嗚呼、私のウィザードさま。02-4
マリアがレイを見る レイはすっかり寝入っている マリアが苦笑してから スクリーンへ向き直り 間を置いて思う
(…あぁ 駄目だ… もうこれ以上は我慢出来ない… それに もう… 貴方だって そんな無理しないで… …ウィザード様に お願いしたら 良いのに…)
マリアが居眠りをする スクリーンの中では 主人公が必死に戦っている
映画館 外
新人1が言う
「映画 凄っく良かったですね~!私、泣いちゃいましたぁ!」
マリアが苦笑して言う
「あ… う、うん… そうだね?」
マリアが思う
(…で、結局 最後はどうなったんだろう…?途中から寝ちゃって 気が付いたらエンドロールで…)
フランツが言う
「まぁ 彼女の為に必死になるのは男なら当然かもしれませんが 彼女が最後まで信じて待って居てくれた と言う所は とても良かったですね?」
マリアが言う
「そ、そうですね…」
新人1が言う
「私だって 絶対待ってるぅ!」
マリアが思う
(あぁ そうなんだ?彼女は待っていたのね?それで… あの彼氏は どうなったんだろう…?)
新人1がマリアへ向いて言う
「やっぱり 映画って良いですよね~!?マリア先輩!」
マリアが言う
「え、え~と… そ、そうだね?たまには…」
フランツが苦笑して言う
「魔法使いさんは初めての映画は残念ながら 楽しめ… 無かったようですね?」
レイが言う
「ああ… 途中までは見てたけどさ?あんなに必死になって 世界を守ろうと頑張るなら 俺が助けてやるよ!…って 思ったら もう 寝てたな?」
マリアが苦笑して思う
(そうなのよね… 私も 同じ様な感じで…)
フランツが言う
「では 魔法使いさんの魔法でなら あの怪物の群れも 何とかなると?」
レイが言う
「あんなの 一発だな?」
マリアが笑いを隠す フランツが苦笑して言う
「あぁ… そんなでは とても 映画は楽しめませんね?」
レイが言う
「一応 経験になったらさ?礼は言っておいてやるよ」
フランツが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「…そうですか では、お誘いして 良かったです」
レイが言う
「ああ」
マリアが微笑して思う
(ウィザード様が そう言うのなら 私も… 良かった…)
マリアが微笑して言う
「お誘い 有難う御座いました …私も ちょっとだけ 寝ちゃって …ごめんなさい」
マリアが苦笑する フランツが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「いえ こちらこそ 無理にお誘いしましたので お礼を言って頂けるのなら 嬉しいですよ」
マリアが微笑した後 言う
「それでは 今度こそ」
新人1が微笑する フランツが言う
「それでしたら お別れの前に」
マリアが疑問して言う
「え?」
フランツが言う
「お別れが 映画の中とは言え 怪物の群れでは 印象が悪いではありませんか?」
マリアが言う
「は、はい?」
フランツが時計を見てから言う
「そう… ですね ディナーには 少々時間が早いので… あぁ そうです それこそ 綺麗な物を 見に行きませんか?」
マリアが言う
「でも…」
フランツが言う
「今から向かえば 丁度 良い時間になるでしょう どうですか?町を一望できる場所まで ドライブを兼ねて 一緒に向かいませんか?」
マリアが困惑して言う
「あ、いや… でも それこそ 2人で…」
フランツが言う
「このストリートへ来るまでの間に 2人でのドライブも 終わらせましたので 今度はマリアさんも一緒に …あ、もちろん 魔法使いさんも 宜しければ?」
レイが言う
「今度はドライブか?」
フランツがマリアへ言う
「魔法使いさんは 車の運転はなさらないとの事でしたから マリアさんもドライブを楽しむ良い機会でしょう?行き先は とても素敵な場所ですよ 是非 マリアさんにも お見せしたいです」
マリアが苦笑して言う
「でも そこまでご一緒しては それこそ彼女とのデートが…」
フランツが言う
「彼女だって マリアさんの事は大好きですからね?私は彼女の為にも マリアさんをお連れしたいのですよ こちらの都合ばかりで申し訳ありませんが 是非?」
マリアが思う
(えっと… これはどうしたら良いの?お茶も映画も終わって お別れするにはとても良い状態だと思うんだけど… それでも誘うって言うのは本当にそうして欲しいって思っているのかな?…彼女の為に?)
新人1が苦笑して言う
「マリア先輩!行きましょうよぉ!?折角フランツが お勧めの場所があるって言うんですし!一緒に 行きましょぉ!?」
マリアが苦笑して言う
「う、う~ん… そ、それじゃ…?」
マリアが思う
(確かに… ただ車に乗るって言うんじゃなくて ”ドライブ”って… どんな感じなんだろう?…デートと言えば 彼氏とドライブ?良く聞く話だけど… 映画以上に私とウィザード様じゃ絶対に無いだろうし…)
マリアがレイを横目に見て思う
(これも… 一応 経験…?)
レイが言う
「マリアは そのドライブって奴は やった事はあるのか?ただ車に乗るのとは違うのか?」
新人1が言う
「彼の車はスポーツカーなんですよぉ!?オープンカーにもなるんですぅ!」
レイが言う
「それが何か普通の車と違うのか?よく分からないな?」
新人1が一瞬呆気に取られてから困って言う
「え?え~とぉ~…」
マリアが苦笑して言う
「それじゃ折角ですし”一応 経験”をさせて頂きましょうか?ウィザード様?」
レイが言う
「うん そうだな?その方が早そうだな?」
フランツが言う
「ええ そうしましょう ではご案内します」
フランツに続き新人1が言う
「こっちですよぉ~!」
レイが続こうとして マリアを振り返る マリアが微笑して レイを追って歩きながら思う
(何だかちょっと楽しいかも…?やっぱりこれがデートって言うのかな?)
マリアがレイを見る レイがマリアを見て微笑する マリアが微笑する
駐車場
フランツが遠隔キーで車のロックを解除する 新人1が言う
「この車ですよぉ!カッコイイですよね!?2千万も するそうですよぉ!?」
マリアが言う
「あ… そうなんだ そうだね… カッコ良いね?スポーツカーは初めてだし」
マリアが思う
(でも… 昔の私ならその値段にも驚いていた筈だけど…今は)
マリアがレイを見てレイの杖を見て 苦笑して思う
(彼女にあの杖が1億の杖だって言ったら凄い驚くだろうなぁ…)
マリアが微笑してからレイを見る レイが言う
「なんだか狭そうだな?4人乗れるのか?」
フランツが言う
「基本ツーシーターのスポーツカーなので少々後部座席は狭いですが ご了承下さいマリアさんは どうぞ運転席の後ろの席へ 車の中ではドライバーの次に安全な席ですから」
マリアが言う
「あ… そうなんですか そう言えば会社でも上司をその席へ 秘書は助手席へ座りますものね?…そう言う事だったんだ」
レイが言う
「そこが一番安全ならお前の守る奴を そこへ座らせるべきなんじゃないのか?」
フランツとマリアが一瞬呆気に取られてから フランツが苦笑して言う
「…まぁ 理論的に言えば そうですよね?しかし通常自分の彼女は助手席へ座らせるものなのですよ?魔法使いさん?」
レイが不思議そうに言う
「そうなのか…?」
マリアがレイへ微笑して言う
「では今回は普通に座りましょう?」
レイが言う
「うん、そうだな」
車が発車する
車が海岸線を走る 新人1が窓の外を見て言う
「わぁ綺麗ですよぉ!夕日が海に沈んで行くみたいですぅ!?」
新人1の言葉に マリアが顔を向けて言う
「あ、ほんと綺麗だね?」
フランツが言う
「そうですね こう言う時こそオープンカーは気持ち良く走れますよ?ちゃんとした作りのオープンカーは暖房さえ入れていれば オープンにしても それほど寒くはありませんから」
フランツがボタンを押す 車の屋根が収納されて行く マリアがその様子を見ながら言う
「わぁ…」
屋根が収納される マリアが周囲を見てから 微笑して言う
「あ… ホントに思っていたほど寒くないです」
マリアが思う
(って言っても 一応ちょっと寒いけど… でも景色は良く見えて良いかも?)
新人1が言う
「私、オープンカーって今日初めて乗ったんですけどぉ 気持ち良いですよね!?まるでお空を飛んでいるみたいで!」
レイとマリアが反応して マリアが微笑して言う
「…うん そうだね?風を受けながら走るのは気持ち良いね?」
マリアが思う
(でも本当にお空を飛ぶと もっと開放的で… それに)
マリアが首元を軽く整えて思う
(全く寒くなんか無いんだけど…)
レイがマリアを見てから 人知れず軽く杖を傾ける 新人1が言う
「あ、もう太陽が沈んじゃう」
マリアが周囲を見て言う
「わぁ… 急に暗くなって来たね?」
フランツが言う
「もうすぐ到着しますよ」
新人1が言う
「楽しみぃ~!」
マリアが新人1を見て微笑してからレイを見る レイが帽子を押さえつつ退屈そうにしている マリアが苦笑する
丘の上公園
フランツが先を示して言う
「どうですか?こちらからの町の夜景は?」
新人1とマリアがフランツの示す方を見て 新人1が言う
「わぁ~ 綺麗~!」
マリアが微笑して言う
「うん 綺麗だね」
レイがマリアの横に立つ フランツが言う
「ここからだと町が一望出来るのですよ これだけ全体的に見られる場所は ここしかありません」
マリアが思う
(うん… 確かに全体的に見えて とっても綺麗 …でも)
マリアが視線を向けて思う
(ライトストリートは ちょっと遠くなっちゃったなぁ… あのイルミネーションの飾り付けが夜 どんな風になるのか… ちょっと気になってたんだけど …ウィザード様も今日会った時に綺麗だって言ってたし… あ、そっか?ウィザード様に…)
マリアがレイへ向こうとすると フランツが言う
「どうですか?マリアさん?」
マリアが呆気に取られて言う
「え?」
フランツが言う
「お茶を飲んで映画を見て… ドライブをして夜景を見る …この後はもちろんディナーをご一緒に」
マリアが言う
「は、はい?」
フランツが言う
「この様な普通のお付き合いと言うのは?」
マリアが言う
「え、えっと…?」
マリアが思う
(それはつまり基本通りのデートコースって事?)
フランツが言う
「マリアさんは とても清楚で謙虚でいらっしゃるのに 一緒に居られるお相手が魔法使いさんでは 落ち着かないでしょう?この際お考えになられては?」
マリアが思う
(え?お考えって…?)
レイがフランツを見る フランツがレイを見て言う
「それこそ職種として魔法使いと言うのは 面白いかもしれませんが… せめて女性と一緒に歩いたり 高級なお店に入る予定でしたら相応の格好をされた方が宜しいのではないですか?」
マリアが言う
「あ、いえ それは…」
マリアが思う
(それは 私も… ライトストリートへ来た時には思ったんだけど… でも それは…)
フランツがマリアへ言う
「とんがり帽子にマント、杖まで持って いかにも魔法使いでは周囲の目を引いて マリアさんも ご気分が悪かったでしょう?」
マリアが慌てて言う
「い、いえっ そんな事っ」
マリアが思う
(確かに周囲の目は引くと思ったけど…っ でも そんな…っ 気分が悪いだなんてっ)
フランツが苦笑して言う
「私が今日マリアさんを お茶へ誘ったのも それが理由ですよ?あのままでは本人は兎も角マリアさんが周囲の失笑に晒され続けてしまうと思い そこで、店へ入ろうと言ったのです」
マリアが困って思う
(そんな… 私たちはただ… ちょっと休憩しようと思ってて それで ついでにって言うから… …いや、そうじゃなくてっ 今はっ!)
マリアが言う
「あ、あの…っ!」
マリアがフランツを見ると 新人1が心配そうに見ている マリアが新人1に気付いて思う
(あ… でも… 彼女の前でその彼氏を 怒ったりなんかしたら…?)
レイが言う
「魔法使いは周囲にその危険性を知らせる為に この格好をしてなきゃいけないんだよ 一緒に歩くマリアには悪いが それが力を持つ者の義務だからな?」
マリアがハッとして思う
(力を持つ者の義務… そっか… 他を圧倒する 力を持つからこそ そうでは無い人と 一緒に居る為に…)
マリアが微笑して言う
「私は彼の事素敵だと思いますよ?確かに一緒に歩くと あちこちから視線を感じますけど その魔法使いやウィザードが私たちと一緒に暮らす この世界を守ってくれているんですから」
レイとフランツが驚く マリアが言う
「ですから これからも一緒に仲良く またお茶を飲みましょう?映画は眠っちゃうかもしれませんけど 4人で一緒に何かをするって言うの 私、とっても楽しかったです!…私たちにとっては貴重な ”普通の経験”をさせて頂きました フランツさん それに エミリィちゃんも 今日は本当に 有難う御座いました!」
新人1とフランツが呆気に取られた後 新人1が微笑しフランツが苦笑して言う
「いえ、どういたしまして …こちらこそ貴重な魔法使いさんとの時間を有難う御座いました マリアさん」
マリアが一瞬呆気に取られてから 微笑して言う
「では 私たちは これで失礼します」
レイがマリアを包むと 2人が風に消える
自宅 前
レイとマリアが現れる レイが言う
「はい 到着!それとも ライトストリートのイルミネーションを見に行きたかったか?マリア?」
マリアが振り向いて言う
「いえ それは またの機会で… だってウィザード様?早くしないと 食堂の時間が終わっちゃいますよ?」
レイが衝撃を受けて言う
「あっ!そうだったっ 映画館で寝たもんだから 時間の感覚がズレてたみたいだっ!」
マリアが苦笑して言う
「急がないと閉まっちゃいますね?」
レイが言う
「ああ!そうだな!ありがとなマリア!」
マリアが言う
「こちらこそ 今日は本当に有難う御座いました ウィザード様」
レイが向かおうとして言う
「礼には及ばないよ!それじゃ!あ、けどその前に マリア?」
マリアが疑問して言う
「はい?」
レイが言う
「あいつらには普通のデートって奴を教えてもらったけどさ?」
マリアが言う
「はい、そうですね?」
マリアが思う
(けど それは…)
レイが言う
「けどマリア!それなら今度は俺と一緒に 普通じゃないデートを しような!」
マリアが言う
「え?普通じゃない って…?」
マリアが思う
(それは…?つまり それは いつも通りって 事なんじゃ…?)
レイが言う
「”マリアのウィザード様”なら 映画よりもっと面白い事を出来るぞ?もちろんドライブより空を飛んだ方が気持ち良いし!夜景だってもっと良い場所がある!俺なら連れて行けるからさ!そんな 普通じゃないデートを 今度はしような!マリア!」
マリアが呆気に取られてから微笑して言う
「…はい!ウィザード様!」
レイが言う
「うん!それじゃ!お疲れ様!お休み!マリア!」
レイが風に消える マリアが呆気に取られた後 言う
「普通じゃないデート か…」
マリアが苦笑して 玄関へ向かいながら思う
(そうよね?やっぱり ”私のウィザード様”なら…)
マリアがふと思い出して 自分の手を見て 慌てて言う
「あ… あれ?そう言えば荷物はっ!?」
マリアがハッとして思う
(25万のお洋服がっ!?)
マリアがふと気付いて 玄関を見て呆気に取られた後 苦笑して言う
「いつの間に…」
マリアが玄関のドアノブに掛かっている荷物を手に取って思う
(やっぱり 魔法って)
マリアが苦笑して言う
「凄いよね?流石 私のウィ…!」
マリアが思う
(…ううん 私の… 風の魔法使いさん…)
マリアが苦笑してから 玄関へ入って言う
「ただいまー!」
マリアが玄関ドアを閉める
朝 マリアの部屋
マリアがシャネールの服を着て ネックレスを付けてから微笑して 姿見の鏡の前で喜んで言う
「素敵っ」
マリアが微笑してネックレスに触れて思う
(でも やっぱり… これが一番 素敵だよね?ピンクダイヤだって事を 知らなくたって…)
マリアが言う
「私の一番の お気に入り…」
マリアが微笑した後 荷物を持って言う
「さてっ」
マリアが部屋を出て 玄関へ向かいつつ顔をリビングへ向け 覗いてから言う
「…居ない よね?」
マリアが玄関へ向かいながら思う
(お母さんにも 見てもらいたかったんだけど… 今日もいつも通り 朝早くに出て行っちゃったんだろうなぁ?)
マリアが言う
「お母さんは ”お母さんのウィザードさま”の所に… でも 私は…」
マリアが玄関を出て 鍵を閉めてから振り返って思う
(私が 行かなくたって ここを出れば)
レイが言う
「マリアー!」
マリアが思う
(”私のウィザード様”に 会えるから!)
レイが言う
「お早う!マリア!」
マリアが言う
「お早う御座います!ウィザード様!」
レイがマリアの姿を見て言う
「おぉ!すげぇ 似合ってるよ マリア!また一緒に 買物に行こうな!」
マリアが言う
「はい!有難う御座います ウィザード様!でも 今度は もう少し ゆっくりしましょうかね?3時のお茶は お家で飲んで?」
レイが言う
「そうだな!やっぱ お茶は そっちの方が 良いな!」
マリアが思う
(そうですよね?お外のお店では ”仲良く”出来ないですからね?)
マリアが微笑する レイが言う
「それじゃ マリア今日も早速会社へ行くか?マリアは 仕事が 大好きで!俺は マリアが 大好きだから!俺はマリアの為なら何時だって力を貸すぞ!」
マリアが気付いて思う
(え?”マリアは仕事が大好きで”? …えっと確かに今の仕事は気に入っているけど ”大好き”って言葉は そっちじゃなくて…?)
レイが疑問して言う
「ん?今日は仕事に行かないのか?マリア?」
マリアがハッとして言う
「あっ い、いえっ!行きます!もちろん行きますよっ!?」
レイが言う
「よし、それじゃ行くぞ?マリア?」
マリアが言う
「はい、お願いします ウィザード様」
マリアが思う
(まぁ… いっか…?)
レイとマリアが風に消える
会社
マリアが言う
「お早う御座います!課… 長?」
マリアが疑問して課長を見る 課長が息を吐いて言う
「お早う マリア君…」
マリアが呆気に取られてから課長のデスクへ向かいつつ言う
「あ、あの… どうか なさったんですか?もしかして… 泊り込みで?」
課長が言う
「ああ 社に泊まり込むなど もう何年ぶりか… それこそ 私が新入社員で 先輩方の力になろうと 必死であった あの頃以来だよ」
マリアが慌てて言う
「ど、どうして!?昨日は…っ」
マリアが思う
(確かに 昨日はミッシェルリンク社の事があって 大変だったかもしれないけどっ 新人たちは3人で前日から 準備をしていたから きっと何とかなるって…!?)
マリアがはっと思い出して言う
「あ… 違う 3人じゃなくて…」
課長が言う
「いや、3人だったとも… 私を含めて3人だよ」
マリアが思う
(そうよね… 課長を含めれば… だって、彼女は…エミリィちゃんは 私たちと一緒にライトストリートで休日のデートを…)
新人1が来て言う
「お早う御座います」
マリアが振り返って言う
「あ…」
課長が言う
「エミリィ君 こちらへ来たまえ」
新人1が緊張して言う
「はい…」
新人1が来ると マリアが横へ退く 課長が新人1を見て言う
「昨日の朝君からの連絡に私は言ったね?今日だけは どうしても人手が必要だから臨時休暇は与えられないと」
マリアが思う
(え…っ!?)
新人1が言う
「すみません… どうしても お休みさせて頂きたくて…」
課長が言う
「理由も言わずに 一方的に電話を切って その後は ずっと電源を切っていた様だが… お陰で君の同僚の2人は とても大変だったよ 皆 夜遅くまで 残業をして… 仕事は遊びではない だから勝手は許されない 分かっているのかね?」
新人1が言う
「すみません…」
課長が新人1を見てから 息を吐いて言う
「今後 同じ様な事があれば 考えさせてもらう事にもなるから 十分に反省をしておくように …それから同僚の2人は 今日は少し遅れてくるから まずは彼女たちに 昨日の詫びをしっかりとするように」
新人1が言う
「はい 分かりました」
課長が言う
「では 下がって良い」
新人1が言う
「はい」
新人1が立ち去る 課長が息を吐いて言う
「反省の色は無しだな?困ったものだ…」
マリアが言う
「昨日は 普段も忙しい月曜日な上 ミッシェルリンク社の事もあって 大変だったんじゃないですか?それに 出勤していた社員は 課長の他に新人の2人で…」
課長が言う
「まったく その通りだよ お陰で私も自分の仕事も出来ないまま 新人たちのフォローをしながら そちらの仕事を…」
マリアが言う
「私に連絡を下されば すぐに来ましたのにっ」
課長が苦笑して言う
「うん、最初はすぐに マリア君へ連絡をしようと思ったのだが マリア君には プロジェクト企画の方へ 全力を投入してもらいたくてね 今はとても調子が良いだろう?それを崩して欲しくなかったのだよ」
マリアが言う
「そ、それは… …有難う御座います」
マリアが思う
(課長 私に期待してくれてるんだ…)
課長が微笑して言う
「一応 何とか新人2人と共に 乗り切る事が出来たからな?昨日の忙しさを経験したんだ あの2人は とても力を付けた筈だよ これからは昨日の様な事があろうとも しっかりと こなしてくれるだろう」
課長が苦笑する マリアが微笑して言う
「将来有望ですね?」
課長が言う
「マリア君の様になるかもな?これからも目を掛けてやってくれ」
マリアが言う
「はい」
課長が言う
「一応 エミリィ君にもな?」
マリアが苦笑して言う
「分かりました」
課長が頷き 席を立つ マリアが自分の席へ向かう
マリアが席に着くと 新人1が言う
「あのぉ… マリア先輩…?」
マリアが苦笑して言う
「どうしても 彼と会いたかったんなら 私に連絡してくれたら良かったのに… 課長や同僚の子に 迷惑になっちゃうから これからは遠慮しないで私に連絡してね?」
新人1が言う
「はい… 有難う御座います …でも 昨日はマリア先輩も魔法使いさんとデートだったみたいですし…」
マリアが言う
「うん… まぁ… そんな感じだったけど私はあの魔法使いさんとは 毎日会ってるし彼も協力してくれるから だから」
新人1が言う
「それじゃ やっぱりマリア先輩の 彼氏さん なんですか?あの魔法使いさん」
マリアが苦笑して言う
「えっと… それは…」
新人1が言う
「フランツは… マリア先輩の事 好きなんですよ… だから もし マリア先輩が あの魔法使いさんと 本当にお付き合いしてるなら そうだって …言って欲しいです」
マリアが呆気にとられてから言う
「え?…何言ってるの?」
新人1が言う
「マリア先輩 気付いてないみたいでしたけど…っ フランツはマリア先輩の事しか 見て無かったですよ …昨日 あの お店の前で会った時から… ずっと…」
マリアが言う
「そんな事は…」
新人1が視線を落として言う
「マリア先輩たちと別れた後も ずっと そうでした…」
マリアが言う
「そんな…」
新人1が目に涙を浮かべて言う
「だから 私… フランツに 言っちゃって良いですか?マリア先輩は あの魔法使いさんと お付き合いしてるから… マリア先輩は あの魔法使いさんの事を大好きだから フランツとは付き合えないんだよって… 言っちゃって良いですか?」
マリアが呆気にとられて思う
(それじゃ… 私に別の人がいるから だから諦めて自分と付き合って欲しい …なんて 言うつもりなの?そんな事…)
課長が戻って来て言う
「マリア君 プロジェクト企画会議の方は 大丈夫かね?今は急な方向転換を行って 大変な時だろう?」
マリアがハッとして思う
(そ、そうだったっ!)
マリアが言う
「はい!課長!」
マリアが新人1へ向き直って言う
「…ゴメン ちょっと会議前だからお話はまた後で」
新人1が言う
「分かりました…」
マリアが言う
「あ、それから」
新人1が振り向いて言う
「はい?」
マリアが言う
「私、今はまだあの魔法使いさんと ちゃんとお付き合いしている訳じゃないけど… だから彼氏さん じゃないけど 私は…彼の事 …大好きだからっ」
新人1が驚く マリアが微笑して言う
「だからフランツさんと お付き合いする事は絶対に無いからね?」
新人1が表情をほころばせて言う
「はい!分かりました!有難う御座います!マリア先輩!」
新人1が小走りに席へ向かう マリアが微笑して言う
「よしっ」
マリアが立ち上がる
プロジェクト企画会議
会議が行われている 社員が言う
「私の推薦する企業は…」
マリアが資料を見ながら思う
(ああ… やっぱり この会社も 私の推薦した会社より ずっと有力だなぁ… 今期は 残念だけど 私の推薦は…)
社員が言う
「しかし、そちらの社でしたら 休暇前に推薦発表された A社の方が数字が良いのでは?」
マリアが肩を落として思う
(折角 課長に期待してもらってるんだし… もっと頑張りたいんだけど… 何か無いかな?いくら今まで取引をした企業があったとしても 私1人で受け持った企業の数なんて大した数はないし… …うん?私一人?)
社員が言う
「いえ よくよく資料を確認しました所…」
マリアが思う
(そう言えば私、リナやマキから担当企業を任されたんだ…っ あの資料今回全然見てないっ もしかしたら あっちにもっと良い企業があるかもっ!?)
マリアが顔を上げると 司会役が言う
「…どうやら 急な方向転換で 少々勇み足になっているのかもしれませんね?重要な点を見逃す事の無い様 今一度 資料の確認をした上で 発表は各自責任を持ってお願いします 今回はミッシェルリンク社の衰退による 我が社への利益も多いのでここで無理をして 余計な不利益をこうむる様な事は無い様…」
マリアが思う
(あ、そっか… 評価ばかり焦らずに しっかり 足元を固めるようにって 昔 課長に言われたっけ?いけないいけない… 落ち着かないと)
司会役が言う
「では 少し早いですが 一度皆さん冷静になると言う事で 休憩を入れましょう 次の会議は午後3時から」
社員たちが立ち上がる マリアが立ち上がって思う
(うん… それじゃ 私も ちゃんと お昼を食べて 落ち着いて 資料の見直しを…)
会議室に新人1が駆け込んできて言う
「マリア先輩っ!大変ですよっ!」
社員たちとマリアが驚いて新人1を見る 新人1が言う
「マリア先輩の お母さんがっ!!」
マリアが驚いて思う
(え…?私のお母さんが…?)
会社
マリアが駆け込んで来ると 新人2,3と課長がTVの前に居て マリアへ振り返る マリアが息を切らせつつ 走って来てTVを見て驚いて言う
「なんで!?私のお母さんがっ …人質になんてっ!?」
TVの映像には ソニアが覆面をした男にナイフを突き付けられている TVからレポーターが言う
『現在 警察に動きはありませんがっ 人質の救助を最優先にするとの事で 犯人からの要求である 500億の大金と…』
犯人が叫ぶ
『さあっ 早くしろっ!この女が どうなっても良いのかあっ!?さっさと 500億の金と!この女と一緒に居た あのウィザードを連れて来いっ!』
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
レポーターが言う
『今!再び 犯人が叫び声を上げました!要求は変わらず 500億の身代金と 人質にされている女性 ソニア・ノーチス奉者様のお仕えする ウィザード様を連れて来る様にと!』
マリアが思う
(一体どうなっているのっ!?)
マリアが言う
「何で お母さんと ”お母さんのウィザードさま”をっ!?」
課長が言う
「詳しい事は言われてないが 犯人は最初の要求で この映像を TVへ放映するよう TV局へ連絡をしたらしい」
マリアが言う
「ど、どうしてっ!?何でそんな事っ!?」
マリアがTVを見る レポーターが言う
『尚 警察からの発表では 警察から奉者協会へ掛け合った所 奉者協会は ウィザード様の保護を 最優先とする為 犯人からの要求には 答えられないと』
マリアが驚いて言う
「そんな…っ」
マリアが視線を落として思う
(…でも そうよね?奉者とは言え一般の人とウィザードじゃ… どちらが大切かなんて… …分かってる …そんな事は 分かるけどっ だからってっ!)
マリアがTVを見る レポーターが続けて言う
『共に現行の事件はウィザード様へは お知らせしていないとの事です そして、人質の救助等は警察へ委任するとの事で 現在警察は犯人へ対し身代金のみによる 人質の釈放を交渉しているものと 思われますが 依然として犯人からの要求は変わる事は無く』
犯人が叫ぶ
『金だけじゃ 意味がねぇっ!あのウィザードを連れて来いっ!あいつを ぶっ殺してやらなけりゃ 意味がねぇえっ!』
マリアが驚いて言う
「こ、殺すってっ!?」
マリアが思う
(どうして ウィザードを?…違う ”あの”ウィザード… ”お母さんのウィザードさま”を 狙ってるっ …でも、どうしてっ!?)
新人1が言う
「で、でもっ 大丈夫ですよね!?マリア先輩っ!?マリア先輩のお母さんと一緒に居た あのウィザードって人は この間のダムの決壊から村を守ったほど凄い人 なんですから!それなら あの魔法で!あんな犯人なんて やつけちゃいますよねっ!?」
マリアがハッとして言う
「…だ、駄目だと思う」
新人1が言う
「どうしてですかっ!?だってっ!」
マリアが言う
「ウィザードも魔法使いも… 普通の人に対して魔法を使っちゃいけないって… それをしたら死刑にされちゃうって…」
新人たちと課長が驚く 課長が言う
「そうか… もしかしたら その為に この様子をTVの映像へ撮らせるようにと 要求したのかもしれんな?」
新人2が言う
「そうですよね?犯人は その人を …殺したいって 言っているんだから」
新人3が言う
「それじゃ ウィザード様を連れて来たら魔法も使えないし… あのナイフで本当に殺されちゃうかもっ?」
皆がTVを見る TV映像では 犯人が同じ事を叫んでいる マリアが思う
(どうしようっ!?ウィザード様に?ううんっ 駄目よウィザード様だって 犯人に魔法を使う事は許されないっ …それが力を持つ者の義務なんだからっ 私が助けを求めたりしても…っ でもそれなら どうしたら?どうしたら 今 お母さんを助けられるのっ!?)
マリアが下を向き 強く目を閉じて思う
(お父さんっ …お母さんを助けてっ!)
TVからレポーターが言う
『あっ 今 犯人がっ!』
マリアが目を開く レポーターが言う
『…痺れを切らしたのでしょうか?今 犯人が人質の女性の顔を殴りました!』
マリアがTVへ向こうとしていた顔を逸らして思う
(そんなの 見られないっ!)
課長と新人たちが表情を顰める 新人1が顔を逸らす TVから犯人の声が聞こえる
『おらっ!てめぇえっ!言う通りにしやがれぇえっ!あのウィザードに助けを求めろっ!助けて下さいって あのカメラに向かって叫べっ!黙ってんじゃねぇっ!そんなに殴られてぇえのかぁあ!?』
マリアが両手で顔を覆って思う
(お願いっ!お母さんを 助けてっ!お父さん!…ウィザードさまっ!!)
レポーターの驚きの声がする
『ん!?あ…っ あれはっ!?…ウィザードっ!?ウィザード様ですっ!間違いないでしょうっ!?今 突然 犯人の前に ウィザード様がっ!!』
マリアが驚いて顔を上げてTVを見る レポーターが言う
『ここからでは 確かな確認は取られませんがっ!恐らく 以前ポルト村のダムの決壊から 村を守ったっ!今人質とされている ソニア・ノーチス奉者様の仕えるウィザード様ではなかろうかとっ!?』
マリアがTVを見て思う
(ウィザードさま!来てくれたっ!…でもっ!?)
某所
犯人が呆気に取られる ソニアが言う
「だ、駄目ですっ 逃げて下さいっ 私の事は構わずにっ どうか…っ」
ウィザードさまがソニアから犯人へ視線を向ける 犯人が笑んで言う
「フ…ッヒャッヒャッ 馬鹿がぁ 本当に来やがったぁ!おいっ!知ってんだぞ!?ウィザード!てめぇえは 俺たちに魔法を使えないんだろうぉ?使ったらてめぇえが死刑だからなぁ!?」
犯人がソニアの首にナイフを突きつけたまま TVクルーへ向いて叫ぶ
「おいっ!しっかり 撮っておけぇっ!良いかぁっ!?こいつが魔法を使ったらそれで終わりだぁあ!」
ソニアが犯人を見る 犯人がソニアを見て言う
「それとも?お得意の魔法を使えないまま あいつらに殺されるのが先かなぁ?フッヒャッヒャッ!」
ウィザードさまが横へ視線を向けると ウィザードさまの周囲を 犯人の部下たちが囲う
会社
マリアたちがTVを見ている レポーターが言う
『今、犯人が叫んでいる 魔法を使えないと言うのは 魔力者共存法とされる 法律の下魔法を扱う者は、それを扱わない者へ 魔法による危害を与える事を禁ずると言う 法律の事ではないかと!この法律の下では どの様な理由があろうとも魔力者ではない犯人らへ対しての魔法による攻撃は許されませんっ!』
新人1が言う
「そんなぁ~っ!それじゃぁ どうしら良いんですかぁっ!?悪い人に使うなら 良いじゃないですかぁっ!」
課長が言う
「しかし… 法律だからと言うのではなく 魔力者と、そうではない者が共存すると言う名目上では それは仕方の無い事… かもしれないな」
課長がマリアを見る マリアが表情を落とす レポーターが言う
『なんとっ!更に犯人の仲間たちが現れましたっ!手にナイフや鈍器を持っています!』
マリアがハッとしてTVを見る レポーターが続けて言う
『ウィザード様をそれで攻撃しようと言うのでしょうかっ!?警察に動きはありませんっ!一体どうなるのでしょうかっ!?このままではっ 魔法を使えないウィザード様が数の上に置いても立場に置いても 絶対的に不利です!こうなっては もはや魔法で逃げるしかないでしょう!?しかしっ 人質を連れて逃げる事は出来ないのでしょうか!?ウィザード様にも依然動きはありませんっ!』
映像の中 犯人の部下たちが ウィザードさまに近付いて行く マリアが言う
「ウィザードさま…っ お母さん…っ」
マリアが息を飲む TVから犯人の声が聞こえる
『やっちまえぇえ!!』
レポーターが言う
『ああっ!犯人の掛け声により 犯人の仲間たちがっ!…あっ ウィザード様が杖を掲げたっ!?魔法を使ってしまうのかぁあっ!?』
マリアが慌てて叫ぶ
「だ、駄目っ!」
某所
ソニアが叫ぶ
「逃げてぇーっ!」
鈍い音が響く ソニアが驚く ソニアの横に居る犯人が呆気に取られる 誰かが倒れる
会社
マリアたちが呆気に取られる TVからレポーターが言う
『な… な、殴ったぁっ!?』
マリアたちが言う
「「えっ!?」」
某所
ウィザードさまが両手で杖を握り 自分へ向かって来た犯人の部下1人を殴り倒した状態から 上体を上げ横目に他の犯人らを見る 犯人と犯人の部下たちが 思わず立ち止まった状態で呆気に取られているが 犯人がハッとして言う
「な、何やってやがるっ!?相手は1人だぞ!?てめぇえら やっちまえぇえっ!!」
犯人の部下たちがいっせいにウィザードさまへ襲い掛かる ウィザードさまが杖を両手で握り顎を引く
会社
マリアたちがTVの前で呆気に取られている TVからレポーターが言う
『げ、現場は 大乱闘になっていますっ!し、しかしっ い、意外…っ と言いましょうかっ!?ウィザード様…っ つ、強いっ!?魔法を使う事も無くっ!?襲い来る 犯人の仲間たちからの攻撃を 素早く避けながら 次々と杖による 打撃にて 襲い来る敵を ノックアーウトッ!』
マリアが言う
「う、嘘…?」
課長が言う
「あれは… 魔法… では無いな?」
新人1が言う
「じゃ、じゃぁ… 良いんですかぁ?」
新人2が言う
「い、良いんじゃない?」
新人3が言う
「暴力ではあるけど 正当防衛… って 奴ですよね?」
某所
レポーターが遠くで叫ぶ
「なんとぉっ!?ウィザード様ぁあっ およそ 26人の 犯人の仲間たちを 全員 ノックアーーウトッ!」
ウィザードさまが上体を起こし 犯人を見る 犯人が驚きに目を丸くしていると ウィザードさまが犯人のもとへ向かう 犯人がハッとして 慌てて ソニアとウィザードさまを交互に見てから ナイフを構え ウィザードさまへ攻撃を仕掛けながら言う
「こ、この野郎ぉおおっ!」
ウィザードさまが犯人の攻撃をかわし 杖で殴り付ける 犯人が悲鳴を上げる
「がはあっ!」
犯人が倒れる ソニアが呆気に取られた状態から ホッと肩の力を抜く ウィザードさまがソニアへ向き 構えを解除して ソニアのもとへ向かう
会社
TVの映像にウィザードさまがソニアのもとへ向かい ソニアを拘束していたロープを 魔法で切る ソニアが拘束から解除され ウィザードさまへ向かい微笑する レポーターが言う
『たった 今!ウィザード様が 最後に残っていた 犯人をも殴り倒し!人質の拘束を解除しました!尚 ロープを切る際には 確かに 杖が一瞬光りましたが!それまでの間は 一度も光ってはいません!これにより ウィザード様が 犯人たちへ対して 魔法による攻撃はしていないものと!その様に 判断しても 良いのではないかとっ!?』
TV映像に ウィザードさまがソニアを片腕で包み 風に消える映像が見える レポーターが言う
『あっ!消えましたっ!ウィザード様と 人質にされていた ソニア・ノーチス奉者様が ウィザード様の魔法で 現場から 居なくなりました!と、同時に たった今 警察たちが 倒れている犯人たちの 拘束へと向かう模様です!』
新人1が言う
「もぉっ!今頃 来ても 遅いですよぉっ!」
皆が苦笑する 皆がTVへ向き直ると レポーターが言う
『あ、たった今 入りました情報です!奉者協会並びに 司法鑑定結果により この度の ウィザード様による 奉者奪還作業において ウィザード様から 犯人たちへ対する魔法の使用は 一切 確認されなかった との 正式発表がなされましたっ!』
マリアたちが安堵の声を上げ マリアが言う
「良かった…っ」
マリアがホッと肩の力を抜く レポーターが言う
『犯人たちは たった今 警察により 全員検挙された模様です 人質も保護され この事件は 無事 解決されたと言って良いでしょう!これも 全ては… 意外な力を垣間見せて頂きました ウィザード様の… 武勇によるものであると!いやぁ、しかし 驚きました ウィザード様の杖は 魔法を使うだけではなく 時として 強力な 鈍器にも成り得る模様ですっ』
マリアが衝撃を受けて言う
「…そ、そうなんだ?あの杖…」
マリアが思う
(確かに 1億の魔法使いの杖より おっきくて… 殴られたら痛そうだけど… でも、あれ 意外と 軽かったんだけど…?)
マリアが言う
「鈍器にも なる物だったんだ…」
マリアが苦笑してから溜息を吐く
「は… はは… はぁ~…」
マリアがホッとして思う
(ウィザードさまって… やっぱり 分からない人… …でも)
マリアが苦笑して言う
「やっぱり… 助けてくれた」
マリアが思う
(それでも 相変わらず… 何も言わない のかな?)
マリアがくすっと笑う 課長や新人たちが微笑し 新人1が言う
「良かったですね!マリア先輩!」
マリアが微笑して言う
「うん!」
課長が頷き言う
「さぁ、では 皆 仕事に戻ろう …うん?ウィザード様の武勇を観戦している間に もう 昼休憩の時間か すっかり見入ってしまったな?」
新人たちが笑い 新人2と3が言う
「私たちは さっき来たので これから仕事を始めます」
「課長や皆さんは ゆっくりして来て下さい」
課長が言う
「うむ、それでは しばらく頼むよ」
課長がマリアを見て言う
「マリア君は お母様の所へ行くかね?無事であったとは言え この様な事があったんだ 午後は半休を取って お母様の下へ帰るかね?」
マリアが反応し言う
「あ… えっと…」
マリアがTVを見る TVには事件のダイジェストとして ソニアの映像が映っている ソニアは拘束されていても しっかりとしている マリアが気付き微笑してから 課長へ向き直って言う
「いえ、大丈夫です 課長 私は 私の仕事を しっかりこなします!」
課長が言う
「うん?いや、しかし… そこまで 無理はしなくとも」
マリアが言う
「それに 母も まだ家には戻らないと思います 今日も きっと いつも通りの時間まで 奉者の仕事をきちんとこなしてから 帰ってくると思いますので」
課長が言う
「そうか… 立派な お母様だな?」
マリアが微笑して言う
「はい!自慢の母です!」
課長が頷く マリアが微笑する
会社 外
マリアが出て来て言う
「ふぅ~ 終わった~…」
マリアが苦笑して思う
(課長には あんな風に言ったけど… 結局 午後は あまり 仕事に身が入らなかったなぁ… 一応 リナとマキから引き継いだ 企業の確認はしたけど 午後のプロジェクト企画会議は だた聞いて居るだけで ちょっとボーっとしちゃったし…)
マリアが苦笑して言う
「まだまだ 私は お母さんには 及ばないのかな?」
マリアが軽く笑う レイが言う
「マリアー!」
マリアが顔を向けると レイが到着して言う
「お仕事お疲れ様!マリア!」
マリアが言う
「はい、お疲れ様です ウィザード様 …あ、ウィザード様 今日の事件は ご存知ですか?」
レイが疑問して言う
「ん?今日の事件って?」
マリアが苦笑して言う
「私のお母さんが 誘拐されてしまったんですっ それで…」
レイが言う
「マリアのお母さんが!?…ああ、けど それなら大丈夫だろ?先輩が助けに行くからさ?」
マリアが言う
「はい、その先輩が ”お母さんのウィザードさま”が 助けに来て下さいました …それに その様子は 私たちも TVで見ていたんですけど」
レイが言う
「マリアたちも 見ていたのか?それじゃぁ その場所に 監視カメラでもあったのか?」
マリアが苦笑して言う
「え?えっと… そうですね そんな感じで …だから 私 心配だったんです お母さんを誘拐した犯人たちは 普通の人で… つまり 魔法を使えない人たちですから ”お母さんのウィザードさま”だって その人たちへ対して 魔法を使っちゃいけない訳ですから」
レイが言う
「ああ、そうだな?でも それなら さっさと マリアのお母さんを連れて 魔法で 逃げれば良いんだよ 簡単だよ」
マリアが言う
「え?あ… いえ?ウィザード様?ウィザード様の”先輩”は 戦ったんですよ?魔法を使わないで 力と体力を使って 26人以上も居た お母さんをさらった 悪い人たちを やっつけたんです!」
レイが呆気にとられて言う
「戦った?やっつけた?」
マリアが言う
「はい!お陰で その後 ちゃんと警察が犯人と仲間たちを取り押さえて 今 詳しく犯人たちを 調べているって言ってました!”お母さんのウィザードさま”は 魔法だけじゃなくて 力と体力にも優れているんですね?」
レイが言う
「力と体力に?いや、そんな事 無いと思うけどなぁ?先輩だって ウィザードなんだから その2つに関しては 優れる事は出来ない筈だよ?」
マリアが言う
「え?でも… あのウィザードの杖って大きいですし その上 とても軽いですから あれを振り回すのには体力が必要だと思いますし 軽い物で打撃を与えるんじゃ かなり 力が必要だと思いますよ?」
レイが少し考えてから気付いて言う
「う~ん… ああ、分かった!それなら 先輩は 魔法を 使ったんだよ!」
マリアが疑問して言う
「え?しかし… 杖はその間 一度も光りませんでした …杖が光らないと言う事は 魔法を使っていない と言う証拠ですよね?」
マリアが思う
(だから 奉者協会や司法鑑定で 魔法の使用は無かったって…)
レイが言う
「ああ、それはさ?その… 犯人?って奴らに対して使ってないから 光らなかったんだよ 杖が光るのは ”誰かに”対して 魔法を使った時だからさ ”自分”に対して 魔法を使うなら杖は光らないんだ」
マリアが驚いて言う
「え?それじゃ…?」
レイがマリアを片腕で包んで言う
「だから 例えば そうだな?俺がマリアと一緒に 飛ぶ時にはさ?」
マリアが杖を見る 杖が光ると レイとマリアが風に消える
自宅 前
レイとマリアが現れる レイが言う
「はい 到着!見てたか?光っただろ?」
マリアが呆気に取られて言う
「は、はい…」
レイがマリアから離れ言う
「けど 俺1人なら…」
レイが魔法で短距離を 一瞬で数回移動する マリアが驚く レイがマリアの前に現れて言う
「ほらな?光らないだろ?」
マリアが驚いて言う
「な、なるほど そういえば ”お母さんのウィザードさま”が 犯人たちの攻撃を避ける時は 今の ウィザード様みたいに 軽々と避けてました」
レイが言う
「ああ そうだろ?それに 杖で殴るのだって ただ 力だけで殴ろうとしても 大した 攻撃にはならないよ ちょっと殴られて 痛い位だ けど その瞬間に 自分の腕に魔法を掛ければ…」
レイが杖を振り下ろす ブンッと力強い音が風を切る レイがマリアへ向いて言う
「な?こんな感じじゃないか?」
マリアが呆気に取られて思う
(ホ、ホントだ… ”お母さんのウィザードさま”と 同じ…)
マリアが微笑して言う
「そう言う事だったんですね?すっかり騙されちゃいました」
レイが微笑して言う
「けど わざわざ こんな手の込んだ事してまで その 犯人たちを 殴ったって事はさ?先輩 相当 怒ってたんだろうな?」
マリアが疑問して言う
「え?」
レイが言う
「だってさ?実際に やれって言われれば 俺だって 今みたいに出来るけど… 俺 正直 今のだけでも 疲れたよ」
マリアが衝撃を受ける レイが苦笑して言う
「こいつを26回もやれって?俺なら さっさと逃げるね!って言うか 26回もやれるか ちょっと 自信ないな 俺 精神力は先輩より 低いからさ?相変わらず 先輩 やってくれるよ」
マリアが言う
「あ… えっと 細かい事を言えば お母さんを ずっと脅していた犯人を含めて 27回だと思います… て言うか」
マリアが苦笑して思う
(”お母さんのウィザードさま” 怒ってたんだ?それは やっぱり…)
レイが考えて言う
「それにしても… なるほどな?こんな方法もあるもんだな?マリアに言われなきゃ 俺 考え付かなかったよ 流石 ウィザードの先輩 これも年の功って奴かな?」
マリアが衝撃を受けて言う
「ヴィ、ウィザード様っ それは 褒めるにしても やっぱり その言い方は 失礼ですからっ」
レイが言う
「え?良いじゃないか?本当の事だろう?それだけ 魔法を使いこなしているから 考え付く方法だって!」
マリアが言う
「あ、なるほど… そうですか…」
マリアが思う
(それなら… 良いのかなぁ?)
マリアが苦笑して言う
「…でも、”お母さんのウィザードさま”は やっぱり 自分の奉者を傷付けられた事で 犯人たちに 仕返しをしたいって 思っちゃったんですかね?意外と… ちょっと 人間味があるって言うか…」
マリアが思う
(なんだか… 嬉しいかも?)
マリアが言う
「本来 暴力は いけない事ですけど… 私、ちょっとだけ 嬉しかったです お母さんの為に それだけ 怒って下さったって事なら」
レイが言う
「ああ、そうだな ウィザードだって 人間だからな?神様じゃないんだからさ?怒る事だってあるだろ?増して 自分の大好きな奴を 傷付けられれば 当然だよな?」
マリアが呆気にとられて言う
「え?自分の大好きな奴を…?」
マリアが思う
(それって…)
レイが言う
「俺だって もし 誰かがマリアを 傷付けたりなんかしたら 怒るぞ?けど 俺は先輩みたいに 細かい事は考えないからさ?マリア以外 全員 魔法で ぶっ飛ばしちゃうな!」
マリアが衝撃を受けて言う
「だ、駄目ですよっ!」
レイが言う
「何で?」
マリアが慌てて言う
「何でってっ!?」
レイが言う
「誰にもバレなけりゃ 大丈夫だよ マリアは 言わないでくれれば 良いだけだし!」
マリアが言う
「で、ですからっ!そう言う問題ではなくてっ!」
マリアが思う
(え、え~と…っ!?)
マリアが言う
「ほ、法律は守って下さいっ!魔法で人を傷付けては 駄目です!今回みたいに 人並みに解決して下さいっ …って言うか もう 面倒なので そんな時は やっぱり 私だけ連れて 逃げて下さいっ!」
レイが言う
「うん!そうだな!マリアが言うなら 俺はそうするよ!それに 流石 マリアだな!?」
マリアが疑問して言う
「流石って…?」
マリアが思う
(また 私が優しいって言うの?でも これ位は 常識… 普通の事だし…)
レイが言う
「俺の 食堂の時間を気にして 話を切り上げてくれるなんてさっ!」
マリアが衝撃を受け苦笑して思う
(そ、そっち…?て言うか 私 今それは 考えてなかったんだけど… それより むしろ私は 今…)
マリアが微笑して言う
「はい 私も やっぱり 早く お母さんの顔を見たいので 今日はこれで」
レイが言う
「うん!そうだな!いくら先輩が居るから 大丈夫だって言っても そんな光景を見てたんなら マリアは早く お母さんに会いたいよな?」
マリアが苦笑して言う
「はい 私にとっては 残された たった一人の家族… たった一人の お母さんですから!」
レイが一瞬気付いた後 苦笑して言う
「そ、そうか… あ、けど」
マリアが疑問して言う
「はい?」
レイが一瞬の後言う
「今日はまだ マリアのお母さんは 先輩の部屋に居るみたいぞ?いつもなら もう こっちに向かってるんだけどな?」
マリアが言う
「え?そんな事が 分かるんですか?」
レイが言う
「ああ、分かるよ マリアのお母さんは 長い事 先輩と一緒に居るからさ?先輩の魔力が十分に移ってるからな!」
マリアが呆気にとられて言う
「え?魔力が移る?」
レイが言う
「そうそう だから 奉者は 自分の仕える ウィザードに守られるんだよ ちょっとした危害なら その魔力だけで 守られたりもするんだぞ?」
マリアが呆気に取られて言う
「そ、そうなんですか…?」
レイが言う
「うん、それに 何より 身の危険を感じた時に その意識が 伝わるんだ だから 助けにいけるんだよ …今回も そうだろう?」
マリアが気付いて思う
(あ…っ そっか… だから お母さんが 犯人に殴られたって… そう TVで言った時に ”お母さんのウィザードさま”が あの場所に…?)
マリアが言う
「そう言う事だったんだ…」
マリアが思う
(てっきり… お父さんが… お母さんの為に ウィザードさまを 連れて来てくれたのかと…)
マリアがバックに入れてある 定期券入れへ意識を向ける マリアが苦笑する レイが言う
「俺もマリアに何か有れば 飛んで行って 助けてやるからな?安心しろよ マリア!…あ、安心しちゃ駄目だな?ちゃんと 身の危険は感じないと 俺に伝わらないからな?」
マリアが苦笑して言う
「はい、分かりました 難しい所ですね?」
レイが軽く笑って言う
「そうだな!」
レイとマリアが笑い レイがハッとして言う
「あっ!食堂の時間がっ!それから マリア 今、マリアのお母さんが 先輩の部屋を出たみたいだぞ?いつもよりちょっと遅いけど ちゃんと帰って来るだろうから 安心しろよ マリア」
マリアが言う
「はいっ それでは お母さんの為に 私も 張り切って 用意しておきます!」
レイが言う
「そうか!それじゃ また明日な!お休み!マリア!」
マリアが言う
「はい、お休みなさい ウィザード様」
レイが風に消える マリアが微笑した後 玄関へ向いて言う
「さ!お母さんが 帰って来るまでに!」
マリアが家へ向かう
ソニアが玄関へ入り言う
「ただいまー」
マリアがキッチンから出て来て言う
「お帰りなさい!お母さん!」
ソニアがマリアを見て苦笑する マリアが苦笑し マリアが駆け寄って言う
「お母さん… 良かった…っ」
ソニアが微笑して言う
「ええ、マリア… 心配を掛けちゃったかしら?ごめんなさい」
マリアがソニアに抱き付く ソニアがマリアを抱き締める マリアが言う
「心配したよ…っ 会社で後輩の子が 知らせてくれて… ずっと TVの前で… …でも 良かった」
ソニアが微笑すると マリアが顔を上げ 微笑して言う
「それでね!お母さん きっと 朝から何も食べてないと思って… だから ご馳走作って 待ってたよ!」
ソニアが一瞬驚いてから微笑して言う
「まぁ… 有難う マリア…」
マリアが言う
「さ!一緒に食べよう!?お母さんの顔見て安心したら 私 お腹空いちゃった!」
ソニアが言う
「ええ、そうね お母さんも マリアの顔を見て 安心した… それに マリアの作ってくれた手料理を 食べられるなんて お母さん 嬉しいわ」
マリアとソニアが微笑しキッチンへ向かう
ソニアが言う
「美味しい… マリアもすっかり お料理が上手になったわね?」
マリアが言う
「トマトの煮込みマリネは お母さんが作った方が やっぱり美味しいけどね?」
ソニアが言う
「そんな事無いわ とっても美味しいわよ」
マリアが微笑する TVでニュースがやっている キャスターが言う
『…捕らえられた 犯人たちは 暴力団グループの名を名乗っており 更に…』
マリアが反応し苦笑して言う
「本当に 今日は大変だったね?お母さん 私… どうしたら良いか 分からなくなっちゃって… 最初は ”私のウィザード様”に お願いしようかと思ったの …でも 相手が 悪い人だって言っても 魔法を使わない人だから… ウィザード様に お願いしても 駄目かもしれないって…」
ソニアが反応し苦笑して言う
「ええ お母さんも同じだったわ ウィザードや魔法使いが 犯人たちに魔法を使う事は 許されないのだし… お母さん 実はね… 最初に捕まった時に 覚悟を決めていたの… これで お母さん… お父さんの所に 逝くのかなって…」
マリアが言う
「お母さん…」
ソニアが言う
「マリアには 可哀想だけど… 仕方が無いって …だから 最後は 私のウィザード様への 今までの感謝を込めて あの人の奉者として しっかりしていなきゃって」
マリアが思う
(それじゃ お母さんは 魔力が移るって事 知らなかったのかな?気をしっかり持っていたのは 奉者として… ウィザードさまへの 今までのお礼に?)
ソニアが苦笑して言う
「でも、犯人に殴られた瞬間にね?やっぱり 怖いって… ”助けて” って思ってしまったのよ… そうしたら …驚いたわ まるでその言葉に 答えるかの様に 次の瞬間には 目の前に あの人が居らしたのだから …でも 慌てて言ったの ”私の事は 良いですから 逃げて下さい”って」
マリアが思う
(それじゃ 助けを求めた その相手は…)
ソニアが無意識に指輪に触れている マリアが気付き微笑して言う
「わ、私もね!?TVの前で 必死にお祈りしてたの!”お父さん!お母さんを 助けて!”って!」
ソニアが一瞬驚いて 指輪に触れている手を止める マリアが気付き一瞬呆気に取られてから 気を取り直して言う
「あっ でもね!?お母さん?知らなかった?私も… 今日 ”私のウィザード様”から 聞いたんだけどね!?奉者は ウィザードに守られるんだって!長く一緒に居ると ウィザードの魔力が奉者に移って 小さな危害からは その魔力だけでも守られるって!それに 身の危険を感じると それが 伝わるんだって!だから…」
マリアが思う
(あの時 ウィザードさまを 連れて来たのは… その… 魔力で…)
ソニアが苦笑して言う
「あら… そうだったの?てっきり お父さんが 連れて来てくれたのかと思ったわ?”マリアを1人にしては いけませんよ?”ってね?」
マリアが微笑して言う
「そ、そうだよ!それに… ”お母さんのウィザードさま”は 直接犯人たちに 魔法を使わなくても 強いんだから!」
ソニアが軽く笑って言う
「うふ…っ そうよね?」
マリアが微笑して言う
「でも、私 最初 びっくりしちゃったっ ううんっ 私だけじゃないよね?だって TVのレポーターの人だって ”意外”って言ってたもん ”お母さんのウィザードさま”が 犯人たちを あの杖で殴った事」
ソニアが苦笑して言う
「ええ お母さんも… まさか あの人が あんな事をするだなんて …お母さん 最初 何が起きたのか分からなくって 呆気に取られちゃったわ」
マリアが苦笑して言う
「お母さんも 驚いたのね?私、最初 魔法を使っちゃうのかと思って TVの前で 叫んじゃった ”駄目ーっ!”って!」
ソニアが笑う マリアが笑う ソニアが言う
「お母さんも そう思って ”逃げてー”って 叫んでいたのよ?」
マリアが言う
「そうだったんだ?やっぱり お母さんは 立派だね!奉者として ウィザードさまを 守ろうと思ったんでしょ!?」
ソニアが言う
「さぁ… どうだったのかしら?分からないわ あの瞬間は もう…」
マリアが苦笑した後 言う
「でも、これからは 安心だね?お母さんは ”お母さんのウィザードさま”が 守ってくれるから …それに 私は”私のウィザード様”が 守ってくれるって言うし?」
ソニアが微笑して言う
「そう それなら お母さんも 安心だわ」
マリアが言う
「あ、でもね?”私のウィザード様”は 精神力が ”お母さんのウィザードさま”より 低いんだって?だから、今日も ”お母さんのウィザードさま”の 真似をして見せてくれたんだけど 1回やっただけで 疲れちゃったって …ふふっ やっぱり”先輩”は 凄いって言ってたよ?」
マリアが思う
(でも 年の功って言うのは やっぱり…)
ソニアが言う
「あら そうなの?”マリアのウィザード様”の方が 若いのにね?うふふっ」
マリアが衝撃を受けて思う
(う…っ それを 言われると…っ あ、でも…)
マリアが言う
「あ、あのね?お母さん 今日の あの… 杖での攻撃もね?本当は 魔法だったんだって だから…」
マリアが思う
(…だから 年齢とか 体力の問題じゃなくて… 精神力の…)
ソニアが言う
「ええ、今回は お母さんも 伺ったのよ?そうしたら あれは 魔法を使っていたのだ ですって?杖が光らなかったのは 相手に使わず 自分へ使っていたから なんですって?」
マリアが微笑して言う
「うん そうらしいね?お母さんも 聞いたのね?」
マリアが思う
(そうなんだ… 今回は ”何も言わない” んじゃなかったんだ…?)
ソニアが言う
「ええ、だから いくら魔法の力を借りても 身体を動かしている事には 変わりはないからって… だから」
マリアが思う
(あ、そっか… そうよね?いくら身体を動かす為の その元の力は魔法に頼ったとしても 動いている事に 変わりは無いのだから… …で?それじゃ?)
ソニアが言う
「お部屋に戻ったら その後は もう動けないって 倒れちゃって…」
ソニアが笑う マリアが衝撃を受け言う
「えっ!?そ、そうだったんだ…?」
マリアが苦笑して思う
(やっぱり ”お母さんのウィザードさま”も 疲れちゃったのね?それはそうよね?力と体力の無い ウィザードなんだから…)
マリアが苦笑した後言う
「あっ で、でもっ 凄いよね?”お母さんのウィザードさま”は お母さんの為に 26回も… あ、27回も そんな魔法を 自分に使って 一生懸命戦ったんだよね?お母さんの 為に!」
ソニアが言う
「え?」
マリアが言う
「だって ”私のウィザード様”が 言ってたよ?そんな 大変な事するくらいなら 俺なら マリアを連れて さっさと逃げちゃうよって!”先輩”が そんな手の込んだ事をしてまで 犯人たちを殴ったのは 相当怒っていたんだろうなって!だから 私 ちょっと嬉しかったの ”お母さんのウィザードさま”が お母さんの為に それだけ怒ってくれたんだから!」
ソニアが呆気に取られた後微笑して言う
「あら… そう… そうなのかしらね?お母さん 考えもしなかったわ…」
ソニアが無意識に指輪を撫でる マリアが気付きつつ苦笑して 気を取り直して言う
「あ、それで お母さん 明日は?明日もやっぱり…」
マリアが思う
(あんな事があった後でも やっぱり いつも通りに…)
ソニアが言う
「ええ、明日は そんな訳で ”一日休む”って 仰ってたけど… でも、あの様子じゃ ”一日動けない”の 間違えだと思うわ?」
マリアが呆気に取られた後笑って言う
「あ… ふっ ふふっ もぉ~!お母さんったら 酷ぉ~い!」
ソニアが笑う マリアが笑う
翌朝
マリアが着替えを済ませ ネックレスに触れて微笑してから言う
「さて、お弁当を…」
マリアが部屋を出て歩きながら思う
(今日は 昨日のご馳走の残りがあるから… あれを詰めちゃえば良いだけで …少しは ゆっくり 朝食が食べられるかな~?)
マリアが言う
「ニュースも 気になるし…」
マリアがキッチンに入ると ソニアが言う
「お早う マリア」
マリアが驚いて言う
「あ、あれ?お母さん?」
ソニアが微笑して言う
「今日はお母さん ゆっくり行こうかと思って… それに たまには 朝食を一緒に食べない?用意しておいたの …後 お弁当もね?」
マリアが驚いて言う
「え!?お弁当も!?」
ソニアが言う
「ええ、マリアのお弁当を 作るのなんて もう 何年振りかしら?何だか懐かしかったわ?」
マリアが苦笑して言う
「それはそうだよ 保育園以来だもん」
ソニアが言う
「うふふっ そうね?」
マリアが笑う ソニアが言う
「さぁ 座って?マリア」
マリアが言う
「はーい」
マリアとソニアが微笑む TVでニュースがやっている マリアがそれを見て言う
「そう言えば お母さん 昨日の事件って…」
ソニアが言う
「ええ… 本当に怖かったわ 朝 いつもの様に ハイヤーに乗って居たら 突然 車の前に人が飛び出して… ハイヤーの運転手さんが 確認をしに車を降りた途端に あの犯人たちが乗り込んで来たの」
マリアが言う
「そうだったんだ… それじゃ その飛び出してきた人も 犯人の仲間だったのね?」
ソニアが言う
「ええ、そうみたい… 警察にも話したけど その時 お母さん 目隠しをされて それで 言われたの ”お前をさらえば あのウィザードが来るのか!?”って…」
マリアが言う
「え?そ、それじゃ…っ!」
マリアが思う
(犯人たちの狙いは 最初から ”お母さんのウィザードさま”!?)
マリアが言う
「でも どうして?何かの為に 魔法を使わせたい …とかなら あの時 ウィザードさまを 殺そうだなんて…」
ソニアが言う
「ううん 違うのよ お母さん その時 すぐに分かったの この人たちは あの ミッシェルリンク社の人だって」
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
マリアが思う
(どう言う事っ!?それに 何で 会社勤めでもない お母さんが 元受会社である ミッシェルリンク社の社名を!?)
ソニアが言う
「マリアは もしかして 知ってるかしら?ミッシェルリンク社って 会社の事」
マリアが言う
「し、知ってるよ!?それより どうして お母さんの方が 知ってるのっ!?」
ソニアが言う
「そう、マリアも 知っているのなら 話は 早いわ そのミッシェルリンク社 最近 いくつもの工場なんかで 事故があったでしょう?それに 地元住民からの 再稼動反対運動がされているって…」
マリアが言う
「う、うん!知ってるよ!でも どうして それを お母さんが…っ!?」
ソニアが言う
「…あれはね?元々”お母さんのウィザードさま”が 原因なのよ」
マリアが思う
(え!?それってっ!?)
マリアが驚いて言う
「まさかっ!その事故の原因!機械の故障って!?」
ソニアが苦笑して言う
「ええ、”お母さんのウィザードさま”がね?魔法で壊してしまったの」
マリアが衝撃を受けて言う
「なんで そんな事をっ!?」
マリアがハッとして思う
(あ…っ でも…っ その工場なんかは 全部…っ!?)
ソニアが言う
「自然の悲鳴が 聞こえるんですって …それらの工場なんかのせいで 水や風… 土が汚染されて やがて 人々へ危害を加える …その怒りが募っているのを 感じるんですって だから それを 止めたいって…」
マリアが驚いて言う
「そ、それって…」
マリアが思う
(もしかして そう言う事…?それこそが ウィザード様が言っていた ”本物のウィザード” って言うのじゃ…!?)
ソニアが苦笑して言う
「でも、分からないでしょう?私たちには そんな 自然の悲鳴なんて聞こえないのだし 怒りが募っているというのも 分からない でもね?あの人は ずっと昔から それを感じていて でも どうする事も出来ないって… ウィザードになっても 結局 何も出来ないって 思っていたそうなの …その矢先に あのポルト村のダムの決壊があって…」
マリアが言う
「”お母さんのウィザードさま”が 村を守ってくれた…」
ソニアが言う
「ええ、あれが 始まりだったわね?その翌日に ポルト村へ行ったら あのダムの管理者 ミッシェルリンク社の人が居て ダムの決壊に怯える 村民の反対を押し切って ダムを修理しようとしていたの でも あの人が ”ダムを修理したら 今度こそ 村は水の怒りに 晒される”って ”次は助からない”って 村の人たちに言ったの …そうしたら 村の人たちは 慌てて ダムの修理に猛反対」
マリアが衝撃を受けて言う
「そ、それはそうね…っ」
ソニアが言う
「同時に ミッシェルリンク社の人は とっても怒ったの …でも それを逆撫でするかの様に あの人 その人たちの目の前で 魔法を使ってダムを 完全に壊してしまって…」
マリアが衝撃を受けて言う
「あの ”お母さんのウィザードさま”が!?」
マリアが思う
(あれ…?あのウィザードさまって そんな人だったの…?)
ソニアが苦笑して言う
「それからは もう そう言った 自然に仇名す工場には 容赦が無いのよ… お母さん いつか こんな事になるんじゃないかって… 思ってたわ」
マリアが言う
「そ、それは そうだよ…っ 増して 相手は 土地の買収に 酷い手を使う人たちで… しかも」
マリアがニュースを見る ニュースで言う
『この暴力団グループは 先日まで事故が多発していた ミッシェルリンク社との繋がりが指摘されており 今回の事件以前においても 強引な土地の売買に 手を貸していた疑いが…』
マリアが思う
(暴力団グループと繋がりが…)
マリアが溜息を吐いてから言う
「はぁ… お母さん いくら ”お母さんのウィザードさま”が 守ってくれるって言っても 私 心配だよ?」
マリアが思う
(いくら それが ”本物のウィザード”の お仕事だとしても… それに お母さんが巻き込まれるなんて… やっぱり 私は… …あぁ …こんな時 お父さんが居てくれれば きっと お母さんを止めてくれるんじゃ?)
マリアがソニアを見て言う
「お母さん…」
マリアがハッとして言葉を飲む ソニアが言う
「そうよね… 心配を掛けてしまって ごめんなさい マリア …それに マリアにだって…」
マリアが驚いたまま 言う
「お母さん… 指輪は…?」
ソニアが疑問して言う
「え?」
マリアが言う
「お父さんとの… 結婚指輪…」
ソニアが苦笑して言う
「ああ、そうね… 外してみたの …ちょっと 考えてみようかと 思って…」
マリアがソニアを見て思う
(考えるって…っ!?)
ソニアが言う
「お父さんが 亡くなってからも ずっと 籍を入れたままにしていたけれど… そうね もし 本当に お別れをするとなれば マリアにも 関係するものね?マリアは… どちらを選んでも構わないわ?だって マリアは女の子だから 結婚をすれば 姓は変わるから… それまでの間 今のまま お父さんの ノーチスの姓のままで 居ても良いし…」
マリアが慌てて言う
「ど、どうして 急にっ!?」
ソニアが言う
「お父さんの事は 今も大好きだけど… いつまでも お父さんに頼っていてはいけないのかなって思って… お母さん ずっと お父さんが亡くなった後も… 本当は いつも 頼っていたの 指輪に触れれば 天国から お父さんが守ってくれているような気がして 安心出来た… でも…」
マリアが言う
「でも…?」
ソニアが苦笑してから 気を切り替えて言う
「マリア?そろそろ 行かないと」
マリアが呆気に撮られて言う
「え…?」
ソニアが言う
「いくら 風の魔法使いさんに 会社まで 送ってもらえても… 時計の針は 魔法でも 戻せないわ?」
マリアがハッとして時計を見てから 慌てて言う
「あっ ああっ!ホントっ!会議があるのにっ その前に…っ!」
ソニアが苦笑して言う
「ほら 急いで?いってらっしゃい マリア」
マリアが言う
「は、はいっ 行って来ます お母さん!」
マリアが小走りに向かう ソニアが見送り 苦笑する
自宅 前
マリアが慌てて玄関を出ると驚いて言う
「え?」
マリアの視線の先レイが居て 微笑して言う
「あ、お早う マリア!」
マリアが呆気に取られつつ言う
「お、お早う御座います… ウィザード様…?」
マリアが思う
(あれ?きょ… 今日は…?)
レイが言う
「今日は ゆっくりなのか?マリア?」
マリアがハッとして言う
「ああっ!そ、そのっ!今日はお母さんが居たものでっ 昨日の事とか 聞いていたら 遅くなってしまってっ!」
レイが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「ああ!そう言う事か!そうだな?確かに マリアのお母さんが 家に居るもんな?」
マリアが言う
「は、はいっ それで… 本当は こんなに ゆっくりしていては いけなかったんですが つい…っ」
レイが言う
「そうか!なら すぐに 連れてってやるぞ!マリア!」
マリアが言う
「は、はいっ すみませんが 宜しくお願いします」
レイが言う
「ああ!任せとけ!」
レイがマリアを包み 風に消える
会社
マリアが言う
「お早う御座いますっ!」
課長が言う
「ああ、お早う マリア君」
マリアが苦笑して言う
「すみません 今日は 遅くなってしまって」
課長が苦笑して言う
「なに、遅いと言っても 始業前じゃないか?遅刻癖のあった あのマリア君から考えれば 早い位だろう?はっはっはっ」
マリアが衝撃を受けてから苦笑して言う
「は、はい それはそうですが… 今は 何と言っても 社運にも掛かわる プロジェクト企画会議が 行われている時ですからっ」
課長が言う
「ああ、その事なんだが マリア君… 折角 今期から企画へも参加を頼んで 張り切ってもらっていた所なんだが 今期のプロジェクトは 中止される事になったよ」
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
課長が言う
「今期は最初から あのミッシェルリンク社への介入に 総力を上げていたからな?それを 急に切り替えようとしても やはり 何処の部署でも 切り替えが間に合わない そのような状態で無理を押して 下手に動いても 良い結果は得られないだろうと 中止が決定されたんだ」
マリアが言う
「そうでしたか… 分かりました」
課長が微笑して言う
「初参加で 張り切ってもらっていた所 残念ではあるが 次の時も マリア君には 参加してもらうつもりだから そちらへ向け また頑張ってくれたまえ」
マリアが微笑して言う
「はい!有難う御座います!課長!」
課長が言う
「うむ …では 今日からは 以前の通り 通常業務を頼むよ?」
マリアが言う
「はい!」
マリアが立ち去る
昼休憩
マリアが一息吐いて思う
(久し振りの通常業務だけど 何だか少し 以前とは違うなぁ~ やっぱり…)
マリアが新人たちを見てから苦笑して思う
(マキもリナも居ないもんね?2人とは 同じ仕事をしていた訳じゃ なかったけど… 何と言うか… 気持ちの 問題かな?)
マリアが溜息を吐いて言う
「でも、しょうがないよね?」
マリアが荷物を取って思う
(いくら 楽しかった時があっても 時間は戻らないんだから)
マリアがふと ソニアの事を思い出し 苦笑して思う
(だから お母さんも…)
マリアが定期券入れの写真を見てから 携帯を確認して気付いて言う
「あ… リナから…」
マリアが荷物を持って立ち上がる
中央公園
マリアが気付き 呼びながら走る
「マキー!リナー!」
マリアが走って向かうと マキとリナがマリアへ向いて微笑して マリアが到着すると リナが言う
「お疲れ様 マリア」
マキが言う
「おっ疲れ様ー!マリア大先輩~!」
マリアが苦笑してから喜んで言う
「お疲れ様!2人共!」
マリアが2人の横に腰を下ろす
マリアが言う
「そうなんだ… リナ 彼と話したのね?」
リナが言う
「うん、それに エリナからも聞いたわ マリアに相談したんだって」
マリアが言う
「あ… ご、ごめんね?リナ?」
リナが苦笑して言う
「マリアが謝る事無いじゃない?それに お陰で 彼から話を聞けたんだから…」
マキが言う
「探求者… かぁ…」
リナが言う
「もちろん 聞いた時は驚いて 何より どうしてそんな危険な事を?って 思ったわ… でも 彼の性格はよく分かっているし それに 彼の想いも…」
マリアが言う
「リナや リナと自分の子供や 保育園の子供たちの為にって… 必死なんだよね?」
リナが苦笑して言う
「うん… そうみたい…」
マキが困って言う
「それで… リナは どうしたの?彼に その…」
リナが言う
「止められるものなら 止めたいけど… 私が何を言っても きっと 彼は辞めないと思うの その程度の想いで 命を懸ける探求者の職なんて 選べないと思うし」
マキが怒って言う
「でもさっ!?だからってっ!?…それで ホントにっ!?もしもの事があったらさっ!?だって リナのお腹には 子供まで居るんだよっ!?それなのにっ!?」
リナが言う
「うん マキの言う通りだと思う 探求者の仕事は 個人企業みたいなものだし 彼の身に もしもの事があっても 私やお腹の子を守ってくれるものは 何も残らない」
マキが言う
「そんなの 勝手過ぎるよ!リナ!?」
リナが言う
「でもね 彼が言ったの だからこそ自分は私と子供のもとに 何があっても帰らなきゃいけないと思えるんだって …必ず生きて帰って来るから 信じて待っていて欲しい って」
マキが言う
「け、けどさ…?」
リナが苦笑して言う
「もちろん 言葉で言ったとしても それは きっと とても大変だと思う それに保育士さんだと思って安心していたのに いきなり 安心とは程遠い そんな危険な職業に 勝手に変えちゃって… 私に誤解だったとは言え 心配もさせて…」
マリアが言う
「そうだよね?そのせいで リナ体調崩しちゃったし…」
リナが言う
「うん… でもね?それがあったから 今度は耐えられるんじゃないかって思うの… 今は何も聞かされていなかった あの時より ずっと 楽だもの… 彼が ちゃんと 私と子供の事を 愛してくれているって… 分かったから」
マキとリナが言葉を失う リナが言う
「だから私、彼の勝手を認める事にしたの それで 今度は 必ず私のもとに帰って来るって それだけを信じて待とうって」
マリアが言う
「リナ… 本気なんだね?」
リナが言う
「うん、その代わり 毎回ちゃんと戻って来るって その証拠に… これっ」
リナが指輪を見せる マリアとマキが驚いてマキが言う
「もしかしてっ!?」
リナが微笑して言う
「結婚したの …式は 子供が生まれてからする予定だから その時は2人とも よろしくね?」
マリアが言う
「おめでとう!リナ!」
マキが言う
「おめでとー リナー!」
リナが微笑して言う
「ありがとう 2人共」
会社
マリアが思う
(リナは結局… 彼の仕事を認めたんだ… 私やエリナは絶対反対だと思ってたのに すごいなぁ… やっぱり 彼の事愛してるからなのかなぁ?だから 信じられるって… 必ず 帰って来てくれるって …私だったら …私自身だったらどうかな?いくら信じるって言っても… 探求者は アウターに行くんだから… そうしたら…)
マリアの脳裏に過去の記憶が戻る
ペリテ村
人々が悲鳴を上げつつ逃げ惑う中 空から鳥たちが襲い地上では野生動物たちが吠え立てる その中にレイが舞い降りる 人々がレイを見て期待を込めて言う
『ウィザード様っ!?』 『ウィザード様だっ!』
マリアが周囲の様子と人々の声に驚いていると レイが言う
『マリア』
マリアがハッとしてレイを見上げると レイが言う
『後ろへ』
マリアが慌てて言う
『は、はいっ』
マリアがレイの後ろへ行く レイが正面へ向き直り魔力を収集する レイの周囲に風が渦巻く マリアがそれに目を向けていると 鳥の叫び声が響きマリアが驚いてレイの先へ視線を向けると 鳥たちが襲い掛かって来る マリアが驚くと 鳥たちが周囲の風魔法に吹き飛ばされる マリアが驚くと 続いて野生動物たちが襲い掛かって来る マリアが息を飲むと レイが杖を振りかざし 風魔法がカマイタチとなって野生動物たちを切り裂く マリアが驚き目を見開いて口を両手で覆う 残りの野生動物たちが怯えつつ唸り声を上げる レイが見据えて再び周囲に風の魔法が集まり出す 残りの野生動物たちが尻尾を巻いて逃げ出して行く
マリアが思う
(あんな野生動物が一杯居る所に行くなんて… 本当に心配で… 私… やっぱり 耐えられないと思う… だって 本当に… 万が一 好きな人が 居なくなってしまったら?)
マリアの脳裏にレイの姿が一瞬映り マリアがハッとして思う
(あっ い、いやっ!そうじゃなくてっ!…大体 ウィザード様なら あの野生動物の群れを 退治出来るんだし…っ 居なくなるなんて…)
マリアの脳裏に記憶が戻る
レイが苦笑して言う
『マリア 今まで勝手な事言って …ごめん』
マリアが驚いて言う
『え…?』
レイが言う
『…それから』
マリアがハッとしてレイを見る レイが微笑して言う
『ありがとう』
マリアが驚いて目を見開く レイが立ち去る
マリアがハッとして慌てて思う
(あっ あれはっ!そのっ!…あれは 私の間違えで…っ でも 結果として 今は ちゃんと ”私のウィザード様”は 私の傍に居るんだからっ!)
マリアが気付いて思う
(…そうよ あの後の 数日の間だって… 私は… 私は 寂しくて とても耐えられなくて… それなのに 万が一 もう二度と… 一生会えないなんて… なったら…?)
マリアが定期券入れの写真の事を思い出して言う
「私の… お父さん みたいに…」
課長が叫ぶ
「マリア君!!」
マリアが衝撃を受けて言う
「はっ はいっ!すみませんっ 課長っ!」
課長が不満そうに言う
「…まったく 久し振りに 通常業務へ戻った途端…っ」
マリアが苦笑して思う
(そ、そうだった… いけない いけない 通常業務に戻ったから つい… 気が緩んじゃったのかな…?)
マリアが新人たちを見る 新人たちは真剣に仕事をしている マリアが苦笑して思う
(そうよね?私も しっかり しなきゃ! …彼女たちに負けちゃうわっ)
マリアが仕事に戻る
会社 前
マリアが会社を出て来て苦笑して思う
(お昼休みに リナとマキに会って 仕事中は課長に目を光らされて… ふふっ 今日はまるで ちょっと前の日常に戻った感じで 懐かしかったなぁ)
マリアが気を取り直して言う
「でも ここからは…」
マリアが思う
(その”ちょっと前”とは違って 私がウィザード様の お部屋へ向かうんじゃなくて …その ウィザード様が 私を迎えに 飛んで来てくれるから)
マリアが顔を上げると 他方からレイが言う
「マリア!お仕事 お疲れ様!」
マリアが一瞬驚き声の方へ顔を向けると 会社の外で待っていたレイが歩いて来る マリアが呆気に取られつつ言う
「え?あ… は、はい お疲れ様です ウィザード様…」
マリアが思う
(…あ、あれ?いつもなら 私が会社を出た時に マリアー って 飛んでる来るのに?今日は…)
マリアが言う
「あ、あの ウィザード様?もしかして… 私が会社から出てくるまで ずっとそこで 待っていてくれたんですか?」
レイが苦笑して言う
「うん… あ、いや ずっとって程じゃないけど… 15分位かな?」
マリアが思う
(15分位?…まぁ 確かに 長いと言うほどではないけど… そう言えば 今朝も…?)
レイが言う
「マリア あのさ…?俺 ずっと マリアに話そうと思ってた事… …なんて言ったら良いのか 色々考えてたんだけど …けど、そうすると 修行とか 燭魔台の灯魔作業とか 上手く行かなくてさ?…だから 待ってたんだ…」
マリアがハッとして思う
(そ、それって…っ やっぱりっ!?)
マリアが言う
「あ …そ、そうでしたか…」
レイが言う
「うん、だから もう 言っちゃおうと思って あ、でも マリア 今日は この後 何かあるのか?それならそうで もちろん連れてってやるし その間は 俺 待ってるから」
マリアが言う
「い、いえっ!今日は何もっ …この後は 家に帰るだけですっ!」
レイが言う
「そっか… なら 家に帰ろう 話は そっちで… …ここじゃ 落ち着かないからな?」
マリアが意を決して言う
「は、はいっ では お願いしますっ」
レイが言う
「うん」
レイがマリアを包み 2人が風に消える
自宅 前
レイとマリアが現れると マリアが思う
(ウィザード様の お話って… やっぱり …そう言うお話?…それに もし 違ったとしても?)
マリアが言う
「あ、あの それでは… お話は 中で…」
マリアが玄関へ向かいつつ思う
(ウィザード様は 人前でも 抱き付いちゃう人だし そう言う事を気にしないから だから ここだと もしかしたら 通行人に聞かれちゃうかも知れないから)
マリアが向かおうとすると レイが言う
「いや、ここで良いよ」
マリアが立ち止まり言う
「え?しかし…っ」
マリアが思う
(え?どうしよう?どんなお話にしても ウィザード様が そんなに真剣になるお話なら 家の中の方が… あ、でも もしかして もう 家には お母さんが居るのかな?だから中には…)
レイが言う
「マリア」
マリアがハッとしてレイに向き直って言う
「は、はいっ」
マリアが思う
(も、もうっ 覚悟を決めるしかないわっ …だって 私からの答えは もう …決まってる!ウィザード様が そう言ってくれるならっ 私は…っ 私もウィザード様がっ!)
マリアがレイを見る レイがマリアを見て言う
「マリア 俺…」
マリアがレイを見つめる レイが言う
「…マリアのお父さんを 止めなかった …ごめん」
マリアが呆気にとられて言う
「…えっ?」
マリアが思う
(”マリアのお父さんを”?…私の お父さんを 止めなかった…?それは)
マリアが言う
「…どう言う?」
レイが言う
「俺は 知ってたんだ マリアのお父さんが 向かおうとしている先が… 危険だって事… …でも 止められなかった… だから ごめんな…」
マリアが思う
(ど、どう言う事…?なんで そんな事…?だって ウィザード様は 私のお父さんの事なんて…?)
マリアがハッとして 定期券入れの写真を思い出して思う
(あ…っ そっか… あの写真…っ)
レイが言う
「もし… あの時 俺が止めていたら …マリアの お父さん …死ななかったかもな?…だから ごめん …ごめんな?マリア…」
マリアが呆気に取られたまま思う
(そうだ… 今思い出せば ウィザード様が 話があるって言ってたのは… あの写真を見せた その夜から…!?確かそうだったっ それじゃ…)
レイが言う
「あの写真を見て 驚いたよ」
マリアがハッとしてレイを見る レイが言う
「…それから ずっと マリアに なんて謝ったら良いのかって… 考えてたんだ けど 思い付かなくて… それに 何を言っても …どんな魔法を使ったって あの瞬間には戻れないからさ?…だったら ただ 伝えて 謝るしかないと思って… だから… ごめんな マリア…」
マリアが間を置いて 苦笑して言う
「…そんなに 何度も謝らないで下さい ウィザード様」
レイが視線を上げマリアを見る マリアが微笑して言う
「それに 元気の無い ウィザード様は… らしくないですよ?いつもみたいに 元気 出して下さいっ!」
レイが言う
「けど…」
マリアが言う
「過ぎてしまった事は もう しょうがないですから… ですから これからは…」
マリアがふと思い出す
施設上部で破壊音が鳴り響く マリアが上部を見上げると 施設の屋根が破壊され 炎と共に瓦礫が落ちて来る マリアが悲鳴を上げる
『キャァアアーーッ!』
ソニアの声だけが聞こえる
『マリアッ!』
マリアが強く目を閉じて怯える 間を置いてマリアが疑問して目を開くと 強い光の存在に気付きマリアが視線を向ける 視線の先 ウィザードさまの杖が強く光っている マリアが驚きハッとして周囲を見る 暴走していた炎が強い風に巻き上げられている マリアがウィザードさまを見る ウィザードさまの顔は見えないが ソニアが驚いている マリアが言う
『ウィザードさま… 助けてくれた… やっぱり お母さんの ウィザードさまが…』
マリアが微笑する 周囲の風が炎や瓦礫を収め やがて辺りに静けさが戻る 無くなった天上から日の光が差し込み 柔らかな光にマリアがホッとする マリアの後ろでドサッと音がする マリアの視線の先 幼いレイが倒れている マリアが一歩向かってから ふと周囲を見渡して驚く 多くの負傷者が居る マリアが怯えて改めてレイへ視線を向ける レイは意識の無い状態で倒れていて 額から血が流れている マリアが表情を落として言う
『皆も… この子も… …私が もっと早く お願いすれば 皆…』
マリアが微笑して言う
「…ウィザード様の その魔法で …たくさんの人を守って下さい!」
レイが驚く マリアが言う
「10年前の大灯魔台の事故の時 ”お母さんのウィザードさま”と一緒に 皆を守ってくれたみたいに!…そうすれば 亡くなった 私のお父さんも きっと喜んでくれる筈です!」
レイが呆気に取られて言う
「マリア…」
マリアが微笑すると レイが苦笑して言う
「やっぱり マリアはマリアだな?」
マリアが疑問して言う
「え?」
レイが言う
「助けられなかった マリアのお父さんの代わりに 今度は 自分を守れとは 言わないんだよな?」
マリアが呆気に取られる レイが言う
「けどさ?俺は 必ず マリアを守るからな?安心しろよ?守れなかった マリアのお父さんの分も マリアの事は 絶対 俺が守る!」
マリアが驚く レイが言う
「それに マリアが 他の奴も守れって言うなら 俺はそうするよ!俺は… ”マリアのウィザード様”だからな?」
マリアが微笑して言う
「はい ウィザード様 宜しくお願いします!」
レイが微笑して言う
「ああ!任せとけ!俺は 魔法使いでも ウィザード級の魔法使いだから!…まぁ 先輩にはちょっと苦戦するかもしれないけど 他のウィザードになんかに負けないよ!」
マリアが衝撃を受けて言う
「他のウィザードの方々と 戦う訳じゃないんですからっ!そうじゃなくてっ …大灯魔台の灯魔儀式の時みたいに 力を合わせて下さいね?」
レイが言う
「うん!マリアがそう言うなら 俺はそうするよ!」
マリアが微笑して思う
(ふふっ …やっぱり ウィザード様には こんな風に 元気で居てもらえる方が …私は 嬉しい)
レイが言う
「あ、それじゃ 俺 そろそろ 帰るな?マリアのお陰で 久し振りに 食堂の不味い飯も 美味しく食べられそうだよ!ありがとな マリア!」
マリアが衝撃を受けて思う
(ま、不味いんだ… 食堂のご飯…)
マリアが苦笑して言う
「い、いえ… こちらこそ」
レイが言う
「また明日な!お休み!マリア!」
マリアが言う
「はい お休みなさい ウィザード様」
レイが風に消える マリアが苦笑した後玄関へ向かう
マリアが玄関を入って言う
「ただいまー」
マリアが家に上がり疑問して思う
(あれ?お母さん 居ないのかな?)
マリアがリビングを見て言う
「やっぱり まだ帰って居ないみたい」
マリアが思う
(それじゃ ウィザード様が 家に入らなかったのは…)
マリアがふと周囲を見てから苦笑して言う
「もしかしたら この家が 私とお母さんと…」
マリアが思う
(お父さんの 3人の家だから… だったのかな?)
マリアが苦笑して言う
「ウィザード様って」
マリアが思う
(意外と 繊細だったりして?)
マリアが苦笑してから ふと棚を見て気付いて言う
「あれ?」
マリアが棚に置かれた書類を見て思う
(書類…?一体何の?)
マリアが言う
「お母さんが 置いたんだろうけど…?」
マリアが1枚の書類を手に取って言葉を失う
マリアの部屋
マリアが考え事をしている マリアが思う
(あの書類… 離婚届…)
マリアが言う
「…控えしかなかった って 事は…」
マリアが思う
(お母さん… お父さんと…)
マリアが一度 視線を落としてから 気を取り直して言う
「で、でもっ 私とお母さんが 親子である事は 変わらないんだからっ!」
マリアが思う
(だからっ お母さんだって…っ)
玄関から ソニアの声がする
「ただいまー」
マリアが顔を上げて言う
「お母さんっ!」
マリアが立ち上がって部屋を飛び出す
リビング
マリアがリビングへ入って言う
「お母さんっ その…っ」
ソニアが書類を見て苦笑して言う
「離婚は結婚より 大変なのね?書類もたくさんあって… お母さん分からない事だらけで 今日は1日大変だったわ?」
マリアが言う
「離婚… したんだ?」
ソニアが言う
「ええ」
マリアが言う
「あ… それで 私は…?」
ソニアが言う
「お母さんだけ ノーチスの姓から 以前の姓へ戻った形よ」
マリアが思う
(それじゃ… 私とお母さんは…?)
ソニアが言う
「それで マリア お父さんの遺産なんだけど」
マリアが言う
「え?遺産って…」
ソニアが言う
「お父さんの遺産は このお家だけよ?それで お母さん マリアに 譲ろうと思うの このお家を」
マリアが言う
「え…?」
ソニアが言う
「このお家の所有者は お父さんのままになっているから お父さんの娘である マリアへ譲渡するなら 手続きも簡単みたいなのよ …お母さんへ変えようとすると それこそ 難しくって」
マリアが言う
「で、でも…」
ソニアが言う
「それに もし マリアが結婚して この家に住むにしても 売却するにしても その方が 手続きは簡単なの」
マリアが言う
「そう… なんだ?」
ソニアが言う
「だから それで良いかしら?」
マリアが思う
(この家の所有者は お父さんのままだったんだ… それが 今度は私になるって それだけの事… それだけ… だよね?)
マリアが言う
「そうしたとしても お母さんは この家に住むんだよね?私の… お母さんだもん 姓が違っても…っ」
ソニアが言う
「そうね?マリアが良いって言うなら 二世帯で住むって事に なるのかしらね?」
マリアが苦笑して言う
「もちろん 良いに決まってるよ?そんなの…」
マリアが思う
(姓が違うだけで 何も変わらない…)
マリアが言う
「何も変わらないよね?お母さんと私が 親子だって事で… お父さんだって…」
マリアがハッとする ソニアが苦笑して言う
「お父さんとは お母さん お別れしてしまった事になるから… これからは お父さんは ”マリアのお父さん”って 事ね?」
マリアが思う
(そっか… だから お母さんが この家に住むのに 私に 良いか?って 聞くのね…)
ソニアが苦笑して言う
「お母さん 一人になっちゃったわ お母さんの両親は もう亡くなっているし 兄弟とも 疎遠になってしまっているから やっぱり ちょっと 寂しいわね?」
マリアが言う
「わ、私が居るから!これからも ずっと このお家で…っ!」
ソニアが微笑して言う
「そうね ありがとう マリア…」
ソニアが書類を整理する マリアが沈黙する ソニアが言う
「それじゃ 明日にでも 書類を揃えて お役所に持って行くから そうしたら マリアがこのお家の所有者ね?今のマリアなら お父さんも 安心してくれるわ」
マリアが苦笑して言う
「…表札作らなきゃね?お母さんの分も」
ソニアが言う
「ええ そうね?」
マリアが思い出して言う
「あ…」
マリアが思う
(そう言えば ウィザード様に聞いた事… お母さんにも 知らせるべきかな?ウィザード様… なんて言ってたっけ?私、あの時…)
レイがマリアを見て言う
『マリア 俺… マリアのお父さんを 止められなかった …ごめん 俺は 知ってたんだ マリアのお父さんが 向かおうとしている先が… 危険だって事… …でも 止めなかった… ごめんな…』
マリアが思う
(…そう ”マリアのお父さん”を止められなかったって… ”マリアのお父さん”が向かおうとしている先が 危険だって事を 知ってたって… それは つまり…)
マリアが顔を上げて言う
「あ、あのね お母さん …お父さんの 事なんだけど」
ソニアが言う
「うん どうしたの?マリア」
マリアが言う
「お父さん… 交通事故で亡くなったんだよね?それでね?今日… その…」
マリアが思う
(つまり ウィザード様が言っていたのは… きっと そう言う事 …お父さんが 何らかの形で 向かっていった先に… 車が?…あれ?でも 私…)
マリアが言う
「…あ、その前に お父さんは どう言う事故だったの?」
マリアが思う
(と言っても… どちらにしても ウィザード様が その時 お父さんを呼び止めれば 事故にはならなくて 助かったって事なのよね?だとしたら…?)
マリアが言う
「あ、でも どっちにしてもね?お母さん… あの…」
ソニアが言う
「マリア ごめんなさい」
マリアが言う
「え?」
ソニアが言う
「そう言えば ずっと言って無かったわね?お母さん マリアが大人になってから ちゃんと伝えようと思っていたのに… マリアはとっくに お母さんよりも 立派な大人に なっていたのにね?」
マリアが言う
「そ、そんなっ お母さんより 立派なんて事 無いよ?…それで えっと…?」
マリアが思う
(ちゃんと伝えようって… 何を?)
マリアがソニアを見る ソニアが言う
「お父さんね?交通事故で亡くなったんじゃないのよ」
マリアが言う
「え?」
ソニアが言う
「幼いマリアに 言っても分からないと思って… そうと言って居たのだけど そうね 丁度良いわね マリア、お父さんはね?マリアのお父さんは…」
マリアがソニアを見る ソニアが言う
「…探求者 だったの」
マリアが驚いて息を飲む ソニアが苦笑して言う
「って 言っても 分からないわよね?探求者って言うのはね?マリア」
マリアが言う
「…知ってる」
ソニアが疑問して言う
「え?」
マリアが言う
「お父さん 探求者だったの?どうして…!?お母さん お父さんの事 止めなかったの!?探求者なんて… そんな 危険な仕事っ!どうしてっ!?」
マリアがソニアに怒る ソニアが一瞬驚いた後 表情を落として言う
「お父さんは… ”必ず帰って来る” って言ってくれたの」
マリアが驚く ソニアがマリアを見て微笑して言う
「”君とマリアの居る この家に 必ず生きて 帰って来る だから 信じて待っていてくれ”って… それで お母さん 言われた通り お父さんを 信じて待っていたのよ… でも… ある時… あの人は 生きては 帰って来なかった…」
マリアが驚きに言葉を失う マリアの脳裏に記憶が戻る
リナが言う
『でもね 彼が言ったの だからこそ自分は私と子供の元に 何があっても帰らなきゃいけないと思えるんだって …必ず生きて帰って来るから 信じて待っていて欲しい って』
マリアが言う
「リナ…」
ソニアが視線を落として言う
「…お母さん 受け入れられなくて ずっと待っていたわ でも あの人は… いくら待っても もう 二度と 帰って来ないのよ …だから お別れしたの …それで」
ソニアがマリアを見て言う
「これからは お母さん もう お父さんには 頼らずに 生きていくわ …もちろん マリアと一緒にね?」
ソニアが微笑する マリアが苦笑して言う
「…うん 分かった ありがとう お母さん」
ソニアが微笑して頷く
翌朝 マリアの部屋
マリアが目を覚ますと 伸びをしながら言う
「う~ん」
マリアが息を吐きながら思う
(はぁ… 昨日の夜もまた 色々考えちゃった 今日が休みで良かった… だって もし)
マリアが時計を見て苦笑して言う
「もう お昼だもんね?」
マリアがベッドを出る
リビング
マリアがやって来て棚を見る 棚に書類は無い マリアが息を吐いて思う
(書類が無くなってる… きっと お母さんが 今日 お役所に提出して…)
マリアが周囲を見てから思う
(この家の所有者が 私になって…)
マリアが言う
「でも 何も変わらない…」
マリアがソファに座り視線を落として思う
(本当に 変わらないのかなぁ…?あ、表札作らなきゃね?えっと… お母さんの旧姓って 何だっけ?聞いた事…)
マリアが言う
「無いかも…」
マリアが息を吐いて思う
(そうよね お父さんに関係しそうな話題は いつも 避けていたんだから… お母さんの旧姓も 聞いた事無かった…)
マリアが言う
「これじゃ 作れないなぁ…」
マリアが思う
(お母さんが帰って来るのを待って 聞かないと… あ、でも)
マリアが言う
「今日も お母さん… 奉者のお仕事に行ってるんだよね?」
マリアが思う
(それじゃ 聞くのは 夜になっちゃう… それで 明日… あ、でも 私 明日は仕事だし… どうしよう?)
マリアがふと気付いて言う
「って、それより」
マリアが立ち上がって玄関へ向かいながら思う
(折角のお休みなんだから ウィザード様に会わないと …昨日は あの”お話”をしたし 今日は… 今日はもう)
マリアが玄関を開け 外の空気に気を和らげてから言う
「いつもの ウィザード様に 会えるから!」
レイが言う
「マリアー!」
マリアが微笑して振り返ると レイが降り立って言う
「こんにちは だな!マリア!」
マリアが言う
「はい こんにちはです ウィザード様」
レイが言う
「今日は マリア 仕事は休みなんだよな?これから何処かに行くのか?行くなら 連れてってやるぞ?」
マリアが言う
「はい お仕事はお休みですけど 何処にも行く予定は無いです …でも お茶の時間には ちょっと早いですよね?ウィザード様?」
レイが言う
「そうだな!それじゃ 俺と一緒に… たまには 空の散歩にでも行くか?マリア?」
マリアが一瞬呆気に取られて思う
(空の散歩か… なんだか丁度良いかも?)
マリアが微笑して言う
「はい!是非 お願いします!」
レイが言う
「よし!それじゃ 早速 行くぞ!マリア!」
レイがマリアを包み 風に消える
上空
レイとマリアが上空に現れる マリアが眼下に広がる風景に呆気に取られて言う
「わぁ~…」
マリアが思う
(こうして 空から地上を見るのは 2回目だけど… でも)
マリアが言う
「以前と違って 自分の住んでいる町を 空から見るのは 不思議な感じです… なんと言うか…」
マリアが思う
(自分がいつもやっている事は どれも とっても小さな事みたい… 仕事も… 悩みも… 全部…)
マリアがレイを見て苦笑して言う
「ウィザード様は いつも こんな雄大な景色を 見ているんですね?」
レイが言う
「そうだな!外に居る時は いつも見てるよ!」
マリアが街を見て苦笑して思う
(そっか… だから いつも あんなに元気なのね?悩みなんてある筈無い どんな悩みも ここから見れば …あの人々と 同じくらい小さな… …でも 昨日までは そんなウィザード様でも…)
マリアが苦笑する レイが言う
「それで 何処へ行こうか?マリア?何処か行きたい所はあるか?」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「俺はいつも そこら辺を飛び回ってれば 色んな風の声が聞こえるけど マリアは聞こえないだろう?だったら 何処かへ行った方が 面白いだろ?」
マリアが言う
「そうなんですか… そうですね?では…」
マリアが思う
(本当は こうして地上を見ているだけでも いつもと違って 十分楽しいけど… でも 折角 ウィザード様が 気を使ってくれているんだから… 何処か…?)
レイが言う
「マリアは この町以外には 行った事は無いのか?他の町は 他の町で ちょっと景色が違ってて 面白いかもしれないぞ?」
マリアが言う
「あ、でも 私… 自分の住む町を 空から見るのは 初めてで… ですから こちらで十分 面白いですよ?」
レイが言う
「ん?そうか!マリアは知っている場所を 空から見るのが 面白いのか!」
マリアが微笑する レイが気付いて言う
「あ、それなら マリア!以前 マリアと俺で行った場所へ 行ってみるか?」
マリアが疑問して言う
「え?私とウィザード様で…?」
マリアが思う
(えっと… そんな所あったっけ?先日の休みに行った ライトストリートなら すぐそこに見えているし…?)
レイが言う
「俺がウィザードだった時に マリアは奉者だった時に 2人で 行っただろう?アウターサイドの村へ 灯魔儀式をやりにさ?」
マリアが気付いて言う
「あ…っ」
マリアが思う
(そうだった…っ そう言えば…)
レイが言う
「どの村だって この町の管轄だよ マリアが奉者として ウィザードの俺を連れて行くって言う 仕事をした 懐かしい場所だろ?」
マリアが微笑して言う
「そうですね 懐かしいですね?」
マリアが思う
(私は 奉者としては失格だったけど… 各村へ ウィザード様を連れて言った事は事実で …それで灯魔儀式は ”マキのウィザード様”とは違って いつも軽々成功して 灯魔神館の管理人さんたちには お礼を言われていたっけ…)
レイが言う
「それじゃ いくぞ?マリア?」
マリアが思う
(あの灯魔神館がある場所を 空から見られるのは 確かに面白いかも?)
マリアが微笑して言う
「はいっ ウィザード様!」
レイとマリアが風に消える
エリーム村 上空
レイが言う
「はい 到着!ここが 最初の灯魔儀式をした場所だぞ!マリア!」
マリアが微笑して言う
「では エリーム村ですね?」
レイが言う
「エリーム村か よく覚えてるな マリアは!流石マリアだよな!」
マリアが言う
「ウィザード様 その 流石マリア って言うのは?」
レイが言う
「だって マリアにとっては 灯魔儀式に俺を連れて行くことが 奉者としての仕事だったんだから 仕事熱心なマリアは 流石!よく覚えてるんだなーってさ!」
マリアが言う
「あ、なるほど…」
マリアが思う
(確かにそうかも?沢山あった 灯魔依頼の書類を 1枚1枚読んで… それで 灯魔の場所を決めていたのよね 最初は… だから 余計 このエリーム村の事は良く覚えてる 灯魔依頼の書類にあった あの心の込められた文章 ”どうか エミール村の灯魔台に力を与えて下さい ウィザード様のお力で この村の人々を救って下さい”)
マリアが言う
「…今も あの灯魔台には 火の灯魔が灯っていて …その力が しっかり周囲に 結界を張って 村の人々を守ってくれて いるんですよね?」
マリアが思う
(ウィザード様が灯した 火の灯魔が…)
マリアが微笑する レイが言う
「そうだな!魔力の追加供給をしなくたって 一年位は 余裕で持つよ!」
マリアが振り返って言う
「一年位?…それでは その頃には もう一度… あ、いえ その”魔力の追加供給”を しなくては いけないでのすよね?」
レイが言う
「ああ!そうだな!けど それは この町のウィザードの仕事だよ!もう俺は この町のウィザードじゃないからな!」
マリアがハッとして言う
「あ… そ、そうですか… …そうですよね?」
マリアが思う
(それじゃ この力は 一年後には ”マキのウィザード様”が…)
レイが言う
「心配しなくて ここは 火の灯魔だから あの”弱っちいウィザード”でも 大丈夫だよ マリア!」
マリアが衝撃を受けて言う
「よ、弱っちいって 言わないで下さいっ 確かに ウィザード様より 弱いかもしれないですけどっ!?」
マリアが思う
(可哀想… いや、駄目よね?そんな事 私が 言ったら… だから…)
マリアが言う
「わ、私の大切な”友人のウィザード様”なんですからっ」
レイが言う
「そうか マリアがそう言うなら もう言わないよ」
マリアがホッとして言う
「はい… そうしてあげて下さい」
マリアが思う
(ごめんね マキ… でも これで 良いよね?)
レイが言う
「それじゃ その ”使えない ウィザード” がさぁ?」
マリアが衝撃を受けて言う
「それは もっと悪いですからっ!!」
上空
レイとマリアが現れて レイが言う
「はい 到着!ここが最後!俺とマリアが行った 最後のアウターサイドの村だな!」
マリアが言う
「最後のアウターサイドの… そうですね 最後のアウターサイドの村 確か…」
レイが言う
「ラフム村 だったか?マリアに伝える為に 名前を覚えていた村の1つだけど 何か言い辛い名前だったから 覚えてるよ」
マリアが苦笑して言う
「あ… そうですよね?確かにちょっと 言い辛いですよね 発音が難しいと言うか…」
マリアが思う
(私も 確かに 覚えてる でも 最後の方の灯魔儀式の場所は ウィザード様に任せちゃってたのよね… 私は… 私はそう 仕事が忙しくて 灯魔神館へ灯魔儀式の予定を伝える連絡程度しかしてなくって… だから ここ以外の 各村の名前さえ覚えてない 私… 奉者のお仕事は 全然駄目だったなぁ…)
マリアが軽く息を吐く レイが言う
「ん?マリア 少し疲れたか?」
マリアが気付き言う
「あ、いえっ そう言う訳では…っ」
レイが言う
「無理しなくったって良いんだぞ?マリアは 空の散歩は慣れてないんだから 俺が 地上の散歩に慣れてないのと一緒で 疲れちゃったんだろ?少し下へ降りるか?」
マリアが苦笑して言う
「あ… そ、そうですね では 少し…」
マリアが思う
(この お空のお散歩は 慣れない私であっても 疲れなんかはしないけど… でも 言われてみれば ちょっと 地上が懐かしくなって来たかな?)
レイが言う
「それじゃ 折角だから そこの灯魔神館にでも入るか?」
マリアが言う
「え?入れるんですか?」
レイが言う
「ああ、もちろん だって…」
マリアが思う
(あ、そっか… 私は休職中とは言え 奉者で… あ、でも ウィザード様は…)
レイが言う
「ほら 他の奴らだって 見物に行ってるだろ?」
マリアが軽く驚いて言う
「え?」
マリアが思う
(見物って…?)
マリアがレイの示す先を見る 灯魔神館へは 家族連れや個人の旅行者の様な人々が 自由に入っている マリアが言う
「あ、そう言えば 他の灯魔神館にも 出入りしている人たちが居て… 服装的にも どう言った方なのかな?って思っていましたが… え?見物って?」
レイが言う
「灯魔台の灯魔は 普通の奴らにとっては 唯一 魔法を見られる場所だからな?」
マリアが呆気に取られて言う
「あ…っ」
マリアが思う
(た、確かに…っ)
レイが言う
「俺もたまに 何となく見に行くけど 普通の奴らは 楽しんで見てるみたいだよ?魔法だ魔法だって あのライトストリートで 俺を見ていた連中みたいに 物珍しいんだろ?」
マリアが思う
(ウィザード様 気付いてたんだ… それはそうよね?人気ブランド店の 風の噂を 聞ける位なんだから… 私の耳でも聞こえた声なんて… それでも)
レイが言う
「それなら 俺たちだって 見に行っても良いだろ?何しろ ここの灯魔作業は俺たちがやったんだからな?」
マリアが微笑して言う
「そうですね!それに ここの灯魔台には 一番難しい魔法である 風の灯魔をしたんですから!」
レイが言う
「そうだな!流石 良く覚えてるよ マリアは!」
マリアが思う
(覚えてますよ… だって 最後のアウターサイドの村は ウィザード様のお得意な風の魔法で …これで 安心だって 思ったのだから…)
マリアが微笑して言う
「それでは 行きましょう!ウィザード様!」
レイが言う
「ああ!行こう!マリア!」
レイとマリアが風に消える
灯魔神館
レイとマリアが神館の前に現れる マリアが灯魔神館を見て思う
(やっぱり こうして見ると 懐かしい… たった1ヶ月ちょっと前の事なのに…)
マリアが神館の入り口付近を見る 多くの観光客が入って行っているが 一瞬 観光客の居ない風景が見え マリアが苦笑して言う
「私たちが以前来た時は この辺りには 誰も居なかったですが… 今ではそれが 嘘みたいですね?ウィザード様?」
マリアが振り向くと 一瞬レイが以前のウィザードの姿に見える マリアが一瞬息を飲むと レイが言う
「そうだな!灯魔作業がされた村は 何処も ちょっとした観光地になるらしいぞ?それもあって 各村は 灯魔儀式を早くやれって 急かすんだよな?そいつらにとっては 村興しみたいなもんか?」
レイがマリアを見て疑問する マリアがハッとして顔を逸らして言う
「か、各村の灯魔台の灯魔は この世界を守る結界を張っているんですから…っ そんな 観光名所みたいにされちゃうのは ちょっと… なんて言うか…」
レイが言う
「ははっ 相変わらず マリアは固いよな?俺は 別に良いと思うけどな?」
マリアが反応して言う
「そ、そうですか…?…まぁ その灯魔作業をした ウィザード様が良いと言うのでしたら…」
レイが言う
「じゃ とりあえず 見に行こうぜ?…って 言っても 何も変わってないんだけどな?巡礼者の代わりに その観光の連中が 居るって事以外はさ?」
レイが灯魔神館へ向かう マリアが思う
(え?それじゃ…?)
マリアが疑問しつつ レイを追う
灯魔神館 受付
レイとマリアが入って来ると マリアがハッとして受付嬢を見て思う
(あっ えっと…っ あの人だったかな?この神館に 灯魔儀式をしにきた時に お話した…?)
受付嬢がレイとマリアを見て 微笑して言う
「どうぞ 灯魔台の観覧はご自由に そちらの通路を 真っ直ぐ行った先で御座います」
マリアが思う
(違う人… だったかな?あぁ 駄目だわ… 全然覚えてない でも 向こうも気付いてないって事は やっぱり違うのよね?それなら)
マリアがレイを見て思う
(それに… きっと分からないよね?この人が ”あの”ウィザード様だったなんて…)
レイがマリアを見て言う
「ん?どうした?やっぱり やめるのか?」
マリアが一瞬驚いた後慌てて言う
「あっ い、いえっ 行きます!ちゃんと 見ますよっ!?」
レイが疑問すると 受付嬢が微笑して言う
「大丈夫ですよ お客様?灯魔台に灯されている魔法は 安全な物ですから 触れたとしても 怪我をする事も ありませんので」
マリアが気付いて思う
(あ… そう言えば 以前 リナが言ってたっけ?それで リナやリナのお父さんも 灯魔台を見るのが好きだって… そっか…)
マリアが微笑して思う
(普通の人が触れられる 唯一の魔法… 皆見たいって 触れてみたいって思う… そうかもしれない 私も 実際に触れた事はないし)
マリアが言う
「…それなら 安心ですね?行きましょう!」
レイが苦笑して言う
「ああ なんだ マリアは そんな事を心配してたのか?その灯魔をやった 俺が居るのに?」
マリアが衝撃を受ける 受付嬢が疑問する マリアがレイの腕を掴んで 慌てて言う
「そ、それは 今は 良いですからっ!早く行きましょう ウィザード様っ!」
レイがマリアに引っ張られつつ言う
「ん?あ、ああっ 分かったけど マリアっ!?そんなに急がなくても 灯魔台は逃げないぞ?マリア!?」
レイとマリアが走って去る 受付嬢が軽く笑う
灯魔台
マリアがレイを引っ張ってきて到着すると 周囲の様子に思わず声を漏らす
「わぁ… 凄い人…」
マリアが微笑して言う
「ウィザード様が灯魔をした 灯魔台は 大人気ですね?…って?ウィザード様?」
マリアが振り返ると レイがマリアの後ろで息を整えつつ言う
「はぁ はぁ… マリアは凄いな?こんな長い距離走って… 平気で居られるなんて… さ?」
マリアが疑問し振り返って言う
「え?あ、あれくらいで 疲れちゃったんですか?ウィザード様…?」
マリアが思う
(確かに 受付から この巡礼者スペースまでは 思っていたより有ったけど… それでも 200メートルも無かったよね?)
レイが言う
「俺 途中で 倒れるかと思ったよ いや、マリアが居なかったら 倒れてたな?」
マリアが衝撃を受けて言う
「え!?あれ位で 倒れないで下さいっ!」
マリアが灯魔台に向き直って言う
「あんな すごい事を出来る人が… そんな事を言ってたら 恥ずかしいじゃないですか?」
マリアの視線の先 人々が灯魔台を見たり 灯魔台の灯魔に手をかざしたりしている マリアが微笑してから言う
「私も ちょっと…」
レイが言う
「俺にとっては あの程度の灯魔作業に比べたら 今走って来た事の方が よっぽど凄い事だったよ」
マリアがレイへ向いて言う
「ウィザード様っ」
マリアが苦笑して言う
「もう…」
マリアが思う
(でも 私たちが 魔法を使えない事が当然の様に ウィザード様にとって 魔法を使える事が当然なら …そう言う違いなのかな?)
マリアが言う
「それでは 私は 皆さんと同じ様に ちょっと あの灯魔を見て来ますから ウィザード様は 少し休んでいて下さい」
レイが言う
「うん そうするよ 俺は 自分がやった灯魔なんか触ったって 何も面白く無いからな?」
マリアが苦笑した後 灯魔台へ向かう
マリアがやって来ると 灯魔台の灯魔に触れていた子供たちが楽しんで言う
「魔法 魔法!」 「まほー!」
マリアが微笑し自分も灯魔に触れて思う
(あ… ホント 不思議な感じ 機械的に空気を送り出しているのとは違う 何て言うか… 生きている感じがする …私が触れようとすれば 風も 私の手を確認するみたいに)
マリアが微笑して言う
「向こうも 私が 不思議なのかな?」
マリアが思う
(これこそ 魔法ね?風にも意志があるみたい… 面白い)
マリアが灯魔台から手を離すと 手に僅かに風が残り 消えて行く マリアが呆気に取られると 子供たちが言う
「魔法だー」 「お姉ちゃんも 魔法使ったー」
子供たちが笑う マリアが微笑して思う
(あぁ… そう言う事ね?)
マリアが子供たちを見ると 子供たちが手に残る風を楽しんでいる マリアが軽く笑って言う
「まるで 風の魔法を 使っているみたいだものね?」
子供たちが楽しんでいる マリアが微笑すると 後方で大人たちが言う
「補助装置にも 灯魔力が残っている …これは 相当 能力の高いウィザードの仕事だ」
マリアが反応して振り返る 大人たちが言う
「うむ、ただでさえ 難しい 風の灯魔に加え この魔力の高さ… これほど 優秀なウィザードが居るなら この町は安全だな?開拓事業を進めるか?」
マリアが衝撃を受けて思う
(観光客かと思ったら 事業者の人だったのね…)
大人たちが言う
「いや、しかし 今 ウィザードたちは皆 大灯魔台の灯魔儀式に臨んでいるからな… この灯魔作業をしたウィザードが ずっとこの町に居るとも限らないぞ?それこそ 優秀なウィザードとして神に選ばれて 消えてしまうかもしれない」
マリアが驚く 大人たちが言う
「ではやはり 隣町にするか?隣町のウィザードは 永在ウィザードだって話だ 各地の灯魔状況も良い評価で…」
「いや、隣町は 既に 大手が数社付いている 我々では難しいだろう この町の様な 穴場を探すしかない…」
マリアが思う
(神に選ばれる… か… でも 大丈夫よね?”お母さんのウィザードさま”だけじゃなくって… ウィザード様は それこそ ウィザードじゃなくて 魔法使いになっちゃたんだから… 神様に選ばれて消えちゃう事も その 認定式に出る事だって …もう 無いんだから)
マリアが苦笑して思う
(大体 あの人は 最初から 神様に選ばれる事なんて 望まない… ”マリアのウィザード様”だもの!)
マリアがホッとしてからその場を去って 戻って歩きながら思う
(だからずっと 同じこの地上に居る… お空の散歩が得意でも 私を置いて 天国になんか 行かないよね?)
マリアが視線を向けると 一瞬呆気に取られてから 微笑して向かう マリアの視線の先 レイが杖を横にして浮かべ 椅子代わりにして座り 近くに居る子供たちに風の魔法を使って楽しませている マリアが近くへ行き微笑すると レイが気付いて言う
「あ、終わったのか?マリア?」
レイが言って立ち上がると共に 風の魔法が弱まり 子供たちが言う
「魔法… 無くなっちゃったー?」 「魔法はー?ねー 魔法ー?」
マリアが微笑して言う
「子供たちに 魔法をご披露してたんですね?」
レイが言う
「こいつらが 魔法魔法って うるさくってさ?」
子供たちが言う
「魔法使ってー もういっかいー 魔法ー」 「魔法魔法ー 魔法使いー!」
レイが言う
「もう 終わりー」
マリアが軽く笑う 子供たちが言う
「もっとー」 「もっと魔法ー」
マリアが言う
「もう少し 遊んであげたらどうですか?この子達にとっては 折角の機会ですし?」
レイが言う
「けど、これやってると キリが無いんだよ こいつらの相手している間に 別の奴が来ちゃうからさ?」
マリアが苦笑して言う
「あぁ 確かにそうですね」
レイが子供たちへ向いて言う
「だから 終わりー」
子供たちが不満を漏らす マリアが軽く笑う レイが言う
「それで この後はどうしようか マリア?何処か行きたい所はあるか?まだ少し時間があるからな?」
マリアが言う
「そうですね 3時までは もう少し…」
マリアが考えて思う
(でも もう 灯魔神館は全部回っちゃったし… 他に ウィザード様と一緒に行った所は…)
マリアの脳裏に大灯魔台神館が思い浮かぶ マリアが思う
(…でも あそこはちょっと…)
マリアが考えていると隣を大人たちが通り過ぎながら言う
「…だが ここの前に寄った リテス村の灯魔は良くなかったが… 同じ この町なのに…」
「では 別のウィザードが…?」
マリアが思う
(リテス村…?確か この村から 北にある村の名前よね?そこの灯魔が 良くなかったって…?)
マリアがハッとして言う
「あ、あの… ウィザード様 もし可能でしたら 一箇所 連れて行って頂きたい 場所があるのですが」
レイが言う
「ん?もちろん 良いぞ!マリアは 何処に行きたいんだ?」
マリアが言う
「ここから北にある リテス村の灯魔神館なのですが…」
マリアが気付いて思う
(あっ でも… 移動魔法は 一度行った場所じゃないと無理だって… だから いつも 灯魔儀式への行きは 車で…)
マリアが言おうとすると レイが言う
「ここから北にある村の 灯魔神館だな?…うん、分かった!それじゃ 行こう マリア!」
マリアが言う
「え?あ、でも…?」
レイがマリアを包んで言う
「もう 走るのは大変だからさ?まずは外まで一気に行っちゃうぞ?」
マリアが言う
「は、はい…」
レイの杖が光り レイとマリアが風に消える 子供たちが騒ぐ
上空
レイとマリアが現れ レイが言う
「ここから北だな?…うん やっぱり あの灯魔台だ」
マリアが言う
「一度も行った事の無い 灯魔神館ですが 分かるんですか?」
レイが言う
「ああ、分かるよ だって そこの神館の灯魔台には 一応 灯魔がされているからさ?その魔力を感じるんだよ」
マリアが言う
「あ… なるほど…」
マリアが思う
(私たちが 見に行くって言うのは ちょっと 失礼かもしれないけど… マキ ごめんね… 私、やっぱり さっきの話が気になって…)
レイが言う
「それじゃ マリア あの ”貧弱なウィザード” が灯魔した 灯魔神館へ行くぞ?」
マリアが衝撃を受けて怒って言う
「ですからっ その失礼な言い方は 止めて下さいっ!ウィザード様っ!」
リテス村 灯魔神館
レイとマリアが現れる レイが言う
「はい 到着!多分 ここが その リテス村って所だろ?」
マリアが周囲を見渡し 灯魔神館の表札を見て言う
「あ、はい どうやらそうみたいです 有難う御座います ウィザード様」
レイが言う
「礼には及ばないよ さぁ 行こう マリア 俺たちの代わりに この町を任せた あの”軟弱ウィザード”の…」
マリアが言う
「”軟弱”も駄目ですっ!」
レイとマリアが灯魔神館へ向かう
灯魔台
マリアが呆気にとられて言う
「あ…」
マリアが周囲を見ながら思う
(さっきの灯魔台とは違って 補助装置に灯魔が残っていない… それに 何より…)
マリアが灯魔台を見て言う
「何だか… 今にも消えてしまいそう…」
レイがマリアの横に来て言う
「ああ、消えちゃうだろうな?」
マリアが驚いて言う
「えっ!?」
レイが言う
「まず やり方が間違ってるんだよ 灯魔台は 燭魔台と同じ様に 灯魔するんじゃ駄目なんだ」
マリアが言う
「そんなっ それじゃ!?」
レイが言う
「今はまだ 補助装置が 込められた魔力を増幅してるから 何とか持ってるけど それも もう少ししたら 消えちゃうよ」
マリアが言う
「そんな… では どうしたら良いんですか?」
レイが言う
「そうだな?自分で 勉強するしかないんじゃないか?今なら 大灯魔台の灯魔儀式をやってるんだし 別の町の灯魔儀式とは違って そっちなら 自由に見学に行けるからさ?それを見て分からなければ 終わりだな」
マリアが言う
「お、終わりって…?」
レイが言う
「あんまりにも 灯魔台の灯魔の持ちが悪いと 巡礼者の奴らに除名されるんだよ …それはそうだよな?自分たちの町や村を守る ウィザードがそんなんじゃ 安心出来ないだろ?」
マリアが言う
「それは…っ そうかもしれませんが…」
マリアが表情を落として思う
(”マキのウィザード様”だって きっと 頑張っているのに… それに 大灯魔台の灯魔儀式をしている 他のウィザードの方々だって…)
レイが言う
「さて、こんなの見てても 詰まらないだろ?マリア?観光客もいないしさ?まぁ 当然だよな?…あと少し時間があるけど どうする?まだ何処か行きたいなら 何処でも」
マリアがハッとして言う
「あ、それなら…っ ウィザード様 もし可能でしたら!」
レイが言う
「うん!何処へ行きたいんだ?マリア?」
大灯魔台神館 外
レイとマリアが現れ レイが言う
「はい 到着!ここが この前 俺たちが見に行かなかった時に 灯魔された 大灯魔台だぞ~?マリア」
マリアが言う
「有難う御座います ウィザード様」
レイが言う
「礼には及ばないよ!それにしても マリアはやっぱり」
マリアが苦笑して言う
「”マリアはやっぱりマリア”ですか?ウィザード様?」
レイが言う
「いや、灯魔儀式が好きなんだな~?って思ってさ?」
マリアが呆気に取られて言う
「え?あ…」
レイが言う
「だって 俺がマリアと 初めて会ったのも 灯魔儀式だもんな?それも 大灯魔台のさ?」
マリアが苦笑して言う
「そうですね でも 10年前は 灯魔を心配して来た訳では なかったと思いますが」
レイが言う
「そうか そうだよな?流石のマリアも 10歳くらいの子供の頃じゃ 仕事を大好きになんか なってないか?」
マリアが呆気に取られた後苦笑して言う
「…それはそうですね?」
レイが言う
「それじゃ 今は 仕事が大好きな マリアの為に あの”出来損ないウィザードたち”の 仕事を 確認しに」
マリアが衝撃を受け 怒って言う
「ですからっ!あのウィザードの皆さんたちの事も 悪く言わないであげて下さいっ!ウィザード様!」
レイが向かいながら言う
「そうか!マリアは やっぱり優しいな?マリアが言うなら しょうがないから そうしてやるか」
マリアが苦笑して言う
「もう…」
マリアが追い掛けながら言う
「大体 ウィザード様は 優しいのか 優しくないのか どちらなんですか?」
レイが言う
「どちらでも良いぞ?マリアの好きな方で良いよ!」
マリアが言う
「ですから そう言う問題じゃなくて」
レイが言う
「俺にとっては そう言う問題だよ マリア!俺はマリアが…」
マリアが言う
「ですから そうではなくて…っ」
レイとマリアが神館へ入って行く
自宅 前
レイとマリアが現れ レイが言う
「はい 到着!」
マリアが言う
「はい 有難う御座います 時間も お茶の時間に ピッタリですね?」
マリアが玄関へ向かう レイが言う
「そうだな!大灯魔台は 見学スペースより先には行けないから 遠くから一目見るだけだったな?詰まらなかったか?マリア」
マリアが言う
「いえ ちゃんと 灯魔が成功したって事が 分かったんで 十分でしたよ?」
マリアが玄関の鍵を開ける レイが言う
「そうか まぁ あの大灯魔台の属性は 火だったんだから 一番簡単な 火の灯魔を6回やるくらいなら あの…」
マリアが慌てて言う
「”7人のウィザード”で!」
レイが言う
「そうそう!その”7人のウィザード”でも 大丈夫だよ!それくらい出来るように 計算されているだろうからさ?」
マリアが苦笑して言う
「やっぱり 法魔帯の色で ですかね?」
マリアが玄関ドアを開ける レイが言う
「ああ、そうだな?」
マリアが言う
「それなら良かったです… 今回は ウィザード様も ”お母さんのウィザードさま”も 居なかったんですから ちょっと心配だったんです」
レイが言う
「やっぱり マリアは 仕事熱心だよな?」
マリアが苦笑して言う
「もう 奉者じゃないですから 灯魔儀式にウィザード様を 連れて行くお仕事は しないですよ?」
レイが言う
「そっか …それじゃ もう 大灯魔台の灯魔儀式に行く事も 無いのか?」
マリアが一瞬止まってから 微笑して言う
「そうですね きっと… もう無いですよね?」
マリアが思う
(ウィザード様とは ずっと地上で 一緒に居るんだから…)
マリアが微笑して言う
「さ、ウィザード様!入って 3時のお茶にしましょう?」
レイが言う
「うん!」
レイとマリアが家に入る
リビング
レイがソファに座っていると マリアがティーセットを持って来て言う
「お待たせしました」
マリアがテーブルにティーセットを置いて ポットにお湯を入れながら言う
「こうして ウィザード様と このお家でお茶を飲むのは…」
マリアがお湯を入れ終えて ソファに座る レイが向かいのソファに座っていて言う
「えっと 3回目か?」
マリアが疑問して言う
「あ… はい… そうですね?」
マリアが思う
(あれ?どうして今日は?)
レイがポットに魔法を掛けながら言う
「やっぱ俺は この家で マリアと一緒に 仲良くお茶を飲むのが 一番落ち着くよ!外だと 何となく… まず 色んな声が聞こえてきてさ?うるさいんだよな?それに…」
マリアがレイを見ていると レイが言う
「マリアも この家で飲む方が 好きだろう?」
マリアが言う
「え?えっと… そ、そうですね?」
マリアが疑問して思う
(あれ?…なんでだろう?ウィザード様が 私と一緒に居て 隣に座らないだなんて… それこそ ”外”以外の時は すぐに…)
レイが言う
「マリアは マリアのお母さんと住む この家が大好きなんだろ?だったら やっぱり お茶もこの家で飲む方が 旨いんじゃないか?」
マリアが思う
(この家が大好き…?うん そうだと思う… 会社からはちょっと遠いけど… お母さんも ”お母さんのウィザードさま”のお部屋まで 遠いだろうけど それでも… 10年前だって やっぱり この家から通うって お母さんはそう決めたんだよね?それは この家が… ううんっ お母さんは お父さんの事が ”受け入れられなかった”って …だから?)
レイが紅茶をカップに注ぎ言う
「はい、マリア」
マリアがハッとしてレイを見ると レイがマリアの側のテーブルに紅茶を置く マリアが言う
「あ…」
マリアがレイを見ると レイが自分の分の紅茶を入れ カップを持ち マリアの視線に疑問して言う
「ん?どうかしたのか?マリア?」
マリアが言う
「い、いえ… 有難う御座います」
レイが言う
「どういたしまして!ウィザードじゃなくたって 自分が大好きな奴には 自分が魔法を掛けた お茶を出すのは 普通だよ!俺たちはな?」
レイが紅茶を飲む マリアが言う
「そ、そうなんですか… では 頂きます」
レイが言う
「うん!」
マリアが紅茶を飲んで言う
「美味しい」
レイが微笑して言う
「うん!美味しい!やっぱ マリアと一緒に飲む お茶は すげぇ美味しいよ!」
レイが紅茶を飲む マリアが思う
(…でも やっぱり おかしい… 紅茶はいつもと同じで 美味しいけど …どうして今日は ウィザード様は 向かいの席に?折角 外ではなくて お家でお茶を 飲んでいるのに?いつもなら… 今日は いつもみたいに ”仲良く” しないの?)
マリアが言う
「あ、あの… ウィザード様?」
レイが言う
「うん?何だ?マリア?」
マリアが思う
(あぁ… でも ”どうして 今日は 隣に来ないんですか?どうして 抱き付かないんですか?” だなんて とてもじゃないけど 言えない… だから…)
マリアが苦笑して言う
「ヴィ… ウィザード様が 私の 向かいの席に座っているのって… 何だか 久し振りですね?えっと… 確か 2回目ですか?」
マリアが思う
(そうよね?あの時… 魔法使いになったウィザード様と 再会した あの日 あの喫茶店で お茶を飲んだ時以来…)
レイが気付いて言う
「ああ、そう言えば 2回目だな?あの時は 外だったし それに マリアを守るのは 俺じゃないんだって 思ってたからさ?」
マリアが言う
「え…?あ…」
マリアが思う
(そうだった あの時は ウィザード様に誤解を させちゃったのよね?私が ”お母さんのウィザードさま”の 奉者になりたがっているんだ って…)
レイが言う
「けど あの時マリアが俺に ”マリアのウィザード様”で 居て良いって言ってくれたからさ それからは俺 また 出来るだけ マリアの近くに居られるようにしていたんだけど …でも マリアはやっぱり いつも忙しいから 短い時間に 魔力を移そうと思うと 出来るだけ身体を近付ける方が良くって」
マリアが驚いて思う
(…えっ?今 何て?…魔力を移そうと思うと?身体を近づける方が…!?それじゃ…っ)
マリアが言う
「…それじゃっ もしかして!?…いつも 私に 抱き付いていたのは?その…っ ”魔力を移す為” だったんですかっ!?」
マリアが思う
(そんなっ まさかっ!?)
レイが言う
「ああ!そうだよ?そうしないと マリアの身に何か有った時 助けられないからな?」
マリアが思う
(嘘っ!?それじゃ…っ!)
マリアが呆気にとられて言う
「それじゃ… ずっと… あの ウィザードであった時も?」
レイが言う
「もちろんだよ マリア!ウィザードなら 尚更!自分の奉者を守れなかったら 笑い者だからな?」
マリアが言葉を失う レイが言う
「それに 俺は ウィザードであろうが 魔法使いであろうが ”マリアのウィザード様”だからさ?マリアの事は必ず守るって!…けど 俺 実は 結構ヒヤヒヤしてたんだよな?マリアは人前で抱き付くなって言うし この家の前でも やっぱり嫌だって言うからさ?…俺 このままじゃ マリアに嫌われちゃうかと思って …それに 魔力を移そうと思うと やっぱり 時間が足りないんだよ それで 俺は その お守りを作る事にしたんだ!」
マリアが言う
「え!?こ、これっ!?」
マリアがネックレスを見る レイが言う
「ああ、俺は デカイ魔力の割りに それを制御する精神力は低いからさ?お守りを作るとか そう言う細かい作業は 一番苦手で 自信も無かったんだ けど、万が一 マリアにマリアのお父さんみたいな事が起きたら 取り返しが付かないからな?だから 思い切ってやってみたら 上手く行ったよ!頑張れば出来るもんだよな?ははっ」
レイが紅茶を飲む マリアが思う
(そんな… どうしよう?また…)
マリアが視線を落として思う
(また 私の ”勘違い”だった…)
マリアが俯いて思う
(ウィザード様は ただ私の為に… …私に魔力を移す為に ”仲良く”していただけ… そうよ 良く考えれば ウィザード様は このネックレスをくれた時から いつもの送り迎えで 私に抱き付いては来なくなったもの… だから 今のこの状態こそ 私とウィザード様の 正しい姿…)
マリアがレイを見る レイはテーブルを挟んだ先のソファに座っている マリアが視線を落として思う
(あぁ… 何だろう?何だか とっても… 遠い… 同じこの部屋に居るのに… 一緒に 仲良く… お茶を飲んでいる筈なのに…?)
レイが紅茶を飲み終わり お替りを注ぐと マリアのカップを見て 紅茶を継ぎ足してから 自分のカップを持てソファに身を静めて飲み 嬉しそうにマリアを見る マリアが思う
(抱き付く所か… そんな遠くに居たら …もう 手も届かないわ…)
マリアが手を握りしめる レイが疑問して言う
「マリア?」
マリアがハッとする レイが心配して言う
「どうかしたのか?マリア?何だか… 凄く辛そうだ 何かあったのか?」
マリアが困って言う
「あ… いえ…」
マリアが思う
(言えない… 隣に座って貰えないのが… 抱き付いて貰えないのが… 寂しいだなんて… 今まであれだけ 嫌がって来たのに… ウィザード様は ただ魔力を移そうとしていただけなのに… それに 嫌われるかもしれないだなんて 心配までさせて置きながら…っ 私は…)
マリアが紅茶を飲んで思う
(何だか 急に 1人ぼっちに されちゃったみたい… お母さんも こんな感じなのかな…)
マリアが思い出す
ソニアが苦笑して言う
『お母さん 一人になっちゃったわ お母さんの両親は もう亡くなっているし 兄弟とも 疎遠になってしまっているから やっぱり ちょっと 寂しいわね?』
マリアが思う
(お父さんと別れて 私とも 姓が別になって… 私には 疎遠も何も 兄弟なんていないし …ウィザード様も 傍には居なくて …私 …やっぱり お母さんと同じ姓にしてもらおうかな?だって そうしないと 私… 本当に… 1人に…?)
マリアが思い出して言う
「…あ、あの ウィザード様?」
レイが言う
「ん?どうした?マリア」
マリアが言う
「その… 先日 話辛い事を 無理して お話して頂いたのに それを蒸し返す様で 申し訳ないのですが」
レイが言う
「マリアのお父さんの話か?俺は構わないぞ?」
マリアが苦笑して言う
「有難う御座います では お言葉に甘えて もう少し… ウィザード様が知っている限りの 私の父の事を 教えてもらっても 良いですか?私… 当時は5歳だったので 殆ど父の事を覚えていなくて だから何でも… ちょっとした事でも良いので」
レイが言う
「うん… 俺も その頃は マリアと同じ位の歳で それに あんまり 人と話したりとか… その… ”探求者”って奴らが 何を目的にしているのかも 分からなかったからさ?それに、あいつらは 昔も今も 俺たちみたいな 魔法を使う奴の事が嫌いなんだよ」
マリアが言う
「え?」
レイが言う
「だから余計 近付かなかったんだけど でも 一度だけ そいつらに ”何をしたいんだか知らないけど アウターに行ったら危ないぞって” 忠告をしたんだ ”結界の中に居るべきだ”って …そしたら 連中は 魔法使いの格好していた俺に 文句を言って来てさ?けど、そんな中で ”いくら魔法使いでも 子供相手に そんな事は言うな”って 庇ってくれたのが マリアのお父さんだったよ」
マリアが驚く レイが言う
「それで、こんな所に居ないで 親の所に帰れって 言われたっけ?まぁ 俺は その頃から 親なんて この世に居なかったから 言われた通りにする事は 出来なかったけどさ?…その3日後位だったかな?異常魔力の強い日があって 連中は 喜んで向かって行ったよ あの頃の俺には 理解出来なかったけど 今なら きっと あいつらは 異常魔力の強い時こそ その元って奴が すぐ近くにあるって 思ったのかもな?…それで 次の日 戻って来た連中の中に マリアのお父さんは居なかったよ」
マリアが言葉を失っている レイがマリアを見て言う
「俺が知ってるのはそれだけだ 連中が魔法の使える範囲で 野生動物の群れに遭遇してたなら 助けてやれただろうけど… 俺は連中の事 そこまで見てなかったし 助けてやろうって気も やっぱり無かったな …でも 1つ分かる事として」
マリアがレイを見る レイが言う
「奴らが探している 異常魔力の元って言うのは 連中みたいのが 向かって行って 辿り着けるほど 近くになんか 無いんだよ そいつは もっと遠くにあって …でも 異常魔力は 結界のすぐ外まで来るんだ」
マリアが言葉を失っている レイが苦笑して言う
「だから 外へ出るなって… 言ったんだけどな?」
マリアが微笑して言う
「有難う御座いました ウィザード様」
レイが言う
「…ごめんな マリア」
マリアが顔を左右に振ってから思う
(ウィザード様が 謝る必要なんて 全く無い… きっと 探求者の人たちは 警告を聞いても 未来の為にって… 自分たちに出来る事を やりたかったんだと思う… それが 例え 手の届かないものであっても…)
マリアが定期券入れの写真を思い出して思う
(お父さんは 当時は小さな魔法使いだった ウィザード様を見て もしかしたら 私の事を思い出したのかもしれない… それで 親の下へ帰りなさいって… でも それなら 自分こそ 私とお母さんの居る この家に帰って来てくれたら良かったのに… そうしたら私は 1人になんてならなかった… お母さんとも…)
マリアが肩の力を抜く レイがふと気付いて言う
「…あ?マリア?」
マリアが疑問してレイを見る レイが言う
「あのさ?今 この家の前に マリアのお母さんが…」
マリアが一瞬疑問した後慌てて言う
「えっ?…お母さんがっ!?」
インターフォンが鳴る マリアがハッとして思う
(あっ!えっ!?どうしようっ!?お母さんが 帰って来ちゃったっ!?)
マリアが思わず立ち上がって思う
(でもっ!今ここには ウィザード様がっ!…べ、別に そのっ 何も悪い事は 無いんだけどっ!?)
インターフォンがもう一度鳴る マリアが慌てて玄関へ向かいながら言う
「は、はいっ!?お、お母さんっ!?」
玄関の外からソニアの声がする
「マリア?そこに居るかしら?鍵を開けてもらいたいのだけど お母さん 手がふさがってて…」
マリアが慌てて言う
「あっ う、うんっ!」
マリアがドアを見て思う
(…で、でもっ!この家に ウィザード様が居る時に お母さんが その家に入ったりなんてしたら…っ お母さんの入る この家に”悪い魔力”が居るって ”お母さんのウィザードさま”が 怒って来ちゃうんじゃっ!?)
レイが疑問して言う
「鍵を開ければ良いのか?」
マリアがハッとしてレイを見て思う
(あっ!”悪い魔力”がっ!)
レイが軽く杖を動かすと 玄関ドアの鍵が開く マリアが衝撃を受けて思う
(あっ!だ、駄目ーっ!)
レイが杖を更に動かすと 玄関ドアが開く マリアがハッとして振り向くと ソニアが言う
「あら、ありがとう 気がきくわね」
マリアが言う
「あっ!お母さんっ!今 お母さんが入ったらっ!」
マリアが思う
(”お母さんのウィザードさま”が…っ)
マリアが一瞬向かおうとした動作を止め 目を丸くして驚いて言う
「…えっ?」
ソニアがマリアを見た後 レイを見て微笑して言う
「まぁ 本当に丁度良かったわ?風の魔法使いさんも居るって事は 今は2人で3時のお茶を 飲んでいたんじゃないかしら?お母さんたちも それに ご一緒させてもらおうと思って?」
マリアが呆気に取られて思う
(お、”お母さんのウィザードさま”が… ウィザードさまが… こ、この家に… き… き… 来たっ!?)
ソニアの隣にウィザードさまが居る ウィザードさまがレイを見てから マリアを見る マリアが衝撃を受け緊張してから ソニアへ向いて言う
「あ、あの…っ!?お、お母さんっ!?」
マリアが思う
(ど、どうして!?い、一緒に お茶をってっ!?…そ、それは 3時だから 丁度良いって…っ!?で、でもっ この家で 2人のウィザードを 対面させちゃうなんて なんか… どう考えてもっ)
マリアがレイを見て思う
(き… 危険 過ぎる…っ!?)
レイが言う
「ようっ!先輩!久し振り!」
ウィザードさまが言う
「…ああ」
マリアが衝撃を受けて思う
(えっ!?…あ、あれ?そ、そうでもないの…?私は… てっきり その…)
マリアが視線を逸らして言う
「何か… 対決的な…?」
ソニアが言う
「マリア?」
マリアがハッとしてソニアを見て言う
「えっ!?あっ う、うんっ!えっと… お、お茶だっけ?それじゃ い、一緒に…っ!?」
ソニアが言う
「その前に マリア 聞いてもらえる?」
マリアが言う
「う、うん?何?」
ソニアが言う
「お母さんね?」
マリアが言う
「うん?」
マリアが思う
(お母さんは…?あ、そうだった お母さんに 旧姓を聞かないと… 表札を作るのに… あ、なら 丁度 良かったかも?)
ソニアがウィザードさまに触れて言う
「この人と …結婚しました!」
マリアが呆気に取られたまま思う
(ひょ… 表札を… 旧姓を… 聞か… ない… と…っ!?)
マリアが言葉を失って思う
(えぇええーーっ!?)
レイが喜んで言う
「お!そうなのか!おめでとな!先輩!良かったなぁ!」
ウィザードさまが羞恥に顔を逸らす ソニアが微笑して言う
「うふふっ ありがとう 風の魔法使いさん でも この人 恥ずかしがり屋さんで だから あまり…」
マリアが呆気に取られて言う
「ど、どうして… そんな 急に?だ、だって… 表札…」
マリアが思う
(表札を作ろうって… いや、違うわ… 私も お母さんと 同じ姓にしてもらおうって…っ そう思っていたのにっ!?)
ソニアが言う
「お母さん お父さんと 離婚をして 1人になっちゃって… でも、やっぱり 寂しいなって思っていたの …それで」
マリアが思う
(まさか その瞬間にっ!?)
レイが言う
「おっ!?その瞬間に 先輩!上手い事 割り込んだのか!?」
マリアが衝撃を受けて思う
(なっ!?なんて言葉をっ!?そんな…っ 私がっ 言いたくても 絶対 言えない言葉をっ!!ウィザード様!―ナイスフォローですっ!)
ソニアが笑って言う
「うっふふっ この人が そんな事をする筈が 無いじゃない?」
マリアが衝撃を受けて思う
(えっ!?そうなの…っ?あ、うん でも 確かに …そう言う感じでは)
レイが言う
「ん?そうだな?そう言えば 先輩は属性通り 何も言わない奴 だもんな!」
マリアが思う
(そ、そうだったっ!属性でって…!?それはえっと…?でも 確かに 何も言わない人だってっ!)
ウィザードさまが沈黙している ソニアが微笑して言う
「うふふっ そうでしょ?だからね?思い切って… それこそ 駄目元で お母さんから 求婚してみたの …そうしたら」
マリアが言う
「えっ!?お母さんからっ!?」
マリアが思う
(お母さんって そんな 思い切っちゃう 人だったのっ!?)
レイが言う
「おお!マリアのお母さんから 告白したのか!すげぇな!それなら 先輩も 嫌とは言わないよな!だって 先輩は」
マリアが思う
(あ… そうだったっ ”お母さんのウィザードさま”は ”永在ウィザード”だから… だから、結婚も許されて… でも だからって!?)
レイが言う
「先輩は 水の属性だから 流されるタイプだもんなー!」
マリアが衝撃を受けて思う
(やっぱりっ!?そう言う事なのっ!?)
ソニアが言う
「あら それなら 私の あの時の勢いに 流されてしまったのですか?」
マリアが思う
(そうなんですかっ!?)
ウィザードさま言う
「…いや その様な筈が 無いだろう…」
マリアがホッとして思う
(そ、そうですよね!?いくらなんでも…)
ソニアが言う
「そうでしたか では…」
レイが言う
「大好きな奴から 求婚されたんなら 当然 受けるに決まってるって!先輩の 長年の願いが 叶ったんじゃないか!?もっと素直に喜べよ 先輩!」
マリアが思う
(えっ!?そうだったのっ!?大好きだったのっ!?そうだったんですか!?)
ソニアが言う
「あら そうだったのですか?一度も その様な事は 仰って下さらなかったのに…」
ウィザードさまが言う
「…私は ウィザードとして 生きていくつもりだった 従って そのような事は」
マリアが思う
(そ、そうですよね!?さ、流石 本物のウィザード… 自然の声を聞いて 人と自然の共生を…)
レイが言う
「なんだよ それじゃ ただ 自分の奉者だからって あんなに守ってたのか?普通 儀式の最中に 結界魔法なんて使わないぞ?自分が やられても 奉者だけは守ってやろうなんてさ?そんな事するウィザードなんか居ないのに ただ 自分の奉者だから 守ってやろうって?本当に そう思っていただけなのかよ?」
マリアが思う
(お母さんを守っていた?結界魔法で…?そうだったんだ?だから 10年前のあの時も… でもそれは ただ お母さんが 自分の奉者だったから?)
ソニアが言う
「あら そうなのですか?…ただ 貴方の奉者だからって… だから 今回も 私からの求婚を 受けて下さった だけ なのですか?」
マリアがウィザードさまを見る ウィザードさまが言う
「いや そんな事は…」
マリが思う
(そ、そんな事はって!?…それじゃ そうだったり そうじゃなかったりみたいな!?…つまり それは ―どっちなんですかっ!?)
レイが言う
「なんだよ 先輩 男らしくないぜ!?普通 告白は男からするものだろっ!?いくら 水の属性だからって 流されてばっかり居るなよな!本当は 大灯魔台の灯魔儀式で 不認定受けて 魔法使いに戻って それで 求婚するつもりだったんじゃないのか?」
マリアがウィザードさまを見る ウィザードさま言う
「その様な事を するつもりは無かった… 私は ただ これ以上 ウィザードの認定試験を受けまいと …地上に居られる その方法を 模索していただけだ」
マリアが気付いて思う
(あ、そっか… そうなんだ …だから 法魔帯の色を…)
レイが言う
「それで 地上に残って 森羅万象の異変を止めてやろうって?けど その理由はやっぱり」
マリアが思う
(やっぱり!?)
レイが言う
「先輩の 大好きな 奴である マリアのお母さんが居る この地上を守ってやろうって それが 理由だったんじゃないのか!?」
マリアが衝撃を受けて言う
「そ、そんな訳…っ!」
ソニアが言う
「あら そうでしたのですか?私の居る この地上を守って下さろうと?それで?」
ウィザードさまが言い辛そうに言う
「…そうかもな」
マリアが思う
(そうだったんですかっ!?)
レイが言う
「なら 良かったじゃないか!?ウィザードじゃ 結婚なんて出来ないけど 永在ウィザードなら 結婚も出来るし!丁度 その時に 大好きな奴から 求婚してもらえたなんて すげぇ良いタイミングだよな!先輩!こんなに上手く 話が流れるんだから そのまま 水属性のままに やっぱり 流されちゃうよなー?」
マリアが思う
(だ、だからって こう言う事は 普通 流されて 良いものじゃっ!?)
ソニアが言う
「まぁ… では本当に 機が良かったのですね?」
ウィザードさまが言う
「…ああ もう どうとでも言ってくれ…」
マリアが衝撃を受けて思う
(な、流されてるっ!?)
マリアがティーポットにお湯を注ぎ ソファに腰を下ろして思う
(まさか この家で… このメンバーでお茶を飲む日が… 来るだなんて… …それこそ ウィザード様と2人で お茶を飲む事以上に 無い事だと思ってたんだけど …それにも増して どうして… どうして こう…?)
マリアがメンバーの配置を見て思う
(こう言う 座り方になるんだろうっ?)
マリアが視線をティーポットに固定したまま思う
(ソファは4方に4つ… 2人の時は 向き合って座るのは もちろんだけど それが4人になれば… 当然 4方に… そう言う時は 向かいじゃなくて きっとウィザード様は私の左右のどちらか… で、きっと お母さんがその逆側… かな?とか… でも それは良いとしても …むしろ どうして… どうして…)
マリアが正面の席で視線を逸らしているウィザードさまを見て思う
(”お母さんのウィザードさま”は 正しいと思う… 実際 私だって 目が合わせ辛いし… なのに 当のお母さんが…)
マリアがソニアを見る ソニアはウィザードさまに寄り添い甘えている マリアが視線を逸らして思う
(…お母さんって …意外と大胆な人だったのね… そ、そうよね…?大体 男の人に 自分から求婚しちゃうなんて… しかも 相手は ウィザード… 人と神様との間って人で その人を相手に… それに…)
ウィザードさまが小声で言う
「ソニア… 少し離れてもらえないか…?」
マリアが思う
(…そうですよね?私も そう思います だって…)
ソニアが言う
「あら 良いじゃないですか?夫婦なのですから?」
マリアが思う
(う…っ そ、それも そうよね?確かにそうかもしれないけど… でも、やっぱり 私としては…)
ウィザードさまが小声で言う
「…増して 娘の前だろう…?」
マリアが思う
(そうですっ!私も そう思います!…何だろう?実のお母さんより 意見が合うだなんて… いや、違う これって きっと 普通の意見なんじゃ…?)
ソニアが言う
「娘は家族ですもの?でしたら 良いではありませんか?」
マリアが思う
(それは そうだけどっ!?)
レイが言う
「別に良いじゃないか?好きな奴同士なら 娘の前だろうが 人前だろうがさ?俺はそう思うよ?」
マリアが思う
(それは 貴方だけですからっ ウィザード様っ!)
レイが言う
「そんな事よりさ?先輩」
マリアが思う
(そ、そんな事より!?)
レイがティーポットへ手を向けて言う
「このお茶なんだけど… 魔力者が2人居るって こういう時はさ?」
マリアが思う
(やっぱり お茶の話が優先ですかっ!?)
レイが言う
「普通 ティーポットを2つにするよな?」
マリアが言う
「えっ!?あっ…」
マリアが思う
(あ、そっか… ウィザード様だけじゃなくて ”お母さんのウィザードさま”だって 自分の奉者に 自分の魔法を掛けた紅茶を…?)
ソニアが言う
「あら 残念だけど このお家には ティーポットは それ1つしか無いのよ」
マリアが思う
(そ、そうだったんだ?知らなかった… でもそうよね?確かに 他のは見た事が無いし… そもそも このティーセットすら 使うかどうかって 思っていた位で…)
レイが言う
「じゃぁ どうする?俺が掛けたら…」
マリアが思う
(ウィザード様が 紅茶に魔法を掛けたら?)
ウィザードさまが言う
「活性魔法の二重掛けは 発がん性物質になりうるだろう」
マリアが衝撃を受けて思う
(発がん性…っ!?いや、そうじゃなくて…っ!?)
レイが言う
「そうだよな?それじゃ やっぱ」
マリアが思う
(結界魔法じゃないんですからっ そこは 二重にしないで どちらか1人だけが 掛ければ良いんじゃ…?)
レイが紅茶をカップに注ぎながら言う
「今回は 魔法は無しって事で」
ウィザードさまが言う
「賢明だな」
マリアが衝撃を受けて思う
(お互いに 今回は譲ろう とは 思わないんですねっ!?)
ソニアが笑っている
マリアが紅茶を一口飲んで思う
(ああ… でも、何だろう?紅茶は ウィザード様の魔法の掛かっていた さっきの紅茶の方が美味しかったけど… あの時の方が 気持ちは落ち着いていたけど… 今は… 紅茶は普通の紅茶で 格別美味しくはないし… 増して 目の前に あのウィザードさま居るって事が 何より 緊張するんだけど)
マリアがチラッとウィザードさまを見てから 視線を泳がせて思う
(…でも さっきより 何となく… 良いかも?って 思えているのは… やっぱり…)
マリアがソニアを見る ソニアが微笑してウィザードさまに寄り添う ウィザードさまが一瞬衝撃を受け 視線を逸らして困る マリアが密かに苦笑して思う
(やっぱり お母さんが 一緒に居てくれるから?姓は違っても… 更に変わっちゃったみたいでも…?でも やっぱり この家に 一緒に居て… それに)
マリアが横を見る レイがマリアの横で紅茶を飲んでから マリアを見て微笑する マリアが苦笑を返してから思う
(ウィザード様が 隣に居てくれるのが 何より… 嬉しいのかも?…あれ?それじゃ もしかして 私も…?)
マリアがソニアを見る ソニアはウィザードさまを見て可笑しそうに笑っている ウィザードさまが困りつつ苦笑する マリアが思う
(私も 本当は お母さんみたいな 性格なのかな?…そうよね?親子だもん… 似ていて当然… 1人じゃ寂しいって… お母さんも 耐えられ無くて それで ”お母さんのウィザードさま”に 駄目元で 求婚しちゃったって… それだけ 寂しかったんだよね?だから 私も…)
マリアが一瞬レイを見て ハッとして思う
(私も… って!?ち、違うっ!そうじゃ無くてっ!?私は… 私は ウィザード様に 求婚するんじゃなくてっ 私は… やっぱり お母さんと同じ 姓にしてもらおうって… あ、でも 今度は…)
マリアがハッとすると ソニアが言う
「あ、それでね?忘れる所だったわ マリア」
マリアが言う
「え?」
ソニアが大きめの封筒を取って言う
「このお家の名義をね?マリアの名前に変えて来たから… はい、これで 今日から このお家は マリアの物よ」
ソニアが書類をテーブルに出す マリアが言う
「あ…」
マリアが書類の名前を見て表情を落とす ソニアが書類を捜しながら言う
「それから… こっちが 土地の権利書 …どちらも マリアの名前に変えてあるから」
マリアが言う
「う、うん…」
ソニアが言う
「これで このお家の事は 全部マリアに任せるわ」
マリアが言う
「え?」
ソニアが言う
「これからは お母さん この人の あのお部屋に 一緒に住む事になるから」
マリアがハッとして思う
(そ、そっか…っ そうよね!?…だって 結婚したんだから…っ!)
ソニアが言う
「ウィザード様のお部屋には 元々 奉者の住める部屋も用意されているから 必要なものも一通り 揃っていて… だから このお家から お母さんが持って行くのは お洋服位だと思うけど」
マリアが言う
「そ、そうなんだ?」
マリアが思う
(それじゃ… 洋服を持って行って… それで もう… お母さんは この家には 帰って来ない… そうしたら 私は…?私は この家で1人きり…)
マリアが視線を落として思う
(私… 1人きりになっちゃった… お父さんも お母さんも 居ない… この家に たった1人で 住むなんて… 考えた事なかった…)
ソニアが言う
「…お母さん いずれどこかで 1人で住むのかなって 思った途端」
マリアがハッとする ソニアが言う
「とっても寂しくなっちゃって…」
マリアがソニアを見る ソニアが苦笑して言う
「だって マリアはいつか 結婚して お相手の所へ行ってしまうから… マリアは私の可愛い娘だけど ずっと一緒に居られる訳ではないものね?」
マリアが言う
「そ、そうだね…」
マリアが思う
(そうだよね… そうかもしれない… 私は女の子だから 結婚すれば相手の方へ行くって… そうしたらお母さんは 1人きりになるって… それで今の私と 同じ気分に… それで…)
マリアがウィザードさまを見る ウィザードさまがソニアからマリアへ視線を向ける マリアが思わず視線を逸らして思う
(…それで ”お母さんのウィザードさま”に お願いしたんだ?一緒に居て欲しいって… 結婚して下さいって… その気持ちは …今なら 私にも分かる …それに)
マリアがソニアを見る ソニアがウィザードさまを見て寄り添う ウィザードさまがソニアへ向く マリアが思う
(お母さんは きっと ”お母さんのウィザードさま”の事 …好きだったんだ …だけど 今までは 奉者として しっかり勤めを果たそうと… もしかしたら 今はその反動もあって あんなに …嬉しそうに)
マリアが苦笑して言う
「お母さん 良かったね」
ソニアが驚いてマリアを見る マリアが微笑して言う
「あ、私… 言い忘れちゃってた …ご結婚 おめでとう御座います!」
ソニアが微笑して言う
「ありがとう マリア」
マリアがウィザードさまを見る ウィザードさまが一瞬驚き苦笑して言う
「…すまない」
マリアが一瞬驚いてから苦笑して思う
(すまないって… それは やっぱり 私から お母さんを 取っちゃうって事に対して?…そう だよね?そのせいで 私は 1人に…)
ウィザードさまが言う
「…君の父親には 悪いと思っている」
マリアが疑問して思う
(え?父親に?…お父さんに?…そっか そう言う事?…それじゃ さっきのは 私のお父さんに対して?それじゃ… 私… には…?)
ソニアが言う
「それでね?マリア」
マリアがソニアを見る ソニアが書類を封筒に戻しながら言う
「婚姻手続きと一緒に その書類も 一通り済ませて来たのだけど… マリア?マリアさえ良ければ …マリアも お母さんと一緒に 新しいお義父さんと 家族になる?」
マリアが呆気にとられて言う
「え…っ?」
ソニアが微笑して言う
「お母さん マリアと別の姓になって とっても 寂しかったわ でも マリアは お父さんの子供でもあるのだから お母さんの我が侭だけを通したら 怒られちゃうと思って」
マリアが思う
(あ… そうだったんだ?それで…)
ソニアが言う
「お母さんは いくら あの人の死を受け入れられないと 言葉で言っても 実際に この目で見て確認をしたから… 後は 気持ちの問題だった… でも マリアはそうじゃないから 何時までも 心の中で お父さんと一緒に… お父さんの娘で有り続けたいって …そう思うかと思って だから その選択は マリアに任せるわ」
マリアが言う
「あ… う、うん…」
マリアが思う
(そっか… そうだったんだ?お母さんは お父さんを確認したんだ?…それで …でも 私は 当時は5歳だったし そんなの見られなかった それでも 私は 今日)
マリアがレイを見て思う
(今日… ウィザード様から お父さんの事の聞いて 少しだけど どんな人だったかは分かった …それに 戻って来なかったって事も… だから 私は もう… …あ!でも だからって 私がそうしたいと言っても)
マリアが言う
「…でも 折角だけど …悪いよ?」
ソニアとウィザードさまがマリアを見る マリアが苦笑して言う
「私は… もう 子供でもないし… お母さんは 新しい人生を 始めようとしているんだから…」
マリアが思う
(だから 私が 居たら…)
ソニアが苦笑して言う
「あら?この人は マリアの事 ずっと小さい頃から 知っているのよ?」
マリアが言う
「え?」
ソニアが言う
「前にも言ったでしょう?お母さん マリアのお話を一杯していて この人もそれを喜んでくれたって… 一緒に住んでは居なかったけど マリアの事は いつも気に掛けてくれていたのよ?だから マリアが小さい頃は お母さん ずっと マリアと一緒に居たでしょう?」
マリアがハッとして言う
「あ、そう言えば」
マリアが思う
(今から考えれば 不思議なくらい お母さんは いつも家に居た… 私が 学校から帰って来ても… 行く時だって 今とは 比べられ無い位…)
ソニアが言う
「奉者の仕事は最低限で良いから 娘の傍に居てあげなさいって… そう言ってくれてたのよ お母さんは その言葉に甘えさせて頂いて… お陰で お父さんは居なかったけど お母さん 一杯 マリアと一緒に居られたの」
マリアが思う
(そっか… そうよね?普通 片親で 子どもを育てようなんて思ったら あんなに一緒になんて 居られない…っ 奉者の仕事をしていたなら 尚更…っ)
ソニアが言う
「だから いつも その分も… お母さん ”今日はマリアが何をした” とか ”運動会の かけっこで1番になった” とか 良く話していたのよ?…ふふっ」
マリアが苦笑して言う
「そんな… 恥ずかしいよ… お母さん」
ソニアが軽く笑って言う
「あら 恥ずかしがらなくても良いじゃない?マリアはお母さんの 自慢の娘で… その娘の子育てに 協力してもらっていたのだから お母さんは お父さんと同じ様に この人に色々報告していたの」
マリアが思う
(そっか… お父さんに報告するのと同じ様に… なんだ それじゃ その頃から ”お母さんのウィザードさま”は まるで 私の…)
レイが言う
「なんだ それじゃ 先輩 その頃から マリアのお義父さんじゃないか?」
マリアがハッとしてレイを見る レイが言う
「それに いくら 実際の父親でもさ?この世に居ないんじゃ マリアは守れないもんな?」
マリアが思う
(そうよね… それに この前みたいに お母さんを守る事だって…)
ソニアが苦笑して言う
「そうね そうだったのかも しれないわね?」
マリアが苦笑する ウィザードさまが言う
「だからと言って 無理強いをするつもりは無い」
マリアがハッとする ウィザードさまが言う
「この世を去った者であろうと 大切な君の父親だ 忘れるのでは無く 受け入れると言うのであれば …その上であるのなら 私は いつでも歓迎する」
マリアが驚き言葉を失う レイが紅茶を飲みつつ言う
「お堅い事言うなぁ 先輩 こんな可愛い娘が 自分の娘になるんなら 大歓迎の癖にさ?」
ウィザードさまが言う
「命を有した者への礼儀だ」
レイが笑んで言う
「残留魔力が怖いのか?先輩?」
ウィザードさまが言う
「彼の魔力は もう存在しない 有るのは残された者に有る 残像思念だけだ」
マリアが思う
(残像思念?つまり 私の中に残っている お父さんの記憶 お父さんへの思い… それを 忘れるんじゃなくて 受け入れて…?そっか 無理に忘れて 新しいお父さんと… って言うんじゃなくて もう一人のお義父さんとして 見て欲しいって事なのかな?言われた瞬間は 難しいって思ったけど …でも それって つまりは お父さんの事を 忘れないで 大切にしていても良い って事じゃない?その上でならって… それなら…?)
ソニアが微笑して言う
「お母さんは それこそ いつでも大歓迎だからね?マリア?…それに マリアが やっぱり このままが良いって言うなら それでも…」
マリアがソニアを見る ソニアが苦笑する ウィザードさまが言う
「用は済んだな?」
ウィザードさまが立ち上がる マリアが思わず言う
「あ…」
ソニアが微笑して言う
「はい」
ソニアが立ち上がる ウィザードさまが帽子をかぶって玄関へ向かう ソニアが続く マリアが思う
(あ… 行っちゃうんだ?そうよね お部屋へ帰るんだよね?ここへは 用があって 寄っただけなんだから… …お母さんも?)
マリアが2人を追って玄関へ向かう ウィザードさまとソニアが玄関ドアの前で ソニアが言う
「それじゃ マリア よろしくね?このお家を守って頂戴… お父さんと お母さんと マリアが住んでいた 大切なお家だから」
マリアが言葉を飲む ソニアが言う
「荷物は 少しずつ 持ち出す予定だから また来るわね?」
ソニアが玄関ドアへ向く マリアが思う
(ああっ 行っちゃうのっ?お母さん… 私… やっぱり1人になっちゃうの?そんなの… 寂しい …また来るって事は 今夜は?もう帰っては来ないって事でしょ?…帰って来ないって… お父さんとは違うけど… でも やっぱり 私っ)
マリアが言う
「お、お母さんっ!?」
ソニアが玄関ドアに手を掛けた状態で振り返る マリアが苦笑して言う
「私… 折角 このお家の名義を変えて来てもらったけど… でも、やっぱり 私… お母さんと …同じ姓が良いな?」
ソニアが驚く マリアがウィザードさまへ言う
「お父さんの事も 大切に忘れないで… それで お母さんや… 新しいお義父さんとも 仲良くして 行けたらって… そう 思うんですけど …そんな私でも 良いですか?」
ウィザードさまが微笑して言う
「ああ もちろん 歓迎する」
マリアがホッとして微笑して言う
「有難う御座います」
レイが笑んで言う
「よし!それなら 早速!…お義父さん!」
マリアが驚いてレイを見る レイがウィザードさまの目前で言う
「娘さんを 俺にくれよっ!」
マリアが衝撃を受けて言う
「なっ!?」
マリアが慌てて思う
(な、ななななっ!?何をっ!?何を言っているんですかっ!?ウィザード様っ!?)
ソニアが苦笑して言う
「あら まぁ…?うふふっ 折角でしたのに マリアを同じ姓に出来ないまま 娘を お嫁に出さなくては いけないのかしら?貴方?」
ウィザードさまがレイへ言う
「ウィザードになってから言え」
マリアが衝撃を受けて思う
(しかも 断ったっ!!ちょ、ちょっと待ってっ!?これってっ!?じょ、冗談にしては…っ!?)
レイが言う
「何だよ 俺は ウィザードじゃなくても ウィザード級の 魔法使いだぞ?デカイ魔法の一発勝負なら 先輩にだって 負けないんだぞっ!」
マリアが思う
(あっ そ、そんな事言ってっ!?冗談ですよね!?ウィザード様っ!?でも、ウィザード様が言うと あんまり冗談に聞こえなくて…っ で、でも 大丈夫!”お母さんのウィザードさま”ならっ!)
ウィザードさまが向き直って言う
「受けて絶つ」
マリアが衝撃を受けて思う
(本気ですかっ!?ちょ、ちょっと?冗談ですよねっ!?こんな所で そんな事されたりしたらっ!?周囲の民家がどうとか…っ!?いや そんな事よりっ!?)
レイが衝撃を受けて言う
「えっ!?何だよ 本気か先輩?俺 先輩だからって 容赦はしてやらないぞ?良いのか?逃げるなら 今の内だぞっ?」
マリアが思う
(に、逃げて下さいっ!この人は”マリアのウィザード様”ですからっ 本当に何をするか 分からないですからっ!)
ウィザードさまが言う
「逃げるつもりは無い 元より 私より弱い者に 大切な娘はやれない」
マリアが慌てて思う
(えっ!?今なんて…?…じゃなくてっ!?今はそれよりも!?ちょ、ちょっと 本当にっ!?だって ウィザード様の魔力は 凄いって 誰もが認める 最強のウィザードでっ)
マリアがレイを見る レイが僅かに悔やんで言う
「…ぐぅっ」
マリアが疑問して思う
(…って?あ、あれ?ウィザード様?)
ウィザードさまが言う
「その杖で勝てるものなら いつでも掛かって来い 返り討ちにしてくれる」
マリアが衝撃を受けて思う
(そ、そう言う事ですかっ!?…な、なるほど それに それが事実だから ウィザード様も…)
レイが開き直って言う
「…よしっ!それじゃ ちょっと 待ってろよっ!?今すぐ そこら辺の 出来損ないウィザードぶっ飛ばして 杖を取って来てやるからっ!そうしたら 断然 俺の方が!」
マリアが怒って言う
「ですからっ!それは駄目ですからっ!」
レイがマリアへ向いて言う
「なんだよ マリア!?マリアは 俺の味方をしてくれないのか!?そんなに 先輩の娘になりたいのかっ?お母さんが居るからってっ!?」
ソニアが笑う マリアが慌て