4話 初めての依頼と初戦闘?
ギルドを出た私はそのまま大通りを通って街の外に出るために門に向かった。
「そういえばこの世界の外ってどんなところなのかしら。」
ふと考えてみると、私は街の外に出たことがなかった。孤児院に来てからというもの私の生活は街の中で完結していた。
「お嬢ちゃん一人かい?ここから先は街の外だ危ないから戻りなさい。」
と、私が外に出ようとすると門を守っている衛兵が話しかけてきた。
「大丈夫ですよ。これから冒険者としての初依頼に行くんです。それに私は攻撃魔法も使えますし。」
「そうか、それなら多少は安心できるが…それでもあまり街から離れないようにな。それとあまり遅くなると魔物もより出没しやすくなるからな気をつけろよ。それじゃあギルド証を確認するから出してくれ。」
私は言われた通りにギルドカードを提示する。
「通ってもいいが危険だと思ったらすぐに逃げて来い。」
「わかりました、ありがとうございます。」
そうして私は初めて街の外に足を踏み出した。
街の外に出るとそこは一面の草原だった。そこに一本の整備された道が続いており、少し遠くには森が、その奥には山が続いている。
草原を吹く風がとても心地よい。
「街の外ってこんなに気持ちの良いところだったんだ。」
私は思いっきり息を吸い込んで草原を道に沿って歩いていった。
「ここら辺でいいかな?」
街からは少し離れた丘の上まで歩いて行った。そこにさまざまな色の花が咲いており日向草も咲いているように思われた。
私は周囲に日向草がないかを見て回った。
「う〜ん、太陽の方向に向いてる植物?どれも同じように見えるんだけど。」
単に黄色い花の咲いた植物と言われてもパッと見ただけでも何種類も存在する。それに草原では風が吹いているから草が揺れて太陽の方向を向いているものがあるのかもわからない。
「これ…かしら?」
とりあえず私は手近にあった植物を一本引き向いた。
「やっぱりよくわからない。スキル『全能視』(物品鑑定)」
・直向草
<周りの植物に負けないように懸命に生きようとしている花ただひたすら空に向かってその身を伸ばしている。軽度の精神安定作用を持つ>
…なんか、ごめんなさい。
とりあず片っ端から抜いていくのはやめよう。
「どうやって探そうかしら。一目でわかる方法があればいいんだけどな。」
一目でわかる方法、一目で…眼?
「あぁ、全能視で鑑定していけばいいんだ。とりあえず『全能視』」
その状態で黄色の花を中心に見ていくと、
「お、あった。え、なにこの花風で揺れてない。もしかして、ひたすら太陽の方を向いてるってそういう意味⁉︎」
見つけた日向草はほとんど風に揺れることもなく不自然なほど真っ直ぐ太陽の方向を向いていた。
・日向草
<ひたすらに太陽の方向を向いている植物。その太陽のエネルギーを持った身体は弱い風程度ではびくともしない。
低級ポーションなどの魔法薬や様々な薬として用いられる>
「確か、これを十株だったわよね。せっかくだし他に良さそうなのも回収していこうかしら。」
私は神眼を駆使してさなざまな植物を持ってきた袋の中に集めていった。
「結構採れたわね。」
気づくと採集を初めてそれなりの時間が経ち、丘からもそれていた。
持ってきた袋は既に一杯になっている。
「これ絶対重いわよね…持っていけるかしら。」
後先考えずに集めまくった自分のアホさに少し泣けてくる。
「仕方ない、仕方ないのこれは…だって楽しかったんだもの。それに夕食に使えそうな野草も取れたし…あ、今日の夕食何にしようかな。」
そんなふうに軽く現実逃避をしていると、突然ガサガサと明らかに風とは違う音が近くの草むらから聞こえた。
「まさか魔物‼︎離れないと、でも袋が…」
私が迷っている間にも音はだんだんと近づいてくる。
「違う逃げるんじゃなくて倒せばいいんだ。ここら辺にいるのはスライムとかゴブリンとかの弱い魔物だけだったはず。」
私は相手を倒す覚悟を決めて、その草むらから距離をとった。
「来るなら来なさい。」
私が身構えていると音はさらに近づき、草むらから人型の影が飛び出した。位置取りをミスしてしまい逆光になってしまっていてよく見えない。
「人型!きっとゴブリンね。」
私はしっかりと倒すために敵に狙いを定める。
「炎よ、我が敵を燃やし尽くせ『ファイヤーボール』」
「‼︎あぶな、」
私が放った魔法はギリギリだったが躱されてしまった。
「避けられた!次は外さない。炎よ我が敵を穿て『ファイヤーショット』」
「ひえ、だから危ないってアイリス。」
カキン、
今度は剣で弾かれてしまった。
「次こそは、ん?アイリス?」
今、敵のゴブリンから名前を呼ばれた気がする…
「ほんと何すんだよアイリス。」
というかこの声聞き覚えがある。
「もしかして…ギル君?」
「そうだよ俺だよ。魔法撃って来んなよ。」
「もしかして私が今まで攻撃していたのも…」
「そうだよ俺だよ。」
私がゴブリンだと思って魔法を撃っていた相手は同じ孤児院で暮らすギル君だったのだ。
「ご、ごめんなさい。私草むらから魔物が飛び出してくるんだと思って人型だからゴブリンだと…ごめんなさい、ギル君ごめんなさい。」
もしもギル君が避けなかったら、私はギル君に怪我をさせるところだったのだ。
私が自分のやったことに焦って泣きそうになっていると、ギル君が
「ほんとお前は昔からそうだよな。しっかりしてるように見えてちょっと抜けてる。思い込みが激しくて…だけど優しくて頼りになるどうしても憎めないやつだよな。ほんと…」
「ギルぐんごべんね、ごめんね。」
私が本格的に泣き始めていると、
「ほら、アイリスの方は終わったのか?」
ギル君はまるで先ほどのことを気にしていないかのように私に話しかけてきた。
「うん…」
そう言って私は控えめに袋の方を指差す。
「採り過ぎて持てなくなってるの。」
「ほんとにお前は…仕方ないほら帰るぞ。」
そう言ってギル君は私の袋を持って街のほうに歩いていった。
私がその様子を立ち尽くして見ていると、
「何してんだ?帰るぞ。」
ギル君はそう言って私の手を引いていった。
アイリスのステータスを見た方でアイテムボックスについて疑問を持った方がいるかもしれませんがLV.1では小さな箱程度しか容量がないため薬草を詰められず袋に入れています。紛らわしくてすみません。
読んでいただきありがとうございました。
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