5話 初依頼達成
私は落ち込みながらギル君の後ろについていった。
「はあ、もうほんとアイリスお前いつまで気にしてんだよ。」
「だって…」
「俺はもう気にしてないから、ほら元気出せよ。な?」
私の落ち込み具合にむしろギル君の方が焦り始めている。
「誰にだって間違えはあるもんさ。それにアイリスの魔法くらいじゃ俺に当てることはできねえからさ。」
「うー」
その言葉に私の落ち込みはさらに加速する。
ギル君が私を励まそうと苦心している間にいつしか私たちは街のそばまで帰ってきていた。
「ほらアイリスもうすぐ着くぞ。ほんといつまで落ち込んでんだ。お前らしくないぞ?」
「だって…ギル君を傷つけたかもしれないと思うと私。」
確かにいつもの私ならもうすでに元に戻っているだろう。
しかし、今回のことは私にとってあまりにショックだったのだ。
「はぁ、てい!」
「痛っ!ギル君何するの?」
私がうじうじとそんなことを考え続けていると、突然ギル君が私の頭に手刀を落としてきた。その行動に思わず私はギル君を涙目になりながら見つめた。
「お前がいつまでも落ち込んでいるからだ。俺が大丈夫って言ってんだから大丈夫なんだよ。それに俺はいつも通りのお前がいいんだ。今のお前はなんというか、その、落ち着かない。」
私はギル君のその優しさにとてもうれしくなった。
「ギル君ごめんね。」
「だからお前は…」
「それと、ありがとね。」
「っ!、おうよ!」
私のその言葉にギル君は笑顔でそう返してくれた。
「お、嬢ちゃん大丈夫だったかい?と、ギルベルトのボウズも一緒じゃねえか。どうしたんだ?」
「はい、依頼も無事に終わりました。ギル君は私と同じ孤児院に住んでるんです。」
「そうだったのかい。そんじゃ、ギルベルトのボウズも嬢ちゃんのことしっかりと守ってやれよ。」
「おうよ、任せとけ。それじゃおっちゃんまたな。」
そう言って私たちは街に入り冒険者ギルドに向かった。
「すごい混んでるわね。」
冒険者ギルドに着くと受付には長蛇の列が出来ていた。
「このくらいの時間になると依頼帰りの冒険者が重なるからかなり混むんだ。とりあえず並ぶか。」
私たちはいくつかある列の中でもナンシーさんが受付をしている列に並んだ。
「ねえギル君これどのくらいかかるの?私夕食作らないといけないんだけど…」
「あ〜、三十分はかかるんじゃないか?」
「そうなんだ。一時間かからないなら間に合いそうかな。」
この世界の時間は一日24時間で、一月が30日、それが12ヶ月あり360日間で一年となる。
ちなみに平民の間には時計はあまり広まっていないが6時から20時の間の二時間毎に街の鐘が時間分鳴るため、それを頼りに一日を送っている。
ギル君が言った通り三十分ほどで私たちの順番が回ってきた。
「あら、アイリスさん採取できました?」
「はい、あのどこに持ってったらいいですか?」
「このままここで良いですよ。」
「わかりました。ギル君置いてもらって良い?」
私が確認してもらおうと思っていると、ギル君が
「ここで見るのはやめた方がいいと思うぞ。」
と、ギル君が言い出した。
「ギル君なんで?」
「いやこれかなりの量あるぞ。時間かかると思うんだが…」
「大丈夫ですよ多少多いくらい。」
「そうか…それならいいんだが。」
そう言ってギル君はカウンターの上に袋を置いた。
するとそれを見たナンシーさんの顔が引き攣る。
その場になんとも言えない沈黙がおりた。
「一応確認ですけど…これ中身全部日向草ですか?」
「いえ、他にもいろんな種類の薬草が入ってますよ。」
その言葉とともに私たちのの近くだけさらに重圧が増した。
「すみません。無理ですね。…少しお待ちください人を呼んできます。」
そういうと、ナンシーさんは奥に人を呼びに行ってしまった。
その姿を横目に私は思わずギル君に尋ねた。
「私が持ってきたのってそんなに多かったの?」
「まぁ、多いな。いや、はっきり言うと異常だな。それも今日冒険者になったばかりの初心者が、だからな。そりゃあんな感じにもなるだろ。」
異常らしい…私異常らしい。
私がその言葉に打ちひしがれていると、ナンシーさんが職員を二人連れて帰ってきた。
「すみません、お待たせしました。この二人に袋を渡してください。全て確認するのにお時間いただきますが大丈夫ですか?明日でも大丈夫ですがどうされますか?」
「それでは明日お願いします。」
「わかりました。明日またお願いします。朝は依頼を受ける冒険者が多くいるので昼の前後で来ていただけるとありがたいです。」
「わかりました。ギル君はどうする?」
「俺は素材出して達成報告するぞ。」
「そう。なら私は先に帰るわね。」
そう言って私は先に孤児院まで帰った。
私は孤児院にたどり着くと急いでフィーと一緒に調理台の前に立った。
「こんな大量の山菜どうしたの?」
「ちょっとね。薬草を採りに行くついでにね。」
「薬草?ふ〜ん、アイリス冒険者にでもなったの?」
「そうよ、今日初依頼やってきたとこ。」
「それでどうだったの?依頼達成できた?」
「多分達成してると思う。」
「多分?多分ってどういうこと?」
「あ〜それはね。」
私はフィーにギルドであったことを説明した。
「はは、それで多分だったのね。」
「そんなに多かったのかしら?」
「そもそもアイリス、薬草一株一株は軽いじゃない。それをそんな量持って行ったら異常と言われても仕方ないと思うわ。」
「異常…異常って、フィーまで。」
「あはは、ごめんごめん。別に悪い意味じゃないのよ。ただあり得ないってだけで。」
「それなら…いいけど。」
「さ、それより夕飯作ってしまわないと。」
私たちは急いで夕飯を作っていった。
途中お腹を空かせたエミリーがつまみ食いをしに来たが下処理途中の山菜を食べて涙目で逃げていった。
「そうだ、アイリス今度また算学教えてよ。」
私が部屋に戻ろうとしているとフィーがそう言ってきた。
「いいわよ。明日でも、昼少し出ないといけないけどそれ以外の時間なら。」
「なら明日お願いしようかな。それじゃおやすみアイリス。」
「おやすみなさいフィー。また明日ね。」
そうして私は眠りについた。
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