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ショートショート10月〜3回目

サギ

作者: たかさば

 毎朝ウォーキングに行く大きな公園には、アオサギがいる。


 群れでいるのではなく、単体だ。

 公園はわりと繁華街に位置するので、団体で住むには適さないのだろう。


 隣接する幹線道路の反対側にはのどかな田畑が広がっており、横には公園内の池につながる細い川が流れている。

 おそらく、推測ではあるが…、一級河川を巡るうちに公園にたどり着き、住処にしたと思われる。公園内には釣り堀があるので、食料となる魚がたくさんいるのだ。


 アオサギは、毎日見かけるわけでは無い。

 鴨やカラス、鳩のようにあちらこちらに姿を見せるようなありふれた存在ではないのだ。


 公園内のグリーンと、濁った池の水に映える、ホワイトグレーの躰。

 活気のないくすんだ光景を背負い、首をすくめる姿。

 華やかさの消えゆく、秋の風景を彩る、黄色いくちばし。


「あ、いる!」


 見かけることができた日は、少し…いや、かなりテンションが上がる。


 息子とともに橋の上から池の畔で佇む様子を楽しみ、たまに写真に収めることもある。


「今日は近くで撮れた!」


 ニコニコしながら家に帰り、家族フォトアルバムに追加するのが楽しみになっているのだ。



 毎朝ウォーキングに行く大きな公園には、シロサギがいる。

 真っ白なのでシロサギと呼んでいるが、おそらくアマサギか、チュウサギと思われる。


 群れでいるのではなく、単体だ。


 おそらく、推測ではあるが、アオサギ同様一級河川を巡るうちに公園内の池にたどり着き、住処にしたのだろう。


 シロサギも、毎日見かけるわけでは無い。

 アオサギ同様、公園内ではわりとレアな部類に入る存在なのだ。


 公園内のグリーンと、濁った池の水に映える、真っ白な躰。

 活気のないくすんだ背景に浮かび上がる、スマートなフォルム。

 華やかさの消えゆく、寂しげな風景に添えられる、黄色いくちばし。


「あ、いる!」


 見かけることができた日は、少し…いや、かなりテンションが上がる。


 橋の上から池の畔で佇む様子を楽しみ、たまに写真に収めることもある。


「今日は良いポーズが撮れた!」


 大喜びで家に帰り、家族フォトアルバムに追加すると実に満足感にひたれるのだ。



 アオサギも、シロサギも、いつも単体で公園に佇んでいるが、たまにものすごい場所に現れることがある。


 例えば、釣り堀の釣り人の横。

 例えば、公園のモニュメントのベンチ。

 例えば、駐車場のど真ん中。


 団体行動しないからこそできる、自由な振る舞い。

 団体でないから許されている、人との距離感。


 単体だからこそできる、大胆な振る舞い。

 単体だから許されている、人との接近。


 のどかな朝の公園で、思いがけないサプライズを楽しめるのがありがたい。

 平凡な毎日を特別な日にしてくれるのがありがたい。


 いつか、この感謝の気持ちを伝えたいものだ……。



 そんなふうに思った日もありました、ええ確かにありましたよ?!



 げ、げー!

 ガーッ!



 たまたまちょっとたまにはええと朝ごはんを公園で食べようじゃないかとですね?!焼き立てパンに寄ってパン焼いたばかりの買って休憩所のテーブルにイス置いて座り!はわわ、ら、ラジオ体操やってたら!



 まさかのサギ連中の凸、キタ━━━━(゜∀゜;)━━━━!!



 池の向こうから飛んできたアオサギが!ウッドデッキに仁王立ち!

 ヤバい、ほとりにいたシロサギが羽をバタつかせて…こっちにくる!


「ちょ!なんかめっちゃでかい!つかこわい!」

「狙われている!」


 ダメだ!

 団体行動しないフリーダムな奴らは、危険を顧みずに貪欲にー!

 いやもしかしたらなにか危険を感じてこっちに避難してきた可能性も!


 まずい、私はサギ一族の皆さんの顔色をうかがう知識を持ち合わせていない、怒ってんだかエサをねだってんだか遊びに誘ってんだかからかってんだか食糧認定されてんだか敵とみなされてんだか助けを求めてんだか全然見分けが…つかん!


 表情が読めないというのは、未知との遭遇というのは、実に恐怖を呼びましてですね!


 野生の恐ろしさを知った貧弱な親子は、へっぴり腰で逃げ出すこととなりましてですね。


 今では、サギたちを恐る恐る確認しながら、そのお姿を遠目に眺めるばかりになりましたという、お話です……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 野生の闘争心 [気になる点] これですよ。奪ってナンボ。生存できねえ [一言] 逃走安定
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