嗚呼、私のウィザードさま。02-2
会社 前
マリアが会社から出て来て言う
「ふぅ… 今日も終わった~」
マリアが思う
(一度に3人の新入社員に 仕事を教えるんだから 苦労も3倍かと思ったら…)
マリアが思い出す
回想
マリアが新人1へ言う
『…それで、この書類は このファイルにある書式1を使って この…』
新人1が言う
『あ、もしかして その書式1の表をコピペしちゃって もう1つ書式2にある内訳を 同じく表の中へコピペするんですか?マリア先輩?』
マリアが一瞬呆気に取られた後言う
『あ、うん そうそう …あれ?教えたって?』
マリアが思う
《あぁ… やっぱり 3人居ると 誰に教えたか 分からなくなっちゃうなぁ…》
マリアが苦笑して言う
『ごめんね 同じ事教えちゃった?』
新人1が言う
『いえ お昼休みに 他の子から教わったんです 課長から マリア先輩に教わった事は 3人で共有するようにって 言われてるんで!』
マリアが呆気にとられて言う
『あ、そうだったんだ…?それじゃ 早速 この資料を使って 練習をしてみて?何か 分からない事があったら 遠慮しないで聞いてね?』
新人1が言う
『はい 分かりました やってみます!』
マリアが横目に課長を見て 微笑する
回想終了
マリアが苦笑して言う
「流石 課長 抜け目がないと言うか… あれなら大分助かるし」
マリアが微笑して思う
(やっぱり 皆で教え合って 協力するって 大切よね?…うん!)
レイが言う
「マリアー!」
マリアが言う
「はい、ウィザード様!」
レイが言う
「お仕事お疲れ様!マリア!」
マリアが言う
「ウィザード様も お仕事お疲れ様です …所で、ウィザード様 唐突ですが ご協力を頂きたいと」
レイが言う
「ん?何だ?マリアが言うなら 俺は何でも協力するぞ?」
マリアが思う
(何でも… か、それなら 大丈夫かも?)
マリアが言う
「では 是非 教えて下さい ウィザード様」
レイが言い掛ける
「ああ!何でも聞い…」
会社の前の大通りでクラクションが騒がしく鳴り響き 車が行き交う マリアとレイが思わず顔を向ける マリアが言う
「あ、それで」
レイが言う
「うん… それより先に」
マリアが疑問して言う
「え?はい?」
レイが言う
「マリアの話は 今ここで聞かないと駄目か?今日は やけに騒がしいからさ?」
マリアが言う
「あ、確かに今日はちょっと騒がしいですね?渋滞が起きてるなんて… 普段はそれ程ではないのに」
レイが言う
「これから何処かに行くって言うなら つれてってやるし そっちで聞くんじゃ駄目か?」
マリアが言う
「いえ、大丈夫です それでは… 何処かへ行くと言う 予定は無いので」
レイが言う
「ん?なんだ 何処へも行かないのか?マリア 明日は休みだろ?それなら…」
マリアが言う
「いつもなら休みなんですけど 今は新人の研修中なので 明日は出勤する事にしたんです ですので 今日はいつも通り帰る予定です」
レイが言う
「そうなのか それじゃ家に帰るか!マリア」
マリアが言う
「はい お願いします」
レイがマリアを包み 2人が風に消える 新人1が遠くから驚いて見ている 新人2と3が遅れてやって来て 新人1を見て疑問する
自宅 前
レイとマリアが現れると レイがマリアに抱き付いて言う
「マリアー!やっぱり ここなら静かで落ち着くよなー!」
マリアが苦笑して言う
「はい… そうですね…」
マリアが思う
(確かに 静かだけど… あっちの方が 落ち着くといえば 落ち着くような…)
レイが言う
「それで?さっきの話は 何だったんだ?マリア?」
マリアが気を取り直して言う
「あ、はい… 実は…」
マリアがふと思う
(あ… でも良く考えたら いくら大灯魔台の灯魔儀式に出ないと言っても やっぱり簡単には教えられない事なのかも?そもそも私はマキと違って こう言う話をウィザード様と話した事は無いし …もしかしたら あんまり魔法に直接的な事は教えたくないと言う可能性も…それなら!)
マリアが気を取り直して思う
(こう言う時は遠回しに相手の心理を探る 必勝 商談テクニックで!)
レイが疑問している マリアが微笑して言う
「あの?ウィザード様は とっても魔力が高いですよね?法魔帯の色も白色ですし!」
レイが疑問した後喜んで言う
「ああ!そうだな!だから言ってるだろ?”マリアのウィザード様”は 最強の!…魔法使いだよ~?」
マリアが衝撃を受けて思う
(嗚呼… ごめんなさい 私のせいで…)
レイが言う
「けど実力はウィザード級だから最強のウィザードって言っても良いんだけどな?それでも今は杖がない分 先輩の方が最強かもな?」
マリアが言う
「え?そうなんですか?」
レイが言う
「先輩は普段本気を出さないから実際の所は やってみないと分からないけどな?けど心配しなくても大丈夫だぞマリア!そうとなれば俺はそこら辺の弱いウィザードから杖を奪い取ってやるからさ!そうなれば俺の方が断然 最強だよ!」
マリアが慌てて言う
「奪い取らないで下さいっ!」
マリアが思う
(…それに ”この辺の弱いウィザード”って言ったら きっとそれは…)
レイが言う
「大丈夫だって!マリア!マリアがそう言うから俺はちゃんと魔法使いの杖を使っているよ!」
マリアが言う
「はい… 有難う御座います」
レイが言う
「礼には及ばないよ こっちの方が燭魔台の灯魔にも向いてるからな!」
マリアが言う
「そうですか… それは良かったです …って そうじゃなくて!」
レイが言う
「ん?そうじゃなくて?」
マリアが思う
(い、いけない… 相手のペースに飲まれるだなんてっ それでは商談を こちらのものには出来ないわっ!こう言う時は… そう!まずは早めの 軌道修正をっ!)
マリアが微笑して言う
「…では、それ程お強い魔力を お持ちのウィザード様は… やはり とっても大変な修行を されているんですよね?魔力を高める為の その修行を!」
マリアが思う
(よし!我ながら 良い方向に話を向けられたっ!)
マリアがレイを見る レイが一瞬呆気に取られた後笑んで言う
「ああ!そうだなマリア!流石マリアだよ!俺の事を よく分かってる!じゃ!」
レイがマリアから離れる マリアが疑問する レイが言う
「早速 俺は帰るよ!やっぱ魔力を高める為にも早寝早起きは欠かさないようにしないとだもんな!」
マリアが衝撃を受けて言う
「え!?早寝早起き?」
マリアが思う
(そ、それが 魔力を高める為の…)
レイが言う
「食堂の時間も迫ってるし!マリアのお陰で今日も助かったよ!ありがとな!マリア!」
マリアが言う
「修行…?」
レイが言う
「お仕事お疲れ様!また明日な!お休み!マリアー!」
レイが風に消える マリアが呆気に取られて言う
「…これって 伝えるべきなのかな?はぁ…」
マリアが玄関の鍵を開けながら思う
(あ… でも 修行方法は聞けなかったけど ウィザード様は ”先輩”の方が 今は最強だって言ってた …これって ”普通のウィザード様”には無い筈だし もしかしたら こんな遠回しな聞き方をしなくても それこそ普通に聞いたら教えてくれたりして?)
マリアが微笑して言う
「明日は 素直に ”私のウィザード様”に 聞いてみちゃおうかな?」
マリアが家に入る
翌朝
マリアが家を出て来て思う
(嗚呼… 今日も 早起きしようと思ったのに… やっぱり この時間に戻っちゃった… でも)
マリアが時計を見て思う
(ウィザード様にお願いして このまま急ぎで会社へ送ってもらえれば… 昨日と同じとまでは行かなくても 新入社員の3人よりは早く着けるんだけど…)
レイが言う
「マリアー!」
マリアが思う
(先輩として 良い格好を見せるより 私は やっぱり!)
レイがマリアに抱き付いて言う
「お早う!マリア!今日はいつも通り ゆっくりだな~!でも今日はいつもなら 休みの日だから ゆっくりするのも良いよな~?マリア~?」
マリアが思う
(いえ… 出来る事なら今日も早く起きたかったのですが…)
マリアが苦笑して言う
「お早う御座いますウィザード様 …相変わらず ウィザード様は いつもこの時間から お元気ですよね?やっぱり早寝早起きなんですか?」
レイが言う
「もちろんだよ マリア!そうしないと 修行にならないからな?」
マリアがハッとして思う
(そ、それっ!お昼に会う マキに教える為にも 今 それを 聞いておかないとっ!)
マリアが言う
「そのっ …ウィザード様?出来たら教えて欲しいんですが その修行内容って どんな事してるんですか?」
レイが言う
「ん?修行内容?俺は風の魔法使いだから 風の魔力を 高められるように修行してるよ~?」
マリアがハッとして思う
(か… 風の魔力を?えっと…)
マリアが言う
「あの… 修行って 人それぞれ違うんですか?その… ウィザード様は 風の魔法使いさん だからって事は?」
レイが言う
「そうだな!得意な魔法属性によって 修行方法は変わるだろうな!だから 俺にとって あの高い位置にあるマンションの部屋は丁度良かったよ!」
マリアが思う
(う… 真に申し訳ありませんでした…)
マリアが苦笑して言う
「ご、ごめんなさい 私のせいで あのマンションのお部屋からは…」
レイが言う
「大丈夫だってマリア!高い所なら寮の近くにもあるから そっちへ行けば良いだけだし!」
マリアが言う
「そ、そうですか… それなら… …って あの それじゃ!」
レイが言う
「ん?どうした マリア?」
マリアが一瞬困ってから苦笑して言う
「はい、実は…」
マリアが思う
(時間も無いし それに… もし 教えたくない事だったら それを聞き出すのは失礼だもの ちゃんと説明して 駄目なら駄目で… マキには 謝るしかないわ)
マリアが言う
「私の”友人のウィザード様”が 魔力を高める為の その修行方法に付いて 困っているそうなんです 何か 効果的な修行が有るなら 教えてもらえないかって… でも ウィザード同士では 教え合う事はしないんですよね?それじゃ やっぱり駄目ですか?」
レイが呆気に取られた後 軽く笑って言う
「あっはははっ マリアはやっぱり優しいよな?他のウィザードの為に わざわざ そんな事聞くなんてさ!俺たちにとっては どうでも良い事なのに もしかしてマリアは 昨日からその事を 考えていたのか?」
マリアが思う
(う…っ バレてたっ!?)
マリアが苦笑して言う
「あ… その… 他のウィザードの為に と言うか 私の友人の為です その友人は奉者で その子が 自分のウィザード様の事を心配していて…」
レイが言う
「そうか!そう言えばマリアの周りには 奉者が一杯居るんだったな?それにしても自分の奉者に心配掛けるウィザードなんて情けない奴だな!」
マリアが苦笑して言う
「は… はぁ…」
マリアが思う
(確かに… 私がウィザード様に対して そう言った心配をしたって事は 無かったかも… でも…)
マリアが言う
「出来れば 教えてもらえませんでしょうか?私、その 奉者の子とは 親友で… それに 私 奉者として一応 その子の先輩なので …力になりたいんです」
レイが言う
「そうか!マリアは その奉者の先輩なのか!マリアは後輩が一杯居るんだな?しかも そいつらに色々教えてやるなんて やっぱりマリアはマリアだな?」
マリアが思う
(え?マリアはマリアって …それはどう言う意味?)
レイが言う
「よし、それなら!俺は マリアの後輩の事は どうでも良いけど マリアが俺に聞きたいって言うなら 俺はマリアに 何でも教えてあげるぞ?」
マリアが思う
(あ、そっか! ここはいつもの ”マリアの為に”で!)
マリアが言う
「で、ではっ!教えて下さいっ 魔力を上げる為の 効果的な修行方法を!」
レイが言う
「う~ん 効果的 かぁ それじゃぁ まず そのウィザードの属性が問題だな?そいつは何の魔法が得意なんだ?」
マリアが考えて思う
(え?えっと… 何だろう?…あ、でも 確か!)
マリアが思い出す
マキが言う
『私のウィザード様は 元々火の魔法使いだったし ウィザードになっても まだ 風を操る事は出来ないって言ってた 移動魔法って 風魔法の上級魔法でしょ?』
マリアが言う
「元々は 火の魔法使いさんだって 言ってました… それに 魔法使いの養成所でも 火の魔法を使っていましたし!」
マリアが思う
(って事は やっぱり得意なのは 火の魔法って事よね!?)
レイが呆気に取られて言う
「え?火なのか?それで 効果的な修行方法が 分からないって?」
マリアが疑問しつつ言う
「え?あ、はい…?」
マリアが思う
(何だろう?何か…?)
レイが一瞬の後笑い出して言う
「あっははははっ そいつ駄目だな!全然 素質が無いよ!」
マリアが衝撃を受けて言う
「はぁあっ!?」
レイが言う
「そいつ 本当にウィザードなのか?火なんて もっと初歩的な魔法で もっとも人に近い力で 一番、人に力を貸してくれる魔力なのに その修行方法が分からないなんて しかも そいつ もしかして 今 あのマンションに住んでるんじゃないのか?」
マリアが衝撃を受けて言う
「え!?な、何で知ってるんですか!?」
レイが言う
「何となく そんな魔力を感じてたからさぁ?けど メッチャクチャ弱いから!もし ウィザードの杖が必要になったら ソッコーぶっ倒しに行ってやろうと思ってたんだ!」
マリアが衝撃を受けて思う
(やっぱりっ!!)
マリアが気を取り直して言う
「って そうじゃなくてっ!何でそんな事言うんですかっ!?可哀想じゃないですかっ!」
レイが言う
「可哀想か!?そうだな!人に可哀想なんて思われるなんて その時点で 話にならないな!」
マリアがハッとして思う
(そ、そっか… 人と神様の間と言われるウィザード様に対して 人である私が可哀想だなんて 失礼な事なんだ それに)
マリアが思い出す
セイが言う
『おい アンタ さっきっから うるさいんだよ 魔法を使った事も無い奴が 偉そうな事言うんじゃねぇよ』
マリアが思う
(そうだ… 私は魔法なんて使えない …でも それなのに そんな風に思ってしまうのは…)
マリアがレイを見て言う
「そ、それはっ!ウィザード様が 強過ぎるからです!…それに!それだけ強いのなら 後輩を育ててあげようとは 思わないんですかっ!?」
レイが言う
「ああ!思わないな?別に?」
マリアが衝撃を受けて思う
(え!?思わないのっ!?)
マリアが落ち込んで思う
(そ、そっか… そうよね ウィザードは皆ライバル… 先輩だろうが後輩だろうが 関係ないんだ… …あ でも それなら!)
レイが疑問してマリアを見る マリアがレイを見て言う
「…それなら 私の為に 教えて貰えませんか?ウィザード様 …火の魔法が得意なウィザードに 効果的な修行方法を!」
マリアが思う
(って でも… いくら 私の為にでも 駄目よね?ウィザードは皆ライバル…)
レイが言う
「うん!だから言ってるだろ!マリア!マリアがそう言うなら 俺は何でも教えてあげるって!」
マリアが呆気にとられて言う
「え…?ほ、本当に?あ、いえ!有難う御座います…」
レイが言う
「礼には及ばないよ!マリア!」
マリアが呆れて思う
(教えてくれた…)
会社
課長が叫ぶ
「マリア君!!」
マリアが言う
「はいっ!課長っ!」
課長が言う
「新人を研修している 先輩の君が…っ!」
マリアが思う
(遅刻した… でもしょうがない ウィザード様は ”時間が無いから今度にしようか?”って 言ってくれたけど… やっぱり早く マキに教えてあげたくて… それに)
課長が息を吐いて言う
「…ふむっ 最も その新人たちの為に 休暇を返上して来たと言う 先輩としての意気込みに関しては 評価はするがね?それでも 遅刻をしてくると言うのは 先輩として最も 示しが付かない事だよ?特に君は 元々遅刻癖があるのだから」
マリアが衝撃を受け思う
(…うっ 言われた… しかも)
新人たちが遠巻きに見ている マリアが息を吐いて思う
(その事を隠していた 新人たちの前で… はぁ~… これじゃもう 先輩として良い格好なんて 付けられないなぁ …でも まぁ いっか… そんな事より)
課長が言う
「それじゃ 今日は君の仕事が無い分 新人研修には丁度良いのだろう しっかり頼むよ?マリア君」
マリアが苦笑して言う
「はい… すみませんでした」
マリアが思う
(今日は一日 新人研修に力を注げるし!早く一人前にしてあげちゃうんだから!)
マリアが新人たちへ向いて苦笑して言う
「それでは 私は遅刻しちゃいましたが 早速 昨日指示しておいた 書類のチェックからします」
新人たちが苦笑する
中央公園
マリアが気付き呼びながら走る
「マキー!」
マキが気付き振り向いて言う
「マリア!」
マリアがマキの元に到着すると マキが言う
「マリア メール有難う ”マリアのウィザード様”に聞いてくれたって!」
マリアが言う
「うん!それでね!効果的な方法を いくつか教えてもらったよ!」
マリアがマキの隣に座りながら言う
「その前に まずは 一応 確認しておかないと!”マキのウィザード様”って 火の魔法が得意なんだよね?」
マキが言う
「あ、うん…」
マリアが苦笑して言う
「良かった!それが間違ってたら また聞き直さないといけなかったから」
マキが言う
「正直言うと 得意なのかは知らないけど それ以外の魔法使っている所を見た事が無いから 多分 そうなんだと思う」
マリアが言う
「え?そうなんだ…?あ、そっか だって まだ 灯魔儀式も 1度しかしてないんだもんね?」
マキが言う
「うん それが大変だったから 今度はもう少し 魔力を上げてからにしようって」
マリアが言う
「そっか… うん!それじゃ 早速ね!まず基本から聞くけど ”マキのウィザード様”はちゃんと 時間に合わせて起床してる?火の魔力は 日の出から1時間か2時間後からじゃないと 効力は得られにくいんだって?だから 余り早すぎても駄目だって言ってたよ?」
マキが言う
「あ… そうなんだ 起床時間は 余り定まってないかな… 夜遅いから」
マリアが衝撃を受けて言う
「え!?それは駄目よ!火の魔力は 日の入りで無くなっちゃうのよ!?だから もっとも 初歩的な魔…っ!」
マリアが慌てて口を押さえて思う
(あっ!い、いけない… つい ウィザード様の 馬鹿にした言い方がそのまま…っ こ、ここは ちゃんと言い直して)
マリアが咳払いをしてから言う
「う、うんっ!日の入りにも 気を付けてね?日の入りの2時間前には もう 魔力は下がっちゃってるから… だから 日の出と日の入りには十分注意をして それから 夜は早めに寝てね?身体はなるべく冷やさないように… なんて言うか…」
マリアが思う
(えっと… ウィザード様は ”言っちゃえば 子供みたいなもんだよ!”って言ってたけど これって そのまま言うと きっと馬鹿にしているようにも 聞こえちゃうよね?だから)
マリアが言う
「え~と だ、だからね?えっと… 古くからの人の生活に忠実にって言うのかな?日の出と共に起きて 日の入りと共に眠って… た、太陽と一緒に 生活するようにすると… それで、とっても 火の魔力を取り入れる事に 繋がるんだって!」
マキが言う
「なるほど… そうなんだ それじゃ 全然 駄目だったなぁ いつも思いつめちゃってて… 眠りも浅くなっちゃうから 眠くなるギリギリまで起きてたし そのせいで 朝も起きるのが遅くなっちゃうし… そう言う生活スタイルが むしろ睡眠障害に繋がるって言うのは 分かってはいたんだけど」
マリアが言う
「あっ そ、そう!それ!ウィザード様たちは 食事制限をしているでしょ?だから 余計 睡眠に関しては気を使わないと… お腹が空いていると うまく眠れなくなっちゃうじゃない?だから 早くに眠る必要がある属性の人は 余計 早めに夕食を食べて 早く寝ちゃった方が 朝も早く起きられるんだって」
マリアが思う
(だから ウィザード様の いつも気にしている 食堂の閉まる時間も早いのよね… 午後5時から6時までしか開いていないって… でも)
マリアが顔を逸らして言う
「6時までに夕食を食べて 遅くとも8時には寝るって 早過ぎ…」
マリアが思う
(とても 見習えないわ…)
マリアが言う
「道理で 朝 あれだけ 元気な訳よね… はぁ…」
マリアが思う
(私 昨日寝たのなんて 何時だったかしら?…深夜2時?)
マリアが言う
「あ、後 それから あのマンションは 火の魔力を取り入れるウィザードにも 丁度良いって!屋上へ行けばたくさん太陽に当れるし うって付けだって言ってたよ?良かったね!マキ!」
マキが苦笑して言う
「う、うん… 彼 あんまり外出るの 好きじゃないみたいなんだけど…」
マリアが衝撃を受ける マキが言う
「修行の為だからって 連れ出すようにするね 有難うマリア まずは 初歩的な生活改善から 始めてみようと思う」
マリアがギクッとして思う
(そ、そう… それを あえて言わない様に してたんだけど…)
マリアが顔を逸らして言う
「…余計な気を 使ったかな…」
マキが苦笑して言う
「基本から駄目だったんだね… 気を使ってくれて 有難う マリア でも大丈夫!それに 私には もっとハッキリ言っちゃって良いよ!だって 私たち親友でしょ?」
マリアが驚く マキが言う
「それから!マリアは私の 大先輩だもん!後輩に気を使うなんてしないで もっと バシバシ叱っちゃってよ!」
マリアが気付いて思う
(あ… そっか… そう言えば 私も昔は 課長から仕事を教わって 出来の悪さを良く叱られたっけ…)
マリアが苦笑してから言う
「うん!分かった!それじゃ… これからも 一緒に頑張ろうね!マキ!」
マリアがハッとして思う
(あっ でも 私… 今、奉者じゃないんだけど…)
マキが言う
「はーい!マリア先輩!これからも 出来の悪い後輩を 宜しくお願いしまーす!にゃははっ!」
マリアが笑って思う
(まぁ いっか?)
マリアとマキが笑う
会社
マリアが書類を見ながら思う
(それにしても… よく考えたら マキの為に色々聞いていた 魔法に関する事… ウィザード様の事… 私も全然知らなかった 今回は 火の魔法って事で色々聞いたけど それじゃ 風の魔法を使う ウィザード様は… きっと多少は違うのよね?就寝時間に関しては ついでみたいに聞いちゃったけど 風の魔力には 日の出は関係しないのかしら?)
マリアが書類を取り替えながら ハッとして思う
(あっ!い、いけないっ!今日は いつもの癖は出さないでっ 新人育成に全力を注ごうと思ってたんだったっ!…ここからは 気を引き締めてっ!)
マリアが言う
「うんっ」
新人1が言う
「あの~ マリア先輩」
マリアがハッとして言う
「はいっ!」
新人1が一度視線を他方へ向けてからマリアへ向いて言う
「今、ちょっとだけ お話良いですか?」
マリアが新人1の視線の先を確認しながら言う
「え?うん 私に分かる事なら…」
マリアが視線の先 課長のデスクに課長が居ないことに気付いて思う
(あ… 課長は今 離席中だったんだ… …通りで 癖を怒られなかったと… あは…)
マリアが苦笑すると 新人1が言う
「今 課長は 席を外しているみたいなので ちょっとだけっ」
マリアが思う
(よし!課長の居ない こんな時こそ 私が しっかりして!)
マリアが言う
「うん!何でも言って?どうしたの?」
新人1が言う
「あの… マリア先輩 昨日… 退社時に 魔法使いの男性の方と 一緒に居ましたよね?」
マリアが衝撃を受けて思う
(み、見られてたっ!?)
マリアが言う
「う… うん そ、そうね…」
マリアが思う
(仕事の話じゃなかったんだ… あっ!だから 課長の目を気にしてたのね!?)
新人1が言う
「わぁ すごいっ マリア先輩!もしかして あの魔法使いさんが マリア先輩の… 彼氏さんなんですかぁ!?」
マリアが衝撃を受けて言う
「か、彼…っ!?い、いやっ!?その…っ!?」
マリアが頬を染めつつ思う
(か、彼氏さんっ!?ウィザード様が 私の…っ!?そ、そんなっ!駄目よっ!ウィザード様は 神様に選ばれる為に 神聖なる修行の最中…っ!?)
マリアが衝撃を受け視線を逸らして思う
(…なのかしら?い、一応 修行はしてるんだよね?でも… ウィザード様は ウィザードじゃないし… 魔法使いで… ”マリアのウィザード様”で… それって…?)
新人1が言う
「彼氏さんでは… ないんですかぁ?」
マリアが困りつつ言う
「う… うぅ~ん… えっとぉ~ お、お友達… かなぁ?」
新人1が言う
「あぁ そうなんですかぁ 私、魔法使いさんも 魔法も …どちらも 見たのは初めてで 昨日は凄いビックリしちゃいましたぁ!」
マリアが言う
「あ… そ、そうだね?どちらも め、珍しい… よね?」
マリアが思う
(本当はもっと珍しい ウィザード様だったんだけどねぇ…)
新人1が言う
「魔法使いさんとは どんなお話とかしてるんですかぁ?やっぱり 魔法のお話とか!?」
マリアが困りつつ言う
「う、うん… そ、そうだね?」
マリアが思う
(確かに 昨日今日はそうだったし…)
課長が戻って来る 新人1が気付き 慌てて言う
「あ、あの… 良かったら いつか その魔法のお話とか 聞かせてくださいっ それから… もし、彼氏さんじゃないなら 私も… ちょっと お話とか 出来ないかなぁ?とか…」
マリアが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?そ、それは…っ!?」
課長が咳払いをする マリアと新人1が衝撃を受け 新人1が言う
「マ、マリア先輩っ!この書類なんですけど!」
マリアが慌てて言う
「あ、ああっ こ、これねっ!?」
マリアが書類作成を終えて言う
「よしっと…」
マリアが思う
(新人育成をメインにって つもりだったけど 自分の仕事も出来たし 休暇返上だから 仕事の電話も無くて はかどっちゃった …課長の目も有ったし)
マリアが苦笑してから 新人たちを見て思う
(後は皆で今日教えた事を 教え合うって言ってたから もう良いかな?ちょっと早いけど…)
マリアが荷物を漁り 携帯を見て思う
(あ… エリナから着信が)
マリアが荷物を持って立ち上がり 課長へ言う
「課長 今日はこれで上がります お先に失礼します」
課長が言う
「うん 今日はよく来てくれたな お疲れ様」
新人たちが言う
「お疲れ様です!」 「有難う御座いました マリア先輩」
マリアが言う
「はい、お先です また明日!」
マリアが立ち去る
社内
マリアが携帯を操作して耳に当て 歩きながら着信を待つ
会社 外
マリアが出て来る マリアが思い出す
回想
マリアが携帯に言う
『エリナ?私、マリア!連絡ありがとう!ごめんね 折角連絡くれたのに 今日は休暇出勤で 仕事中だったの それで、今終わった所!』
携帯からエリナの声がする
『ああ そうだったんだ お疲れ様!でも 丁度良かった 実は 私もさっき保育園を出て 今電車に乗る前だったんだけど マリア… もし良かったら 今から 少し会えないかな?』
マリアが時間を見て思う
《今からかぁ… まぁ 少しなら良いかな?本当は早めに帰って 私もウィザード様ほどじゃないけど 早めに寝ようと思ったんだけど…》
マリアが言う
『うん それじゃ 少しなら…』
携帯からエリナの声がする
『…リナの事で 少し 相談が有って』
マリアが言う
『リナの事で?』
携帯からエリナの声がする
『うん… それじゃ 詳しくは…』
回想終了
マリアが思う
(リナの事で エリナからって言う事は… やっぱり 保育園で元同僚だった リナの彼氏さんの事かな…?)
レイが飛んできて言う
「マリアー!」
マリアが言う
「ウィザード様」
レイが言う
「お疲れ様ー!マリア 迎えに来たぞー!」
マリアが言う
「有難う御座います あ、でも… ウィザード様 今日 私…」
レイが言う
「ん?どうした?マリア?」
マリアが言う
「これから 友人と会う約束があって…」
マリアが思う
(だから いつもの様に 家に送ってもらう訳には…)
レイが言う
「そうか!なら そこに連れてってやるぞ!?それとも ここで待ち合わせなのか?」
マリアが一瞬呆気に取られて思う
(あ… そっか そう言えば いつも ”何処かに行くなら連れてってやるぞ”って 言ってくれてるんだった… それじゃ お願いしちゃっても… 良いのかな?)
マリアが言う
「えっと それでは… お言葉に甘えて リドルの駅は ご存知でしょうか?」
レイが言う
「リドルの駅?うーん 分からないなぁ?この近くの駅なら分かるけど そこからどっちの方角に何個目だ?」
マリアが気付いて思う
(あ… それなら…)
マリアが言う
「この近くの駅からですと 3つめの駅で 方角は東の方になります」
レイが言う
「ああ それなら知ってる!変な屋根の駅だろ?駅前に デカイ木があって」
マリアが言う
「あ、そうです!そこです!」
レイが言う
「よし!それじゃ 行くぞ マリア!」
マリアが言う
「はいっ お願いします!」
レイとマリアが風に消える
リドル駅 前
マリアが呼びながら走る
「エリナー!」
エリナが一瞬驚いた後振り返って言う
「マリア!?え?もう着いたの?だってまだ 連絡して3分も経ってないよ?」
マリアが言う
「うん!ウィザード様に 送ってもらったから!」
マリアがハッとして思う
(あっ たった今分かれたせいで 思わず言っちゃったけど… これって 普通… 言っちゃいけない事…?)
エリナが言う
「ああ そうだったわね マリアは あのウィザード様の 奉者様だものね?…その節はお世話になりました!」
マリアが衝撃を受けて思う
(う…っ そう言えば… エリナやリナには まだ ウィザード様が魔法使いになっちゃった事は 言ってなかった… って言うか それこそ 言っちゃいけない事かも…?)
マリアが苦笑して言う
「あ、い、いえ… ど、どういたしまして?」
マリアが思う
(どうしよう…?)
エリナが微笑して言う
「そう言えば 私も 灯魔作業以外の 魔法を見たのは 初めてだったから あの時は驚いたわ!すごいわよね?本当に魔法で 行きたい場所へ行けちゃうの?灯魔作業を終えて マリアとあのウィザード様が目の前から消えて 私 ビックリしちゃった!でも… たった1ヶ月ちょっと前の話なのに 何だか 懐かしいわね?」
マリアが衝撃を受け思う
(う… 何だか 私も… 遠い過去の話に思えるのは… やっぱり…)
エリナが言う
「あ、とりあえず お店に入ろうか?」
マリアがハッとして言う
「う、うん そうしよう!」
エリナが言う
「うん!」
マリアとエリナが道を行く
飲食店
エリナが言う
「今日は私がおごるから 好きなの注文しちゃって!」
マリアが衝撃を受けて言う
「え!?いやっ 悪いよ そんなっ!?」
エリナが言う
「気にしないで 相談があるって呼び出したのは 私だし …それに あの燭魔台の灯魔作業をしてもらった あの時の お礼に!」
マリアが思う
(う、う~ん… 燭魔台の灯魔作業に関する お礼だとしたら… それを受けるのは 私じゃないよな気もするけど… でも あの時は 一応… 私もウィザード様の お茶に付き合ったし…)
マリアが深く思う
(むしろ お陰様で 美味しい紅茶を ご馳走になれた と言うのが 本当は正しいような… でもまぁ 今は…)
マリアが苦笑して言う
「そ、それじゃ デザートだけ!おごってもらっちゃおうかな?あ、この苺ケーキ美味しそうっ!」
エリナが軽く笑って言う
「OK分かった!私も苺ケーキ付けちゃお!」
マリアが微笑する
マリアが苺ケーキを食べつつ言う
「それで… リナの事で 相談って言うのは?」
エリナがフォークを止めて言う
「う… うん…」
エリナが気を取り直して言う
「マリアも知ってると思うけど リナは今 妊娠してるでしょ?多分 その事もあって… リナの彼 保育園を辞めたの」
マリアが言う
「え?どうして その事が 保育園を辞める事に 繋がるの?」
エリナが言う
「彼はね?昔から凄く 子供の事を大切にする保育士で… あの保育園の燭魔台の灯魔が切れると いつも 園長先生に 灯魔作業の催促をしたり 私も彼から たくさん保育士としての知識を教わったの …彼は そんな 本当に子供を大切にする人… だから」
マリアが疑問しながら言う
「う、うん…?」
マリアが思う
(本当に子供を大切にする 保育士だった人が… 恋人のお腹に自分の子供が出来た事で 保育士を辞めた?それって 一体…?)
エリナが言う
「自分の子供が リナのお腹に出来た事で きっと より一層 子供を愛する気持ちが強くなったんだと思うわ… 生まれてくる子供の為にも リナの為にも 保育園の子供たちの為にもって… 彼は”探求者”の仕事に 就く事にしたらしいの…」
マリアが言う
「”探求者”って?」
エリナが言う
「マリアも知らない?…そうよね あんまり知られてない お仕事だもんね?」
マリアが言う
「探求者って事は… 何かを探すお仕事?」
エリナが言う
「うん …探求者が探すのは この世界の”異常現象の元”なの…」
マリアが言う
「この世界の”異常現象の元”…」
マリアが思う
(…この世界の 異常気象や 生物異常… それら全ての異常現象は 異常魔力の影響だって… その異常魔力の影響を 抑えているのが ウィザード様たちが 各町の灯魔台へ魔力を灯魔する事で発生させている 結界… それじゃ もしかして!?)
マリアが驚いて言う
「その”異常現象の元”って言うのは もしかして アウターにあるんじゃ!?」
マリアが思う
(そもそも アウターと呼ばれるのは 結界の外の事っ …まさか!?そこへ行くのっ!?)
エリナが頷いて言う
「うん… そうなの だから ”探求者”は 命がけの仕事なのよ」
マリアが慌てて言う
「命がけだなんてっ それ所じゃないわっ!?私、一度 アウターからの 野生動物の奇襲を見た事があるのっ!あんなのに襲われちゃったら!」
エリナが言う
「でも、異常現象を無くすには やっぱり その原因を突き止めるしかないでしょう?だからって…」
マリアが言う
「それは そうかもしれないけどっ!」
マリアが思う
(それでもしっ!?…もしもの事が あったらっ!?リナのお腹には 子供まで居るのにっ!?)
エリナが言う
「私も話を聞いた時は もちろん止めたわ… でも、マリアは知ってる?この世界を守っている 結界の効力が年々落ちてるんだって… 異常気象もどんどん悪化しているし… マリアにこんな事言ったら 失礼かもしれないけど その原因の1つは 結界を作る …ウィザードの能力が 下がっているんじゃないかって」
マリアが驚いて言う
「え…?」
エリナが言う
「それこそ 昔は ウィザード様が町に住まわれて 灯魔台へ力を与えていれば その町は安泰だって言われてたらしいの… でも、今は ウィザードが居ても その町の異常気象が 改善されない事も 増えてきたらしくて…」
マリアが呆気にとられて思う
(そう言えば… ウィザード様も)
マリアが思い出す
レイが言う
『そうそう!法魔帯の色が低ければ 儀式はやらないで済むだろ?俺も参加してみて分かったけど 俺や先輩以外のウィザードは 全然弱いからな?』
レイが一瞬の後笑い出して言う
『あっははははっ そいつ駄目だな!全然 素質が無い!そいつ 本当にウィザードなのか?火なんて もっと初歩的な魔法で もっとも人に近い力で 一番、人に力を貸してくれる魔力なのに その修行方法が分からないなんて…』
マリアが思う
(ウィザードの能力が下がっている… それは 本当なのかもしれない…)
エリナが言う
「…だからね?自分の子供はもちろん 保育園の子供たちや… この世界の 未来を守るには 異常現象の元を絶たなければ いけないって…」
マリアが言う
「で、でもっ それで もし!?もしもの事があったらっ!?リナや子供を置いてっ …死んじゃうつもりなのっ!?」
マリアが強く思う
(そんなの 酷いっ!!)
エリナが言う
「彼も それを考えなかった事は 無いと思う… でも 彼の気持ちも分かる気がして… それで 私も 今まで約束通り リナには言わなかったんだけど… マリア やっぱり リナに 言うべきよね?それとも… 彼の言う通り 隠しておくべきかな?でも もし本当に マリアの言う通りな事にでもなったら… 私 その時 リナに…」
マリアが沈黙して悩む エリナが言う
「…ごめん マリアにまで 迷惑掛けちゃったね?…でも、聞いて マリア?私 実はもう 決めてるの …リナに伝えるって」
マリアが呆気にとられて言う
「…え?」
エリナが苦笑して言う
「だから、今日は… その リハーサル!それにマリアを 付き合わせちゃったの!…ごめんね?」
マリアが力を抜いて言う
「あ… そ、そうだったんだ?ううん!良いよ!だって私も!…私も エリナが正しいと思う!リナはね!?彼の事 信じて 待ってるの!”大好きだから 何があっても 待っていられる”って!」
エリナが驚く マリアがハッとする エリナが沈黙する マリアが言う
「ご、ごめん…」
エリナが言う
「そっか… そうよね 私が言っちゃ駄目よね?やっぱり 彼を説得して 彼 本人から言わせなきゃ… これは リナと彼の 2人の問題だものね?」
マリアが言う
「あ… そ、そうだね…」
マリアが思う
(そうだ… 2人の問題なのに 部外者の私が… でも 全くの部外者なんかじゃない リナは私の 大切な友達… 親友なんだもん!)
マリアが言う
「ねぇ エリナ?その”探求者”ってお仕事の事 もっと詳しく知ってる?知ってるなら 教えて欲しい…」
マリアが思う
(私が出来る事なんて 何も無いかもしれない… でも 聞かずには居られないっ!)
エリナが言う
「うん… 私も 聞いた話だけど まず 何と言っても 結界の無いアウターに行くんだから 相応の装備はして行くらしいの… 拳銃とか 鉄砲とか そう言う武器を持って行くんだって… それと アウターサイドの村に居る 魔法使いに護衛をお願いしたりも するらしいんだけど…」
マリアが衝撃を受けて言う
「ま、魔法使いに 護衛をっ!?」
エリナが言う
「うん 村に居る魔法使いの人たちは 元々そう言うアウターの野生動物を相手に 魔法の修行をしているんだって… だから その人たちに 依頼をするらしいんだけど …でも 魔法使いは ウィザードになる事を 目的にしているから ”探求者”たちの依頼は 断る事も多いらしくて だから 結局 最後は 自分たちだけで 進む事になるらしいの… やっぱり 危険よね?そのまま 戻って来なかった ”探求者”の数は 数え切れないって…」
マリアが言う
「そ、それならっ ウィザードに依頼をしたら良いんじゃっ!?」
エリナが苦笑して言う
「でも、そのウィザードたちが 居なくなってしまったら それこそ 結界の維持が 出来なくなってしまうじゃない?」
マリアが衝撃を受けて言う
「あっ そ、そっか…」
マリアが閃いて言う
「それならっ!ウィザード級の 魔法使いがっ!」
エリナが言う
「え?…そんな人が居るの?」
マリアが衝撃を受けて思う
(う…っ え、えっとぉ どうしよう?実力は そうだって言ってるけど… 実際は どうなんだろう?それに 私が 勝手にそんな事 決められるものじゃないし… そ、そもそも…)
マリアが言う
「あ、いや… ごめん 今のは気にしないで?何にしても!やっぱり リナの彼には ちゃんと本人からリナに 言ってもらうべきだと思う!だって 2人は夫婦なんでしょ!?」
マリアが思う
(あ、あれ…?でも 結婚式の招待状は 貰って居ないけど… 結婚はしたのかなぁ?)
エリナが言う
「相変わらず まだ 籍は入れてないみたいなんだけど …とりあえず 明日 彼には連絡するわ これ以上 リナに隠すなら 私が言っちゃう!って そう脅してでも言わせる!」
マリアが言う
「うん!それで良いと思う!だって そんなの 彼の勝手過ぎるもんっ 許せないわ!」
エリナが苦笑して言う
「そうよね!?私もそう思うから!」
マリアとエリナが笑う
リドル駅 前
マリアとエリナが居て エリナが言う
「それじゃ マリア 今日は 本当にありがとう!」
マリアが言う
「ううん!エリナ!明日は頑張ってね!?私、応援してるからっ!」
エリナが言う
「ええ!報告するわね!」
マリアが言う
「うん!待ってる!」
エリナが言う
「それじゃ また!お疲れ様!マリア!」
マリアが言う
「お疲れ様!エリナ!」
エリナが駅へ向かう マリアが気付いて言う
「あ… そっか 私も 今日は電車に…」
レイが言う
「マリア~!」
マリアが一瞬驚いた後振り返って言う
「え!?ウィザード様っ!?」
マリアが空を見上げると レイが木の枝から落て言う
「ふぎゃ…っ」
マリアが衝撃を受けて言う
「…えっ!?」
マリアが思う
(あ、あれ…?飛んで来たんじゃなくて…?)
レイが立ち上がり 軽く服を払ってから マリアのもとに向かいながら言う
「う~ん 何時来るのかと思って 待ってたら 俺 眠くなっちゃったよ~ マリア~」
マリアが衝撃を受けて思う
(やっぱり 落ちてきたっ!?…じゃなくてっ!?)
マリアが慌てて言う
「そ、それじゃっ!?やっぱり落ちて!?…いえっずっと そこの木の上で 待っていたんですかっ!?」
レイが言う
「ずっと って訳じゃないけど… 修行は何処でも出来るし 丁度 良い木があったから それなら ついでにって… けど」
レイがマリアを包んで言う
「俺 もう眠いから さっさと帰るよ~ マリア~」
レイとマリアが浮き上がる マリアが言う
「あっ は、はい… 有難う御座います」
レイとマリアが風に消える
自宅 前
レイとマリアが現れ レイが言う
「はい 到着…」
マリアがホッとして思う
(良かった… 無事 到着し …た!?)
レイがマリアに抱き付いて言う
「マリア~!」
マリアが呆れて思う
(凄く 眠そうなのに そこまでしてでも…)
レイが一瞬脱力して眠る マリアが思う
(…って 寝たっ!?)
マリアが慌てて言う
「あ、あのっ!?ウィザード様っ!?」
レイが起きて言う
「うん… やっぱり 眠いから 今日は もう無理…」
マリアが思う
(何が ”もう無理” なんですかっ!?)
レイが離れて言う
「それじゃ マリア お疲れ様~?お休み~」
マリアが言う
「あ!気を付けて下さいねっ!?ウィザード様っ!また壁とか ぶつからない様に!ちゃんと お部屋の中で寝てくださいね!?」
レイが言う
「うん 分かったよ~ マリアは優しいなぁ~ ありがとな~」
レイが風に消える マリアが呆気にとられて思う
「いえっ!こちらこそ… って」
マリアが思う
(…本当に 大丈夫かな?)
マリアが玄関の鍵を開けつつ思う
(明日も ちゃんと 来てくれると 良いんだけど…)
マリアがドアを開け 苦笑して言う
「何だか心配… ”私のウィザード様”が ちゃんと飛べていますように」
マリアが空を見上げてから 苦笑してドアを閉めつつ言う
「ただいまー」
翌朝
マリアが家を出て来て思う
(うぅ~ 眠い… 昨日は結局 あのままずっと ”探求者”の事を 考えちゃって… それに ウィザード様なら探求者の護衛も 出来るんじゃないかな?…とか ついでに ウィザード様が ちゃんと飛んで行ったかなぁ?とか… ちゃんと…)
マリアが空を見上げて思う
(今日も来てくれるかなって… だって… もしかしたら あのまま壁に激突して そのまま気を失って 今朝のこの寒さで… と… と… と…)
マリアが言う
「凍死しちゃってるんじゃないかな?とか… はぁ…」
レイが言う
「マリアー!」
マリアが表情を明るめて言う
「ウィザード様!」
レイがマリアに抱き付いて言う
「お早うー!マリアー!俺、今日も 無事 マリアに会えて良かったよー!」
マリアがレイを見て言い掛ける
「はい!私 も… って!?」
マリアが驚いて言う
「ウィザード様っ!?その頭の包帯は 何ですかっ!?」
レイが苦笑して言う
「いやぁ~ 俺も実は良く覚えてないんだけど」
マリアが言う
「まさか また壁に激突して 朝起きたら 外に寝ていたとか!?ついでに頭を 怪我していたとかっ!?」
レイが言う
「ああ!惜しいな マリア!でも よく分かってるよ!俺は 今朝 起きたら ちゃんと 部屋のベッドで寝てたんだけどさ?その部屋の壁がぶっ壊れてたから 外と同じくらい寒かったよ!マジで!」
マリアが衝撃を受けて言う
「そ、その 壁を壊したのはもしかして!?」
レイが言う
「うん!俺は覚えてないんだけど 位置的に 俺のベッドの前だったから きっと 俺は 窓を開けるのがメンドクサくて 壁を突き破って そのままベッドに入ったんじゃないかなって思うよ!」
マリアが慌てて言う
「ちゃんと窓から入って!…の前に 玄関から入らないんですか!?」
レイが言う
「どうせ外から入るんだから 直接入れる所から入った方が早いじゃないか?だから俺はいつも 窓から出入りしてるんだよ~!マリアー!」
マリアが思う
(そうなんだ… いつも… …って)
マリアが言う
「そうじゃなくてっ!」
レイが言う
「ああ!そうじゃなくて!今日も やっぱりマリアは 時間に追われてるな!?」
マリアがハッとして時計を見て言う
「ああっ!本当に時間がっ!」
レイが言う
「って 事で!」
会社前
レイが言う
「はい 到着ー!マリア いってらっしゃーい!」
マリアが慌てて言う
「あっ は、はいっ!有難う御座いましたっ!ウィザード様っ!行って来ます!」
マリアが走って行く
社内
マリアが息を吐いて言う
「はぁ~ 間に合った…」
課長が咳払いをする
「うっうんっ!」
マリアが衝撃を受けつつ仕事を開始しながら思う
(う…っ でも ギリギリだし… これじゃ 先輩として示しが付かないよね… 分かってはいるんだけど…)
マリアが軽く息を吐いてから 意識を荷物に向けつつ思う
(エリナは今日 リナの彼に話すって言ってた… その時間は… きっとお昼過ぎ… とか…?それからその彼がリナに話すのは 夜になるかもしれないけど エリナは連絡するって言ってくれてたから きっと退社時には連絡が来ている筈… それか もしかしたら お昼休憩の時…?お昼休憩か… マキにも相談してみようかなぁ?あ、でも マキにまで心配を…)
新人2が言う
「あの マリア先輩 教えて頂きたいのですが」
マリアがハッとして 苦笑しつつ言う
「あっ は、はいっ?何でしょう?」
課長が目を光らせている マリアが視線を感じて思う
(い、いけない… 今は仕事に集中しよう…)
マリアが後輩に仕事を教える
昼休み
マリアが窓の外を見て言う
「あ… 雨だわ 珍しい…」
新人1が言う
「この町では珍しいですけど 3つ隣のレンデン町では ずっと雨続きで困っているそうですよぉ?」
マリアが言う
「え?そうなんだ?」
新人1が言う
「はい 私のお婆ちゃんの家があるんですけどぉ 川とか増水しちゃって大変だって でも この町とか隣町なんかは 逆に雨が少ない方だったのに 急ですよねぇ?やっぱり 異常気象なんですかねぇ?」
マリアが言う
「うん… そうなのかも…」
マリアが思う
(それとも やっぱり ウィザードの能力の問題なのかなぁ?レンデン町のウィザードって どんな人なんだろう?もしかしたら あの大灯魔台の 灯魔儀式に出ている人だったりして…?)
マリアが視線を落として思う
(でも 大灯魔台の灯魔儀式に出るぐらいなら それなりに実力はあるって事なんだよね?…違うのかなぁ?)
新人1が言う
「あの~?マリア先輩?」
マリアがハッとして言う
「はっ はいっ!?」
新人1が苦笑して言う
「良かったら 私たちと一緒に お弁当食べませんか?いつも外に行っているみたいですけど 今日は雨ですし?」
マリアが一瞬呆気に取られてから言う
「あ、そうだね?確かに…」
マリアが思う
(この雨じゃ マキも来ないだろうし…)
マリアが言う
「それじゃ 一緒に!」
新人1が言う
「良かった!他の2人も居るんで 4人で食べましょう!」
マリアが言う
「うん お邪魔しちゃうね?」
新人1が言う
「はいっ!是非是非!」
マリアが微笑して思う
(たまには 魔法や ウィザード様たちの事は忘れて 普通の会話って言うのも 良いかもしれない …エリナからも まだ連絡はないし)
新人1がこっそり言う
「それで… 出来たら あの魔法使いさんの お話とかっ」
マリアが衝撃を受ける 新人1が微笑して言う
「聞かせてもらえませんかぁ~?マリア先輩~!」
マリアが苦笑して言う
「う、う~ん…」
マリアが思う
(私の 普通の会話が…っ …しかも その魔法使いさんは 昨夜は寮の壁を壊して ベッドに入って 今朝は 頭に包帯を巻いて来ましたとか?)
マリアが溜息を吐いて言う
「はぁ… やっぱり 言えない…」
新人1が呼ぶ
「マリアセンパーイ こっちですよ~!?」
マリアが苦笑して言う
「は~い」
マリアが席に座り息を吐いて思う
(つ、疲れた…っ お昼休憩… 休憩の筈だったのに…)
マリアが書類を引っ張りながら思う
(普通の会話所か ひたすら ”あの魔法使いさん”に付いての 質問攻めで… その話を聞いている 他の2人まで乗って来ちゃって… いくら否定しても 彼氏彼氏って…)
マリアが顔を上げて思う
(『そんなに ウィザード様を 私の彼氏にしたいんですかっ!?』って 何度も叫びそうになった…っ)
マリアが書類へ視線を落として 肩の力を抜いて思う
(はぁ~… でも 出会いは もちろん ”あの魔法使いさん”が 魔法使いになってしまった 理由も言えない訳で… 結局大した事は 話してあげられなかったんだから …そもそも 物珍しい 魔法や 魔法使いさんの 話を聞きたがるのは しょうがないのかなぁ)
マリアが息を吐いて言う
「ふぅ~…」
課長が言う
「疲れている所 すまないがね?マリア君?」
マリアが衝撃を受けて言う
「い、いえっ!?何でしょうっ!?課長っ!?」
課長が言う
「もうすぐ 今期のプロジェクトが 企画される予定なんだが」
マリアが言う
「あ、はい えっと…」
マリアがカレンダーを見て気付いて言う
「あれ?今期は随分早いですね?いつもなら もう2週間は先で 来月の初めからだったと…?」
課長が言う
「うむ、プロジェクトが開始されるのは通常通り 来月の初めからだが その企画の構成は 来週から始めるものなのだよ」
マリアが言う
「ああ、なるほど そうですね 開始される前に 企画はされるでしょうから…」
マリアが思う
(そうなれば 企画はプロジェクト開始の2週間くらい前から 開始されるのかも…?)
課長が言う
「と、言う事でマリア君 今期からは 君も企画から参加してみないかね?」
マリアが驚いて言う
「えっ!?私がっ!?…ですか?」
課長が言う
「君には今まで プロジェクトの企画後に 携わってもらっていたからね?そろそろ 企画の方にも参加してもらうのも 良いかと思って居たのだよ」
マリアが言う
「え!?え!?ですがっ!?プロジェクトの企画と言ったらっ!?」
課長が微笑して言う
「その為に 新人も3人 入れたのだからな?おめでとう マリア主任 昇進だ」
マリアが驚いて言う
「わ、私がっ主任にっ!?あ、有難う御座いますっ!?課長っ!」
新人たちが拍手して言う
「おめでとう御座います!マリア先輩!」 「マリア主任!これからも 宜しくお願いします!」
マリアが微笑して言う
「あ、ありがとう!?」
マリアが思う
(え!?え!?ホ、ホントにっ!?これ 夢じゃないのっ!?)
課長が言う
「それで、早速 先ほど話した プロジェクトの企画なのだが 言った通り 来週から開始される その会議の初日が 水曜日になるのだが マリア君は 公休日だろう プロジェクトに合わせて一時的にでも それは変えざるを得ない」
マリアが言う
「は、はいっ 分かりました!」
課長が言う
「とは言え 水曜日の前日は プロジェクト企画に付いての資料が集まるから それに目を通す為にも 出社してもらいたい …そうなると 君は先日の休暇も返上しているだろう?もし必要なら 急ではあるが 休みを取るなら 明日しかないが どうするかね?」
マリアが言う
「あ、はい… しかし 月曜日は…」
マリアが思う
(絶対休暇禁止の月曜日… 今から準備するには… 時間と… 何より体力が…)
マリアが困る 課長が言う
「確かに 部署としては忙しい曜日だが プロジェクトの為となれば仕方がない 新人とは言え 社員は3人居るからな?その日は私が指導して 何とかしよう」
マリアが呆気にとられて言う
「え?課長が…?」
課長が言う
「書類作成に付いては もう十分指導はしてくれて あるのだろう?それなら 後は問題ない」
マリアが言う
「分かりました では 宜しくお願いします!」
課長が言う
「うむ、では 話は以上だ 全員仕事に戻る様に!」
皆が仕事に戻る マリアが席に座り思う
(いつも 怒られてばかりいた 私が昇進かぁ… 驚いちゃった 遅刻癖もあって 昇進なんか程遠いと思っていたのに ビックリ…っ しかも 急ではあるけど 休暇を貰えたし 正直 水曜日の公休日までキツイと思ってたから 助かっちゃった… ん?それに?)
マリアがカレンダーを確認して思う
(あ、明日ってっ!大灯魔台の灯魔儀式の日だったっ!…や、やった!すっかり忘れてたけどっ これならウィザード様と 最初から見に行ける!早速 今日の帰りに 伝えなくちゃ!…あ、伝えると言えば もう1つ忘れてたっ!エリナから連絡は…っ!?まだ無いかな?それに 今確認したって 連絡は出来ないし… やっぱり 早く…)
課長が叫ぶ
「マリア君っ!!」
マリアが衝撃を受けて叫ぶ
「はっ はいっ!すみません!課長っ!」
会社 外
マリアが出て来て言う
「ふぅ~… もう限界… いくら 課長や新人3人に任せると言っても やっぱり 急に休むとなると やって置かなきゃいけない事が 沢山あって… それに」
マリアが携帯を見て思う
(エリナからの連絡は無かった… まだ話してないのかな?)
マリアが傘をさしながら言う
「そう言えば 話をするって言う その時間までは 聞いてなかったし… 帰ったら私から 連絡してみよう」
レイが言う
「マリアー!」
マリアが振り向くと レイが到着して 杖で帽子を軽く上げながら言う
「お仕事 お疲れ様ー!マリア!」
マリアが苦笑して言う
「お疲れ様です ウィザード様 今日は雨に降られちゃって お空を飛ぶのも 大変だったんじゃないですか?」
レイが言う
「大丈夫だよ マリア!風と水は仲が良いから 空を飛ぶ時だって 何とも無いよ!むしろ俺としては 天気の良い日の方が 日差しが暑くて大変だなー?」
マリアが言う
「え?そうなんですか?てっきり 雨の日の方が 大変なのかと思いました」
レイが言う
「そうか?だって 水は風で払う事が出来るけど 日差しは風で遮れないだろう?」
マリアが気付いて言う
「あ、なるほど…」
マリアが思う
(確かに…)
レイが言う
「そんな時は 水の魔力をちょっと借りて 霧を作って防ぐんだよ それが雲になって 次に雨になったりするけどな?」
マリアが呆気に取られた後苦笑して言う
「それじゃ この雨は 何処かの風の魔法使いさんが その霧を沢山作っちゃったんでしょうか?」
レイが一瞬呆気に取られた後笑って言う
「あっははっ 魔法使いが作る霧なんて ほんのちょっとだから こんな大規模に降る事は無いよ それに この雨は 自然界の水の魔力が怒ってるんだぜ?」
マリアが言う
「え?自然界の水の魔力が怒っている?」
レイが言う
「そうそう!だから 自然の摂理に外れて その土地に長く降り続けて 人の営みに危害を与えようとするんだ …水の魔力は 最も人に優しい力なのに それが怒るんだから よっぽどだな?」
マリアが思う
(そうなんだ… この雨は 自然界の水の魔力が怒って 人の営みに… それじゃ その原因は 人にあるって事?)
レイが言う
「所で マリア 今日は何処かに行くのか?行くなら また連れてってやるぞ?」
マリアが言う
「あ、いえ 今日は何処へも …このまま帰宅する予定です」
レイが言う
「そうか!それじゃ 帰るぞ!マリア!」
マリアが言う
「はい、お願いします」
レイとマリアが風に消える
自宅 前
レイが言う
「はい!到着!」
レイがマリアに抱き付居て言う
「マリアー!マリアは 明日も やっぱり忙しいのか?」
マリアが苦笑しつつ思い出して言う
「あ、そうでした ウィザード様 私 明日は1日お休みになりまして」
レイが言う
「お!?そうなのかっ!?それじゃ 俺と一緒に!」
マリアが言う
「はい!一緒に!」
レイが言う
「朝からゆっくりお茶が飲めるなー!」
マリアが衝撃を受けてから言う
「え!?…いえっ!そうじゃ無くてっ!?ウィザード様 お忘れですか!?明日は 大灯魔台の灯魔儀式の日ですよ!?見に行かないんですかっ!?」
レイが言う
「ああ、そりゃ もちろん ちょっとは見に行くつもりだったけど 別に 最初から見なくたって良いだろう?一応 総魔力は計算されているんだから 最初の起動作業は問題ないだろうし 補助灯魔台を見れば 何の属性を灯魔したのかも 分かるからな?」
マリアが言う
「それはそうかもしれませんがっ 時間が有るのなら 最初から応援したいって 思うじゃないですか!?」
レイが言う
「そうか?俺は別に思わないけど?」
マリアが衝撃を受けてから言う
「え!?思わないんですかっ?何でですかっ!?ウィザード様の”先輩”だって 参加するんですよっ!?私だって お母さんも居ますし… 何より 大灯魔台の灯魔儀式を行う ウィザードの皆さんを 一緒に応援したいってっ!」
レイが言う
「そんな事より 俺はマリアと 仲良くお茶でも していたいって 思うけどなぁ?」
マリアが思う
(相変わらず この人はっ!!)
レイが言う
「けど、マリアが そうしたいって言うなら 俺はそうするよ?それに よく考えたら 明日の大灯魔台の灯魔儀式は ちょっと面白いかもしれないからな?」
マリアが言う
「え?ちょっと面白いって …今までと何か違うんですか?」
レイが言う
「だって、14年以上前から 魔力を抑えていた あの先輩が やっと 法魔帯の呪縛から解かれた訳だから その実力が どんなもんかってさ?もしかしたら…」
マリアが言う
「え?14年以上前から!?」
マリアが思う
(14年以上前から実力を抑えていた?つまり 法魔帯の色を上げないようにしていたのも 10年以上前からって事?それじゃ 法魔帯の色を上げないようにしたのは 14年前の大灯魔台の灯魔儀式の失敗が原因じゃないの!?)
レイが言う
「ああ、あの頃だって 俺は白い法魔帯を使っていたんだから 俺の魔力は 最強だったのに 先輩は その魔力を制御したんだぜ?魔力の制御が出来るって事は 同等の許容力が無ければ出来ない事だから 俺には分かったんだよ このウィザードは実力を抑えているって!」
マリアが言う
「では その先輩が 法魔帯の呪縛から解かれたと言う事は?もしや 明日からの大灯魔台の灯魔儀式を 全て成功させて…」
マリアが思う
(神に選ばれる事を 目指すって事?)
レイが言う
「先輩がどうするつもりかなんて事は 俺はどうでも良いけどさ?もし 本物のウィザードなら 神に選ばれる事なんか 望まない筈だから」
マリアが呆気にとられて言う
「え?」
マリアが思う
(本物のウィザードなら 神に選ばれる事を望まない?…それは どう言う事?)
レイが言う
「もしかしたら 今度こそ引退するって事で 先輩の本気が見られるかもな?…うーん それなら やっぱ俺も 最初から見ておくか!マリアと一緒に!」
マリアが呆気にとられて言う
「え?あ… はい… えっと それでは」
レイが言う
「うん!明日も迎えに来るからな!俺と一緒に見に行こうな!マリア!」
マリアが苦笑して言う
「あ、はい… お願いします」
レイが言う
「じゃ 俺 帰るよ!お休み!マリア!」
マリアが言う
「は、はい… お休みなさい また明日」
レイが風に消える マリアが疑問して思う
(なんだか また 分からなくなっちゃった… これもやっぱり 私が 講習会の前半を 欠席していたせい… なの?)
マリアが玄関へ向かいながら溜息を吐く
「…はぁ~」
マリアが鍵を取り出そうとすると携帯が鳴る マリアが一瞬驚いてから慌てて携帯に出て言う
「エリナ!?どうだったっ!?」
マリアが玄関の鍵を開けようとした手を止めて言う
「え?…どうして?昨日は 脅してでも言わせるって?」
マリアが玄関の鍵を開け 家に入る
マリアの部屋
マリアが考えている マリアの脳裏に思い出される
回想
マリアが言う
『え?…どうして?昨日は 脅してでも言わせるって?』
携帯からエリナの声がする
『うん そのつもりで 今日 彼に会って 言ったんだけど… その彼が 今はリナの調子が余り良くないから… 安定してから話すから もう少しだけ待って欲しいって』
マリアが言う
『あ… そうなんだ…?』
エリナが言う
『流石に そんな状態だって言われたら私がらも伝えられないし… それに リナには何となくって事で連絡して様子を聞いてみたんだけど …実際 少し調子が悪いって本人が言うから 尚更』
マリアが言う
『そっか… それじゃ しょうがないね?』
回想終了
マリアが思う
(…そう言えば 仕事を手伝ってもらいたいって ちょっと前にケーキパーティーをした時も そんな様な事言ってたっけ… あの時は出産に対してちょっとナーバスになっているだけだって 言ってたけど調子が悪かったのかなぁ… だとしたら 仕事を手伝わせて悪い事しちゃったなぁ…)
マリアが溜息を吐いて言う
「ふぅ~ 何だか心配…」
玄関からソニアの声が聞こえる
「ただいまー」
マリアがハッとして思う
(あ、そう言えば こっちもっ!?)
マリアが立ち上がって言う
「お帰りなさーい」
マリアが部屋を出る
通路
マリアが言う
「お母さん 明日の大灯魔台の灯魔儀式 お母さんも もちろん行くんだよね?」
ソニアが言う
「ええ もちろんね?」
マリアが言う
「私もね?明日は1日 お休みになったから 今度は最初から見に行こうと思ってるの …あ、そう言えば 明日は何処の町の大灯魔台なの?」
マリアが思う
(前回は 確認しなかったけど ウィザード様が連れて行ってくれたんだっけ?…どうして分かったのかなぁ?)
ソニアが言う
「あら それこそ もちろん リーツ町よ?ルーツ町 レーツ町と来れば 次はリーツ町の大灯魔台に 決まっているでしょう?」
マリアが衝撃を受けて言う
「え!?決まってるのっ!?」
ソニアが言う
「ええ、…と、言っても 1番目2番目の場所は 確認しないと分からないけど その2つが終われば3番目は 言わずとも決まるでしょう?大灯魔台の灯魔儀式は 三方形を2回の合計6回なんだから 明日は その前半の終わりね?」
マリアが思う
(し、知らなかった… 三方形?あ、そう言えば ルーツ町、レーツ町、リーツ町となれば 地図上で三方形になるかも…?)
ソニアが言う
「6箇所が終わらなくとも 三方形の大灯魔台が灯れば かなり結界も強化されるし そうなれば 今起きてる異常気象も… 少しは良くなるかもしれないわね?」
マリアが気を取り直して言う
「あ、そうだね?このままレンデン町みたいに 何日も雨が降り続いたら… お洗濯物も乾かないし …農作物にも 良くないもんね?」
マリアが思う
(あ… でも ウィザード様は この雨は 水の魔力が怒ってるんだって 言ってたけど… それも 結界が強化されれば 何とかなるのかなぁ?)
ソニアが言う
「そうね この雨も… ただの雨なら良いんだけど… でも この雨は もしかしたら あまり良い雨ではないのかも 知れないから 少し心配だけど」
マリアがハッとして思う
(あ、もしかして お母さんも その事を知ってるのかな!?)
マリアが言う
「あまり良い雨ではないかもって それって もしかして お母さんも ”お母さんのウィザード様”から 何か聞いてるの?」
ソニアが一瞬反応してから苦笑して言う
「うっふふっ お母さんは 何も聞いていないけれど マリアの言い方では 本当にそうなのね?」
マリアが衝撃を受けて思う
(う… そっか… 相変わらず 鋭いな お母さん…)
ソニアが言う
「”お母さんのウィザード様”は 何も仰らないけど でも こんな時は分かるのよ この雨を ご心配されているな~?って」
マリアが言う
「この雨を ご心配されて?」
マリアが思う
(じゃぁ やっぱり ”お母さんのウィザード様”は 水の魔力の事を心配している…?)
ソニアが言う
「”マリアのウィザード様”も 同じなのかしら?」
マリアが言う
「あ、えっと~ 私のウィザード様は 何でも仰る人だから ハッキリ言ってたよ?”この雨は自然界の 水の魔力が怒っているんだ”って」
ソニアが言う
「そう… そうだったの… それは 困っちゃったわね どうしたら良いのかしら…?」
マリアが気付いて言う
「え?あっ …ごめんね?お母さんを 困らせちゃった?」
ソニアが苦笑して言う
「良いのよ でも どうしたら良いのか その解決策も ”マリアのウィザード様”は 教えてくれたの?」
マリアが言う
「う、ううん…」
マリアが思う
(そう言えば 聞いてないかも…)
ソニアが言う
「そう… 解決策が あるのなら良いけど… 心配ね?」
マリアが一瞬驚いた後表情を落として言う
「う、うん… そうだね?あ、明日にでも 聞いてみようかな?」
ソニアが苦笑して言う
「ええ… お母さんも 聞いてみようかしら」
マリアが言う
「あ… あ、でもっ お母さんと ”お母さんのウィザード様”は 明日は大灯魔台の灯魔儀式で 大変なんだし 今はそっちの事だけ 考えた方が良いんじゃないかな!?」
ソニアが言う
「あ… そうだったわね ごめんなさい マリア 有難う」
マリアが言う
「う、ううんっ 私こそ ごめんなさい… 大切な時に 他の心配事を…」
ソニアが微笑して言う
「大丈夫よ マリア 明日の灯魔儀式は 成功するから」
マリアが言う
「え?」
ソニアが微笑して言う
「明日の大灯魔台の灯魔儀式は 必ず成功するって …それも 仰らないけど お母さん 分かったから」
マリアが呆気に取られた後苦笑して言う
「う、うん!私も… そうだと思う!」
マリアが思う
(確信は… 無いけど… それでも ウィザード様はいつも通り 心配とかなんかは していなかったし… それに もしもの時は…っ)
ソニアが微笑して言う
「ええ それじゃ お母さん 明日の為にも 早く寝る事にするわ」
マリアが言う
「あ、うん… 私もそうする!」
ソニアが微笑して頷き立ち去る マリアが肩の力を抜いて思う
(お母さん… 雨の事 心配してたなぁ… 私、余計な事 言っちゃったかも…)
マリアが自分の部屋へ向かいながら思う
(”お母さんのウィザード様”は お母さんに言わなかったのに 私が 自分のウィザード様から 聞いた事を言っちゃって… 良くなかったかも… あ、もしかして?)
マリアがベッドに横になって言う
「”お母さんのウィザード様”は だから言わないとか…?お母さんの… 自分の奉者へ 心配を掛けない為に…」
マリアが気付いて思う
(ウィザードって 皆 自分の奉者の事を そんなに大切にするのかな?”私のウィザード様” だけかと思っていたけど…)
マリアが一息吐いてから眠る
翌朝
TVでニュースがやっている 映像にポルト村のダムが映っていてキャスターが言う
『現場から中継いたします!この所降り続いた大雨で こちら レンデン町のポルト村のダムが 貯水量を遥かに超え ポルト村の住民には 昨日から避難指示がなされています』
マリアがTVへ向けていた視線を窓の外へ向けて言う
「今日も止む気配がないなぁ… この町には ダムなんて無いけど 何だか心配… でも 大灯魔台の灯魔儀式が成功すれば もしかしたら…?」
TVに村人が映っていて言う
『だから こったら ダムなんか要らないって 言ったんだよぉ~ なのに 村長さんの 道楽息子が…っ』
マリアがTVを消して立ち上がって言う
「そろそろ時間かな?」
玄関
マリアが外に出て 玄関に鍵を閉めると傘をさして歩き出す レイが言う
「マリアー!」
マリアが振り返ると レイが抱き付いてきて言う
「お早うー!マリアー!水の魔力の怒りも そろそろ 限界だなー!?」
マリアが言う
「お早う御座います ウィザード様 …いつもお迎え有難う御座います …それで その 水の魔力の怒りって言うのは 今日の大灯魔台の 灯魔儀式が成功して 結界が強まれば もしかして 落ち着いたりも するのでしょうか?」
レイが言う
「それとこれとは 全くの別問題だよ マリア!本物のウィザードと 偽物のウィザードの 違い位違う事だよー!」
マリアが衝撃を受けて思う
(その前に その例えの方が 全く 分からないのですが…!?)
マリアが言う
「その… 本物のウィザードと 偽物のウィザード と言うのは…?」
レイが言う
「ん?そうだな!それじゃ まずは その違いから見に行くか!マリア!」
マリアが困惑しつつ言う
「は、はい…」
マリアが思う
(その違いより前に 水の魔力に付いて聞きたかったんだけど… まぁ… いっか… 今日はお休みだし 時間はあるものね?)
レイがマリアを包み風に消える
大灯魔台神館
レイとマリアが現れる 館内のアナウンスが薄っすら聞こえる レイが言う
「お?丁度良い 時間みたいだな!これなら 急がなくても大丈夫だ」
マリアが言いながら歩き始める
「はい でも 早く行きましょう これ以上濡れると 見学している間に 風邪を引いちゃいそうですから」
マリアが思う
(どう言う訳か 移動魔法の間には 雨に濡れなかったけど… その前に 誰かさんの マリアー のお陰で…)
マリアが軽く溜息を吐く レイが言う
「ああ、それなら大丈夫だよ!マリア」
レイとマリアが神館の入り口に到着して マリアが傘を畳むと レイが軽く杖を動かす レイとマリアの身に付いていた水分が弾かれたように外れ 地に落ちる マリアが呆気に取られると レイが言う
「だから言ったろ?水と風は仲が良いんだって!さあ 行こう マリア!もうすぐ始まりそうだぞ?」
レイが向かう マリアが苦笑して言う
「あ、はい…っ」
マリアがレイの後を追う
見学スペース
レイに続きマリアがやって来て 見学スペース最前部へ向かう レイが到着してマリアが隣に来る 台座に ウィザードたちが出てくる マリアがそれに視線を向けると レイがマリアを見て言う
「マリア 寒いのか?」
マリアが反応してレイを見て言う
「あ、いえ お陰さまで 大丈夫です」
レイが言う
「そうか 寒いなら 暖めてやるからな?」
マリアが衝撃を受け慌てて言う
「あ、あのっ!分かってはいますが!」
マリアが頬を赤らめて顔を逸らす レイが疑問する マリアが思う
(もぉ… ウィザード様って そう言う言葉の意味 分かってて 言ってるのかしら…っ?)
レイが疑問して言う
「ん?今度は暑いのか?それなら 冷やしてやろうか?」
マリアが言う
「だ、大丈夫ですっ!」
レイが不思議そうに言う
「そうか…?無理はするなよ?マリア?」
マリアが苦笑する
灯魔口
ウィザードさまに続きウィザードたちが集まり 皆がレイを一瞥してから ウィザード2が言う
「今日も見学スペースに居る様だが… と言う事は」
ウィザード3が言う
「また 基本魔法の火で行くか?でも そうするとな… 結局 誰かさんに 良い評価が集中するんだよな?」
ウィザード3がウィザード2を見てからウィザードたちが ウィザードさまを見る ウィザードさまが言う
「この大灯魔台の属性は 水であると 私は思っている 従って 一属性で通すのなら 水で行こう」
ウィザードたちが一瞬驚いてから ウィザード2が言う
「何故水だと?」
ウィザード4が言う
「大灯魔台の属性は 起動を終えるまでは 分からないんじゃなかったのか?」
ウィザード2が言う
「貴方が言った筈だが?」
ウィザードさまが言う
「そうだな 嫌なら 全ての属性で起動した後 火から順に行おう …水で灯る筈だ」
ウィザード2が言う
「灯らなかったら?3灯目は 出来ないぞ?」
ウィザード5が言う
「このメンバーじゃ 2灯目すらキツイかもしれないぜ?」
ウィザード6が言う
「法衣の色は相変わらずでも 先輩は今回はホンキなんだから 俺は任せるよ」
ウィザード4が言う
「前回あれだけの事をやっておいて またその色で 1番の控え出口に立つのは 当て付けか?手元に見える 白い法魔帯が 余計に目立つな?」
ウィザードさまが言う
「私は今回を持って引退する」
ウィザードたちが驚いて言う
「「え…っ!?」」
ウィザードさまが言う
「従って もし 水で灯らなければ 全ての責任を私が負おう …そうだな やはり全てを灯して 2属性を試すか?その方が 万が一 水で灯らなくとも その時点で 火と水が候補から外れるだろう?その方が後に繋がるか?」
ウィザードたちが顔を見合わせ ウィザード4が言う
「どうする?」
ウィザード2が言う
「2属性を試すなら 最初に水をやって それが灯らなければ 引退する先輩に頼って 火ではなく もっと上の属性を…」
ウィザード7が言う
「まさかこんな話し合いをしていたなんて 知らなかったが… 俺は 火の一属性でやるもんだと思ってた 全ての属性を灯すだなんて …俺はやりたくないんだが?」
ウィザードさまが言う
「水の大灯魔台に 対極の火の一属性では 8回の灯魔でも 灯らないと言う事が分かっている 従って 一属性なら 水で行く」
ウィザード3が言う
「折角 先輩がしょってくれるって言うんだぜ?失敗に備えた方が特じゃないか?全てを灯すべきだ」
ウィザード7が言う
「水の一属性で行ったって良いだろう?その方が楽じゃないか?」
ウィザード6が言う
「なんだ やっぱり7番は 精神力に自信なしか?」
ウィザード7が言う
「何とでも言え」
ウィザードさまが言う
「…水の一属性で行こう」
ウィザードたちが視線を合わせた後 ウィザード3が言う
「根拠は?」
ウィザードさまが苦笑して言う
「経験と感だ …とでも?」
ウィザード4が言う
「引退するつもりでも 教える気は無しか」
ウィザードさまが言う
「ウィザードならば 3箇所目の属性は 自然と分かるべきだ」
ウィザードさまが立ち去る ウィザードたちが視線を逸らし合った後立ち去る
見学スペース
マリアが微笑して言う
「ウィザードの皆さんの会話は ここからでは聞こえませんけど… でも 良いですよね?…あーやって 事前に打ち合わせしている姿って 何だか 意気込みを感じると言うか 協力性を感じるようで…」
レイが言う
「きっと あれだぞ?先輩が 全部の責任を引き受けるから 後の連中は 適当にやれって 言ってるんだよ」
マリアが衝撃を受けてて言う
「なっ!?何でそんな事 言うんですかっ!?…って言うか そうなんですかっ!?」
レイが言う
「ああ、それ位の事言わないと あいつら言う事なんか聞かないからな?下手したら 灯魔の邪魔さえ されかねないぜ?10年前だってそうだった 先輩の9投目は成功してたのに 他の奴が邪魔をしたんだ… って言っても わざとじゃなくて 本当に能力不足だったのかも しれないけどな?」
マリアが表情を困らせてから言う
「それじゃ… 今回は 大丈夫でしょうか?」
レイが言う
「マリアは 何も心配しなくて良い!俺が居るだろ?」
マリアが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「…そうですね?」
レイが言う
「ああ!」
マリアが視線を大灯魔台へ向ける
大灯魔台 台座
ウィザードさまが構えると ウィザードたちが続いて構える 全員が魔力を集め 周囲に水が集まる
見学スペース
マリアが言う
「水の魔法…」
レイが言う
「水の一属性で通すつもりだな それなら 6回の灯魔で終わりだから 早く帰れて良かったよ!」
マリアがレイを見て言う
「水の一属性で?それでは この前みたいに 8回行うのでは?」
レイが言う
「水の一属性でやるなら 6回しかやらないよ 水の場合は8回で灯るとしたら 風属性の代わりって事になるけど それだったら 全部の属性で起動をさせてから 6灯目に風魔法を灯魔した方が 断然楽なんだ」
マリアが呆気にとられて言う
「そうなんですか… でも 水の魔法より 風の魔法の方が 難しいのですよね?」
レイが言う
「風の魔法は取得するのに難しいから 5番目の魔法って言われてて 水の魔法は 順番的には2番目の魔法になるけど 灯魔儀式では 一番抑えの負担が大きい魔法なんだ 先輩以外が あのメンバーじゃ 6回がギリギリかもな?」
マリアが心配して言う
「6回がギリギリ… それじゃ また ウィザード様が お手伝いに行った方が 良いのでは?」
レイが言う
「大丈夫だって あそこにはマリアの お母さんも居るんだぜ?やばくなれば 先輩がちゃんと手を打つって!」
マリアが言う
「そうは言いましても… その先輩が お1人だけでは やっぱり 大変じゃないですか 前回だって ウィザード様が お手伝いをしたから!」
レイが言う
「心配ないよ マリア ほら 本物のウィザードと偽物のウィザードの違いが もうハッキリしてきたぞ?」
マリアが疑問して言う
「え?」
マリアがレイの視線の先 ウィザードたちを見て呆気に取られる 台座に居るウィザードたちは ウィザードさま以外が疲れを見せている レイが言う
「これなら 何の心配も無い …俺としては もう マリアの家に帰って お茶でもしたい位なんだけどな?」
マリアが衝撃を受けて言う
「い、言っておきますがっ!ちゃんと 最後まで見ますからねっ!?」
マリアが視線を戻して思う
(それにしても… あの様子は?…まるで ウィザード様が居た 最初の灯魔儀式の時みたい …でも それじゃ 結局 魔力の強さが 本物のウィザードと 偽物ウィザードの違いって事?)
マリアが見つめる
台座
ウィザードさまが杖を構え魔力を収集する ウィザード2、3、4が表情を険しくして 杖を構えて魔力を収集する ウィザード5と6苦しそうに同じくする ウィザード7が何とか同じくして思う
(水の一属性で通すのは… こんなにキツイのか…っ 余計な事言わなければ… でも全部の属性なんて事になったら 俺は起動にすら… 何とか 後2回…っ)
ウィザードさまが軽く杖を振り上げ灯魔口に水の魔力を投下する ウィザード3、2、4が続き ウィザード5と6が何とか続く ウィザード7がギリギリ堪えた後水の魔法を投下すると 補助灯魔台に5つ目の水が灯る ウィザード7が膝を着く ウィザード5と6が杖で身を支える ウィザード2、3、4が息を切らしつつ ウィザードさまの余裕を見て驚き呆気に取られる ウィザード4が苦笑して言う
「流石 先輩… 完敗だよ」
ウィザード3が言う
「何で 引退するなんて言うんだ?このまま儀式に参加すれば 間違いなく神に選ばれる…」
ウィザードさまが余裕で杖を構え魔力を収集する ウィザード2が苦笑して言う
「もしかしたら その神に 選ばれたくないのかもな?」
ウィザード3が驚き言葉を失う ウィザード2が杖を構える ウィザード3が不満そうに杖を構えて言う
「そんな奴が 何で ウィザードになんか なるんだよ?」
ウィザード4が杖を構えて言う
「キツイな… 意識が飛びそうだ…」
ウィザード5が言う
「飛ばすなら 次を堪えてからにしてくれ 隣で失敗されたら その魔力は 俺に向かって来るだろ」
ウィザード6が言う
「けど、心配しなくても 見ろよ」
ウィザード5が6の視線の先 ウィザードさまの左手を見る ソニアが気付いて言う
「水の灯魔を行っているのに… どうして火の魔力が 左手に…?」
ソニアがウィザードさまを見る ウィザード6が言う
「6灯目は 先輩が受け持ってくれるんだろ?俺たちは 前回の火の8灯目と 同じ位の負担じゃないか?」
ウィザード5が言う
「それじゃ やっぱり あの風のエキスパートが 7番の杖を?」
ウィザード5と6がウィザード7を見る ウィザード7が何もせず立ち尽くしている ウィザード7が思う
(駄目だ… もう… 意識すら 遠い…)
ウィザード5と6が疑問する ウィザード4が言う
「おいっ 集中しろよっ!」
ウィザード5と6がハッとして上空を見上げる 水の魔力が7つに別れウィザードたちへ向かって行く ウィザードたちが構える ウィザードさまに強い魔力が向かって来るが ウィザードさまが受け止め 杖を振り上げると 灯魔口に水が落ち飛沫が舞う ウィザード3、2、4が続き ウィザード2が思う
(やっぱり 対極の火の魔法を含ませ 自分へ… 大分助かったな これで灯れば 次からは…)
ウィザード2が灯魔口を見てから 他のウィザードへ顔を向ける ウィザード5が必死に堪えて 杖を振り上げて言う
「ぐぅ!」
ウィザード5に向かっていた水魔法が灯魔口へ向かう ウィザード5がホッとして思う
(何とか ギリギリ…)
ウィザード5が肩の力を抜くと同時に 灯魔口へ向かっていた水魔法が 横から飛んで来た水魔法に吸収されて持っていかれる ウィザード5が驚いて言う
「え…っ?」
ウィザード5が4を見ると ウィザード4が表情を驚かせて視線を向けている ウィザード5が疑問してウィザード4の視線の先を見て驚いて言う
「なっ!やられたのかっ!?」
ウィザード5の言葉に ウィザード6が驚いてウィザード7を見ると ウィザード7が倒れている ウィザード6が驚く ウィザード5が言う
「おいっ 馬鹿っ!意識を逸らすなっ!」
ウィザード6がハッとすると同時に 水魔法に弾かれ床に倒れ 水魔法が再びウィザード6へ向かって行く ウィザード6が驚愕する
人々が息を飲み マリアがレイへ向いて言う
「ウィザード様っ!」
レイが微笑して言う
「大丈夫だ マリア 見てろよ!」
マリアが驚き言う
「えっ!?」
マリアが視線を戻すと
ウィザード6が顔を逸らした所に 向かって行った水魔法が突然ルートを変えて向かって行く ウィザード6が顔を向けると 水魔法がウィザードさまに防がれ 灯魔口へ落とされる ウィザード6が呆気に取られると ウィザードさまが左手に灯していた火の魔法を ウィザード7と5の合体した水魔法へ放つ 合体水魔法が自身への攻撃にルートを変えウィザードさまへ向かう ウィザードさまが合体水魔法を抑えると 杖を振り上げ 合体水魔法を灯魔口へ落とす 人々が息を飲む中 灯魔口に水が灯る
マリアが呆気に取られていると レイが言う
「火の魔法を餌に 水の魔法をおびき寄せたんだ 本物なら これくらいやらなきゃな?自然界の力を ただ借りるだけじゃなくて 使いこなす… 流石 年の功って奴だ!」
マリアが衝撃を受け怒って言う
「ウィザード様っ!褒めてるんだかっ 失礼なんだか どっちですかっ!?」
レイが言う
「良いじゃないか?マリア?ウィザードは 年寄りの方が 強いんだぜ?やっぱ 経験は力なんだよ」
マリアが一瞬驚いてから表情を困らせて言う
「な… なるほど… では…」
マリアが思う
(一応 褒めてるって 事なのかなぁ… なら 良いんだけど…?)
マリアがウィザードさまを見る ウィザードさまが灯魔口を見上げていた状態から 人々に背を向け苦笑し 控え出口へ向かって行く
控え出口
ソニアが微笑して言う
「お疲れ様でした」
ウィザードさまが微笑して言う
「ああ…」
ソニアが気付き苦笑して言う
「しかし 他の皆さんが あれ程 お疲れですのに… 一番負担を負われていらした 貴方様は お疲れには見えませんね?」
ウィザードさまが軽く笑って言う
「そうだな 今日は楽しかったよ」
ソニアが驚いて言う
「え…?」
ウィザードさまが軽く視線を上げて言う
「思うままに 魔法を使い 楽しんだ… 今はそんな気分だ」
ソニアが呆気に取られる ウィザードさまが苦笑して言う
「神聖たるウィザードには 程遠い台詞だな?」
ソニアが軽く笑って言う
「良いではありませんか?たまには そんな時が有られても?」
ウィザードさまが苦笑して言う
「そうか… では その様にしておいてくれ」
ソニアが軽く笑う ウィザードさまが言う
「…もう 結果など どうでも良いのだが」
アナウンスが響く
『大灯魔台 灯魔儀式は 無事成功致しました 続いて この度の灯魔儀式を用いまして ウィザード様の不認定投票を行います 投票に先立ちまして 各ウィザード様へお仕えする 奉者様のお名前を…』
ソニアが微笑して言う
「確認をしなくとも お分かりになるからですか?」
ウィザードさまが一瞬置いてから 微笑して言う
「いや… だが もうしばらく 眺めさせてもらおう」
ソニアが疑問した後 微笑して言う
「はい 完全に貴方様が成功させた 大灯魔台ですからね?」
ソニアが台座へ向かう アナウンスが言う
『その後方 ソニア・ノーチス奉者様』
ソニアがキリッと人々へ向いてから静かに礼をする ウィザードさまがソニアを見て言う
「これで 最後だからな…」
ソニアが顔を上げ 人々を見る そのソニアの姿をウィザードさまが微笑して見つめている
見学スペース
レイが言う
「なー?マリアー?もう良いだろう?早く帰らないか?それで 俺と一緒に…」
マリアが言う
「まだですよ!折角 ここに居られるんですから!ちゃんと 不認定票を確認してから 帰った方が スッキリするじゃないですか?」
レイが言う
「不認定になる ウィザードなんて あの 新入り7番に決まってるだろ?あいつ 最後の灯魔を受けるどころか その前に失神してたんだから」
マリアが一瞬呆気に取られた後言う
「あ…っ そうだったんですか?私、あの瞬間 ”お母さんのウィザード様”に向かって行った 水魔法の勢いへ気を取られていて その他の皆さんの事を 見ている余裕がありませんでした 気が付いたら 2人のウィザードが床に倒れていらして…」
レイが言う
「そうか …俺は むしろ あの7番が 本当に5大魔法使えるのか?って事の方が 気になってたけどな?」
マリアが言う
「え?5大魔法使えるのかって… ウィザードになれば 皆さん使えるのではないのですか?確か以前 ウィザード様 ご自身が言ってらしたじゃないですか?」
レイが言う
「ああ、それが普通なんだけど …何か あいつは足りない感じがした …ただの偽物ウィザードなだけじゃなくて もっと足りない …そんな奴を使ってまで 何をそんなに 急いでいるんだろうな?」
マリアが呆気にとられて言う
「…そうなんですか?あ、そう言えば 急いではいるみたいですよね?ウィザード様が 灯魔台の灯魔途中で 大灯魔台の灯魔儀式に参加したのも それが原因でしたし」
レイが言う
「まぁ 俺はどうでも良いけどな?…マリアと居られればさ?」
マリアが一瞬疑問した後 苦笑して言う
「ウィザードでも 魔法使いでも ”マリアのウィザード様”だって 意味ですか?」
レイが軽く笑って言う
「ああ!そうだよ!マリアー!だから 早く 俺と一緒に!」
マリアがプイッと顔を背けて言う
「お茶は ちゃんと 結果を聞いてからです!」
レイが言う
「それも もちろんだけどさ?それよりも」
マリアが疑問して言う
「それよりも…?」
レイが言う
「ああ、帰ったら 俺と一緒に」
マリアがドキッとして レイが言い掛ける
「ひ…」
マリアが慌ててレイの口を押さえて言う
「あー!結果が発表されますよ!ウィザード様っ!」
レイが口をふさがれて言う
「にゅねを…」
アナウンスが言う
『長らくお待たせ致しました これより 各奉者様のお名前をお借りし お仕えするウィザード様への不認定票数を 発表させて頂きます …不認定票数は200票で御座います それでは 発表をさせて頂きます 不認定票数…』
マリアが集中する アナウンスが言う
『0票 ソニア・ノーチス奉者様』
おぉーと言う歓声の後自然と拍手が鳴り響く マリアが表情をほころばせると 喜んで拍手をする 控え出口の前で ソニアが観衆へ頭を下げてから振り向いて ウィザードさまを見て微笑する ウィザードさまが苦笑する レイが台座へ背を向けた状態で 不満そうに言う
「マリア~?まだ~?もぉ 良いよぉ~ 帰ろ~よ~?」
アナウンスが続く
『不認定票数 4票 アリル・レイン奉者様 不認定票数…』
マリアが軽く肩の力を抜いた後 苦笑して言う
「もう… 子供みたいですよ?ウィザード様?」
レイが言う
「だって~」
マリアが苦笑した後 台座へ向く アナウンスが言う
『従いまして この大灯魔台 灯魔儀式に置きます ウィザード認定審査の結果は 最も多くの不認定票数 78票を持ちまして…』
マリアが苦笑してから軽く息を吐き 頷いてから言う
「分かりました!それじゃ 帰ってお茶にしましょう!ウィザード様!」
レイが言う
「うん!そうしよう!マリア!」
レイとマリアが会場を後にする
自宅前
レイとマリアが現れる レイが言う
「マリアー!お疲れさ…」
マリアが苦笑していた状態からハッとして 回避する レイが玄関ドアに激突して言う
「まぎゃっ!?」
マリアが玄関の鍵を開けながら言う
「さ、すぐに入って お茶にしましょう ウィザード様」
マリアがドアを開ける レイが疑問していると 玄関前の通りをオバサン集団が通り過ぎる
リビング
マリアがティーセットを持って来ると レイが向かいのソファに座っていて言う
「マリア~?」
マリアが苦笑して言う
「家の前だって 外です …って言ったじゃありませんか?しかも、最近 ちょっと噂になっているらしいですよ? ”ノーチスさんの娘さんが お家の前で…” って」
マリアが溜息を吐く レイが疑問して言う
「俺はそんなの どうでも良いと 思うけどなぁ?」
マリアが言う
「ウィザード様は 良いとしても 私は 気になりますから」
レイが言う
「何で?」
マリアが言う
「何でって言われましても…」
マリアがソファに腰を下ろし ティーポットにお湯を注ぎつつ思う
(何でだろう…)
マリアの横にレイが座っていて マリアがお湯を注ぎ終えると レイが抱き付いて言う
「まぁ 良いや!マリアがそう言うなら これからは こうやって家の中で 仲良くすれば良いもんな?」
マリアが思う
(確かに… 家の前で抱き付かれているのを 見られて 笑われて 挙句 噂をされるより こっちの方が ずっと良いかも…)
レイがティーポットに魔法を掛ける マリアが思う
(…それに ウィザード様は 普通の男の人と違って 神聖なウィザード様で… 一緒に一緒にって 誘われるのは いつも お茶だった訳で…)
レイが言う
「所で マリア?お茶も良いんだけどさ?そろそろ 一緒に」
マリアが思う
(いつも お茶だった 訳で)
レイが言う
「寝ないか?」
マリアが衝撃を受けて思う
(いつも… お茶… だった? …訳 …なのにっ!?)
マリアが慌てて言う
「なっ!?なななななっ!?」
マリアが一瞬間を置いた後 思う
(何を!?そ、そんな…っ!?そんな急にっ!?しかも よりによって 神聖な大灯魔台の灯魔儀式を見て戻って 更に 神聖なウィザード様の お茶を ご一緒しようと言う この瞬間にっ!?)
マリアが慌てて言う
「なっ!?…何 言ってるんですかっ!?そんな 急にっ!前置きもなしに 早過ぎですよっ!!」
マリアが思う
(そ、そうよっ!イキナリよ!?いくらなんでも 急過ぎるわっ!私はっ… 何の心の 備えもしていなかったのにっ!?今日は2人で 一緒に 大灯魔台の灯魔儀式を 見に行こうって!本当に そ… それだけ だったのにっ!?)
レイが紅茶を注ぎながら言う
「え?そうかなぁ?俺としては 朝から一緒に出かけて 帰って来たんだし… このお茶を飲んだ後で 丁度 良いと思うんだけど?」
マリアが言う
「そ、そんな…っ 事…っ 言われましても…っ だ、大体っ!ここはっ 私とお母さんが い、一緒に住んでいる家ですしっ!?そ、それに… あっ!そ、そうですよ!先輩がっ!あの ウィザード様の”先輩”が 結界魔法を 張っているんですからっ!」
マリアが思う
(そうよっ!お母さんが帰ってくればっ そんな事 やっているなんて事は もちろんっ あの ”お母さんのウィザード様” が!お母さんの帰った この家にっ!わ、悪い魔力 が居るって…!)
レイが言う
「ああ!そうだな!何か有れば 例え 俺が無防備な状態でも 先輩が居るから 丁度良いだろ?」
マリアが思う
(何んで 丁度良いんですかっ!?)
マリアが言う
「と、とにかくっ!駄目ですっ!そんな 急なのはっ!私… やっぱり 受け入れられませんからっ!」
レイが言う
「そうかぁ… じゃぁ しょうがない マリアがそう言うなら …また今度で!」
レイが紅茶を飲む マリアが困惑しながら思う
(ま、また今度っ!?)
レイが言う
「でも マリア?俺もしかしたら 耐えられなくなって…」
マリアがギクッとする レイが言う
「…寝ちゃったら ゴメンな?俺 いつも昼寝をしてる時間が もう 過ぎちゃってるからさ?」
マリアが気付いて言う
「え?」
レイが言う
「10時のお茶を飲んだら いつも その後 1時間 昼寝をするんだ 今日は 2時になっちゃったけど これを飲んだら 10時みたいに眠くなりそうで」
マリアが衝撃を受け思う
(ま… まさか また…?)
レイが紅茶を飲んでから言う
「マリアは いつも忙しいからさぁ?折角 休みなら 一緒に昼寝でもしたら 疲れも取れて 丁度良いと思ったんだけど… やっぱ いつも起きてる時間には 眠れないもんか?…まぁ そうかもな?」
マリアが言う
「昼寝…」
レイが言う
「うん!昼間に 1時間 昼寝をするとさ?体が 良く休まるんだよ~?1時間なら 夜眠るのにも 問題ないし でも ちょっとでも 寝過ぎちゃうと 夜の眠りにも 影響が出ちゃうから その辺が 難しい 所なんだよな~?」
マリアが落ち込んで思う
(あぁ… この話し振りからして 間違いなく 神聖なお昼寝だわ… それなのに…)
レイが嬉しそうに紅茶を飲んでいる マリアが息を吐いてから 紅茶を一口飲んで思う
(でも まぁ… 一緒にって… それは いくら 神聖なお昼寝だとしても やっぱり無理だし… それに 私は ウィザード様に)
マリアが言う
「あ、あの… ウィザード様?」
レイが言う
「ん?何だ?マリア?」
マリアが言う
「唐突ですが ウィザード様は ウィザードになる前の 魔法使いの時には やはり アウターサイドの村で 修行をなさっていたんですよね?」
マリアが思う
(今日は今日で 幾つか聞いておきたい事があったんだった!ウィザード様が耐え切れずに 眠ちゃうって言うなら その前に 聞いておかなきゃっ)
レイが言う
「…うん まぁ そうかもな?でも 俺は あんまり 魔法使いの 修行らしい 修行なんて してなかったし… ただ のんびり 空を 飛び回って 遊んでいた だけだよ~?」
マリアが衝撃を受けた後 思う
(空を 飛び回って 遊んでいた だけって…?それで修行に?)
マリアが気を取り直して言う
「あ… そ、そうですか …あ、でもっ!それなら やっぱり ”探求者”の人なんかも 良く… 見かけたり しましたよね?空の上からなら 良く見えるでしょうし!?」
レイが言う
「探求者?」
マリアが言う
「はい… 私の友人の… 彼が その探求者になったそうで… アウターへ行って この世界に悪影響を与えている 異常魔力の元を 探し出そうとしている そうなです」
レイが言う
「ふ~ん …あ、あいつ等の事か なるほど そうだったのか~」
マリアが言う
「…あ、やっぱり ウィザード様は 探求者の事 ご存知なんですね?」
レイが言う
「あいつらが その探求者って 奴だったのかな~って?今 マリアの話を聞いていて 思っただけだけど アウターに 武器を持って 出て行く連中だろ?何か探しているな~ とは思ってたけど …そっか 異常魔力の元を探してたのか …無謀な連中だな?」
マリアが思う
(無謀か… そうかもしれないけど…)
マリアが言う
「…確かに 危険なお仕事ですが この世界の為にって 必死なのは 私にも分かります …それで もしかして ウィザード様なら そのお仕事に 協力出来るんじゃないかなって 私、思ったんですけど」
レイが言う
「協力って?」
マリアが言う
「探求者の方々は 自分で武器を持って行くのも もちろんですが アウターサイドの村に居る魔法使いに 護衛をお願いしたりするそうなんです でも その魔法使いの方々は 皆 ウィザードになる事を目的として 修行をして居るそうなので 探求者の護衛は 断られてしまう事も 多いらしくて …しかし」
マリアがレイを見て言う
「ウィザード様は 以前 アウターからの 大量の野生動物の襲撃を 退治する事も出来ましたし 魔法使いになっても ウィザード級の実力があると言う事は きっと アウターサイドに居る魔法使いさんより ずっと強くて 探求者の護衛も 出来ちゃったりするんじゃないかなって」
レイが言う
「ああ、そう言う事か でも それは無理だな?」
マリアが呆気にとられて言う
「え?ど、どうしてですか?」
マリアが思う
(もしかして… やっぱり ”マリアのお願いじゃないから” とか ”マリアの護衛しかしない”とか そう言う…)
レイが言う
「だって、そいつらは アウターに行くんだろ?アウターって言うのは 元々灯魔台の結界が 届かない所を言うんだから そこへ行く奴らの護衛なんて 出来ないよ」
マリアが言う
「え?どう言う事ですか?ウィザード様の魔力なら 以前の様に 沢山の野生動物に襲われたって また…」
レイが言う
「アウターでは 魔法は使えないからさ?」
マリアが驚いて言う
「…え?」
レイが言う
「魔法は 正常な自然の力を 借りるものなんだから その自然の力が狂っちゃってる 結界の外 アウターでは使えないんだよ …だから 居るんだよな?たまに アウターサイドで修行しているつもりが うっかり アウターまで行っちゃって そこで 野生動物にやられちゃう 魔法使いがさ?」
マリアが呆気に取られる レイが言う
「だから 探求者なんて 無謀だよ 死にたくなかったら 止めておけって そいつにも 言ってやれば良いんじゃないか?」
マリアが言う
「そう… ですか …そうですね …でも」
マリアが視線を落として思う
(もしかしたら 探求者の人たちは もう とっくにその事には 気付いているのかもしれない… だから護衛は無しでも… 自分たちだけでも… って)
レイが言う
「そんな事しないで 結界の中に居れば良いだろう?それだけだよ 結界の中の土地だけでも 人は十分生きていけるんだからさ?大体 外の事を考える位なら もっと 中の事考えれば良いのにな?そいつらもさ?」
マリアがレイを見て言う
「結界の… 中の事…?」
マリアが窓の外を見て思い出して思う
(あ、そう言えば…)
マリアがレイを見て言う
「ウィザード様 今朝 言っていた この雨のお話… 今日成功させた 大灯魔台の灯魔儀式とは 関係がないのですよね?…と、言う事は 結局 何をしたら 水の魔力は怒りを静めてくれるんですか?」
レイが言う
「うん!流石マリアだな!そう言う事だよ まずは 結界の中からってな!」
レイが紅茶を注ぐ マリアが言う
「水の魔力が怒って… 人に危害を与えようと言う事は 原因は人に有る訳ですよね?それでしたら 当然 それを取り除くべきだと思いますが その… 何が原因か?って言うのは ウィザード様には 分かるんですか?」
レイが言う
「ああ、それを 解決するのが そもそも ウィザードの役目だよ ウィザードの役目は 結界を張るだけじゃないんだから」
マリアが一瞬呆気に取られた後 慌てて言う
「で、でしたらっ!こんな所で 悠長にお茶なんかして居ないで 今すぐ そちらを行うべきなのでは 無いんですかっ!?」
レイが言う
「うん でも 俺はウィザードじゃないし そもそも この雨は この町に危害を与えるものじゃないから この町の雨は ただの とばっちりって奴だよ?」
マリアが言う
「この町の雨は とばっちり?では…」
レイが言う
「今この雨が降ってる この町も 隣の町も 関係ない 原因がある町には もっとハッキリ 影響が出てるよ それを解決するのは その町のウィザードの役目だ」
マリアが思う
(この町でも 隣の町でもない… もっとハッキリ影響が出ている …と言う事は やっぱり レンデン町?だとしたら その町のウィザードの役目… そもそも レンデン町のウィザードって?もしかしたら 今日あの場所に…?でも 奉者の名前は紹介されても 町の名前までは…)
マリアがハッと思い出して言う
「…そう言えば!以前 ウィザード様と一緒に 大灯魔台の灯魔儀式に出席した時 私、あの場所に居た他の5人の奉者と ご挨拶をして その時」
マリアが立ち上がり 荷物のもとへ行って 手帳を取り出しページをめくりながら言う
「私、あの時 お名前と一緒に何処の町を担当していると言うのも 話したんです それで メモをしておいて… 今まですっかり忘れていたんですが… あっ!」
マリアが思う
(あったっ!レンデン町のウィザードに仕える奉者は リア・サインさんだ …あの時 3番の控え室を使っていた …って言う事は 実力は ウィザード様を除けば あの中で2番目っ!これなら大丈夫かもっ!?…でも ウィザード様は ”先輩”以外は偽物だって言っていたし… それじゃ…?)
レイが眠そうに言う
「マリア~?俺は マリアの居る この町の事じゃないんだし ついでに マリアのお母さんの居る 隣町でもないんだからさぁ…?」
マリアが戻って来て言う
「それは そうですがっ やっぱり 気になるじゃないですか!?水の魔力が怒っていても ”リア・サインさんのウィザード様”では 対処が出来なかったりしたらっ!?」
レイがマリアに抱き付いて言う
「だから この町のマリアは 他の町の事まで 考えなくても良いのに 考えたり心配したりするんだから… やっぱり マリアはマリアだよな…?」
マリアが手帳を見つつ言う
「この町であっても 他の町であっても 皆… 所で ウィザード様?その マリアはマリアって どう言う意味ですか?私が それだけ心配性だ って事ですか?それとも…?」
レイが言う
「マリアは 自分の事じゃなくて 他の奴の事や 他の町の事まで心配する… そんな奴は居ないと思ってたんだけど …マリアは 居たって事だよ …だから俺は」
レイがマリアに近付いて言う
「そんなマリアの事が… 大好きだよ」
マリアが驚き 目を見開いて思う
(えっ!?)
マリアが思う
(い、今… 何て?)
マリアが呆気にとられたまま言う
「ヴィ、ウィザード様っ!?今 何て… えっ!?」
マリアがレイへ向くと驚く レイがマリアの唇に近付き目を閉じる マリアが驚いて思う
(う、嘘っ!?今まで一度も そんな事…っ!?で、でもっ!今更と言えば 今更でっ ずっと そんな感じだとはっ 思っていたけど…っ!?で、でもっ!?だからってっ!?…やっぱり そんな 急で… わ、私 ど… どうし…)
マリアがレイの唇を見ていると レイが脱力して眠る マリアが衝撃を受け思う
(…って 寝たんですねっ!!)
レイがマリアにもたれかかる マリアが一瞬押されつつ 慌てて レイの体を抑えて思う
(本当に寝てるし… って お、重い…っ)
マリアが怒りを押さえて思う
(…もうっ やっぱりと言えば やっぱりだけどっ …本当にっ)
マリアが苦笑して言う
「もうっ …ウィザード様?これから1時間も ここで寝ていては 本当に お母さんが帰って来ちゃうかも しれませんよ?良いんですか?”先輩” に 怒られちゃいますよ?」
レイが言う
「う~ん… マリア~…」
マリアが苦笑する
マリアの部屋
マリアがベッドに倒れ込んで言う
「ふぅ~ 重かったぁ 人って本当に 眠っちゃうと重いのよね… しょうがないから お昼寝させてあげようと思ったけど あのまま1時間なんて押さえていたら ウィザード様だって寝違えちゃうだろうし …私も筋肉痛所じゃなかっただろうし」
マリアが寝返りを打って言う
「まぁ 少し動いたら 起きてくれたから 良かった…」
マリアが軽く息を吐くと あくびが出る マリアが思う
(あ… 何だか 私まで 眠くなっちゃった… そう言えば 今日は久し振りの休暇だったのに 朝もそこそこ早かったし 心配事が多くって 最近は夜も 遅かったから…)
マリアが布団に入りながら思う
(私も少し お昼寝をしてみよう… お昼寝は 1時間だっけ…?気を付けないと… ね…?)
マリアが眠りに付く
夜
マリアが夢を見ている アナウンスが言う
『それでは 本物のウィザード様!灯魔台への 灯魔をお願いします!』
マリアが顔を向けると ウィザードさまが杖を振り上げる 次々に6台の灯魔台に炎が灯る アナウンスが言う
『有難う御座います!では 続きまして!』
マリアの視線の先 ウィザードさまとソニアが微笑を合わせている マリアがそれを見て微笑する アナウンスが言う
『これより 神に選ばれた ウィザード様を 天国へお届け致します!それでは ウィザード様!どうぞ壇上へ!』
マリアが思う
《神に選ばれた ウィザード様?それは…?》
マリアにレイが抱き付いて居て言う
『マリアー!それじゃ 俺 行って来るなー!マリア!』
マリアが思う
《え?ウィザード様?》
レイがマリアから離れ壇上へ向かう マリアが思う
《どうして?だって ウィザード様は ウィザードじゃないのに?》
マリアの視線の先 レイが魔法使いの姿からウィザードへ変わり 振り返って言う
『マリア ありがとう』
マリアが思う
《…え?》
レイが壇上に居て微笑して言う
『さようなら』
マリアが驚き思う
《え?そんな… 待って?私、何も… 聞いてない… それに ”大好きだよ”って 言ってくれたのにっ!?それなのに どうしてっ!?》
マリアが叫ぶ
『待って!行かないで!ウィザード様ーーっ!』
レイが風に消える
マリアが飛び起きて言う
「ウィザード様っ!!」
マリアが息を切らして驚きながら周囲を見渡し ホッとして言う
「ゆ… 夢…?」
マリアがホッと息を吐いて言う
「なんだ… …良かった」
マリアが息を吐き ハッとして言う
「あ、あれ?私… あ、そうだ 私も1時間だけ お昼寝をしようって…?」
マリアが時計を見て衝撃を受ける
通路
マリアが落ち込みながら思う
(はぁ… 1時間のお昼寝の予定が… ぐっすり寝ちゃった これじゃ もう…)
マリアがキッチンの明かりを見て 疑問して言う
「あ、あれ?お母さん?」
マリアがキッチンへ入る
キッチン
ソニアが椅子に座り視線を落として考えている マリアがやって来て思う
(お母さん… どうしたんだろう?いつもなら 少しでも早く寝ようって… あっ)
マリアが気付いて視線を向ける マリアの視線の先 ソニアが左手薬指の指輪を無意識に触っている マリアが思う
(そう言えば 昔も こんな事があった… お母さん …お父さんが 死んじゃった後 よく1人で…)
マリアが一歩近付いて言う
「お母さん?」
ソニアがハッとしてマリアを見て苦笑して言う
「あ、あら… マリア どうしたの?こんな時間に… あ、そうね マリアはもう 子供じゃないんだから… 今帰ったの?」
マリアが言う
「あ、ううんっ ずっと部屋に居たんだけど お昼寝のつもりが こんな時間まで 眠っちゃってて」
ソニアが苦笑して言う
「ああ… そうだったの お母さん 全然気が付かなかった…」
マリアが言う
「あ、うん…」
マリアが思う
(もう ずっと こんな事無かったのに… お母さん また1人で泣いてたのかな…?)
マリアが言う
「あの… お母さん …どうしたの?いつもなら 朝早いから 少しでも早く寝られるようにって… あ、そっか?今日は 大灯魔台の灯魔儀式があったから また 明日は お休みしなさいって ”お母さんのウィザード様”に 言われたの?それなら…」
ソニアが一瞬息を飲む マリアが気付いて言う
「…お母さん?」
ソニアが苦笑して言う
「…昔も良く こんな事が有ったわね… お母さんが夜中に お父さんの事で 1人で泣いていると どう言う訳か マリアが起きて来て ”お母さん どうしたの?”って…」
マリアが思う
(ああ… やっぱり それじゃ また…)
ソニアが言う
「もう何年ぶりかしらね?マリアもすっかり大きくなって… お母さん 本当に… あの時 マリアが居てくれなかったら… きっと お父さんの所へ行っちゃってたわ… でも、マリアが居てくれたから… この子と一緒に 生きていかなきゃって…」
マリアが微笑して思う
(お母さんは やっぱり お父さんの事 それだけ 大好きだったんだ… お父さんの所へ行っちゃいたい位… だけど きっとそんな事したら お父さんだって喜ばなかった筈 私だって…)
ソニアが苦笑して言う
「でもね?お母さん マリアと違って とっても不器用で それまでに家事以外のお仕事も した事が無かったから なにをやっても 上手く行かなくて 大変だったわ… …それに 気が付くと お母さん いつも お父さんの事を 思い出しちゃって…」
マリアが思う
(あ… 私と同じ… 私も良く 仕事中に…)
マリアが苦笑する ソニアが言う
「だから 色んなお仕事をやってみたけど どれも上手く行かなくて… それで」
マリアが言う
「…奉者に?」
ソニアが言う
「ええ… でも 本当に 偶然だった… もしかしたら 天国のお父さんが 泣き虫なお母さんの為に めぐり合わせてくれたのかも しれないわね?」
マリアが言う
「え?」
ソニアが言う
「だって… マリアもそうだったと思うけど ウィザードに仕える奉者は 年齢の近い人が候補になるから …魔法使いがウィザードになるのは 殆どの場合20歳前後 …だけど お母さんは 結婚もしていて マリアも5歳になっていて… だから年齢的に奉者になるには 相応しくなかったの …それなのに 偶然 1人の奉者が 結婚して 奉者を辞めるって」
マリアが呆気に取られる ソニアが微笑して言う
「それで 代わりにお母さんが 仕える事になったの …それが あのウィザード様 ”お母さんのウィザード様”」
マリアが呆気にとられて思う
(そっか… そんな事もあるのね?…でも それはそうよね?他の人と結婚した状態で 朝から晩まで ウィザード様に仕える事なんて 出来ない… あれ?それなら?)
ソニアが言う
「面白いでしょう?普通 そんな事 ある筈も無いのに …でも、あの人は 何も言わない人だから きっと 自分の奉者が ちゃんと仕事をしていなくても 何も言わなかったのだと思うわ …それで 代わって入った お母さんにも やっぱり 何も言わない人で」
マリアが苦笑して言う
「…何も言わない?」
ソニアが微笑して言う
「そう、何も言わない… だから 何も聞かれないで… その頃のお母さんには それが とっても楽だったの… 他の仕事では 色々な人に 聞かれてね?その度に… 凄く辛かったから…」
ソニアが無意識に指輪に触れる マリアが気付いて思う
(そっか… お父さんの事… …居なくなってしまった 大好きだった人の事を 聞かれなくて済んだから 楽だったんだ…)
ソニアが言う
「それに 人と神様との間って言われる程の ウィザード様は とても神秘的で 今では時間的に お見掛けする事は出来なくなってしまったけど 早朝と夕暮れに 自然と調和を行うような その修行風景を見ているとね?とても心が癒されて… その内 お母さん これからも マリアと一緒に 頑張って生きて行こうって 思えるようになったの」
マリアが思う
(修行風景か… 私、ウィザード様の 修行風景って見た事が無いけど 早朝と夕暮れ… あ、夕暮れって事は ”お母さんのウィザード様”は 火の属性じゃない…)
マリアが微笑して言う
「”お母さんのウィザード様”って… 何の魔法が得意なの?もしかして…」
マリアが思う
(私のウィザード様と 仲が良いし… それに 今日の あの大灯魔台の灯魔儀式… もしかして ”お母さんのウィザード様”は…)
ソニアが苦笑して言う
「そうね… はっきりと聞いた事は無いけどね?きっと 水の魔法がお得意なんじゃないかしら?傍に居ると 心が洗われる 癒される… そんな感じがするのよ」
マリアが微笑して思う
(やっぱり…)
ソニアが微笑して言う
「それに そんな風に考えると 貴方の風の魔法使いさんも 本当にそんな感じよね?風の魔法で 嫌な事も 何もかもを 全て吹き飛ばしてくれそうだものね?」
マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「あ… そ、そうかも…?」
マリアが思う
(そう言えば そんな感じ… かな?)
ソニアが苦笑して言う
「でも いずれ 神様のもとへ向かう ウィザード様とは お別れする事になる そう… 分かっていたつもりだった …だから その時まで 誠心誠意 お仕えしようって 決めていたの …その日が来るって事は 考えないようにしながら… だけど 今日」
マリアが疑問して言う
「今日?」
マリアが思う
(今日は… お母さんのウィザード様は あの凄い灯魔儀式をして見せた そのウィザード様が?)
ソニアが言う
「ウィザードを辞めるって 言われちゃって…」
マリアが呆気にとられて言う
「え…?」
ソニアが苦笑して言う
「突然でしょ?あんなに 完全な灯魔儀式を成功させて… 不認定票0票を 2回も取って 神様にだって きっと選ばれる… そう思っていた 矢先に」
マリアが言う
「ど、どうしてっ!?そんな急に!?」
ソニアが言う
「分からないわ… でも 嘘なんかじゃないの …それで 奉者協会の本部へ向かう私に ”今までの事を感謝する”って 杖を渡されちゃって…」
マリアが驚いて言う
「杖をっ!?だって ウィザード様から 杖を離したらっ!」
ソニアが言う
「お母さん 驚いちゃって… でも その杖の魔力に支えられて 奉者協会まで 杖を持って行った… ウィザードの杖の返納は 奉者の役目だから 辛くとも 果たさなきゃいけないって…」
マリアが言う
「それじゃ… もうっ!?」
マリアが思う
(”お母さんのウィザード様”は ウィザードではなくなっちゃったっ!?)
ソニアが顔を左右に振る マリアが疑問して言う
「…え?」
ソニアが言う
「奉者協会には ちゃんと伝えて 杖の返納をしようとしたんだけどね?…そうしたら 今は ウィザードの数が足りて居ないから どうか 少し 待って欲しいって」
マリアが呆気にとられて言う
「数が足りて居ないから…?」
ソニアが苦笑して言う
「今は 無理に大灯魔台の灯魔儀式を続けているでしょう?だから 各町に配備するウィザードの数がギリギリなんですって 今日も そんな訳で 大灯魔台で 本来なら1人の ウィザードを解任するはずだったけど 処分は保留になっているの 票数のカウントだけは続けるらしいけど」
マリアが言う
「え?それじゃ…?」
ソニアが言う
「奉者協会からは そんな訳で 今は杖を返して置く様にって… だから お母さん」
マリアが疑問する ソニアが微笑して言う
「灯魔作業を終えて ぐっすりお休みの あの人の横に こっそり 杖を返しちゃいましたっ」
マリアが呆気に取られた後苦笑してから笑い出す ソニアが一緒に笑う
翌朝
マリアが外に出て玄関に鍵を閉めながら思う
(お母さんは いつも通り 行ったのかな…?私が起きた時には もう居なかったけど…)
マリアが向き直り 空を見上げて言う
「今日も雨かぁ… リア・サインさん どうしているのかな?ちゃんと 自分のウィザード様に…」
マリアが言いながら傘を開いて歩き出すと レイが言う
「マリアー!」
レイがマリアに抱き付いて言う
「お早う!マリア!昨日は良く眠れたか?俺は マリアの言う通り あのままちゃんと帰って 改めて昼寝したお陰で 今日も いつも通り 良い調子だよ~?」
マリアが苦笑して言う
「お早う御座います ウィザード様 私は慣れないお昼寝に 翻弄されちゃいましたが… あっ そうだっ!ウィザード様っ!大変ですよ!」
レイが言う
「ん?どうしたんだ?マリア?」
マリアが言う
「”お母さんのウィザード様”が…っ ウィザードを辞めるってっ!」
レイが言う
「ああ そうか!やっぱり辞めるのか!残念だったな?折角 本物のウィザードだったのにさ?大灯魔台の灯魔儀式なんて やってるからだな?」
マリアが苦笑して言う
「そ、それは… どう言う意味で?…あ、しかし 今はその 大灯魔台の灯魔儀式で ウィザードが不足しているので 保留になっているそうですが…」
レイが言う
「保留って?」
マリアが言う
「奉者協会が もう少し ウィザードのままで待って欲しいと 杖の返納を拒んだそうです」
レイが言う
「へぇ?そうなのか?」
マリアが言う
「はい でも…」
マリアが思う
(例え 杖の返納を拒んで 姿だけのウィザードを続けさせても それじゃ 意味が無いんじゃないのかな…?結局 本人のやる気が 無くなっちゃったんなら… 過酷な修行を続けるなんて事は 出来ないだろうし…)
マリアが苦笑して言う
「…別の ウィザードが 現れるまでの 時間稼ぎみたいなものでしょうか?本人のやる気が無いんじゃ… 魔力を上げる為の修行も 出来ないですよね?」
レイが言う
「さぁ どうなんだろうな?俺は元々修行なんて してないからな?」
マリアが衝撃を受けて言う
「えっ?」
レイが言う
「だから ウィザードは 他の奴に修行なんて教えられないんだよ 自分がやりたい事を やってるだけなんだから」
マリアが言う
「自分のやりたい事をって…?で、でも 先日ウィザード様には 火の魔法を得意とするウィザード様への 効果的な修行方法を 教えて頂きましたよね!?」
レイが言う
「ああ、あれはさ?普段やっている中で 見付けただけの事だよ?時間的な事って言うのは 偶然見付けるかどうか って事だからさ?俺はそれを教えただけだよ~」
マリアが言う
「で、では…っ ウィザード様は 修行はしていないんですか!?それで どうやって 魔力を高めているんですか!?」
レイが言う
「俺はただ 自然の力を感じているだけだよ 自然の力は 無償の力なんだから ウィザードの力は それをどれだけ感じて 借りられるかって事だからさ?だから 俺にとっては ただ 飛び回っている事が 修行になるんだよ 後は… 風が良く通る所で のんびりしていたりな?だけど そうすると たまに気が緩んで 落っこちたりするから 困るんだけどさ?ははっ!」
マリアが衝撃を受けて言う
「だから この前 木の上から 落ちてきたんですね!?」
レイが言う
「そうそう!」
マリアが思う
(そうだったんだ…っ)
レイが言う
「だから 自然の中の そう言う力を感じられない奴は 元々ウィザードになんか なれないんだよ」
マリアが言う
「そう… なんですか…?」
レイが言う
「うん!」
マリアが思う
(自然の力を感じる事で 自然の力を使えるようになる …って事なのかな?それって 難しい事?ウィザード様が言うと 簡単な事の様に 聞こえちゃうんだけど…)
レイが言う
「だから 余計 属性って奴が 重要なんだよな?自然の力には性質があるからさ?その力を使うウィザードにも それと同じ性質っていうか …性格がないと 上手く力を同調させられないからな!」
マリアが気付いて思う
(あ、それじゃ 昨日お母さんが言っていた…)
マリアが言う
「自然の力にある その性質が ウィザードの性格とも 関係すると言う事は…?」
レイが言う
「ああ、簡単に言っちゃえば 火なら 強さ 水は 静けさ 土は 優しさ 雷はちょっと難しいな?瞬発的な何かか?風はやっぱり 自由奔放!」
マリアが衝撃を受けて思う
(お似合いです…)
レイが言う
「言葉で言っちゃえば簡単だけどさ?いくら性格だけ 似せたとしても 実際に その自然の力が分かるとは 限らない だから 誰に教わる訳じゃなくて それこそ 自然に分からないと 使いこなせる様にはならないんだ けど、それには 時間や人工物に追われているようじゃ 難しいと思うんだよな?」
マリアが苦笑して言う
「確かにそうですね?時間や 人工物に… はっ!?」
マリアが衝撃を受け時計を見て言う
「ああっ!ほ、ホントに 時間がっ!」
レイが言う
「大丈夫だって!マリア!」
レイとマリアが風に消える
会社
マリアが席に付いて 息を吐いて思う
(はぁ~… 今日は プロジェクトの前日だから 余裕を持って出社する 練習をしようと思っていたのに… おまけに 主任になったのに 相変わらずで…)
課長が咳払いをする
「う、うんっ!」
マリアが衝撃を受け思う
(すみません…)
マリアが気持ちを切り替え言う
「よしっ」
マリアが思う
(ここからは 気持ちを切り替えてっ!)
昼休憩
マリアが窓の外を見てから言う
「今日も雨だから 社内で食べるしかないなぁ…」
マリアが思う
(マキにも しばらく会ってないけど… 元気かなぁ?)
マリアが手作り弁当を食べつつ 書類を見ながら思う
(話し相手は居ないけど 折角 主任になったんだし プロジェクトの企画に参加出来るようにもなったんだから やっぱり ちょっと お勉強しておかないと)
新人たちが部署に帰って来て 遠くで言う
「あ、ねぇ?お昼 マリア先輩も 誘わない?」
「そうだね!…ん?でも なんか お仕事中みたいじゃない?」
「ホントだ プロジェクトが何とかって言ってたから 忙しいのかも?」
「そっかぁ~ 残念」
マリアが書類を見ながら思う
(なるほど… ただ企画を考えるだけじゃなくて 他社の同事業なんかも 気に掛けないといけないんだ… それはそうよね 新事業を始めようと言うんだから 出来るだけ 競争相手が 少ない方が良い訳だし…)
マリアが書類をめくりながら思う
(あれ?この会社… ミッシェルリング社 …凄いなぁ 新会社なのに 凄い業績… …あ、なるほど 自社だけじゃなくて 公共事業と共同で出資して 利益の半分は収める代わりに 出資金も… だから こんな短期間に こんなに沢山の事業を…)
新人たちが小音量でTVを付けて言う
「あ、ホントだ」
「でしょ?今朝 危ないなぁって思って 気になってたの」
「どうなるんだろう…?大丈夫なのかなぁ …心配」
マリアが気付き振り向いて思う
(ん?今なんか…?あ、皆帰ってたんだ 仕事大丈夫かな?昨日は 課長に任せちゃったし)
マリアが微笑し立ち上がって思う
(一応 様子を 確認しておこうかな?)
マリアが言う
「お疲れ様~ 昨日は皆どうだった?大丈夫だった?」
新人たちが振り返り言う
「あ、マリア先輩 お仕事中だと思って声掛けなかったんですけど お疲れ様です」
「昨日は大丈夫でしたよ!課長にも これなら大丈夫だって マリア先輩に教わっておいた書類作成も ちゃんと出来てるって」
マリアが言う
「そうだったんだ …それなら 良かった」
新人たちが笑って言う
「マリア先輩のお陰ですぅ~ 有難う御座いますぅ!」
マリアが微笑して言う
「いえいえ!」
新人が言う
「課長が言ってました 皆 しっかり マリア主任を 見習うようにってー あ、その代わり 遅刻癖とボーっと癖は 見習わなくて良いからってー?」
マリアが呆気に取られた後笑って言う
「あ~ もぉ 酷~い!」
新人たちが笑う マリアが笑っていると TVからレポーターが言う
『…ザード様へも 依頼をしたとの事ですが!残念ながら もはや打つ手は無しと言う事で!後はもう 村が濁流に飲まれるのを ここで只見つめるしかないと!』
マリアが気付いてTVを見て言う
「何かあったの?」
新人が言う
「あ、なんか 今朝のニュースで ポルト村のダムが もう限界だって言ってたんで ちょっと 気になっちゃって」
「ダムに亀裂が入ってて 決壊は時間の問題だとか」
マリアが驚いて言う
「えっ そうなのっ!?」
新人が言う
「村人は もう全員 高台へ避難しているそうなので 大丈夫でしょうけど」
マリアが言う
「避難は済んでいるんだ?それなら …え?それじゃ 村の方は?」
新人が言う
「ダムが決壊したら 村は濁流に飲まれちゃうだろうって そうなれば 家も畑も 全部流されちゃうって話です」
マリアが言う
「え…っ そんな…っ」
マリアが思う
(”リア・サインさんのウィザード様”は 水の魔力の怒りを 静める事は出来なかったのかな?それさえ出来れば 雨は止んで ダムが決壊することなんて 無かっただろうに…)
マリアがTVを見て思う
(…それか やっぱり ウィザード様に お願いして 別の町の事でもって …あ、でも ウィザード様は 俺はウィザードじゃないって言ってたっけ… でも 私がお願いしたら?それでも やっぱり…)
TVからレポーターが言う
『あ、今入った情報です!先ほどまでお伝えしておりました 奉者協会に依頼した レンデン町のウィザード様への依頼は却下されてしましたが 代わって 別のウィザード様が 対処をされるとっ たった今!』
マリアが言う
「別のウィザード様?」
新人たちが疑問して言う
「ウィザード様って?」
「魔法使いじゃないの?もっと上の人だっけ?」
「え?そうなんだ?それじゃ 魔法使いより凄い人?」
マリアがTVへ視線を戻すと TVの映像に 車から降りたソニアの姿が映り驚いて言う
「…おっ!お母さんっ!?」
新人たちが驚いて言う
「え!?」
「お母さんってっ!?」
「こ、この女性が マリア先輩のお母さんですかぁ!?」
マリアが思う
(お母さんが車から降りて…っ!?それじゃ 別のウィザード様って まさかっ!?)
マリアがTVの映像に驚く 新人たちが言う
「あ、この人が ウィザード様?」
「へぇ… なんか 凄い人だね…?」
「マリア先輩のお母さん この人と 何か関わりがあるんですかぁ?」
マリアが呆気に取られて言う
「やっぱり…」
マリアがTVに見入って思う
(”お母さんのウィザード様”が 来てくれた…っ!でも、どうするんだろう?だって 今更 雨を止めたって 川の増水は止められない… ダムの決壊は止められないっ それなのに!?)
新人たちがマリアを見てからTVへ視線を向ける
ポルト村
ソニアが言う
「ダムには亀裂が入っていて 決壊は間近だそうです 協会の方からは 村さえ守ってもらえれば 他はどうなっても構わないと」
ウィザードさまが言う
「心配ない 目的は あのダムを取り除く事の様だ 村へ危害を加えようなどとは思っては居ない 手を貸す程度で十分だろう」
ソニアがウィザードさまを見て言う
「では…?」
ウィザードさまが微笑して言う
「君はここで 待って居てくれ」
ソニアが微笑して言う
「はい」
ウィザードさまが村へ向き周囲を軽く見た後 杖を傾ける ウィザードさまが風に消える
会社
新人が言う
「えっ!?」
新人たちが驚いてTVに身を寄せる TVからレポーターが言う
『き、消えてしまいました…!?…あ!いえっ!居ましたっ!あちらに!む、村の方に居ます!今さっきまで この高台の上に居た ウィザード様が 村の川辺にっ!』
新人が驚いて言う
「いつの間に あんな所へっ!」
「どうやって移動したの!?一瞬で?」
「あっ!もしかしてっ!?マリア先輩の 彼氏さんみたいな 魔法ですかねっ!?」
マリアが言う
「うん そうだね… 風の… え?だ、だからっ 違うったらっ!あの魔法使いさんはっ!彼氏さん なんかじゃっ!」
新人が言う
「て、言うか あんな川の近くに居たら あの人 危ないじゃない?どうして あんな場所に?」
マリアがハッとしてTVへ向き直って映像を見て言う
「…あ、分かった」
マリアが思う
(”お母さんのウィザード様”… 受け止める気だわ! あの大灯魔台の 灯魔儀式の時みたいにっ …でもっ!?)
マリアが言う
「あのダムが決壊して その威力を全部1人でだなんて… 大丈夫かな…?」
新人たちがマリアを見て言う
「え…?」
ポルト村
ウィザードさまが杖を構え魔力を収集する 高台の上で人々が見つめている 村人たちが祈るように言う
「どうか 神様… ウィザード様… 先祖代々の村を守っておくんなませ~…っ」
「大丈夫だよ 婆ちゃん きっと 大丈夫…っ」
村人がダムを指差して言う
「ダムが… 決壊するぞっ!」
「く… 来るっ!」
人々が息を飲む ウィザードさまが風魔法で結界を張る ダムが決壊し濁流が川を押し広げて向かって来る ウィザードさまが杖を掴み一振りすると 濁流がウィザードさまの作った風の壁によって 村を避け川を急流して行く 人々が驚き言葉を失う
会社
新人たちが呆気に取られて言う
「嘘…っ」
「し、信じられない… あれ 魔法なの? あんな事が出来るなんて…っ」
「…それも たった1人で」
マリアがホッとして言う
「流石 ウィザード様の”先輩”」
マリアが苦笑して思う
(”お母さんのウィザード様”…)
TVからレポーターが言う
『ま… ま、守られましたっ!ダムが決壊すれば その濁流に 飲み込まれると思われていたっ 村はっ!たった今っ!ウィザード様の お力によって 守られましたっ!』
新人1がホッとして言う
「良かったぁ…」
マリアが苦笑して言う
「うん 本当に 良かった…」
TVの映像に ソニアと共に去って行くウィザードさまの姿が映されている
会社 外
マリアが星空を見上げ微笑する レイが言う
「マリアー!」
レイがマリアの横に到着して言う
「お仕事お疲れ様ー!マリア!」
マリアが言う
「お疲れ様です ウィザード様 雨 上がりましたね?」
レイが言う
「ああ、そうだな!水の魔力の怒りも やっと終わったみたいだな!」
マリアが言う
「あの… もしかして 今回もまた ウィザード様が お手伝いをしたんですか?風の魔法で?」
レイが疑問して言う
「ん?お手伝い?今回もって?何か あったのか?」
マリアが言う
「ポルト村にあった ダムが決壊したんです …ご存じないですか?」
レイが言う
「その ポルト村って言うのは 何処にあるんだ?この町か?」
マリアが呆気にとられて思う
(どうやら 本当に知らないみたい…)
マリアが苦笑して言う
「ずっと雨続きだった レンデン町にある ポルト村です 今日そのダムが決壊して 危うく村が飲み込まれちゃう所だったんですが そこに 隣町から お母さんと ”お母さんのウィザード様”が来て 魔法で村を守ってくれたんです!」
レイが言う
「へぇ~ そうだったのか やっぱ 先輩は 本物のウィザードだな!元々ウィザードって言うのは そう言った森羅万象の異変を収める為に 力を与えられた奴だって言うのに 何だか勘違いしてる連中が多過ぎて …ま、俺には関係ないけど」
マリアが言う
「森羅万象の異変を収める為に 力を与えられた…?」
マリアが思う
(確かそれって 昔の書物にあるもので… でも 今は…)
マリアが言う
「それじゃ 神様に選ばれる為に 修行して力を得る ウィザードとは 違うんですか?」
レイが言う
「そうだな?その辺が 何で ゴチャゴチャになってるんだか 知らないけどさ?お陰で良い事もあるし!まぁ 気にしなくて良よ!どうせ本物には 分かるからな?」
マリアが疑問して言う
「本物には分かる… 本当に そんな曖昧で 大丈夫なんですか?」
マリアが思う
(ただでさえ ウィザードの能力低下が 取り立たされているのに…)
レイが言う
「大丈夫だって!マリアには 俺が付いているんだから!何があっても 心配ないよ!それよりさ?今なら まだ マリアのお母さんも居ないし 早く家に帰ろう!マリア!」
マリアが言う
「え?お母さんは まだ帰って居ないんですか?」
マリアが思う
(それじゃ どうなったんだろう?大体 ウィザードを辞めるって言った人が 他の町のウィザードに代わって 村を守っただなんて… それって 許されるのかな?)
レイが言う
「マーリアー?」
マリアが苦笑して言う
「分かりました 早くしないと 食堂の時間が 終わっちゃいますもんね?」
レイが言う
「うん!そうだな!それに 俺も眠くなっちゃうからな!」
マリアが苦笑する レイとマリアが風に消える
自宅
マリアが玄関の鍵を開け玄関に入ると レイが抱き付いてきて言う
「マリアー!」
マリアが苦笑して思う
(ウィザード様って どうしても これがしたいのね?…まぁ 移動のお世話もしてもらってるし しょうがないけど… でも…)
レイが言う
「なぁ マリア?」
マリアが思う
(今日は お母さんが居なかったから 家の中まで入られたけど… これからは もしかしたら そうじゃなくなるって 可能性もあるし…)
マリアが言う
「何ですか?」
レイが言う
「俺 思ったんだけどさ?」
マリアが思う
(そうなると やっぱり 家の外や中で マリアーじゃなくて 何か他で良い案は無いかを 考えていたんだけど …)
レイが言う
「マリアと俺ってさ?朝はマリアの会社の時間 夜は俺の食堂の時間を気にすると お茶所か 話をする時間すら あんまり無いだろう?」
マリアが言う
「はい… そうですね」
マリアが思う
(そうなのよね… 折角 移動のお世話をしてもらっているのに ちょっと失礼かなって 思ってはいたんだけど…)
レイが言う
「だから 俺考えたんだけど」
マリアが思う
(ウィザード様も やっぱり考えていたんだ…)
レイが言う
「どうせ朝も夜も この家の前で会うんだからさ?」
マリアが思う
(そうよね 朝も夜も それこそ 私の為にって 飛んで来てくれてるんだから…)
マリアが言う
「はい、そうですね」
レイが言う
「うん!だから 俺さ?」
マリアが思う
(それなら それなりの… 何かお礼を…)
レイが言う
「この家に住んじゃえば 良いんじゃないかなって?」
マリアが一瞬呆気に取られた後 衝撃を受けて言う
「…って …はぁっ!?」
レイが言う
「な?良い案だろ?」
マリアが言う
「い、良い案ってっ!?」
マリアが思う
(それは…っ!?)
マリアが慌てて言う
「な、何言ってるんですかっ!?ウィザード様っ!?そんなのっ 駄目に 決まってるじゃないですかっ!!」
マリアが思う
(相変わらず この人は!それなりの何かお礼所か とんでもない事をっ!?)
レイが疑問して言う
「え?何で?」
マリアが言う
「な、何でって…っ!?」
マリアが思う
(何でって!?そんなの 理由なんて…っ!!)
マリアが言う
「り、理由なんて有りませんよっ!駄目なものは 駄目です!だ、大体っ この家は 私とお母さんの家でっ」
レイが言う
「うん、けどさ?この家の大きさなら もう1人くらい増えたって 大丈夫だろう?」
マリアが思う
(それはもちろん 元々 お父さんも居て 3人で暮らしてて …って …そうじゃなくて!)
マリアが言う
「そ、そう言う問題ではなくてっ!」
レイが言う
「じゃぁ どう言う問題なんだ?」
マリアが言う
「ど、どう言う って…っ!?」
マリアが思う
(え!?ど、どうしてっ!?これって 常識じゃないのっ!?あぁ… でも ある意味 この人たちに 常識は通じないと言うのも 分からなくは無いけど…っ …って!)
マリアが言う
「そうじゃなくてっ!とにかく駄目ですっ!あ、ほらっ 夜になれば お母さんも帰って来ますし!そうなれば ”お母さんのウィザード様”が 怒るじゃないですかっ!?それこそ ポルト村のダムのごとく 決壊して お得意の水の魔法で この家ごと ウィザード様も 流しちゃったりしたら どうするんですか!?」
レイが言う
「ああ!大丈夫だよ マリア!そんな時は 風の魔法で 結界を張って防げば良いから!水には風の防御が 何よりだからな!」
マリアが思う
(そうだったっ!!…じゃなくてっ!)
マリアが言う
「―ではなくてっ!この家はもちろんっ 周囲の民家も流されちゃっては大変… とかもうっ そう言う事はこの際どうでも良くて!食堂の時間が 迫っているんじゃないですかっ!?ウィザード様っ!?」
レイが衝撃を受けて言う
「あっ そうだった!それじゃ とりあえず 俺 帰るな!マリア!」
マリアが玄関を開けて言う
「はいっ!帰って下さいっ!そのまま 今日は寝ちゃって下さいっ!」
レイが言う
「うん!分かったよ!それじゃ お休みー!マリアー!」
マリアが言う
「お休みなさいっ!」
レイが風に消える マリアがホッとして言う
「もう… 本当に 自由奔放なんだから… はぁ~…」
マリアが玄関を閉めて 家に上がる
マリアの部屋
マリアが着替えを終え軽く息を吐いて思う
「ふぅ~ さて…?」
マリアが部屋を出て移動しながら思う
(明日からは プロジェクトの企画に参加かぁ… どんな感じなんだろう?大きな会議に出席するのは初めてで 今日の内に 一通りの資料は見たから 一応 話には付いていけるだろうけど…)
マリアがキッチンに入り料理の仕度をしながら思う
(…とは言っても 初めての参加だから 今回は周囲に合わせる程度かな…?そうよね いくら 主任に昇格して 参加出来るようになったって言っても きっとその程度で)
マリアが窓の外を見てから苦笑して言う
「それより 雨が上がったから 明日は お昼に マキに会えるかな…?」
マリアが微笑して思う
(そうしたら 主任になった事 伝えちゃおうっ マキ驚くかな?一緒に喜んでくれるかな?”流っ石 マリア大先輩ー!”なんて 言ってくれたりして?)
マリアが軽く笑う
「ふふ…っ」
マリアが料理を作りながら思う
(明日はなるべく早く起きて それで いつも通り… きっと ウィザード様が 迎えに来てくれるだろうから…)
マリアが衝撃を受けて言う
「あっ…」
マリアが困って思う
(それで… やっぱり 俺、この家に住む! …とか 言われたらどうしよう!?う、う~ん… でも ただ普通に考えたら?確かに 良い案って言えば そうなんだろうけど… でも、いくら 神聖なウィザード様でも 男の人である事は 変わりないし… そ、それに… だ、)
マリアが言う
「大体っ!この家は 私とお母さんの家でっ!」
玄関からソニアの声がする
「ただいまー」
マリアが衝撃を受け言う
「あっ!お、お母さんっ!?お、お帰りなさい!」
ソニアがリビングにやって来る マリアが小走りに来て言う
「お母さんっ 今日 TVで見てたよ!」
ソニアが疑問して言う
「え?」
マリアが微笑して言う
「今日のあの!ポルト村のダムの決壊から 村を守ったの!会社で 後輩たちがダムを心配して お昼休みに会社のTVを付けてて それで偶然!私、ビックリしちゃった!だって 急にTVに お母さんが映ったから!」
ソニアが呆気に取られてから苦笑して言う
「あら やだ… お母さんまで映っちゃってたの?TVのカメラがあるとは思っていたけど 自分が映されちゃってたなんて 気が付かなかったわ …うふっ 恥ずかしいっ」
マリアが言う
「恥ずかしくなんて無いよ!とっても素敵だったよ!お母さん いつも あの大灯魔台の時もそうだけど 奉者として 誇りを持ってるって感じで …私、凄く素敵だと思う!」
ソニアが軽く笑って言う
「うっふふ そうなの?お世辞でも 嬉しいわ」
マリアが言う
「お世辞なんかじゃないったら!…あ、それで ”お母さんのウィザード様”は レンデン町の担当じゃないのに どうして今日は?」
ソニアが言う
「ええ、今日 奉者協会から 依頼があったの そのレンデン町のウィザード様じゃ 能力が足りないって 昨日の大灯魔台の灯魔儀式にも出てたから 魔力も戻って居ないからって」
マリアが呆気にとられて言う
「え?でも 昨日の 大灯魔台の灯魔儀式に 出たのは ”お母さんのウィザード様”も 一緒なのに?」
ソニアが苦笑して言う
「そうよね?だけど あの大灯魔台の灯魔儀式を見た 奉者協会の人から 能力はもちろん 疲れもなさそうだったし …そもそも ダムの決壊から村を守れるほどの ウィザードは 彼しか居ないんじゃないかって 連絡があったの それで 本人に聞いてみたら 大丈夫だって言うから」
マリアが言う
「そうだったんだ… あ、それで 結局…?」
マリアが思う
(ウィザードを 辞めるって言ったのは… どうなったんだろう?やっぱり 続ける… とか?でも 保留とは言え 一度は 退任を申請したんだし…)
ソニアが言う
「それでね?今日の その ダムの事も有ったし そもそもの ウィザード不足 それに ウィザードの能力低下の 件もあって 協会の方で話し合われて… どうにか 現状のままウィザードを 続けてもらえないかって 話になって」
マリアが反応して言う
「うん それで?」
マリアが思う
(でも 本人は 辞めたいって言ったんだし… それを 他人が お願いしたって… 修行を続ける事も 大変だろうし… …どんな修行かは 知らないけど…)
ソニアが言う
「何より どうして ここまで上り詰めたウィザード様が 神に選ばれるのを目前に 辞めようと言うのか 奉者協会の人に その理由を お母さん聞かれて… だから 答えたの」
マリアが言う
「何て?」
マリアが思う
(そう言えば それが一番の問題かも)
ソニアが言う
「私の仕えるウィザード様は ”神に選ばれる事を望んでいません” って」
マリアが驚いて思う
(そ、それって…っ!)
ソニアが言う
「そうしたら 協会の人たちも驚いていたけど でも、そんな状態で 今まで ウィザードを続けていたのなら もしかして ”永在ウィザード様”としてなら これからも ウィザードを続けてもらえないかって」
マリアが驚いて言う
「え、”永在ウィザード様”って!神の審判を経て その神に選ばれなかった…っ 不合格だった ウィザードって事でしょうっ!?」
マリアが思う
(そんな ”不名誉な称号”を 与えて ウィザードで居させようだなんて!?なんて 失礼なっ!?)
ソニアが言う
「うっふふっ そうよね?今までそんな称号を得て ウィザードを続けた人なんて それこそ居ないのに …なのにね?本人は ”光栄だ” ですって?」
マリアが衝撃を受けて言う
「はぁあっ!?」
ソニアが言う
「あの人 ウィザードの修行をしていても 神様のもとへ行くんじゃなくて この世界に留まって居たいらしいの …うふふっ ホントに 可笑しなウィザード様よね?」
マリアが呆気にとられて思う
(”私のウィザード様”と言い ”お母さんのウィザード様”と言い…)
マリアが言う
「分からない人たち…」
ソニアが笑って言う
「ええ、分からない人たち よね?本当に… うふふっ」
マリアがソニアを見てから苦笑して思う
(でも… 良かった…)
マリアとソニアが笑う
翌朝
マリアが玄関を開けて言う
「ん~… やっぱり 朝は お天気の良い方が良いな~ 今日も一日頑張ろうって気分になるし!」
マリアが思う
(時間はいつも通りだけど… これなら ウィザード様に 連れて行ってもらえれば かなり早くに着けるから)
レイが言う
「マリアー!」
レイがマリアに抱き付いて言う
「お早う!マリア!今日は早いな!どうかしたのか!?」
マリアが言う
「はい お早う御座います ウィザード様 今日から私 新しい仕事をする事になって… それに」
マリアが気付いて思う
(あ… でも ウィザード様に 主任になったって言っても 意味が分からないかな?それこそ ウィザード様たちには 全く関係ないものね?…それより)
レイが言う
「ん?どうした?マリア?新しい仕事をする事になったから これからは早く行くのか?」
マリアが言う
「まぁ そんな感じですね!会社に行くのは 出来るだけ早い方が 良いですから!」
レイが言う
「そうか!それじゃ 早速 連れて行ってやるぞ!マリア!」
マリアが言う
「はい、お願いします」
レイがマリアを包み 2人が風に消える
会社
マリアが出勤して来て言う
「お早う御座います!」
課長が一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「お?マリア主任 今日は早いな?流石に プロジェクト企画が始まるとあって 気合が入っているのかね?」
マリアが言う
「はいっ!折角 課長に推薦して頂いたのですから 私、頑張ります!」
課長が言う
「うむ、その調子で 大いに頑張ってくれたまえ」
マリアが言う
「はいっ」
課長が言う
「ああ、それと この資料 昨日遅くに 急遽送られてきた物だ 丁度良かったな 会議の前に 先に目を通して置くと良い」
マリアが書類を受け取りながら言う
「あ、はいっ 分かりました」
マリアが書類を持って席に戻りながら思う
(こんな急な資料が 送られる事もあるんだ… やっぱり これからは 早めに出社した方が良いみたい …えっと それで?)
マリアが書類を見ながら思う
(ミッシェルリンク社の資料だ 業績予測数値の変更… あ… 随分 落ちちゃってる 何でだろう?昨日までの数値と比べると かなり…)
マリアが書類を見比べてから思う
(…って 言っても やっぱり ダントツの業績 うちの会社のライバル社…って言うか この調子なら 近い内に 同企業の中では 最大の会社になりそう)
マリアが資料を確認して作業をする
中央公園
マキが言う
「えぇえ!?自分から望んで ”永在ウィザード様”にっ!?」
マリアが苦笑して言う
「うん… 結局 そうなったらしいよ ”お母さんのウィザード様”」
マキが呆気にとられて言う
「信じられない… ニュースで見たけど あの濁流を防ぐ程の 魔力があるのに?」
マリアが言う
「うん それに 大灯魔台の灯魔儀式で 史上初の 不認定票0票を 2回も取ったウィザードさま なんだけどね?」
マキが溜息を吐いて言う
「はぁ… 私のウィザード様が聞いたら 卒倒しちゃうよぉ~」
マリアが苦笑して言う
「その ”マキのウィザード様”は どうなの?…あ、でも 最近お天気が悪かったから 火の魔力を上げるのは 難しかったのかな?」
マキが苦笑して言う
「う~ん どうなのかなぁ?お陰さまで 睡眠の方は 取られるようになったから 体調なんかは良くなったけど 魔力がどうかって言うのは 聞かないようにしてる」
マリアが言う
「そうなんだ…?えっと それじゃ 灯魔台の灯魔儀式の方は?」
マキが言う
「あ、うん おととい 2回目の灯魔儀式に行ってみたんだけど 前よりは 上手く行ったかな?相変わらず 大変そうではあるけど… 2回目だから 少しは」
マリアが言う
「そっか それなら 慣れれば もっと楽に行くようになるかもね?…あ、ちなみに 何の属性の灯魔をしたの?」
マキが言う
「え?何の属性って?」
マリアが言う
「え…?だって 灯魔台の灯魔は5種類あるでしょう?火と 水と 土と 雷… それから 風 今回は 何の属性を灯したの?」
マキが言う
「えっと… 今回って言うか 前回も今回も 火の魔法で 火の灯魔をしたって言うのかな?」
マリアが言う
「え?両方とも?」
マキが言う
「うん」
マリアが言う
「そうなんだ?」
マリアが思う
(火の灯魔が2回続くって言うのは 珍しいような… あ、そう言えば ウィザード様の時も1度あった… と言っても 結局 あれは後に変更したんだけど …でも ”マキのウィザード様”だって ちゃんと 確認してやってるんだろうし)
マリアが言う
「それじゃ また 何日かしたら 今度は3回目だね?場所は何処をやっているの?センターサイド?それとも?」
マキが言う
「センターサイドは 後で良いかなって やっぱり アウターサイドに近い所って事で 今は南東の方からやってるの」
マリアが言う
「そうなんだ そうだね やっぱり なるべくアウターに近い方から 結界を強化して置いた方が 良いかもね?」
マキが言う
「うん そう思って」
マリアが言う
「そっか… さて、それじゃ 私 そろそろ 行くね?」
マキが言う
「あれ?随分早くない?」
マリアが言う
「あ、うん やっぱり 主任になったからには ちょっと頑張らなきゃって 少し早く帰って 書類を見直しておこうかと思うの」
マキが言う
「相変わらず マリアは 仕事一筋だね?ちゃんと 魔法使いの彼と 仲良くしてあげてるの?」
マリアが苦笑して言う
「うーん どうかな?毎日朝と夜に会ってるけど お互い忙しくって」
マリアが思う
(主に 仕事と …食堂の 時間に追われて… とは なんか言い辛いから 止めて置こう…)
マキが言う
「マリアは考えが固いから たまには 彼の言う事とか聞いてあげないと 折角の恋が成就しないよ~?これは 恋愛の先輩 マキ先輩からの アドバイス~ にゃははっ」
マリアが衝撃を受けて言う
「だ、だからっ 私とウィザード様はっ 彼氏とか 恋愛とかじゃ ないんだったらっ!」
マキが言う
「え~?それじゃぁ なにとか なにとか なのかな~?」
マリアが言う
「お友達とか お友達とか ですっ!」
マキが言う
「えー?ホントかなぁ?」
マリアが言う
「ホントだったらっ!」
会社
マリアが溜息を付いて言う
「はぁ~」
マリアが書類を見て思う
(もう… どうして 奉者になったのに マキは 相変わらずなんだろう?もしかして… 本当に ウィザードになった 彼と そういう関係に… なっちゃってるのかなぁ?)
マリアが書類を変えて思う
(…大体 それって良いの?相手は 神様のもとへ向かう 神聖なウィザード様よ?あらゆる禁欲をして 魔力の向上に励まなきゃいけなくて …それを支える奉者が それを犯してしまうんじゃ 本末転倒なんだから…っ)
マリアが書類を見比べて思う
(そうよ… そんな事していたら 魔力の上昇所か 下向しちゃっても知らないよ?マキ?それこそ ”永在ウィザード様”になっちゃっても 知らな… …え?)
マリアがハッとして思う
(そう言えばっ …”永在ウィザード様”って もう神様のもとへは行かない訳だから 今まで神聖なウィザードとして 人とは一線を引かれていた それらが 全て 無くなるのよね?それって まさか それで… あの”お母さんのウィザード様”が …お、お母さんと!?そ、そんな事に なっちゃったり… して…!?それに もしっ そんなことに なったりしたら? お母さんの娘である わ、私はっ!?…そ、そんなのはっ!)
マリアが言い掛ける
「だっ!」
マリアがハッとして 口を押さえる 会議中の人々が顔を向けて 司会役が言う
「…だ?」
マリアが衝撃を受けて周囲を見ながら言う
「あ、い、いえ… その…」
マリアが書類を見て慌てて言う
「だ… だ… 大丈夫 で… しょうか?ミッシェルリンク社の… す、数値は… とても 急に下がってますが… こ、これは 何か… 大きな事でも有ったのでは?」
司会役が言う
「ええ、その点に付いては 既に確認をしています なんでも 公共事業と共同で行っていた場所で 事故があったとか しかし、そちらも修理や復旧がなされれば 元の数値に戻るはずです 費用の方は 確かに掛かるでしょうが やはり 公共事業と共同と言うのが 大きな強みですね ミッシェルリンク社が負うのは 半分の費用で済む訳ですから」
マリアが言う
「な、なるほど… そうですね 失礼しました…」
社員4が言う
「いや、事業提携を考えるのなら 細かい所を気にする事は大切だ 気になった所は どんどん発言してくれて構わない マリア主任を見習い 我々も慎重に行こう」
マリアが視線を落として思う
(う…っ 別の事を考えていて 思わず声に出しそうになった言葉を 誤魔化しました… なんて 絶対 言えない…)
マリアが気を取り直して思う
(会議中は 仕事に集中しよう…っ)
マリアが席に戻って来て 息を吐いて思う
(ふぅ… 今日はこれで終わりかぁ~ 直接の商談は無いけど 流石に 重役を交えての会議って言うのは 重々しいと言うか…)
マリアが苦笑して言う
「緊張した…」
課長が近くに居て言う
「慣れるまではしょうがないな?」
マリアが驚いて言う
「か、課長っ!?」
課長が苦笑して言う
「お疲れ マリア主任 一息入れている所に すまないが また プロジェクトに関連する資料の変更が届けられた …と言っても 今朝渡した資料のまま とも言うが」
マリアが資料を受け取り見て言う
「あ、今朝のミッシェルリンク社の 数値変更ですよね?さっきの午後の会議で 私も発言した所だったんですが」
マリアが思う
(実際は 口に出しかけた言葉を 誤魔化す為だったんだけど…)
課長が言う
「昨日までは 修理復旧作業を行うと思われていたが 今日になって 村民からの大反対で 行えなくなったと 従って 完全撤廃になったそうだ それにより 数値の修正はなしで その数値で決定であると」
マリアが言う
「そ、そうだったんですか… 会議でも復旧されるだろうって 公共事業と共同であるからって 言ってましたが それでも駄目だったんですね?」
課長が言う
「うむ 例え公共事業であろうとも その村の住民が反対するのでは 再びダムを作る事は出来ないそうだ」
マリアが反応して言う
「ダム?」
課長が言う
「ああ、昨日決壊した ポルト村のダムだよ あのダムは 公共事業としては有事の際の貯水池として ミッシェルリンク社としては 水力発電を見越して建設された物だったらしい それが あの大雨で決壊してしまって …だが 修復は可能だといわれていたのだが」
マリアが思う
(あのポルト村のダムだったんだ… そうよね 村民が反対するのは 無理も無いわ だって ”お母さんのウィザード様”が 力を貸してくださらなかったら 村は 大変な事になっていたんだから…)
マリアが言う
「あんな怖い事が有ったのでは 村民が反対するのも 無理は無いですよね?」
課長が言う
「うむ… そうだな しかし ダムその物の損傷は それ程でもなかったそうだが… 今日になって そのダムも 完全に破壊されてしまったとか」
マリアが驚き言う
「は、破壊って…?」
課長が言う
「それではもう 村民がどうと言うのも 実際は 後付けの言い訳かも知れないな?以前より 村長の息子以外は 全村民が 反対していたそうだよ」
マリアが言う
「で、では… ダムを破壊したのは その… 村民… ですか?」
マリアが思う
(TVで見たから 大きさなんかは 良く分からなかったけど… ダムって そんな… 村民の人の手で壊せる物… なんだ…?)
課長が言う
「いや、何でも 強力な魔法で 壊されてしまったとか?」
マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
マリアが思う
(強力な魔法って…っ まさかっ!?)
マリアの脳裏にレイの姿が浮かぶ マリアが表情を困らせて言う
「まさか…」
課長が言う
「私も 魔法使いや魔法なんて言うのを 見た事は無かったが あの映像には驚いた 我々には 関係の無いものだと思っていたが …関連会社の施設を壊されたりする様では堪らないな?今回は 未然だった訳だが ミッシェルリンク社とは ともすれば 提携を結ぶ可能性もある訳だし これからは 気にするべきなのだろうか?」
マリアが言う
「は… はぁ…」
マリアが思う
(私は どちらも かなり 関係しているんですが… でも まさか 仕事と魔法が関連するだなんて そんな日が来るなんて事は…)
課長が言う
「では とりあえず 資料はそちらを使うように」
マリアがハッとして言う
「あ、はいっ 分かりました!」
課長が立ち去る マリアが席に付いて息を吐く
マリアが仕事を終え言う
「これで終わりっと」
マリアが思う
(今日はプロジェクト企画への初参加だったから 気になる所もあえて発言しなかったけど… やっぱり正解だったなぁ 改めて確認したら自分で調べられる事が沢山… でも、これからは個人で事前に調べを進めて 配布できる資料を作った上で参加したら もっと…)
新人1が来て言う
「マリア先輩」
マリアが反応して言う
「ん?あ、何?何か分からない事でも あった?」
新人1が苦笑して言う
「いえ、もう今日は… って言うか お仕事のお話じゃなくて… マリア先輩 今日これから 何かありますかぁ?」
マリアが言う
「え?う、ううん 今日は もう家へ 帰るだけだけど?」
新人1が言う
「あっそれなら!これから 私たち新人3人で 食事に行こうって話してて もし良かったら お仕事を教えて頂いた マリア先輩にも ご一緒頂けないかな?って!」
マリアが言う
「そうなんだ?…それじゃ」
マリアが思う
(そう言えば 歓迎会もやって上げてなかったし…)
マリアが微笑して言う
「うん!一緒に 行こうかな?行って良い?」
新人1が喜んで言う
「はい!是非是非!…皆!マリア先輩も来てくれるって!」
新人たちが喜ぶ マリアが微笑する
会社外
新人が言う
「一応 1次会の店は予約してあるんで サウスサイドストリートの方へ」
マリアが思う
(サウスサイドストリートかぁ そう言えば昔は良く行ってたけど… って はっ!)
マリアが衝撃を受け周囲の空を見上げてからホッとする 新人1が疑問する マリアが思う
(よ、良かった… つい、皆と一緒に 会社の正面で入り口から出ちゃって 時間的にも ウィザード様が飛んで来ちゃうかと思ったけど…)
マリアが改めて周囲を見てからホッとして思う
(居ないみたい… そう言えば 会社の出入りを杖に感知させているだけじゃなくて ウィザード様自身でも確認するって言ってたっけ?それじゃ 今は 皆と一緒に居るから来ないって事かな?)
新人1が言う
「マリア先輩 彼氏さんには 先に連絡していたんですね?全然気が付かなかったです もしかして こっそり メールで… ですかぁ?」
マリアが衝撃を受けてから慌てて言う
「え!?そ、そんな… こっそり メールだなんて …大体 彼は メールの前に携帯とか… って」
マリアがハッとして言う
「だ、だからっ!彼氏さん じゃないったらっ!」
新人1が笑って言う
「冗談ですよぉ マリア先輩いつも 凄い反応してくれるから 面白くって つい… ごめんなさーいです~」
マリアが苦笑して言う
「もぅっ」
新人が言う
「バスが来てますよ~ 2人とも 急いで~」
マリアと新人1が気付いて急ぐ
店
新人が言う
「かんぱーい!」
新人たちとマリアがグラスを合わせて言う
「「かんぱーい!」」
新人たちとマリアが微笑して飲み物を飲む マリアが言う
「これからも 何か分からない事があったら 何でも聞いてね?別の部署の事でも 確認ぐらいなら出来るから」
新人たちが言う
「有難う御座います!」
「マリア先輩 頼りにしてます!」
マリアが軽く笑って言う
「課長に聞いた方が 早いかもしれないけど 結構 忙しいらしいから」
新人が言う
「課長は そんな感じしますよね?この前も マリア先輩がお休みの時 忙しそうだったんで 中々声が掛けられなくて…」
「あ、でも どうしようかな~?って思ってると 課長の方から声を掛けてくれたりして」
マリアが言う
「うん、そうでしょ?課長 忙しくても 良く見てるから… だから 仕事中はしっかり 仕事の事を考えて居ないと 私みたいに 怒られちゃうからね?」
新人たちが笑う
店 前
新人たちとマリアが出て来て 新人が言う
「それじゃ 2次会に行きましょー!」
「何処に行く?何か 美味しい物食べたい~」
マリアが思う
(やっぱり こう言う時は… 2次会はパスするべきよね?新人たちだけで 話したい事もあるだろうし…)
マリアが言う
「それじゃ 私はそろそろ帰るね?」
新人たちが言う
「え~?何でですか~?」
「マリア先輩も 2次会行きましょうよー?」
新人1が言う
「そうですよぉ 私、マリア先輩に聞きたい事が 山ほどあるですからぁ まだまだ 足りてないですぅ~!」
マリアが苦笑して思う
(う… でも それって また ”あの魔法使いさん”とか”彼氏さん”の 事じゃないかなぁ…?)
マリアが言う
「ああ… でも、ごめんね?え~と… そう!私、最近ちょっと寝不足だから!早く帰って寝ないと!」
新人たちが言う
「え~ そっかぁ 明日にすれば良かったですね そうすれば…」
マリアが言う
「皆も明日は出勤でしょ?飲み過ぎは注意よ?」
新人たちが笑って言う
「はーい 注意しま~す!」
マリアが言う
「それじゃ…」
マリアがふと気付いて言う
「あ、そうそう 美味しいお料理のお店なら そこの 155のお店とか ちょっと お勧めかな?昔 同僚の子と 良く行ってたの」
新人が言う
「155ですね!?分かりましたー!行ってみまーす!」
マリアが微笑して頷く 新人1が言う
「それじゃ マリア先輩 また明日!お疲れ様でしたぁ!」
マリアが言う
「うん!また明日!お疲れ様!」
新人たちが去って行く マリアが逆方向へ足を向けながら思う
(さて… 駅は 向こうだから…)
マリアが歩いていると 店に気付いて足を止めて見て言う
「あ… こんなお店が…?」
マリアが店のショーウィンドウを見ながら思う
(魔法使いの杖や衣装… こんなお店があったんだ 今まで気が付かなかった でも、良く考えたら この通りには 魔法使いの養成所があるんだから 不思議じゃないかも…)
マリアがショーウィンドウから杖の値札を見て 衝撃を受けて思う
(うっ… 値段1億… 本当だったんだ…)
マリアがショーウィンドウの展示衣装を見ながら言う
「それじゃ やっぱり 他の衣装なんかも それなりのお値段なのかなぁ?でも… 見た感じは そんな… 確かにコレは良い生地みたいだけど」
マリアが思う
(ウィザード様が着ている服や マントなんかは 特別良い生地なんかじゃないし …あのウィザードの法衣の方は 確かに高そうだったけど…)
マリアが息を吐き歩き出して言う
「もう アレは着られないもんね…?それこそ 魔法使いみたいな 黒色であっても…」
マリアが立ち止まって思う
(でも… それなら せめて良い生地の 魔法使いの衣装を…)
マリアがハッとして言う
「あっ いやっ 別にっ その… 私が 気にする事じゃっ 大体…っ」
マリアが思う
(ウィザード様は 杖のローンがあるとは言え 大金を得るのにも それ程苦労をしない人なんだから… きっと 良い生地の衣装が欲しいと思うなら 自分で…)
マリアがハッとして顔を左右に振ってから言う
「って 何考えてるんだろう 私…っ」
マリアが歩きながら思う
(どうして いつも ウィザード様の事を 考えちゃうんだろう?今の私なら もっと… そう!明日のプロジェクト企画で 何か自分にも発表出来る事が無いか?とか… リナの調子は良くなったかな~?とかっ 考える事は 一杯…)
マリアが間を置いて 息を吐いて言う
「はぁ… 駄目だ 何でだろう?どうしても…」
マリアが思う
(考えちゃうなぁ… 特に 今日は… 会社の帰りに 会えなかったから…)
マリアが息を吐く レイが言う
「マリアー!」
マリアが驚いて言う
「え?ウィザード様っ!?」
レイがマリアの前に下りて来て喜んで言う
「やっぱり マリアだっ!マリア お疲れ様!今日は会社の奴らと 外で仕事か?こんな時間まで仕事なんて やっぱり マリアは仕事熱心だな?」
マリアが言う
「ヴィ、ウィザード様 どうして ここが!?」
レイが言う
「ああ!たまたまだよ!寮に帰るのに 飛んでたらさ?マリアの魔力っぽいのを見つけて もしかしてっ!?てな!」
マリアが言う
「あ… そうだったんですか」
マリアが思う
(魔力を見つけて… か ”マリアを見掛けて” では無いのね?やっぱり 魔法を使う人は 違うのね…)
レイがマリアの横に来て言う
「けど マリア こんな時間に 1人で歩いてたら 危ないぞ?一緒に出た 奴らはどうしたんだ?」
マリアが気を取り直して言う
「あ、はい 皆は2次会に行くって 私だけ 先に帰る事にしたんです」
レイが言う
「そうか なら 丁度 良かったな!俺が連れて帰ってやるよ!」
マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「え?…はい では、お願いします」
レイが言う
「ああ!任せとけ!」
レイとマリアが風に消える