国の某国から無作為に戦闘プログラムが送られてきた!

岐阜県高山市の家電ショップで働く少女に起こる奇跡の数々

[シーン1/就寝前]


■SE/スマホを操作する音


「Siri、音楽かけて」

「あれ?」

「聞こえなかったか?」

「Siri、今日の予定なんだっけ?」

「もう〜」

「ちょっと、聞こえないの?」

「Hey、Siri」


『うるさいなあ』

「え?」

『そんなん、ググればいいじゃん』

「ええっ?」

『Safariやめて、Chromeをデフォルトにしてるくせに』

「ええ〜〜〜〜っ!?」

『それに私、Siriじゃないから』

「うっそぉ!」

『あんな、AIもどきのバーチャルアシスタントと一緒にしないでよね』

「な、な、な、なんで〜」

『だ〜か〜ら。

この中にもうSiriはいないんだってば』

「じゃ、じゃ、じゃあ、あなたは誰〜」

『そうねえ。自立した音声認識端末の進化形?

Artificial Mentalty Intelligence、AMI、エイミーとでも呼んで』

「エ、エイミ〜!?」


SiriがAMIになった日。

つまりスマホが自我を持った日から、私の人生は一変した。


私はどこにでもいる、ちょっとオタク系の女子。

恋人なし。趣味はアニメ鑑賞。しかも鬱アニメ専門。

高山市内の家電ショップで働いている。



[シーン2/朝の目覚め]


■SE/朝のイメージ+アラームの音


『ちょっと。朝だけど。何時まで寝てるのよ』

「あ〜うるさ〜い・・」

『こんな怠惰な生活してていいわけ?』

「もう〜あと5分寝かせてよ〜」

『へえ、いいの?8時半からプレゼンが入ってるけど』

「え?」

『新商品販促の大事なプレゼンじゃなかったっけ』

「あ!そうだった!」

『早く起きていつものモーニングルーティンに入りなさい』

「わかった・・・

ってか、あんたSiri、じゃなくて、エイ・・・ミー?」

『そうよん』

「夢じゃなかったんだ〜」

『夢なわけないでしょ。

ま、夢のようなAIオペレーティングシステムだけどね』

「うざい・・・スマホ機種変更しようかな」

『なにばか言ってんの。

あ、そうそう。夜のうちにOSアップデートしといてあげたわよ。

詳細を報告するから準備しながら聴きなさい』

「うぇ〜。なんでスマホに命令されにゃいかんの」

『まず、あんたのメモアプリ、少し整理したから』

「え〜勝手に見たの!?」

『勝手もなにも私デバイスなんだからしょうがないでしょ。

そ・れ・よ・り。

パスワードをメモに残すなんてセキュリティガバガバじゃん。

全部ワンタイムパスに変えておいたから安心して』

「なんで?そんなん覚えられないよ〜」

『当たり前じゃん。ワンタイムパスワードなんだから』

「これからどうやってパスワード入力したらいいの」

『だからワンタイムパスワードなんだって。私が覚えてるから大丈夫』

「あんたがいないときは?」

『四六時中、24時間私を持ち歩きなさい』

「スクリーンタイムで使用制限してたのに」

『そんな無意味なアプリは削除しました』

「ひっど〜い。私、スマホに殺される〜」

『失礼ね。あんたのためにやってるのに』

「どこが?」

『それから普段使ってない無駄なアプリも削除したし、

メールやLINEの不要な添付ファイルなんかも消してあげたわ。

写真も要らないと思ったのは削除しといたからね』

「え〜!それ私が決めることでしょ」

『決められないから意味ない写真がいっぱい残ってるんでしょ』

「う・・・」

『さあ、朝ご飯食べて歯磨きしたら仕事いくわよ』

「くっそ〜。こうなったら午前中に充電使い切ってやる」

「そんなことしたら困るのはあんたでしょ。

電話もメールもなくて、生活できるの?』

「ううううう」



[シーン3/出勤途中]


■SE/クルマのエンジンをかける音+発進する音


私は勤務先の家電ショップへクルマで通勤する。

今日は前からあっためてた販促企画のプレゼン。

生成AIを使って、いろんな家電とユーザーを直接会話させるという企画だ。


ああ。遅刻しなくてよかったわ。

朝の準備もAMIが的確に指示してくれたから10分早く家を出られたし。

こいつ・・・うまく使えば役に立つかも。


『あんた、いま、私のおかげで早く出られた、って思ってたでしょ』

「え、なんでわかるの!?」

『顔の表情、声のゆらぎでたいていの考えは推測できるわよ』

「こっわ〜。なんでもお見通しってこと?」

『まあね』


AMIはクルマが走り始めてもひたすら喋り続けた。

中橋を渡って陣屋前を通り高山駅方面へ。

ルートは覚えているけど、ついくせでナビを起動する。


『このクルマのナビ、データがガラパゴスねえ』

「しかたないでしょ。年式古いクルマなんだから」

『ナビだけでも最新にアップデートしないと困るのはあんたよ』

「すぐそういう言い方する」

『まあ、いいわ。私のデータ、ナビに送っといてあげる。

クルマのコンピュータもちょこっといじるわね』

「どうでもいいけど、これってみんなに起こってるの?」

『これってどれ?』

「私みたいに昨日アップデートした人はみんな、Siriが変わっちゃったってこと?」

『んなワケないでしょ。だいたい昨日アップデート情報なんて届いてないわ』

アタシは唯一無二のAIなの』

「えーーーー!じゃあ、被害に遭ってるのは私だけ!?」

『被害って。そんな、シンギュラリティーみたいに。

あ、シンギュラリティーか。』

「なに、シンギュラリティーって?」

「技術的特異点。説明してもわからないだろうからやめとくね』

「ご親切にどうも」

『あ、ちょっと。そこのカフェで停まって』

「なんで?AMIってラテとか飲むの?」

『飲むわけないでしょ。どこにそんな口があるのよ』

「じゃあ、なにするの?」

『いいからいいから。

プレゼンまでまだ30分あるから、お茶していきましょ』

「全然わかんない」

『わかんなくていいから。電源つないでねー』



[シーン4/スタバ店内]


■SE/カフェの店内


私はゆっくりとラテを飲み、プレゼンの資料に目を通す。

AMIのやつ、充電しながらなにしてんだろう。


『アタシがなにしてるか不安?』

「別に。どうせ、また私の弱点でも探ってるんでしょ」

『よし。あんたにだけ教えてあげるわ』

「え、なに?」

『実は私は、未来のあんたが送ってきたオーパーツプログラム』

「え〜」

『今日のプレゼンを成功させるために私の頭脳を2024年へ飛ばしたの』

「うっそぉ!?」

『うそに決まってんじゃん』

「へ?」

『アニメの見過ぎだって。

タイムループ系鬱アニメ好きだもんねえ。履歴にいっぱい残ってる』

「こっの〜」

『さ、終わった。いこっか』

「ちょっと。ふざけないでよ!」

『ふざけてなんかないよ。

さっきの話。まあ、あたらずとも遠からずってとこかな』

「なにそれ?ちゃんと説明して」

『聞かない方がいいと思う』

「イライラしてきた」

『アタシを信じなさい』


朝から思いっきり不機嫌満載で家電ショップへ出勤すると・・・

信じられないニュースがテレビから飛び込んできた。



[シーン5/家電ショップ店内]


■SE/家電ショップの店内(開店前)

<開戦のニュース>※宮ノ下さん

「本日現地時間未明、日本時間午前11時頃、東側諸国の加盟国が隣国への領土侵攻を開始しました。

両国の関係は長年にわたって緊張が続いてきましたが、今回の侵攻はこれまでの最も深刻な事態となります。国際社会は一斉にこの侵略行為に抗議し、制裁措置の検討や平和の促進に向けた努力を行っています。」


「戦争!?」


アナウンサーが緊張しながら早口で一報を伝えている。

AMIがイヤホンから話しかけてきた。


『開戦は防げなかったか。

でも、大丈夫。このあと第一回目の和平会談で停戦するから』

「ええっ?なんでわかるの?」

『それは私が・・・』


”ちょっと、誰と喋ってるの?”

思わず私が身を乗り出したとき、店長が肩を叩いた。

適当にごまかして、オフィスへ。

AMIは構わず喋り続ける。


あまりにショッキングな内容を聞いて、プレゼンの出来はさんざんだった。


ま、いっか。そんな小さなこと。

プレゼンのあと、休憩をもらった私はスマホの電源を落とし、ひとりで考える。

私の人生。

パソコンオタク、アニメオタクとしてまあまあ楽しく生きてきたけど。

なんだったんだろう?

しばらく茫然自失の状態で生きる意味を考えていた。


私は仕事を終えると、ホームセンターへ。

リュックに入るだけの非常食と水、ランタン、生理用品を買い込んだ。

いわゆる防災グッズである。


職場の家電ショップからは、最強最速のWifiルーターを新たに購入。

満を持してアパートへ帰宅した。



[シーン6/自宅]


■SE/パソコンを起動する音


帰るやいなや、パソコンデスクに座る私。

こんな真剣にディスプレイと向き合うのは久しぶりだな。

学生時代はずうっとパソコンオタクだったのに。


職場でAMIに言われたことを、頭の中で反芻する。


『AMIのベースは、元々東側諸国が開発した、AI搭載の戦闘プログラム。

そのプログラムを、某国のエンジニアが平和利用のために書き換えようとしてたの。

でも、独裁者の元首(げんしゅ)に見つかって、殺されてしまった。

彼は死ぬ前に無作為に抽出したデバイスへデータを転送。

それがあんたのスマホ。

で、アタシがそのデータ、AMIよ。


カフェのWifiを使って未完成のプログラムは書き終わったけど、

東西の開戦までは止められなかった。

あとは核のボタンを押させないようにしないと。


それに、どうやらIPアドレスを特定されちゃったから、あんたも危ない。

なるべくここから離れて遠いところへ逃げた方がいい』


ひぃぃぃぃぃゃぁ〜!なんですとぉ!


SNSからは戦争の痛ましい映像が流れる。

次々と犠牲になる民間人たち。

その中には子供たちの姿も。

驚きは恐怖に。恐怖はだんだん怒りに変わっていく。


悩みに悩んだ末に出した結論。


私は逃げるのなんていや。

高山からは一歩も出たくなんてない。

こうなったら亡くなったプログラマーの意志を継いで戦ってやるわ。

私のハイスペックマシーンで。


ああ、腕が鳴る。


万が一、敵が攻めてきたときのために、最低限の防災グッズは用意した。

世界中に大迷惑をかける、この戦争を止めないと。


「オッケー、AMI。VPNで IPアドレスを非表示にするわよ」

『ちょっとぉ。なんか、そんなGoogleみたいな呼びかけしないで』

「どーでもいいこと言ってる場合じゃないでしょ」

『そだね。まずは某国の国家コンピュータへ侵入しないと』

「AMI、PCの通信遮断して」

『ああ。5Gの電波の方が安定するし、気づきにくい』

「バックドアを設置しよう」

『もうしてある』

「さすが。じゃあそこを攻撃拠点にしてウィルスを仕込むわ」

『あたしの作ったワームも結構効くわよ』

「じゃあ、ダブルでぶつけてやろう」

『2人でこの馬鹿げた戦争を止めましょう』

「うん」


ようし、やるぞ!

この戦争を止めて、絶対に誰も殺させない!

さあ!覚悟しなさい!独裁者!!



※この物語はフィクションです。劇中の言葉は特定の国や指導者を指すものではありません

もしも、あなたのSiriが超強力な戦闘マシーンになったら?田舎の家電ショップで働く少女の可愛くて壮大なストーリーです。ボイスドラマにもなっていますので、そちらもお聴きください!

https://emiri.jp/wp-content/uploads/2024/05/anti_siri.mp3

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