2話 孤児院での生活
「こら、エミィ走ると危ないよ。」
「ごめんなさいアイリス。」
「わかればよろしい。」
そういうとエミリーはまた外に走っていってしまった。
「もう、あの子は本当にもう。」
「あはは、あの子は懲りないね〜」
私と一緒に朝食の片付けをしているフィーがそう言う。
「本当に一回痛い目みないとわからないのかしら?」
「こらこらそう言わないの子供は元気が一番なんだから。」
「あんたがそう言うこと言う?」
「はは、こりゃ手厳しい。」
彼女は今でこそこうして姉的存在としているが少し前までここで1番の問題児だったのだ。
「じゃ、私部屋に戻るから。」
「そう、また後でねフィー。」
そういえば自己紹介が遅れたわね私はアイリス、フィーと同い年の八歳よ。元の名前は、まあいいわ。
私は別の世界から転生して六歳の時にその事を思い出したの。
今は、マルクス王国のカメル伯爵領フリルの街にあるフリージア教会の孤児院に置いてもらっている。私が二歳くらいの時にここに来たらしいからこっちでの両親のことはよくわからない。
だけど私は今とても楽しく生きているわ。
あ、そろそろ買い物に行かないといけないわ。
「市場まで行ってきます。」
と、私が声をかけ扉を出ようとすると、
「よお、アイリス今から出るのか?一緒に行こうぜ。」
と、ギル君が呼びかけてきた。
「ええ、買い物にね。ギル君は仕事?」
「おうよ、また肉でも狩って来てやるぜ。」
そんな事を言いながら私たちは市場まで歩いていく、
「それじゃ、私はここらへんで買い物するから。」
「そうか今日もお前の目利きには期待しているからな。」
「心配しないでよ。フィーの時みたいな惨事は起こらないよう気をつけるから。じゃ、ギル君も頑張ってね。」
そうして私は市場のいつものお店に行った。
「あらアイリスちゃん今日は良いカボチャが入ってるよ。」
「じゃあそれでスープでも作ろうかしら。あとはこのじゃがいももください。」
「まいどありがとね。これも持っていきな。」
「ありがとうございます、また来ますね。」
私が買い出しを終えて孤児院に帰ると、
「アイリス〜魔法教えて〜」
と珍しいことにのんびり屋のリーンが私に行ってきた。
「う〜ん、いいけど荷物直してくるからちょっと待っててね。」
「わかった〜手伝う〜」
「そうありがとね。じゃあこの野菜とか炊事場に置いてきて」
「は〜い」
私が荷物を置いて戻ってくるとリーンがエミリーと一緒に待っていた。
「それで突然どうしたの?」
「私たちも簡単な魔法くらい使えたらみんなの役に立てるかなって思って〜」
「そう、ありがとね。エミィも?」
「そうなの私も頑張るの!」
「わかったわ、二人はどんな魔法を覚えたいの?」
「私は水とか風とか〜」
「私は火、火の魔法覚えたい。」
説明するとこの世界の人々は大なり小なり一つぐらいは魔法の才能を持っている。
「じゃあ、とりあえずお手本となる魔法を見せるわね。まずは火から。炎よ、我が敵を燃やせ『ファイヤーボール』、次に水ね。流水よ、我が敵を洗い流せ『ウォーターショット』、最後に風ね。風よ、我が思いのままに吹け『エアーコントロール』」
下手に『着火』の魔法を見せたりするより攻撃魔法を見せた方がわかりやすくイメージも持ちやすいだろう。風だけは使えないけど…まあ、二人ともすごく目をキラキラさせてるからいっか。
「それじゃあ魔法の授業を始めます。」
「よろしくお願いするのです先生!」
「まず、魔法を使うには呪文と魔法の名前の詠唱が必要になります。」
「それだけでいいの〜?」
「慣れればむしろ詠唱もいらないわ。とても難しいことだけどね。それに魔法名は決まってるけど呪文の詠唱は魔法のイメージを形にするためのものだから決まっていないのよ。ちなみに最初はちゃんと魔法のイメージを持つことが大切になるわ。」
「どんなことをイメージしたらいいのです?」
「それはね使いたい属性を…火なら燃える炎を水なら流れる水を風なら…う〜ん、風はイメージしにくいからやめた方がいいと思うわ見えないし。まあそんな感じね。やってみて。」
二人がイメージを固めている間に私は二人の才能を視る。
固有スキル<全能視>(才能鑑定)
私が転生の時に神様からオマケとして貰った恩恵は、神眼のスキルで、まだよくわかってないけど多分○○眼と付くスキルの複合スキルなのではないかと私は思っている。
[エミリー]
・火魔法 才能LV.7 適正C−
・水魔法 才能LV.4 適正E+
・聖魔法 才能LV.2 適正E
技能スキル…
[リーン]
・火魔法 才能LV.4 適正E
・水魔法 才能LV.4 適正D
・風魔法 才能LV.5 適正D+
・土魔法 才能LV.3 適正E
戦闘スキル…
(えっ、二人ともすごい優秀なんですけど…確か平均的な才能LVって2で適正値はEぐらいだった気がするんだけど…)
この世界のスキルや魔法は才能でLV.が決まっており、そのレベルを越えるとレベルか上がりにくくなったりし、適正によって習熟速度や同じLV.での威力や精度などが変わるのだ。
(特にエミリー火魔法LV.7って…それに聖魔法も持ってるし、これ確かレアスキルだったような。リーンも基本属性全部持ってる上に平均を全て上回ってるし…)
私は少し心配になり、自分のステータスを確認した。
「ステータスチェック」
名前: アイリス
年齢: 8歳
種族: 人間
レベル: 2
・HP : 120/120
・MP : 130/130
・筋力 : 28
・耐久 : 26
・俊敏 : 36
・魔力 : 48
・器用 : 38
・運 : 52
<所持スキル>
[魔法スキル]
・火魔法 LV.2 適正A+
・水魔法 LV.1 適正B
・風魔法 LV.1 適正B+
・聖魔法 LV.2 適正S−
[戦闘スキル]
[技能スキル]
・料理 LV.1 適正C+
・清掃 LV.1 適正E+
・交渉 LV.1 適正D+
・裁縫 LV.1 適正D−
<ギフト>
・アイテムボックス LV.1 適正EX
・全能視 LV.− 適正EX
<加護>
・異世界の神の加護
あ、全然大丈夫だ。むしろ私の方がおかしいじゃん。
安心感を取り戻した私は講義を続ける。
「どうイメージできた?」
「難しいのです。」
「私は出来た〜風が吹いてる気がする〜」
「ねぇリーン…風魔法やってるの?」
「そうだよ〜」
「そ、そうなのね。」
私は二人の才能に驚きながらも魔法についての講義を続ける。
「それじゃあエミィ、今度は蝋燭の火をイメージしてみて。リーンは魔力循環ね。さっきのイメージを持ったまま身体の中を風が回るように意識して。」
「むむむ…出来たのです。」
「風がぐるぐるしてる〜」
「エミィは身体に熱が巡るイメージしてね。リーンは手から風が吹くイメージをして、」
「どういうことです?」
「風が吹く〜?」
「イメージができたらこう唱えてね。風よ、吹き荒れよ。『ウィンド』」
「風よ、吹き荒れろ〜『ウィンド』〜」
「リーンすごいのです。」
「リーンは大丈夫そうね。その感覚を忘れないようにして練習すれば魔法のスキルは覚えられるわ。たまに『ステータスチェック』で確認してみてね。エミィも少しずつ練習していけば良いわ。エミィの才能もすごいから。」
まさかこんな短時間でリーンが魔法を形にするとは、本当に彼女の才能が恐ろしいわ。私は魔法を覚えるまで一月もかかってしまったのに。
逆にエミィがいつも通りで安心してしまう。
そうして私が夕食の準備をしなければならない時間まで二人の練習を見ていると、エミィは魔力の循環を何となく感じられるまでに(多分感じられていない)リーンはなんと風魔法のスキルを1日で獲得してしまった。
「どうしたの?そんな嬉しそうに」
私が夕食を作っているとフィーがそう聞いてきた。
「いやね、さっきまでエミィとリーンに魔法を教えていたんだけど二人ともすごいのよ。仮に私たちがいなくなったとしても、彼女たちが孤児院を出たとしてももう大丈夫だなと思うと…あの子たちの成長がうれしくてね。」
「何お婆さんみたいなこと言ってるの。あんたは十歳まではここにいるつもりでしょ?」
「そうなんだけどね。人生何があるかわからないから。」
「まあ…そうだね。確かに自分で生きるすべを持つことは良いことだね。」
「ねぇ、フィー勉強は進んでるの?試験もうすぐでしょ?」
「もちろんよ。絶対合格して領都の学舎に通うんだから。」
「そう…頑張ってね。あぁ〜そう考えると寂しくなるわね。そうなったら同年代はギル君だけか。」
「もう、そう言わないでよ。ちょくちょく帰ってくるから。」
「わかってるわよ。私も合格するよう祈ってるから。」
その後孤児院の皆で夕食を食べ私たちはベットへと入る。
「将来…か。」
私には家族に会うという目標がある。だけどそれはとても難しいことだ。
この世界でどのように生まれてどのように生きているかもわからない。
それにもし会えたとしてその後はどうするのか。
私には特に家族に会うということ以外に夢や目標がない。
フィーは学舎に入り勉強に励むという目標。
ギル君は冒険者として身を立てるという夢がある。
エミィたちはわからないけど、きっと何か大きな夢を持つだろう。
みんな何かしらを持っている。
その時私は何をしているのだろうか、家族を捜して世界中を彷徨っているのだろうか?
皆が何かをなそうとしている時に私は一人なのだろうか。
そうだ、どうせ世界中を旅するのなら自由な冒険者にでもなろうかしら。
それも良いかもしれないわね。
まぁ…今考えても…仕方ないことだけど。
そんな事を一人考えていると、いつしか私は眠ってしまっていた。
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誤字報告なども受け付けているため、おかしな点などがあれば至らない作者に教えていただけると助かります。