15話 決意
「って、言ったはいいけど…どうしましょうか?」
「私は逃げきれそうにないわよ。」
そうこうしている内にも敵は迫ってきている。
「そうよね…ねぇアイリス少しは動ける?」
「まぁ、少しならね。」
「そう。なら少しでも遠くまで離れましょうか。」
私たちは亀の歩みのようにノロノロとスライムの群れから距離を取った。
「アイリスここで止まるわよ。」
「え、私まだ動けるわよ。少しでも離れましょうよ。」
「いや、ここまででいいの。どちらにしろ街までは逃げ切れそうにないんだから殲滅するしかないのよ。」
「...そう。分かったわ。フィー何か作戦はある?」
「まずここで少しでも時間を稼ぐ、ここなら坂の上だから狙いやすいし敵の動きも遅くなるわ。そしてギルベルトが動けるようになったら街まで退く。それからアイリス、残りのテルミスの実全部渡して。」
「ええ、はいこれ。それで私はどうしたらいい?」
「とりあえずアイリスは少しでもマナを回復させて。私だけじゃ捌ききれなくなったら戦闘に加わってもらうから。それとこれ飲んどいて。」
「?、フィーこれ何?」
フィーが渡してきたのは少し赤みがかった液体の入ったガラス製の瓶だ。
「それマナの回復薬、回復が早くなるってナンシーさんが言ってたわ。」
・マナポーション
<飲むと体内のマナを少量回復させる。またマナの回復効率を向上させる>
「なんでこんなの持ってるの?」
「何かあった時のためにね。昔から言うでしょ?命あっての物種だって。」
「そうね。...ありがたく使わせてもらうわね。」
「えぇ、けどそれ高かったんだからね。それ使ったんだからちゃんと孤児院に帰るわよ。みんなでね。」
「もちろん。」
私は絶対に生きて帰るという決意と共にマナポーションを飲み干した。
「そろそろ行かないといけないわね。ギルベルトはまだ起きそうにない?」
「まだ寝てるわ。」
「そう。ならやっぱりやるしかないわね。」
「...フィー、少しの間お願いね私もすぐ行くから。」
「早くきてよ。流石にあの数は疲れちゃうから。」
フィーはそう笑って一人歩いて行った。
「私は今私にできることを。」
フィーが時間を稼いでくれてる間にギル君を起こして逃げる準備をしなければならない。
「ギル君そろそろ起きて、お願いだから。」
しかしギルベルトはうめくだけでまだ目を覚ます様子はなかった。
少しでも時間を稼ぐ。これに作戦は必要ない。ただ敵を後ろに通すことなく殲滅するだけだ。
フィーレシアは二人を守るためならばここで朽ちる覚悟もしていた。
「でもこれはちょっとな...」
それもそうだ。彼女が向かう先には盆地中のスライムが集結していた。まるでそこが色とりどりの水面であるかのように。
「はぁ、まあそれでもやるしかないか。今、私にしか出来ないことを。」
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「なぁ、ウィル感じたか?」
「あぁとてつもないマナの波動だ。」
「そうですね。個としてのマナの量はそうでもないですがマナの密度が段違いですね。」
「俺やウィルだけじゃなくオリヴィエまでそういうなら...なぁ、行ってみねえか。」
「はぁ、またあなたの悪い癖が出てますよ。...まあ今回は私も少し気になりますが。」
「北東方向か、道は少し逸れることになるが進行ルートには程近いし少しの寄り道として考えれば、大した誤差にならないだろう。」
「決まりですね。それでは休息は終わりにして参りましょうか。」
「おう、どんな強者と出逢えるのか...あぁ楽しみで仕方がない。」
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「風の刃よ、切り裂け『エアカッター』、炎よ、燃え上がれ『ファイアショット』」
(キリがないわね。それにこのままじゃ追い付かなくなる。)
既に戦闘開始から長時間が経過しており、疲労によって集中力も低下している。残りのマナの量も心許ない。
(っ!危なかった。)
既に敵の射程圏内に入ってしまっている。
(この調子じゃすぐに限界が来てしまう。まだ力が残ってる今のうちに一か八かで。)
「『ウィールウィンド』。けど、時間が足りない。一体どうすれば...」
しかし悩んでいる時間はない。
(次から次に。あっ、)
私は疲労からテルミスの実を落としてしまった。
(こんな時に...。っ!時間を稼ぐだけなら残りの実全部使えば。)
私は残っているテルミスの実を全て放り投げた。
「熱く燃えたぎれ『ファイアボール』」
残りの全てを燃やした炎は一際大きくスライムの進撃を押しとどめることが出来た。
「我が望むは破滅の刃、荒れ狂う見えざる剣よ。その力を持ってして怒れる爪痕を刻み込め。『ルインズブラスター』」
破滅の風は全てを呑み込んだ。ように見えた。
しかし、風が晴れた先には大きく数を減らしてはいたが未だにスライムの大群がいた。
「はは、だめ..だったか。ごめんねアイリス、ギルベルト私は一緒に帰れそうもないや。」
私は今の一撃で魔力の殆どを使い果たしてしまった。
「だけど二人が無事に逃げられたら...いいな。」
もう力も気力も残っていない。私はもう迫り来るスライムの姿を見ることしか出来なかった。
「炎よ渦巻け『スワイルバーニング』」
その魔法の詠唱とともに私の眼前に迫っていたスライムたちが突然燃え上がった。
私は思わず振り返った。
「フィー無事?」
「フィーレシア無事か?」
「もう。遅いよ二人とも。」
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