表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/4

嗚呼、私のウィザードさま。02-1

中央公園


噴水のヘリに座り マリアが手作り弁当を前に溜息を吐いて言う

「はぁ~…」

隣に座っている マキが手作り弁当を前に言う

「それじゃ 一応 誤解は解けた …んだよねぇ?」

マリアが表情を落として言う

「うん… その筈なんだけど でも…」

マキが視線を正面へ向けて言う

「その時から連絡が無いって?」

マリアが言う

「連絡と言うか… ウィザード様は携帯とか持ってないだろうし… 私も番号教えてなかったから…」

マキが言う

「何で教えなかったの?今までずっと?」

マリアが言う

「うん… だってウィザード様と奉者って そう言うの教え合うような間柄じゃないような気がしてて… それで そのまま…」

マキが言う

「そりゃぁ奉者はウィザード様に 常に仕える者だから そうかもしれないけどぉ… 私は一応 番号教えておいたよ?…って言っても向こうが魔法使いだった時にだけどね!えへへ~」

マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う

「それじゃ私とマキの2人で魔法使いの養成所を見に行った あの時からの仲だったのね?」

マキが言う

「うん!あの後 私 実は毎日 行ってたんだ~ 向こうは全然相手にしてくれてなかったけど私は ずっと見ていたくて …そしたらウィザードの認定試験の前日に もしかしたら もう会えなくなるかもしれないからって向こうから声を掛けてくれたの」

マリアが微笑して言う

「きっとずっとマキの事気にしてたんだね!」

マキが言う

「そうなのかなぁ?…えへへっ」

マリアが苦笑した後 視線を落とす マキが言う

「マリア… きっと大丈夫だよ?会いに来てくれるよ」

マリアが言う

「うん… でも あの人だったら… ”私のウィザード様”だったら それこそ退社時にも…喜んで会いに来てくれると思ってたんだけど…」

マリアが思う

(来てくれなかった… 私の独り善がりだったのかな…?あのお部屋で会っていた時みたいに私がドアを開けたら マリアーって… 抱き付いて来てくれると思ったのに…)

マリアが視線を落として溜息を吐いてからハッとして慌てて言う

「…え?あっ!ち、違うのっ!今のはっ その… 私が そうして欲しいんじゃなくてっ!あのウィザード様なら きっと そうするだろうって事でっ!私はっ そんな事っ!」

マキが呆気にとられて言う

「マ、マリア…?」


会社


マリアが電話をしていて言う

「はい、それでは明日の9時に…はい…はい、お待ちしております失礼致します」

マリアが電話を置き 手帳に書き込みながら言う

「9時か~ちょっと早くなっちゃったなぁ出来れば10時が良かったんだけど…お呼び立てするんだから しょうがないよね?」

マリアが記入を終え時計を見上げてから言う

「よし… 明日は早いし今日はもう帰ろう」

マリアが手帳を閉じ立ち上がる


会社出入り口


マリアが出入り口を出て来て言う

「マキとは お昼に会える様になったけど…やっぱり寂しいな…リナは居ないし」

マリアが思う

(ウィザード様にも会えないし…)

マリアが出入り口を出て視線を落とし溜息を吐いて言う

「はぁ…会いたいなぁ…」

マリアの耳にレイの声が聞こえる

「マリアー!」

マリアが一瞬驚き顔を上げると言う

「…え?ウィザードさ… まっ!?」

レイがマリアに抱き付いて言う

「マリアー!会いたかったよー!」

マリアが驚いた状態から微笑して言い掛ける

「わ、私も…って!?はっ!?」

マリアがハッとして周囲を見渡し慌ててレイを引き剥がしながら言う

「ウィ、ウィザード様っ!ひっ 人前ですよっ!恥ずかしいじゃないですかっ!?」

レイが言う

「ああ ごめんなマリア!俺はもうウィザードじゃないもんだから何処ででも あの部屋の中に居る時みたいに気が緩んじゃってさ!」

マリアが困りつつ言う

「そ、それは分かりますがっ ここは外なんですからっ!」

マリアが思う

(しかも会社の目の前で…っ!)

マリアが言う

「例えウィザードじゃなくともっ 相応にっ!」

レイが言う

「ああ!例えウィザードであっても俺は構わないんだけどさ!?」

マリアが慌てて言う

「か、構って下さいっ!」

レイが言う

「うん!マリアがそうしろって言うなら俺はそうするよ!でも やっぱ めんどくさいからサ?」

レイがマリアを包む マリアが杖に気付いて言う

「えっ!?あ…っ」

レイとマリアが浮かび上がり 風に消える


自宅前


レイとマリアが現れる レイが言う

「はい 到着!」

マリアが言う

「え?こ、ここ…っ 私の家!?どうしてウィザード様が私の家を ご存知なんですかっ!?」

レイが言う

「ああ!前に清掃員になった時に」

マリアが衝撃を受けレイの清掃員姿を思い出して言う

「あ、あの時にっ!?」

レイが言う

「ついでにマリアをストーキングして確認しておいたんだよ!」

マリアが衝撃を受け慌てて言う

「ストーキングなんて しないで下さいっ!しかも よりによって神聖なウィザードの時にっ!」

レイが言う

「大丈夫だって俺は その日1日は清掃員だったし」

マリアが思う

(まぁ確かに…何処の世界に”人と神様との間”だって言われるほど崇拝される人が清掃員の姿で うろついているなんて思わないだろうけど…)

レイが言う

「清掃員もストーキングも その日一日の限定だよ だって俺は今は魔法使いだけど」

マリアがホッとして思う

(そうよね あの時は名実共にウィザード様だったんだから)

レイが言う

「あの時も今も変わらず”マリアのウィザード様”だからな!」

マリアが一瞬呆気に取られた後微笑する レイが微笑して言う

「だからマリアの為なら俺は何時だって清掃員にもストーカーにもなるぞ!」

マリアが衝撃を受けて言う

「どちらにも ならないで下さいっ!」

マリアが溜息を吐いて思う

(もう… 相変わらずこの人は…)

マリアが不満そうに言う

「そんな事する位でしたら今度はちゃんと私の前に現れて下されば…っ 大体、昨日だって私…っ」

マリアがハッとして口を押さえて思う

(や、やだっ!私っ 今 何を言おうと…っ!?)

レイが苦笑して言う

「そうそう昨日もさ?マリアが会社を出る頃に俺もマリアの前に現れるつもりだったんだけどさ?」

マリアが一瞬反応して レイを見て言う

「けど?」

レイが言う

「その昨日の昼マリアと会った時に昼休みが終わるからってマリアを会社へ送っただろ?」

レイが杖を軽く動かしてみせる マリアが杖を見ながら言う

「え、ええ… あ、お陰さまで…」

マリアが思う

(そう言えば今日は枝じゃなくて杖を持ってる…ちゃんと買ったのかなぁ?…まさか他の魔法使いから取ったとか…)

レイが言う

「あの後、俺1人で あのまま枝で飛んだらさ?やっぱ途中で枝が折れちゃって」

マリアが疑問して思う

(え?枝が折れるって…?杖の代わりに使った枝が折れたらどうなるんだろう…?)

レイが言う

「そのまま壁に激突して翌日の朝まで気絶してたんだ!」

マリアが衝撃を受ける レイが苦笑して言う

「もうすぐ冬だって言うのに目が覚めたら外で寝ててビックリしたよ!あんなの何年振りかな?あははっ!」

マリアが思う

(前にもあったんですねっ!!)

マリアが怒って言う

「そ、そんなっ 笑い事じゃないですよっ!?そのまま凍死しちゃったらどうするですかっ!大体 あんな枝なんかで飛ぶからっ!その一歩前までは私だって居たんですよっ!?」

レイが言う

「大丈夫だって!マリアが居る時は ちゃんと結界張ってるから どっかに激突したって怪我はさせないよ!」

マリアが言う

「そ、そう言う問題ではなくてっ!」

レイが言う

「それに今度は杖を買ったからもう大丈夫!これからはちゃんと…」

マリアがホッと苦笑して思う

(あ、買ったみたい良かった…それに これからはちゃんと …杖で?)

レイが微笑して言う

「マリアに会いに行けるからな!」

マリアが衝撃を受け慌てて言う

「そ、そうじゃなくて…」

マリアが思う

(ちゃんと杖でってっ …まぁ、いっか?…ウィザード様が会いに来てくれないってマキに愚痴を言っていたのは…私だったし)

マリアが一度微笑してから レイへ言う

「もうっ…今度は気を付けて下さいね?」

レイが言う

「うん!ありがとな!マリア!」

レイがマリアに抱き付く マリアが衝撃を受け周囲を見つつ苦笑して思う

(ま… まぁ 良い…よね?…この辺なら?そんなに人通り多くないし…?殆ど壁で見えない…し?)

玄関前の壁の無い付近を人が通り マリアたちを見て一瞬驚いた後失笑を隠しながら歩き去る マリアが衝撃を受け思う

(…で、でもっ やっぱり この玄関前以外で お願いしたいのですが…っ)

マリアが困っていると レイが言う

「じゃ 俺 帰るな!お仕事お疲れ様 マリア」

マリアが呆気にとられて言う

「え?あ、はい お疲れ様… あ、送って下さって 有難う御座いましたっ」

レイが言う

「礼には及ばないよ!それじゃ お休み!」

マリアが言う

「あ…っ」

マリアが呆気に取られていると レイが浮き上がり風に消える マリアが一瞬驚いた後 肩の力を抜いて言う

「まだ 何も話てなかったのに…」

マリアが周囲を見渡してから軽く息を吐き 玄関の鍵を開けながら思う

(現れたと思ったら すぐに消えちゃって…)

マリアが玄関ドアを開け 一度振り返ってから言う

「まぁ… いっか…?今度は何処かの寒空の下で気絶しているなんて事は無いだろうから…」

マリアが苦笑してドアを閉める


中央公園


マキが言う

「そっかー!マリアのウィザード様 会いに来てくれたんだー!?良かったね マリア!」

マリアが言う

「うん… 心配してくれて ありがとう マキ」

マキが言う

「それに今朝も迎えに来てくれたなんて優しいね?早起きが苦手なマリアにとっては 大助かりじゃない?」

マリアが衝撃を受け苦笑して言う

「う、うん… 本当に助かっちゃった 今日は朝一番に商談予定が入ってて その前に資料の見直しするつもりが うっかり会社に忘れて来ちゃって」


回想


朝 マリアが慌てて家から出て来て言う

『あ~っ 資料、会社に忘れてきちゃったっ!』

マリアが思う

《ウィザード様が会いに来てくれないって その事ばっかり考えていたせいで…っ!》

マリアが玄関の鍵を慌しく閉めながら言う

『通勤の合間に目を通すつもりだったのに…っ』

マリアが振り返って言う

『もう間に合わないわっ』

レイの声が届く

『マリアー!』

マリアが驚いて言う

『え?』

マリアが振り向くと同時にレイが抱き付いてきて言う

『お早うー!マリアー!今日は寒いな!昨日の朝もこの気温だったら俺ヤバかったかも!?』

マリアが衝撃を受けて言う

『ウィ、ウィザード様っ!昨夜はちゃんと飛んだんですねっ!?良かったです!でも今は私っ ちょっと急いでて!』

レイが言う

『分かってるってマリア!』

レイがマリアを包む マリアが呆気に取られると レイとマリアが風に消える


レイが言う

『はい 到着!マリアいってらっしゃーい!』

マリアが呆気に取られて周囲を見た後苦笑して言う

『えっ!?あ、有難う御座いますっ ウィザード様 助かりました!行って来ます!』

マリアが走って会社へ向かう 


回想終了


マリアが言う

「元はと言えば ウィザード様が会いに来てくれないって その事に気を散らせて 資料を忘れちゃったんだけど …でも やっぱり会社で確認した方が 他の持ち出し出来ない 資料とかも見られたし …良かったかも?」

マリアが苦笑する マキが言う

「うーん… でもさ?そんな朝早くに会いに来てくれるなら それこそマリアが心配してた再会のあの日の夜にも会いに来てくれれば一番良かったのにね?」

マリアが衝撃を受ける マキが苦笑して言う

「だってさ?そう思わない?お昼に誤解が解けたんだから その夜にしっかり再会してさ?マリアを安心させてくれたら良かったのに」

マリアが思う

(い… 言えない… 本当はそのつもりだったのに 壁に激突して 翌朝まで気絶していたなんて…っ)

マリアが顔を逸らして小声で言う

「…それに よく考えたら あの日 杖を失ったのだって私との約束の灯魔作業をやってくれて それで杖が壊れちゃって …ついでに 代わりの枝で飛んだのだって 元はと言えば私を急いで会社に送り届ける為で… それで…」

マリアが表情を困らせて思う

(なんだかんだ言っても やっぱり あの人は ”私のウィザード様”で 私の為にって… それなのに私は 相変わらずで…)

マリアが溜息を吐こうとする

「は…」

マキが溜息を吐く

「はぁ…」

マリアが一瞬呆気に取られてから マキを見て言う

「…マキ?」

マキがハッとして苦笑して言う

「あ、ごめんごめん!溜息は マリアの専売特許だったのに 先に使っちゃった~!えへへ~」

マリアが困惑して思う

(い、いえ… そんな 溜息の専売特許なんて 私 取りたくないけど… いや、そうじゃなくてっ)

マリアが言う

「そ、そんなの いつでも使っちゃって良いけど そうじゃなくて マキが溜息吐くなんて 珍しいね?どうかしたの?マキこそ 愛しの”マキのウィザード様”と ラブラブなんでしょ?」

マリアが微笑して思う

(ふふっ 今度は 私が マキを冷やかしちゃうんだからっ)

マリアが笑う マキが苦笑して言う

「うん… まぁ それはそうなんだけど」

マリアが衝撃を受けて思う

(こ、肯定したっ!?)

マリアが言う

「さ… 流石 マキ…」

マリアが思う

(何処までも自分に素直な… って そうじゃなくてっ!ここは 奉者の先輩として 一言っ!)

マリアが気を取り直して言う

「う、うんっ!マキ?駄目なんだよ?ウィザード様は 神聖なる修行をしている 最中なんだからっ そ、そんな…」

マリアが思う

(み、みだらな事 は…っ て、それは流石に言えないっ)

マキが苦笑して言う

「うん… そうだよね 駄目だよね 奉者の方が 心配したりなんてしたら」

マリアが衝撃を受けて思う

(えっ!?し、心配ってっ!?一体何をっ!?)

マリアが言う

「な… 何を…?」

マキが言う

「うん 今日ね これから初めて 灯魔儀式に行くんだ」

マリアが言う

「え?」

マキが言う

「だから 彼も少し緊張しているみたいで 私も… なんか緊張しちゃって …でも マリアの言う通り 駄目だよね?奉者は自分のウィザード様の力を信じないと!」

マリアが思う

(…うっ 私… 信じたっけ?初めての… 最初の灯魔儀式は 確か…)

マリアが顔を逸らし小声で言う

「私… あの人が 本当にウィザードであるか …と言う事を 疑っていたような…」

マリアが思う

(う… 言えない…)

マリアが小声で言う

「…むしろ ウィザード様の方が 自分で自信を持っていたような…」

マリアが困ってボソッと言う

「…言えない」

マキが言う

「ねぇ マリア 聞いて良い?」

マリアがハッとして言う

「え!?な、な、何っ!?」

マキが言う

「あのさ 最初の灯魔儀式の時って どんな感じだった?…やっぱり 結構大変なの?」

マリアが疑問して言う

「え?…えーとぉ~」

マリアが思い出しながら言う

「う~ん… そんな事無かったと思う 私は… あ、そうだ 私も 凄い緊張してたかも でも ウィザード様は 凄く落ち着いてて… 怖いくらい なんて言うか 威圧感があって」

マリアが思う

(う、うん そうだ… あの時は ウィザード様も もしかしたら 少しは緊張してたのかも?あの後はいつも 部屋を出るまでは マリアーって 感じだったし)

マリアが苦笑して言う

「…そうだね?もしかしたら ”私のウィザード様”も 少し緊張してたのかも …でもね?全然 大変なんて言うのは無かったよ?やってみたら 全然余裕だったって?」

マリアが思う

(うん そうだった 実力の5割も出さなかったって言ってたし …それに 私もそれで あの人がウィザード様だって 信じ… あれ?)

マリアが考えながら言う

「あ… そう言えば 全然余裕で ウィザードじゃなくても出来るとか言うから… 余計に分からなくなっちゃって…」

マリアが思う

(実際 この中央公園の灯魔作業は ウィザード様がウィザードじゃなくて 魔法使いになってからやっていたし… やっぱり)

マリアが微笑して言う

「大丈夫だよ!マキ!心配しないで!」

マキがマリアを見て言う

「マリア…」

マリアが言う

「いつものマキで行きなよ!元気の無いマキじゃ ”マキのウィザード様”も 心配するよ!?」

マリアが思う

(うんっ ウィザード様は いつも私の事を心配してくれてたから …きっとマキのウィザード様だって同じだよね?)

マキが微笑して言う

「うん!分かった!流っ石 マリア大先輩!マリアはいつも 灯魔儀式を心配するような様子は 全然無かったもんね!見習いまーす!にゃははっ!」

マリアが衝撃を受けて思う

(え?灯魔儀式を心配?…あーよく考えたら私それを心配した事は一度も無かったかも… だってあの人)

マキが立ち上がって言う

「それじゃ 私 行くね!応援してくれて ありがとう マリア!」

マリアが言う

「うん!頑張ってね!いってらっしゃい!」

マキが走って行く マリアが立ち上がって思う

(私のウィザード様は… 最強のウィザード様だったから!)

マリアが苦笑して言う

「今は魔法使いだけどね?」

マリアが顔を上げ立ち去る


退社時


マリアが会社を出て来て言う

「ふぅ… 今日もやっと終わった…」

マリアが思う

(それで もしかして…)

レイが言う

「マリアー!」

マリアが苦笑して思う

(…やっぱり)

マリアがひょいと避ける レイがマリアを通過し壁に激突して言う

「ぎゃっ!?」

マリアが向いて言う

「ウィザード様?ここでは抱き付かないで下さいって 昨日 言ったじゃないですか?」

レイが言う

「俺はそんなの どうでも良いと思うんだけどな?けど、マリアが そう言うなら しょうがない」

マリアが苦笑する レイがマリアの近くへ行って言う

「それじゃ 家に帰るか?マリア?」

マリアが微笑して言う

「はい」

レイが嬉しそうに言う

「よし 帰ろう!」

レイとマリアが風に消える


マリアの家


レイとマリアが現れると レイがそのままマリアに抱き付いて言う

「ここなら良いだろ?マリアー?」

マリアが表情を困らせて言う

「ここならと言いますか… そもそも外で抱き付いて欲しくないのですが…」

マリアが思う

(と、言っても 家に入りましょうなんて言ったら 何だか私から誘っているみたいだし…)

マリアがはっと気付いて思う

(…あ、そう言えばっ)

マリアがレイへ言う

「あ、あの… ウィザード様?」

レイが言う

「なんだ?マリア?」

マリアが言う

「ウィザード様は 今どちらに いらっしゃるのですか?」

マリアが思う

(あのお部屋には 今はマキのウィザード様が住んでいるんだから… それじゃ今 ”私ウィザード様”は 何処に…っ?)

マリアがレイを見る レイがマリアに甘えて言う

「俺は 今~ マリアの隣~!」

マリアが衝撃を受けて思う

(何てベタな返しを!!)

マリアがハッとして思う

(って そうじゃ無くてっ!)

マリアがレイを剥がしながら言う

「そうでは無くてですねっ!?私は真剣にっ!」

マリアがハッとすると 玄関前の壁の無い場所から通行人がチラッと見て失笑している マリアが一瞬羞恥に頬を染めて困り怒って言う

「ウィザード様が ちゃ、ちゃんと お部屋に住んでいるのかっ 私はそれを心配してっ!」

マリアが思う

(だって 私のせいで…っ ウィザード様は あの部屋を 追い出されてしまったのだからっ)

マリアが表情を落とすと レイが嬉しそうに言う

「相変わらず マリアは優しいな!俺は大丈夫だよ!ちゃんと お部屋に住んでるよ!」

マリアが一瞬呆気に取られた後 ホッと苦笑して思う

(相変わらず この人は…)

マリアが言う

「…それなら良かったです」

レイが言う

「うん!」

マリアがふと思う

(…で、何処に住んでいるんだろう?)

マリアが言う

「で、ウィザード様?」

レイが言う

「じゃ、俺 帰るな!」

マリアが呆気にとられて言う

「え?」

レイが離れて浮き上がって言う

「お仕事お疲れ様!マリア!良く休むんだぞ!」

マリアが言う

「あ、は、はいっ お疲れ様で… あっ 今日も送って下さって有難う御座いました」

レイが言う

「礼には及ばないよ!お休み!マリア!」

レイが風に消える マリアが慌てて言う

「あー…っ」

マリアが呆気に取られて言う

「なんだ… ちょっと お話でもしようと思ったのに…」

マリアが肩の力を抜いて言う

「ふぅ…」

マリアが玄関へ向かい鍵を開けながら言う

「でも、まぁ いっか…?ちゃんと お部屋に住んでるって言うし… …当然だろうけど」

マリアが玄関ドアを開け 振り返って思う

(今日もまた 現れたと思ったら消えちゃった ホントに…)

マリアがドアを閉めながら言う

「風みたいな人…」

ドアの外に北風がひと吹きする


翌朝

 

マリアが玄関を開け出て来て言う

「う~ 寒い…」

マリアが玄関ドアに鍵を掛けながら思う

(まだ冬の前だって言うのに… 朝はすっかり寒くなって来たみたい…)

マリアが鍵を掛け終えて振り向いて歩き始めて言う

「電車は良いけど ここから駅までが寒いんだよね…」

レイの声が聞こえる

「マリアー!」

マリアが呆気にとられて言う

「え?…あっ!」

レイがマリアに抱き付いて言う

「おはよう マリア!朝はすっかり寒くなったなー!」

マリアが言う

「あ、は、はい… お早う御座います そうですね 寒いですね…」

マリアが思う

(でも 相変わらず ウィザード様は いつもお元気そうで…)

マリアが苦笑して言う

「流石 北風さん…」

レイが疑問して言う

「ん?キタカゼサン?」

マリアがハッとして慌てて言う

「あっ い、いえっ!」

レイが言う

「マリア 今日は ゆっくりだな?忙しくはないのか?」

マリアが言う

「ゆっくりと言いますか… そうですね朝一番の商談とかは入っていないで この時間に出るのなら」

レイが言う

「そうか!それなら…」

マリアがハッとして思う

(…って 言っても まさか朝から お茶に付き合っている時間なんてっ 無いですからっ!)

マリアが顔を挙げ気合を入れて思う

(そうよねっ!?ここは ハッキリしとかなきゃっ!)

マリアが言う

「あのっ!ウィザード様っ!」

レイが言う

「うん!急いで行く必要は 無いかもしれないけど!やっぱ この寒い中をマリアに歩かせたくは ないからな!」

マリアが呆気にとられて言う

「えっ?」

レイがマリアを包む マリアが一瞬驚くと レイとマリアが浮き上がり風に消える


会社 前


レイとマリアが現れ レイが言う

「はい 到着!これなら 寒くないだろ?」

マリアが呆気にとられて言う

「あ、はい…」

レイが離れて言う

「それじゃ 今日も お仕事頑張ってな!マリア!いってらっしゃーい!」

レイが浮き上がる マリアがレイへ向いて言う

「えっ!?あ、有難う御座いましたっ!」

レイが風に消える マリアがポカーンとして言う

「ま、また 消えて行っちゃった…」

マリアが苦笑して思う

(もぅ… 本当に北風さん なんだから…)

北風が吹きマリアが寒さに一度身を震わせてから言う

「わっ さ、寒い… 早く中に入ろうっ」

マリアが社内へ向かいながら苦笑して思う

(でも ウィザード様と一緒に居る間は 寒く はないから… ”北風さん”では 無いのかもしれない?それじゃ…)

自動ドアが開くと マリアが入る間に風に吹かれて1枚の落ち葉が舞い込む マリアが気付いて顔を向けて言う

「そっか 風の魔法…」

マリアが苦笑し 入り込んだ落ち葉を拾い 自動ドアを開け吹いた風に外へ落ち葉を逃がしながら思う

(私のウィザード様は 今は 風の魔法使いさん なんだ…)

マリアが風に吹かれ 飛んで行く落ち葉を見送ると 苦笑してから立ち去る


中央公園


マリアが歩いて来て 噴水のふちに腰掛けているマキに気付き 微笑して呼びながら向かう

「マキー!お疲れ様ー!」

マキがマリアの声に顔を向け苦笑して言う

「お、お疲れ様 マリア… 何か マリア 元気だね?」

マリアが一瞬驚いた後苦笑して言う

「え?あ、そ、そうかな?」

マリアがマキの隣に座りながら言う

「あれ…?マキこそ… ちょっと 元気ない?どうかしたの?」

マキが苦笑しながら言う

「そ、そうかな?あ~ そうかもね?あは…」

マリアが呆気に取られた後 気を取り直して言う

「…そうだっ!昨日!初めての灯魔儀式だったんでしょ!?どうだった?」

マキが反応する マリアが弁当を用意しながら言う

「初めて見ると やっぱりびっくりするよね?私もそうだった!何回か見ている内に慣れたけど初めての時はウィザード様の魔法の迫力に圧倒されちゃって!」

マキが視線を落として言う

「私は… 見ていられなかった…」

マリアが一瞬疑問した後 苦笑して言う

「え…?あっ!私はっ!あ、あれかもしれないっ あの… 14年前に 大灯魔台の灯魔儀式が失敗して灯魔魔力が暴走して凄い怖い思いをした事があったから… それに比べたら普通の灯魔台の灯魔儀式は…っ」

マキが言う

「ううん… 魔法が… 灯魔魔力が怖くて とか言うんじゃなくて… 彼が 凄い… 苦しそうで…」

マリアが驚いて言う

「え…?」

マリアが思う

(”苦しそうで”…?)

マキが表情を悲しめて言う

「心の中で 何度も ”もう止めようよっ!”って…」

マリアが呆気に取られる マキが言う

「”巡礼者の人たちに 見られてても良い… 今日はもう 止めよう!”って… 何度も思った… でも…」

マリアが言う

「”でも”?」

マキが苦笑して言う

「彼は最後まで 諦めなくて… 最後の最後に やっと…」

マリアが呆気に取られていると マキが涙ぐんで言う

「奉者って 苦しいね… マリア… それに 私… ”何度も止めよう” だなんて… 彼の力を 信じ切れてないよね… 駄目だよね?私 もっと強くならなきゃ…」

マリアが言う

「マキ…」

マリアが驚く マキの手に 涙が落ちる マキが言う

「…ごめん 言ってるそばから…」

マリアが言う

「良いよっ 私だって マキやリナに 一杯助けてもらったよっ?だから 今度は私が マキに力を貸すからっ!」

マキが言う

「ありがとう マリア …やっぱり マリアは 私の大先輩だよっ」

マリアがマキを抱いて慰める


会社


マリアがモニターを前に考えている マリアの脳裏に記憶が蘇る


マキが言う

『ううん… 魔法が… 灯魔魔力が怖くて とか言うんじゃなくて… 彼が 凄い… 苦しそうで…』

マキが言う

『”巡礼者の人たちに 見られてても良い 今日はもう 止めよう!”って… 何度も思った… でも…』

マキが苦笑して言う

『彼は最後まで 諦めなくて 最後の最後に やっと…』


マリアが思う

(あの話… マキの様子からして… ”マキのウィザード様”は 凄い苦労をして 灯魔儀式を成功させたみたい… 灯魔台の灯魔儀式って そんなに大変な事だったっけ?)

マリアが思い出す


マキが涙ぐんで言う

『奉者って 苦しいね… マリア…』


マリアが思う

(奉者が苦しい?…そう言えば お母さんも 同じような事を言ってた …奉者は ウィザード様の努力と苦しみを同じくして あの場所へ… 大灯魔台の灯魔儀式までを 一緒に行くんだって…)

マリアが気付いて言う

「…そっか 私のウィザード様は」

課長が後ろに居て 咳払いをして言う

「うんっ!マリア君っ」

マリアが衝撃を受け慌てて言う

「は、はいっ!課長っ!?」

課長が言う

「昨日の 商談結果に付いての報告書が まだ出ていないようだが…?」

マリアが慌てて言う

「あっ はい!それでしたら たった今 作成を…っ はっ!?」

マリアが自分の前の真っ白なモニターを見て衝撃を受ける 課長が言う

「マリア君… お陰で私も 君が別の事へ気を向けている事に 気付くようになったよ …まぁ 仕事さえしてくれれば 文句は言わないがっ?」

マリアが言う

「す、すみません…っ」

課長が立ち去る マリアが息を吐いてから 気を取り直して思う

(い、今はもう 私は 奉者じゃないんだし ウィザード様もウィザードじゃないんだからっ 私はこの仕事を頑張らなきゃっ)

マリアがふと手を止めて思う

(…て そう言えば)

マリアが言う

「ウィザード様って 今 何をやっているのかな…?」

マリアが考える 課長が衝撃を受けて叫ぶ

「マリア君っ!!」

マリアが衝撃を受けて言う

「は、はいっ!すみませんっ!課長っ!」


退社時


マリアが会社を出て来て言う

「ふぅ… 課長の目が光っていたお影で 明日の分まで書類を上げちゃった」

マリアが思う

(って 事は つまり 絶対休暇禁止の 月曜日の忙しさって こうやって前日の日曜日に 書類を上げちゃえば良かったんだ)

マリアが言う

「なんだ… それなら あの日も リナに無理をお願いしなくたって こうすれば良かったんだ…」

マリアが苦笑して言う

「それに」

マリアが思う

(マキにも お願いしちゃったんだよね… マキ… 大丈夫かな…?)

マリアが言う

「よし こう言う時は」

レイが言う

「マリアー!」

マリアが思う

(ウィザード様に聞いてみようっ!だって マキの”ウィザード様”についての 事だから)

マリアが身構える レイがマリアの前で顔を覗き込んで疑問して言う

「…マリア?」

マリアがハッとしてレイへ向いて言う

「わっ!?ヴィ、ウィザード様!?」

マリアが思う

(え?何で今日は…?)

レイが言う

「何かあったのか?」

マリアが言う

「い、いえ…」

マリアが思う

(何で 今日は… 抱き付いて来なかったんだろう…?…ってっ!?)

マリアが言う

「あ、いやっ!違うんですよっ!?私は 別に!はっ!?」

マリアが思う

(しまったっ!墓穴を…っ)

マリアがレイを見る レイが呆気に取られてから微笑して言う

「大丈夫だよ!マリア!マリアは何も気にしなくて良い!」

マリアが言う

「え?」

レイが言う

「マリアは 気にしてるんだろう?明日の大灯魔台の 灯魔儀式の事!」

マリアが呆気にとられて思う

(あっ そうだった…!明日は…)

マリアが視線を落として言う

「…本当だったら」

レイが言う

「俺たちが行くつもりだったもんな?でも 良かっただろう?毎週月曜日に 休暇を取るなんてやってたら マリア この会社の上司に怒られちゃうもんな?俺やっぱ それは嫌だからさ?次からは 俺1人で行くつもりだったんだぜ?」

マリアが驚いて言う

「えっ!?そんなっ!?」

レイが言う

「大丈夫だって!俺は強いし!マリアが居なくても 頑張れるよ?マリアがこっちの会社に居ても きっと俺の事を 応援してくれてるって 分かってるからさ!」

マリアが呆気にとられて思う

(応援してくれてるって 分かってるから…?)

マリアが微笑して言う

「そっか… そう言う事なんですね?」

レイが言う

「ん?」

マリアが微笑して言う

「ウィザード様、大灯魔台の灯魔儀式の時… 奉者も一緒に控え出口まで同行するって 私、それがどう言う意味か 分からなかったんですけど …ウィザード様は 言ったじゃないですか?”奉者の力も大切だからな”って それは 応援が必要だ って事だったんですね?」

レイが言う

「ああ!特に 大灯魔台では 最初の起動だけでも 5回はやらなきゃいけないからさ!もし本番が1発で灯るとしても 連続で6回も灯魔作業をやるって言うのは 俺であっても 一応キツイからな!」

マリアが苦笑して言う

「そうだったんですね… 知らなかったとは言え 私 ずっと応援していましたよ?」

レイが言う

「うん!分かってるよ マリア!それに マリアが傍にいて 見ていてくれれば それだけで 十分だよ!」

マリアがハッとして思う

(それじゃ やっぱり…)

マリアが思い出す


マキが視線を落として言う

『私は… 見ていられなかった…』

マキが苦笑して言う

『彼は最後まで 諦めなくて 最後の最後に やっと…』


マリアが思う

(マキは そう言っていたけど ”マキのウィザード様”は マキが居て 見て居てくれたからこそ 最後には灯魔を成功させられたんだ)

マリアが思い出す


マキが涙ぐんで言う

『奉者って 苦しいね… マリア… それに 私… ”何度も止めよう” だなんて… 彼の力を 信じ切れてないよね… 駄目だよね?私 もっと強くならなきゃ…』


マリアが思う

(そっか… 駄目なんかじゃない マキは十分分かってるだ だからこそ もっと強くなろうって…)

マリアが苦笑して言う

「マキは 凄いなぁ…」

レイが言う

「ん?どうしたんだ?マリア?」

マリアが言う

「あっ いえっ」

北風が吹き抜ける マリアが思わず服を押さえて言う

「わっ 寒い…」

レイが言う

「じゃ、とりあえず マリアの家まで飛ぼうか?」

マリアが言う

「え?あ、は はいっ」

マリアが返事をするまでも無く レイがマリアを包んで 二人が浮き上がると風に消える


自宅 前


レイとマリアが到着すると レイがマリアに抱き付いて言う

「マリアー?」

マリアが言う

「あ、有難う御座います… あっ お、送ってくれた事に対してですよっ!?」

マリアが慌てる レイが疑問しつつ微笑して言う

「うん!どう致しまして!」

マリアが言う

「…あ、それから」

レイが言う

「ん?なんだ?マリア?」

マリアが言う

「わ、私… その 結果として 間違いで あんな事になってしまいましたが… もし 大灯魔台の灯魔儀式を続けていたら 私っ 絶対に ウィザード様に同行してましたよっ?1人で向かわせたりなんて しませんでしたからっ!」

レイが呆気に取られる マリアがハッとして思う

(あっ で、でもそれはっ 別に 変な意味ではなくてっ!奉者としての仕事としてっ!?いや でもっ …それだけでもなくてっ!?え、えーとっ えーとっ!?)

マリアが慌てていると レイが喜んでぎゅーと抱き締めて言う

「わーいっ!嬉しいなー マリアー!」

マリアが慌てて思う

(いえっ ですから そうじゃ無くてっ!?)

マリアが言う

「あ、で、ですからっ 奉者として しっかりと 応援もしますしっ!?一緒に行く事も… お、お仕事ですからっ!?」

レイが言う

「分かってるって!マリア!マリアは仕事熱心だから 何とかして 両方の仕事をこなす って意味だろう!?」

マリアが衝撃を受けて慌てて言う

「え?あ!…そ、そうですっ!その通りです!今日丁度 その方法として 前日の今日の内に 書類を上げると言う方法を 編み出した所でっ!」

マリアが思う

(う…っ い、言えない …その方法を編み出したのは ウィザード様の事を考えていて …それで 課長に目を光らされていて 仕事が はかどったお陰 …だなんて)

レイが言う

「そうだったのか!流石マリアだな!」

マリアが思う

(い、言えない…)

レイが言う

「それじゃ… もしかして 明日の午後 少しでも 時間は取られそうか?そんな方法を見つけるなんてさ マリア やっぱ 気になってるんだろう?それなら 大灯魔台の灯魔儀式を 一緒に見に行くか?」

マリアが言う

「えっ!?い、行けるんですかっ!?ウィザード様っ!?」

レイが言う

「当たり前だろう?マリアは休職中とは言え 奉者だし 俺は魔法使いなんだから 大灯魔台の見学スペースには 自由に入れるよ!」

マリアが呆気に取られた後ハッとして思う

(で、でも… ウィザード様にとっては 嫌な思い出の場所なんじゃ…)

マリアが言い辛そうに言う

「で、でも…」

レイが言う

「それに マリアのお母さんも また行くんだから マリア 心配なんだろう?」

マリアがハッとして思う

(そ、そうだった…っ!お母さんも あのウィザードさまも…っ)

レイが言う

「俺も先輩には 前回の借りがあるからさ ちょっと見て置きたいんだよな?」

マリアが言う

「先輩…?もしかして ”お母さんのウィザード様”?」

レイが言う

「そうそう!だって 前回の大灯魔台の灯魔だって あの大先輩が居なかったら 俺1人じゃ 無理だったから」

マリアが言う

「え?でも…?」

マリアが思う

(あのウィザードさまは 7人の内で 1人だけ… 本来なら ウィザード様ではなくて あのウィザードさまが 不認定にされる所だったのに…?)

レイが言う

「最後の灯魔は 殆ど俺と先輩の2人でやったようなもんだよ あの先輩 俺とは違って 風魔法のエキスパートじゃないのに やってくれるよな?流石 ウィザードの大先輩にして マリアの”お母さんのウィザード様”だよ!」

マリアが驚いて言う

「それは…っ どう言う事ですか?2人でやったようなものってっ!?」

レイが離れて浮き上がって言う

「それに そう言う事が分からない 巡礼者の奴らに 不認定票を入れられるって 分かっててもさ 何も言わないのな?あそこまでカッコ良い事されちゃうと 俺だってこのまま黙っては いられないね!」

マリアが呆気にとられて言う

「え?ウィザード様?」

レイが言う

「それじゃ また明日な!迎えに行くよ マリア!お疲れ様!お休み!」

レイが風に消える マリアが言う

「あっ!」

マリアが思う

(ウィザード様が ”お母さんのウィザード様”に借りがあるって?最後の灯魔は2人でやったって どう言う事?)

マリアがレイの消えた場所を見て苦笑して言う

「まぁ… いっか…?明日もまた会えるみたいだし… 一緒に 大灯魔台の灯魔儀式を 見に行くんだ… あっ!そ、それじゃっ!?」

マリアが焦って思う

(明日は その為に頑張ってっ 早く仕事を 終わらせなきゃっ!?)

マリアが言う

「た、大変~!」

マリアが玄関の鍵を開けながら言う

「と、とりあえず 今日は早く寝て 明日は出来るだけ早く起きて 会社に行こう!…うん!」

マリアが玄関ドアを開け後ろを振り返って思う

(明日も 朝 迎えに来てくれるかな…?)

マリアが苦笑して言う

「相変わらず あの風さんは どう吹くのか 分からないから…」

マリアがドアを閉める 北風が過ぎ去る


翌朝


マリアが玄関を出て鍵を閉める マリアが振り返ってキッと正面を向くと レイが言う

「マリアー!」

マリアが思う

(来たっ!!)

レイがマリアに抱き付いて言う

「マリアー!お早うー!本当に 早いなー!流石 マリアだ!」

マリアが言う

「はいっ!ウィザード様っ!私 今日は気合を入れて 頑張りますからっ!」

マリアが気合を入れて言う

「どうか宜しくお願いしますっ!」

レイが言う

「うん!それなら 俺も頑張るよ!マリア!」

レイとマリアが風に消える


大灯魔台神館 館内


アナウンスが言う

『これより 大灯魔台 灯魔儀式を…』


控え出口


アナウンスの続きが聞こえる

『それでは ウィザード様方 灯魔儀式を お願い致します』

ウィザードさまが大灯魔台へ向き歩き出す ソニアが何も言わずに見つめている


会社


マリアがテキパキと真剣に書類を作成している 課長が呆気にとられて言う

「お… おお…っ さ、流石マリア君だ… まるで以前の… いや、それ以上と言うべきか…?」


大灯魔台 灯魔口


ウィザードさまが灯魔口を見る ウィザード2がやってきて言う

「…どうする?やっぱり 全ての属性を灯してみるか?」

ウィザード3がやってきて言う

「でもな?あのエキスパートが居ないんだぜ?俺たちの総魔力じゃ 全て灯した所で 本番で試せるのは1属性ぐらいじゃないか?」

ウィザード4が来て言う

「本番で1属性が灯らなかった程度じゃ 儀式の中止を申請する事は出来ないぞ?」

ウィザード5が言う

「火と水なら 2つ位出来るんじゃないか?」

ウィザード6が言う

「それなら 悪いが 2つ目の時は… また先輩に頼っても良いか?」

ウィザードたちがウィザードさまを見る ウィザード7がやって来て言う

「おい なに話なんかしてるんだ?さっさと始めないと 俺まで おかしな目で見られるじゃないか」

ウィザードさまが言う

「…基本魔法の 火で行こう」

ウィザード2が言う

「え?」

ウィザード3が言う

「そうだよな やっぱり 火に賭けるか」

ウィザードさまがウィザードたちを見て言う

「火の一属性で行うならば このメンバーであっても7回は行けるだろう この大灯魔台の属性が火であれば それに越した事は無いが 他であったら7灯目を行って中止だ」

ウィザード2~6が軽く息を吐く ウィザード7が言う

「何言ってるんだよ?その先輩とやらも 過去の失敗の時だって8回まで成功させたんだ だったら8灯目まではやらないと 全員にマイナス付くぜ?」

ウィザード6が言う

「火の一属性であっても 7回もやれば お前 立って居られないだろうな?」

ウィザード5が苦笑して言う

「だよな?何にも知らない奴ほど 言うんだよ 口だけ」

ウィザード4が言う

「新入りの7番なんだから もっと謙虚にしろよな?お前こそ まずは お前の先輩である 俺たちを見習えって言うの」

ウィザード2と3が笑う ウィザード7が不満そうに言う

「ケ…ッ 偉そうに 俺は今回は7番だけど 魔力の強さで言えば もっと上だ 灯魔儀式の遅れだけなんだから 甘く見るなよ」

ウィザード7が立ち去る ウィザード3が言う

「先輩 甘く見られてますよ?結界魔法解除して ホンキ見せてやったらどうです?」

ウィザード4が言う

「それか とりあえず もう少し明るい色で来るとか?」

ウィザード2が言う

「分かってないな?前回の事が理解出来ない連中の為に 世間体ってやつよ」

ウィザードさま苦笑して言う

「…歳だからだよ」

ウィザードたちが苦笑してから 各自灯魔場所へ向かう


会社


マリアがエンターを押して言う

「よしっ!」

マリアが課長の前に書類の山を置いて言う

「課長っ!」

課長が衝撃を受け言う

「は、はいっ!?」

マリアが言う

「申し訳ありませんがっ!この後午後の小1時間 休憩を頂きますっ!」

課長が言う

「…う、うむっ 行って来たまえ!」

マリアが言う

「はいっ!」


大灯魔台


ウィザードさまが杖を振るう 続いて ウィザード3、2,4,5,7、6が杖を振るうと 火の魔法が灯魔口に叩き込まれる 補助灯魔台に4つ目の火が灯る ウィザードさまが杖を構える ウィザード2,3,4,5,6が構える ウィザード7が言う

「クッ…」

ウィザード7が杖を構える ウィザードさまが魔力を終結し炎を集める ソニアが見つめている


会社 外


マリアが自動ドアを出て 顔を向けると気付き 走って向かいながら言う

「ウィザード様っ!お待たせしましたっ!」

レイが言う

「うん!待ってたよ!マリア!」

マリアが言う

「有難う御座います!」

レイが言う

「礼には及ばない!」

レイがマリアを包むと共に2人が風に消える


大灯魔台


ウィザードさまが杖を構える 続いてウィザード2、3、4、5、6が構える ウィザード7が息を切らせつつ構えて言う

「くそ…っ なんたって… 急ぎ過ぎなんだよっ!」

ウィザードさまが目を細め周囲に魔力を終結させる


大灯魔台神館 外


レイとマリアが現れ レイが言う

「さあ 到着!急いで行こう マリア!きっと フルスピードで進めている筈だ!」

マリアが灯魔台神館を見てから ぐっと息を飲んで言う

「…は、はいっ!」

レイがマリアの手を引いて走る マリアが一瞬驚いた後 追って走る


大灯魔台


補助灯魔台には5つの火が灯っている ウィザードさまが杖を振るう 続いて ウィザード3、2,4,5、6、7が杖を振るうと 火の魔法が灯魔口に叩き込まれる 灯魔口に変化は無い ウィザードさまが思う

(灯らないか… 後一回 ともすれば もし あの大灯魔台の属性が 火に近い物であれば 8回の灯魔であっても 灯る筈だが…)

ウィザードさまがウィザード5と6 続いて周囲のウィザードを見る 皆が息を切らしている ウィザードさまが軽く息を吐いて思う

(やはり ウィザードの質は落ちた… 10年前の私を含めた6人であれば 8回の灯魔は可能だったが… 1人増やした所で)

ウィザードさまがウィザード7を見て目を細める ウィザードさまの視線の先 ウィザード7が杖で身を支えて息を切らしている ウィザード2がウィザードさまを見る 続いてウィザード3と4がウィザードさまを見る ウィザード5と6がウィザードさまを見る ウィザードさまが杖を構える ウィザード2~6が杖を構える ウィザード7が顔を向ける ウィザードさまが思う

(ここまでなら 6人であっも十分だったな…)

ウィザードさまが苦笑し 魔力を集めようとして衝撃を受ける ウィザードたちが続いて気付き ウィザードたちが顔を向ける マリアが衝撃を受け言う

「えっ!?…あっ」

マリアが横を見る マリアの横にレイが居る マリアが驚いて一度ウィザードたちを見てから 再びレイを見て思う

(…あの時と同じだ この場所に来たと言うだけで ウィザード様たちの視線が同時に ”私のウィザード様”へ向く …でも、今回は どう言う事?あのウィザード様だけは 視線を向けなかった)

マリアがウィザード7を見る ウィザード7が杖を構える ウィザードさまが気を取り直し魔力を集める 他のウィザードたちも同じくする マリアが言う

「もしかして…」

マリアがレイを見て思う

(魔力って 人それぞれの個性があるのかな?…それで 以前お会いした あのウィザード様たちは それに気付いて ウィザード様を見たのかも?)

マリアがウィザードたちへ視線を戻す レイが大灯魔台を見つめている


ウィザードさまが杖を振るう 続いて ウィザード3、2,4,5、6、7が杖を振るうと 火の魔法が灯魔口に叩き込まれる 灯魔口に変化は無い ウィザードさまが構えを解除してウィザードたちを見る ウィザード2と3が顔を見合わせ ウィザード5と6が顔を見合わせてから肩の力を抜き ウィザード7を見る ウィザード7が荒い息をしながら思う

(こ、これで終わりか… 助かった …くそっ 俺の精神力が低いと分かって わざと作業を急がせたのかっ ムカツク大先輩だぜ… けど)

ウィザード7が ウィザードさまを見て 悪笑んで思う

(過去の灯魔儀式失敗に続き 前回でも無様な姿を見せた あのウィザードの評価は最低だ ここでマイナスが付くなら 次に会う事は無いかもな?)

ウィザード7が密かに笑う

「クックック…」


マリアが疑問して言う

「どうしたんでしょう?…休憩かな?」

マリアが思う

(折角来た所なのに… まぁ しょうがないよね?時間… 間に合うかな…?)

マリアが軽く溜息を付く

「はぁ…」

レイが言う

「マリア」

マリアが一瞬驚いた後レイへ向く レイが微笑して言う

「ちょっとゴメン 一人にさせちゃうけど 待っててな?」

マリアが呆気にとられて言う

「え?あ、はい」

レイが風に消える マリアが呆気に取られた後疑問して言う

「ウィザード様… 何処へ行ったんだろう?」

マリアがウィザードたちへ視線を戻して思う

(あのウィザード様が 一緒に居る私を置いて行くなんて… 何だか変な感じ?)


レイが控え出口のソニアの後方に現れソニアを見る ソニアはウィザードさまを見つめている レイがソニアの後姿を見た後 控え出口の番号を確認し微笑してから 視線をウィザードさまの背へ向け その先へ移す レイの視線の先 ウィザード7が閃いて思う

(…そうだっ!ここで俺が杖を構えれば 俺は続けるつもりだったのに 先輩たちが先にドロップアウトしたって …俺にはプラス評価になるんじゃないか?)

ウィザード7が密かに口角を上げ杖を構える ウィザードさまに続きウィザードたちが気付いて横目に見る ウィザード7が思う

(さぁ どうする?先輩方?)

ウィザード7が密かに笑う

「クックッ…」

ウィザード7が一瞬表情を顰めて思う

(…っ やっぱ 構えているだけでもキツイな… 早く… 終わりに…)

ウィザード7が杖を見ると杖が強く光る ウィザード7が驚いて思う

(…え?)

ウィザードたちが一瞬驚いた後苦笑して ウィザード3が言う

「威勢だけは 一丁前だな?」

ウィザード2が言う

「まったくだ」

ウィザードさまが言う

「…いや 違う あれは…」

ウィザードさまの記憶に 10年前の 自分の杖が同じく光っている光景が思い出される ウィザードたちが疑問してウィザードさまを見る ウィザードさまが一度マリアの横を見てから 苦笑して言う

「…よし 8灯目を行おう」

ウィザード2が言う

「え?本気か?」

ウィザードさまが杖を構える ウィザードたちが驚き視線を合わせつつ杖を構える ウィザードさまが魔力を集める ウィザードたちが困惑しつつ同じくする ウィザード7が自分の杖の周囲に集まる魔力に呆気に取られて言う

「な… なんだ?どうなってる?俺の杖が勝手に!?」

ウィザードさまの周囲に炎が集まる ウィザード7の杖に炎が集まる ウィザード7が怯えて後づ去る ウィザードたちが表情を険しくしながらも炎を集める 大灯魔台の上部に炎が集まり やがて怒りを持って7つに分かれてウィザードたちに襲い掛かって来る ウィザードたちが気合を入れて抑えの体制に入るが 押さえた炎の威力の低さに呆気にとられつつ 杖を振り上げ ウィザード2~6が炎を灯魔口へ弾く ウィザードたちがウィザードさまへ向く ウィザードさまが強い炎の魔法を受け止めている ウィザード3が言う

「まさか!対極の水魔法をっ!?」

ウィザード2が言う

「1人で押さえるつもりか!?いくら火でも それは無理だ!」

ウィザード2がハッとしてウィザード7へ向く ウィザード7の杖が炎を抑えている ウィザード6が言う

「こちらも威力が強い… 2つに分かれた?前回の様に!?」

ウィザードさまが杖を振り上げ 炎が灯魔口へ叩き込まれる 火の粉が飛び散り ウィザードたちが咄嗟に火の粉から身を守る ウィザードさまがウィザード7を見る ウィザード7の杖が炎を抑えているが ウィザード7は呆気に取られている ウィザードさまが目を細めるとウィザードさまの後ろから一筋の風が吹き込み ウィザード7の杖を弾く ウィザードさまが驚くと ウィザード7の杖に弾かれた炎がウィザードさまへ向かって来る ウィザードさまが一瞬驚いた後 ハッとして自分の後ろに居る ソニアを気にして杖を構える 炎がウィザードさまの杖に抑えられ ウィザードさまが一度堪えてから杖を振り上げると炎が弾かれ 灯魔口へ叩き込まれる 一瞬の静寂の後 灯魔口に炎が灯る ウィザードたちが驚き マリアが呆気にとられて言う

「と、灯った… 成功だわっ!」

ソニアがホッと肩の力を抜く 会場に居た巡礼者たちが力を抜いてから 気を取り直し祈りを捧げる ウィザード2が苦笑して言う

「流石 先輩…」

ウィザード3が言う

「なんだよ 結界魔法なんて 最初から使わないで ヤバイ時は 自分で守れって事じゃないか?」

ウィザード2が言う

「本人も 今、それを知っただろうな?」

ウィザード3が失笑を隠す ウィザードさまが灯魔口を見上げ一度目を閉じて息を吐いてから振り返る ソニアがホッとして微笑する ウィザードさまがソニアを見てから視線を その後ろへ向ける ソニアがそれに気付き 疑問して振り返り 驚いて言う

「あ、貴方はっ!」

レイがウィザードさまへ向けていた視線をソニアへ向けると 人差し指を顔の前に立て言う

「しー…」

ソニアが呆気に取られた後ハッとして言う

「まさかっ!?」

レイが僅かに微笑してウィンクしてから杖を一振りして風に消える ソニアが驚くと ウィザードさまが戻って来る ソニアがウィザードさまへ向く ウィザードさまがレイの消えた先を見てから苦笑する


レイがマリアの横に現れる マリアがハッとしてレイを見て喜んで言う

「ウィザード様っ!灯魔儀式が!成功しましたよっ!!」

レイが言う

「うん!流石 マリアの”お母さんのウィザード様”だな!向かって来た炎が マリアのお母さんに当らないようにってさ?やっと ホンキを出したみたいだぜ?」

マリアが驚いてから苦笑して言う

「え?あ… そうだったんですか… それじゃ、もしかしたら 前回 お母さんが あのウィザードさまを庇いに行ったのも お母さんが ウィザードさまのその本気と言うのを知っていたから… だったのかも…?」

マリアが思う

(やっぱり お母さんは ”お母さんのウィザード様”を 本当に信じているんだ… 自分の身を呈しても 大丈夫だって…)

マリアが微笑した後 ふと気付いて言う

「…って ウィザード様?一体何処で 何をしていたんですか?一番大切な時に… もし 灯魔儀式が失敗して 魔力が暴走してしまったら 私っ!」

マリアがハッと気付いて思う

(あ… でも あの約束は ウィザード様がウィザードであった時の… って 事になっちゃうのかな?それじゃ… もう…)

レイが言う

「大丈夫だって!マリア!灯魔儀式は失敗しないよ!」

マリアが一瞬疑問した後 気を取り直して言う

「し、しかし それはっ!あくまで ウィザード様が儀式に 参加している時の話でっ!今回みたいに…」

アナウンスが入る

『大灯魔台 灯魔儀式は 無事成功致しました 続いて この度の灯魔儀式を用いまして ウィザード様の不認定投票を行います』

マリアがハッとして大灯魔台へ視線を向ける アナウンスが流れる

『それでは 投票に先立ちまして 各ウィザード様へお仕えする 奉者様のお名前を発表させて頂きます 大灯魔台へ向かい 右手前より レミィ・クレシア奉者様 その後方 アリル・レイン奉者様…』

マリアが顔を向ける 奉者3と奉者2が控え出口の外に立ち 名を呼ばれると礼をする アナウンスが言う

『その後方 ソニア・ノーチス奉者様』

ソニアがキリッと人々へ向いてから静かに礼をする マリアが見つめていると 顔を上げたソニアが会場内を見て マリアに気付き視線を合わせる マリアがハッとすると ソニアがレイを見てから再びマリアへ視線を戻し静かに頷く マリアがレイを見て言う

「え… ウィザード様…?」

マリアがハッとして言う

「も、もしかして!?あの最後の灯魔!…よく考えたら あの灯魔は 前回の時と同じ感じでした!しかも その瞬間に ウィザード様が ここに居なかったってっ!?」

レイが反応し苦笑して言う

「あれ?バレちゃったか?何だ先輩みたいに カッコ良くキメるつもりだったのに… やっぱ魔力で勝っても 年の功には 敵わないのかなぁ?」

マリアが衝撃を受け慌てて言う

「なっ 何言ってるんですかっ!?そんな事よりっ!」

レイが言う

「ああ!そんな事より!」

マリアが呆気に取られて言う

「…え?」

レイが言う

「そろそろ戻んないと マリア 怒られちゃうか?」

マリアが衝撃を受けて言う

「あっ!そっ そうでしたっ!!」

レイがマリアの手を掴んで言う

「よし!行こう!マリア!」

マリアが慌てて言う

「はいっ!」

レイとマリアが走って行く ソニアがそれを見て苦笑して控え出口へ戻って行く


会社


マリアが席に座って息を吐いて言う

「ふぅ…」

マリアが思い出す


会社の前


レイとマリアが現れレイが言う

『はい 到着!マリア 時間は間に合いそうか?』

マリアが時計を確認してから言う

『はい 大丈夫です!ウィザード様 有難う御座いました!』

レイが微笑して言う

『礼には及ばないよ!それじゃ またな!マリア!』

マリアが微笑して言う

『はい!』

マリアが会社へ向かいふと振り返るとレイが居なくなっている マリアが苦笑し会社へ入る


マリアが思う

(時間に追われていたせいで なんだか バタバタしている内に終わってしまったけど 大灯魔台の灯魔儀式は無事成功したし… あの様子なら ”お母さんのウィザード様”は不認定になんて ならないだろうし…)

マリアが書類を探りながら思う

(他のウィザード様には申し訳ないけど ちょっと安心… でも 一応)

マリアが書類を用意しながら思う

(家に帰ったら お母さんに確認しておこうかな?)

マリアが作業の手を止めて言う

「あ、そう言えば…」

マリアが思う

(今日はお昼休みも返上で 仕事に追われていたから いつもの中央公園でマキに会えなかったけど… マキ… 大丈夫かな…)

マリアが考えながら思う

(”私のウィザード様”は それこそ 魔法使いになっても 大灯魔台の灯魔儀式をこなしちゃうような人だから 私には マキの苦労が分からない… もしかしたら お母さんなら分かるかな…?あ、でも 待って?ウィザード様だって 元から凄かったって事はないよね?そうそう あの初めての灯魔台の灯魔儀式の時だって…)

課長が叫ぶ

「マリア君っ!」

マリアが衝撃を受け慌てて言う

「は、はいっ 課長っ!」

課長がマリアに目を光らせる マリアが冷や汗を掻き 作業をしながら思う

(い、今は しっかり 仕事をしよう… 課長の目が…)

マリアが困る


退社時


マリアが会社を出て来て言う

「はぁ~ 何とか終わった すっかり 課長の目が 厳しくなってきたなぁ…」

マリアが思う

(まぁ… 自業自得だけど…)

レイが言う

「マリアー!」

マリアが横を向くとレイが到着し言う

「マリア お疲れ様!今日は大変だっただろう!?」

マリアが苦笑して言う

「お疲れ様です ウィザード様 …私より ウィザード様の方が 大変だったんじゃないですか?あっちこっちへ 飛び回って?」

レイが言う

「大丈夫だよ マリア!俺は風の魔法使いだもん!移動は魔法一筋で通してるから!空腹で死ぬ寸前でも 飛べるんだぜ!」

マリアが衝撃を受けて思う

(う… その節は 大変失礼致しました…)

レイが言う

「って事で マリア!?何処かに用があるなら 連れて行ってやるし 無いなら家に帰ろう!」

マリアが反応して言う

「あ…」

マリアが思う

(何処かに行きたいと言えば マキの事が気になるから あのお部屋に行ってみたいけど… …流石にそれは)

レイが疑問して言う

「ん?どうした?何処か行きたい所があるのか?マリア?」

マリアが言う

「い… いいえ ありません!家に帰るつもりです」

レイが言う

「そうか!それじゃ 帰るぞ!マリア!」

レイがマリアを包む マリアが思う

(マキだって困るだろうし 一応奉者だからって 簡単に訪ねて良い場所じゃないよね?)

レイとマリアが風に消える


自宅 前


レイとマリアが現れると レイが言う

「マリアー!」

レイがマリアに抱き付く マリアが苦笑して思う

(きっと ウィザード様にとっては これが目的なんだろうなぁ… だから 私の移動のお世話をしてくれて… って そうじゃ無くて 一応 聞いておこうと思ったんだった!)

マリアが言う

「あ、あの ウィザード様 ちょっと お伺いしたい事が」

レイが言う

「なんだ?マリア?何でも訊いてくれ!」

マリアが苦笑して言う

「あ… 実は 私の友人が 奉者になったのですが」

レイが言う

「そうなのか!マリアの周りは 奉者が一杯だな?」

マリアが思う

(あ… 言われてみればそうかも… …て、そうじゃなくて)

マリアが言う

「は、はい… それでですね?それで、彼女のウィザード様が 先日初めての灯魔台の 灯魔儀式を行ったそうなんですが…」

レイが言う

「ああ!懐かしいな!俺とマリアも そんな頃が有ったよな!」

マリアが反応して言う

「あ!そうです!その時!」

レイが言う

「うんうん!マリアは 緊張してたみたいだったな!でも心配ないぜ!俺は最強のウィザードだったから!」

マリアが衝撃を受けつつ言う

「そ、そうですね!お陰様で 私は灯魔台の灯魔儀式が 実は結構大変な事だと言う事を 知らなかったのですが!?」

レイが言う

「そうか!まぁ 俺にとっては 大した事無いよ!実力の5割も出せば十分釣りが来る!」

マリアが言う

「そ、そうみたいですね …って そうではなくて!」

レイが言う

「うん!”そうではなくて”?」

マリアが言う

「あの時 私は緊張していましたが ウィザード様も 少しは緊張していらっしゃいましたよね?」

レイが言う

「え?俺が緊張してた?そんな訳無いだろう?確かに一番丁寧にやった灯魔儀式だったけど 全然緊張なんか してなかったよ?」

マリアが言う

「…え?そうですか?でも…」

マリアが思う

(間違いなく あの時は いつもと違ったのに… 帰って来てからは いつもの マリアー!だったけど…)

レイが言う

「あ!でも そう言えば あの時 俺は あの部屋のドアを出る前から ウィザードらしくしてたんだよな?」

マリアが言う

「そうですよね!やっぱり 最初の灯魔儀式は緊張しますよね?それで 私の友人のウィザード様は とても苦労されたそうなんですが」

マリアが微笑して思う

(ほらね?やっぱり いくらウィザード様でも!あの日は ウィザード様だって あのお部屋のドアを出る前から 神聖なるウィザード様だった!私の記憶に間違いは無いわ!)

レイが言う

「ああ 俺も あの灯魔儀式の時は 苦労はしなかったけど それ以上に 色々考えててさ?そう言う意味では 精神的に安定していなくて 大変だったな」

マリアが疑問して言う

「精神的に安定しない程… と言う事は?」

マリアが思う

(このウィザード様が 一体どれ程の事を考えて?)

レイが言う

「ああ!やっぱ あの部屋の中では 堅苦しくしないで行くべきだってさ!」

マリアが衝撃を受け言う

「は?」

レイが言う

「だってさ?部屋のドアの外や エレベータの中にまで 監視やら防犯やらのカメラが付いてるんだぜ?何処だったら マリアと仲良くしていられるかなーってさ?俺は 最初の灯魔儀式の時は それを一生懸命に考えていたよ!」

マリアが衝撃を受けて言う

「なぁあっ!?」

レイが言う

「それで!儀式が終わる頃には 結論が出てさ!マリアの為に 外ではウィザードらしく!部屋の中では 仲良くしようって!」

マリアが思う

(マキや”マキのウィザード様”が 必死に灯魔儀式を終えたと言う 最初の灯魔儀式の最中 ウィザード様が考えていた事は そんな事だったなんて…っ!?)

レイがマリアを抱き締めて言う

「けどさー!結局 ウィザードじゃない 今の方が 何処でもマリアと仲良く出来て 俺 凄く嬉しいよ!今となっては やっぱり マリアが間違えてでも 俺に認定票を入れなった事は 正しかったな!」

マリアが衝撃を受け レイを剥がしながら言う

「な!何言ってるんですかっ!ウィザード様っ!?」

レイがマリアから離れて言う

「って事で!俺 帰るな!マリア!」

マリアが一瞬驚いて言う

「え?」

レイが言う

「マリア!今日も お疲れ様!お休み!」

マリアが慌てて言う

「あ、は、はいっ!お疲れ様で… あっ!今日は本当に 有難う御座いましたっ!」

レイが言う

「礼には及ばないよ!またな!マリア!」

レイが風に消える マリアが呆気に取られた後 レイの消えた場所を見て言う

「大灯魔台の灯魔儀式を こっそりお手伝いしたりして… ちょっと見直したと思ったのに」

マリアが思う

(相変わらず あの人は…)

マリアが溜息を吐く

「はぁ…」

北風が吹き抜ける マリアが身を震わせて言う

「わ、さ、寒い 早く中に入ろう」

マリアが玄関ドアの鍵を開けながら言う

「あ、そう言えば お母さん帰って来てるかな?」

マリアが玄関ドアを開け言う

「ただいまー?」


翌朝


マリアが玄関を出てあくびをしながら言う

「はわ… 眠い… 昨日はお母さん 帰りが遅くて… 気になって起きてたら 遅くなっちゃった でも…」

マリアが微笑して思う

(やっぱり ”お母さんのウィザード様”は 不認定じゃなかった… それ所か)

マリアが苦笑して言う

「史上初の 不認定票0票って… きっと 町の管轄にある灯魔台の灯魔儀式も 完璧なんだろうなぁ…」

マリアが思う

(流石 お母さんと”お母さんのウィザード様”)

マリアが微笑する レイが言う

「マリアー!」

マリアが一瞬呆気に取られると レイが抱き付いて来て言う

「お早う!マリア!今日は少し暖かいな!」

マリアが苦笑して言う

「え?あ… そう言えばそうですね… ちょっと寝不足気味なせいで ボーっとしちゃってました」

レイが言う

「そうか!マリアは いつも 忙しいからな!」

マリアが苦笑して言う

「ウィザード様は 今日もお元気そうですね …あ、そう言えば ウィザード様」

レイが言う

「ん?何だ?マリア?」

マリアが微笑して言う

「”お母さんのウィザード様”… ウィザード様の”先輩”は 不認定では無かったですよ?ご存知でしたか?」

レイが一瞬呆気に取られた後 笑って言う

「あっはははっ 何だ 先輩 今回も 引退 逃しちゃったか!?」

マリアが呆気にとられて言う

「え?引退?」

レイが言う

「まぁ 当然だよな?昨日は 結局 先輩1人で 合計9回の灯魔を成功させたんだから!誰も不認定票なんか 入れられないよな!」

マリアが一瞬呆気に取られた後 驚いて言う

「きゅ、9回も!?」

マリアがハッとして思う

(あ… でも よく考えたら その前の灯魔儀式の時は…)

マリアが言う

「でも、その前の時は ウィザード様も1人だけ 合計9回の灯魔をやったんですよね?」

マリアが思う

(それなのに 私が…)

レイが言う

「ああ、回数で言うなら確かにそうだけどさ?俺の時は 殆どの威力は 先に先輩が抑えておいてくれたから 俺は最後にちょっと手を貸した位だよ」

マリアが言う

「あ… そうだったんですか」

レイが言う

「うん!俺思うけど 魔力で言うなら俺がNo1で 精神力で言うなら先輩がNo1かな?…そう言えば マリアは知ってるか?マリアのお母さんは あの灯魔儀式の時 1番の控え出口で 見守ってたんだぜ?」

マリアが驚いて言う

「え?それって…っ」

マリアが思う

(私とウィザード様の時も 1番の控え出口 1番の控え室だった… つまり!)

レイが言う

「先輩 相変わらず あの法衣の色だから マリア分からないと思ってさ?それとも お母さんに聞いてたか?」

マリアが言う

「い、いえっ 知りませんでした」

レイが言う

「そうか!なら一応伝えておいて正解だったな!これで安心だろう マリア?今更かもしれないけど あの7人のウィザードの中じゃ マリアの”お母さんのウィザード様”が ダントツで最強のウィザードだよ!」

マリアが一瞬驚いてから微笑する レイが微笑する


会社


マリアが書類を作りつつ思い出す


レイが言う

『そうか!なら一応伝えておいて正解だったな!これで安心だろう?マリア!今更かもしれないけど あの7人のウィザードの中じゃ マリアの”お母さんのウィザード様”が ダントツで最強のウィザードだよ!』


マリアが思う

(”お母さんのウィザードさま” …やっぱり凄いウィザード様だったんだ そうよね?だって あの10年前の大灯魔台でも… あのウィザードさまだけ)

マリアがふと思い出して思う

(あ、でも… お母さんは あのウィザードさまの 苦労や苦しみを知っている様子だった… …私とは違うんだ ”私のウィザード様”は 最初から 最強のウィザードで 私は ウィザード様とは 苦労も苦しみも…)

マリアがハッとして 衝撃を受け思い出して言う

「あ… そう言えば…」

マリアが思う

(別の意味で 苦労とか 苦しみとかあった気が… 何と言っても 私のせいで 危うく ウィザード様を が… が…)

マリアが言う

「餓死 させちゃう所だったし… はぁ…」

課長が後ろに立っていて言う

「マリア君っ!!」

マリアが驚いて思わず立ち上がって言う

「は、はいっ!課長っ!!」

課長が言う

「うんっ エメド商社の専務が 来社されたそうだ しっかり商談を頼むぞ!?くれぐれも 商談の最中にはっ!別の事を考える事は 無いようにっ!!」

マリアが言う

「は、はいっ すみません… それでは 行ってきます…」

マリアが資料を持って表情を困らせつつ立ち去る 課長が溜息を吐いて言う

「はぁ… まったくっ いつも 何考えているのだか …あんな状態で 仕事が出来るのだから 大した物だ…」

課長が立ち去る


中央公園


マリアがやって来て気付き 微笑して呼びながら向かう

「マキー!」

マキが顔を向け微笑して言う

「マリア!」

マリアがマキの隣に座りながら言う

「お疲れ様!」

マキが言う

「お疲れ様!…良かった マリア今日も来ないのかなー?って ちょっと寂しいなって 思っていた所だったんだ」

マリアが言う

「え?あ、ありがとう!それに ごめんね?商談の影響で お昼休憩が少し遅れちゃって …あ それから 昨日は月曜日で…」

マキが言う

「うん、そうだよね?昨日は絶対休暇禁止の月曜日で… リナだけじゃなくて 私まで居なくなっちゃったから マリア1人で大変なんだよね お昼休憩も取れないくらい?ごめんね マリア」

マリアが言う

「あ、ううんっ 違うの!えーと… 相変わらず 月曜日が忙しいのは変わらないけどね?それだけじゃなくて 午後に1時間だけ休憩を取って 大灯魔台の灯魔儀式を見に行っていて」

マキが言う

「え?大灯魔台の灯魔儀式を?…でも、マリアのウィザード様は」

マリアが苦笑して言う

「うん、”私のウィザード様”は 私のせいで 参加資格を失ってしまったけど… 儀式には 私の”お母さんのウィザード様”も参加していて それに… ウィザード様が!」

マリアがハッとして思う

(あ…っ 言わないで置こう… ”私のウィザード様”は 魔法使いの状態でありながら 大灯魔台の灯魔を手伝った だなんて… 今のマキと”マキのウィザード様”には…)

マリアが気を取り直して言う

「…あ、その …やっぱり 参加資格はなくても 見に行くって!そう言うから わ、私も 一緒に連れて行って貰ったの!」

マキが言う

「そうだったんだ… そうだよね?今回の大灯魔台神館は レーツ町だったもんね 1時間の休憩じゃ とても 行って見て来るなんて 出来ないもん それこそ 魔法で行かないと」

マリアが衝撃を受けて言う

「え!?レーツ町だったのっ!?」

マリアが思う

(し、知らなかった…)

マキが言う

「そうだよ 私も 後々の為にも 見て置きたかったんだけど レーツ町には この町から行ったんじゃ 片道だけでも5時間は掛かるから」

マリアが言う

「そ、そうだね… あ!それなら マキも ”マキのウィザード様”に 魔法で連れて行ってもらったら 良かったんじゃない?」

マキが言う

「私のウィザード様は 元々火の魔法使いだったし ウィザードになっても まだ 風を操る事は出来ないって言ってた 移動魔法って 風魔法の上級魔法でしょ?」

マリアが衝撃を受けて思う

(えっ!?そうだったの!?)

マキが言う

「ウィザードでも 風魔法で移動出来る人は かなり上位のウィザード様じゃないかな?多分 法魔帯の色で言っても 真ん中より上とか?私のウィザード様は まだ 黒と言える位 暗い色の法魔帯だし… きっと、まだまだじゃないかな」

マリアが苦笑して言う

「そ、そうなんだ… しょ、しょうがないよね!?まだっ ウィザード様に なったばっかりだもん!?」

マリアが思う

(あ~ 言えない 私のウィザード様は ウィザードになった その時 から 真っ白の法魔帯でした なんて…)

マリアが顔を逸らして思う

(…しかも 法魔帯って言葉すら 私 知らなかったし…)

マキが言う

「そうだよね?だから 灯魔儀式も ギリギリでもしょうがない それが修行なんだ!って 思う様にしてみた!」

マリアが慌てて言う

「そ、そうだよね!うんっ!そうだよ!マキ!」

マキが言う

「うん!あ、そうだ マリア 聞いても良いかな?マリアのウィザード様は 何色の法魔帯を使っているの?」

マリアが衝撃を受けて言う

「えっ!?」

マキが苦笑して言う

「法魔帯の切り替えって 奉者が管理するでしょう?講習では 法魔帯が魔力に耐えられなくなった時って 習うけどさ?具体的に どんな感じなのかなぁって …それって目で見て ハッキリと分かるもの?」

マリアが慌てて言う

「えっ!?えーと!?えーとっ!?」

マリアが思う

(あああっ ど、どうしようっ!?元々 法魔帯って言葉すら知らなかった私にっ!?しかもっ 白色以上のは無いって 確かお母さんが言ってたっ だから どの道私はその管理をしなくて済むし!?)

マリアが顔を逸らして言う

「そもそも 私もウィザード様も 奉者やウィザードじゃないし…」

マリアがハッとして気付いて言う

「あ、あのねっ!?マキ 私 ほら ちょっとの間しか 奉者してなかったから!だから その切り替え時期には 当らなかったんだ!?」

マリアがホッとして思う

(良かったっ!我ながら ナイスフォロー!)

マキが気付いて言う

「あ… そっか… ごめん マリア 失礼な事聞いちゃったね」

マリアが言う

「あ、そんな事無いよ 大丈夫!そ、それに わ… 私は… 今も ”私のウィザード様”と 上手くやっているから!」

マキが言う

「そっか… そうだね うん マリア 今 とっても元気だし マリアの愛しのウィザード様と 上手く行っているんだね?」

マリアが衝撃を受けて言う

「え!?ち、違うよっ!?そんなっ!私はっ!?」

マキが軽く笑って言う

「マリアって やっぱり 相変わらずだよね?ふふ …羨ましいなぁ」

マリアが顔を赤らめつつ言う

「う、羨ましいって!?こ、こっちは 私の間違えで ウィザード様がウィザードじゃ なくなっちゃって!」

マリアが思い出す


レイがマリアを抱き締めて言う

『けどさー!結局 ウィザードじゃない 今の方が 何処でもマリアと仲良く出来て 俺 凄く嬉しいよ!今となっては やっぱり マリアが間違えてでも 俺に認定票入れなった事は 正しかったな!』 

マリアが衝撃を受け レイを剥がしながら言う

『な!何言ってるんですかっ!ウィザード様っ!?』


マリアが呆れて言う

「…そう言えば ウィザード様 本人も 今の方が嬉しいとか… あの間違えは正解だったとか…」

マリアが溜息を吐いて思う

(でも… よく考えたら 私も…)

マリアがハッとして慌てて言う

「ち、違っ!違うんだから!大体 そんなのは駄目よっ!?何言ってるの!?私はっ!?」

マキが考えていて言う

「う~ん…」

マリアがハッとして言う

「マ、マキ…?」

マキがハッとして言う

「あ、ごめん マリア …でも そっか そうだよね?あの会社の仕事みたいに 何でも マリアに頼ってばかりじゃ駄目だよね?もっと 自分で…」

マリアが表情を落とし視線を落としてからハッとして言う

「あ、そうだっ マキ!それじゃ 私 聞いておいてあげるよ!」

マキが言う

「え?」

マリアが言う

「私のお母さんに!だって 私のお母さんは 奉者として 私やマキの 大先輩だよ!?」

マキが気付いて言う

「あっ そっか!…で、でも 良いのかな?マリア?」

マリアが言う

「大丈夫だよ!聞いて置く!私も… ちょっとは気になるから!」


会社


マリアが思う

(…と 思わずマキに あー言っちゃったけど よく考えたら 私 お母さんと奉者の話は 余りした事が無いんだよなぁ)

マリアが書類を手に取って思う

(あ、でも 昨夜は…)

マリアが思い出す


回想


マリアがベッドに入って目を閉じていた状態から目を開いて思う

《だ、駄目… やっぱり 気になって眠れない…っ あの灯魔儀式の様子からして ”お母さんのウィザード様”が 不認定になるなんて事 無いと思うけど… でも 私が見たのは 最後の2回だけだったし もしかしたら それまでの間に 何かあったとか…!?》

マリアが起き上がって時計を見てから言う

『それに いつもならもう 帰っている時間なのに… やっぱり何かあったのかな…?はぁ… 心配』

玄関からソニアの声が聞こえる

『ただいまー』

マリアがハッとして言う

『あっ!お母さんっ!』

マリアがベッドを出る


玄関にソニアが上がる マリアがやって来て言う

『お帰りなさい お母さん』

ソニアが言う

『あら マリア まだ起きてたのね?最近は 早寝の習慣が付いて 奉者らしくなったな~?なんて 思っていたのに』

マリアが苦笑して言う

『で、でも、私は 今は休業中だし』

ソニアが言う

『ああ、そうだったわね でも 魔法使いになった彼とも まだ続いているのでしょう?だったら』

マリアが慌てて言う

『そ、それはっ 別にっ 続いているって言ってもっ お、お友達としてっ!?』

ソニアが軽く笑って言う

『うっふふっ そう… なら そのお友達の魔法使いさんに会ったら 伝えておいて頂戴 お陰様で 良い評価を頂けましたって』

マリアが疑問して言う

『良い評価を?…て、もしかして!?』

ソニアが微笑して言う

『史上初だって 奉者協会の本部でも 話題になっていたわ 不認定票が0票のウィザード様だって』

マリアが喜んで言う

『お母さんのウィザード様が!?』

ソニアが微笑して言う

『ええ!』

マリアが微笑して言う

『良かった…』


回想終了


マリアが思う

(あ… そっか 昨夜みたいな あんな感じで 普通に聞いたら良いかもしれない …よしっ それじゃ 今日家に帰ったら 早速!)

マリアが書類をめくって思う

(お母さんからの伝言は ちゃんと ”私のウィザード様”にお伝えしたんだったし その事を切欠に 話してみよう)

マリアが言う

「うん!」

専務が言う

「はい、如何でしょうか?そちらの条件で」

マリアがハッとして慌てて書類を見ながら言う

「え?え?え!?あっ!えーとぉ…っ」

専務が言う

「午前中の商談を元に 急いで仕上げてきましたので 少々見苦しい表で申し訳ないのですが そちらが 我が社の…」

マリアが慌てて書類を見て言う

「は、は、はいっ!えーと そ、そうですね!」

マリアが思う

(い、いけないっ!今は仕事中だった!…課長にも キツく言われたしっ 今は 奉者やウィザード様の事は すっきり忘れて この仕事に専念しよう!そうよっ!私は今 全力で この仕事をするわっ!)

マリアが書類を見た状態で 頷いてから 気を取り直して顔を正面へ向け衝撃を受けて言う

「―なっ!?」

マリアの視線の先 窓の外にレイが居て 笑顔を向けている マリアが衝撃を受けて思う

(ヴィ、ウィザード様っ!!)

マリアが書類へ視線を戻して思う

(なっ 何で!こんな時にそんな所にっ!?これじゃ また…っ)

マリアがふと思い出して思う

(あっ… もしかして?また 私を心配して…?でも)

マリアが視線を専務へ向けて思う

(この人は別に… あんな心配は要らない商談相手だから …ですから)

マリアが微笑して言う

「大丈夫ですよ」

専務が言う

「え?本当ですか?助かります!」

マリアが衝撃を受けて言う

「へっ!?」

専務が言う

「いやぁ~ 中々そうと言って下さる会社はありませんでして この話は 今まで ずっと流れていた話だったのです!しかし 我が社はこの商品に 全力を投入していましてね?自社の事をこの様に言うのも お恥ずかしい所ですが こちらに関しましては 他社には絶対に引けは取らないと!自信を持っているんです!」

マリアが呆気に取られた後 慌てて言う

「あ、あ~っ そのっ… い、今のは…」

マリアが窓の外を見て驚く レイは居ない 専務が言う

「ええ!今の言葉は しっかりと 証明して見せると!どうか そう 信じて下さい!マリアさん!」

マリアが専務を見た後 微笑して頷いて言う

「は、はい!分かりました!」

マリアが思う

(…正直 全然話を聞いていなかったし この表の数字からしたら 難しいと思うけど… でも、この人は)

マリアが専務を見てから思う

(私、信じられると思う!)

マリアが言う

「上司には 私から説得しておきます どうか 頑張って下さい!宜しくお願いします!」

専務が言う

「はい!こちらこそ 宜しくお願いします!では早速 社へ戻って 手配を行いますので!」

マリアが言う

「はい!」

専務が意気揚々と出て行く マリアが窓の外を見てから 苦笑して言う

「もう… これで失敗しちゃったら ウィザード様のせいですからね?」

マリアが軽く笑ってから応接室を出て行く


課長が叫ぶ

「マリア君!!」

マリアが言う

「はいっ!課長!」

課長が書類をデスクに叩き付けて言う

「この様な数字を見せられて置きながらっ この商談を成立させるとはっ!?一体 何を考えているのかねっ!?」

マリアが衝撃を受けつつ言う

「うっ… し、しかしっ 専務さんは 自信を持っていらっしゃいました!こちらの商品には 全力を投入していると!確かに数字的には厳しい所ですがっ きっと!」

課長が言う

「商談相手の言葉に惑わされて 契約を行うなどっ もっとも 初歩的なミスだろう!?マリア君!また君は 商談中に 別の事を 考えていたのでは ないのかね!?」

マリアが衝撃を受ける


退社時


マリアが会社から出て来て言う

「ふぅ… 課長にはやっぱり 怒られちゃったけど 何とか 商談の破棄は免れたし 後はもう… あの専務さんの言葉に 賭けるしかないなぁ…」

マリアが思う

(この商談が失敗に終わったら… 私 もしかしたらクビかもしれない でも しょうがない もし… クビになったら… なったで 私は…)

レイが言う

「マリアー!」

マリアが思う

(ウィザード様と… って!?)

マリアが慌てて言う

「な、何考えてるんですかっ!?私 ウィザード様と そんな事なんてっ!するつもりはありませんからっ!」

マリアがハッとする レイが疑問して言う

「え?そうなのか?」

マリアが衝撃を受けて言う

「はっ!?ヴィ、ウィザード様っ!?」

レイが言う

「うん!お疲れ様!マリア!」

マリアが言う

「お、お疲れ様です ウィザード様」

マリアが思う

(って… 言っても ウィザード様は ”お疲れ様” なのかしら?…大体 今日だって…)

マリアが言う

「あ、そ、そう言えば ウィザード様 今日…」

レイが言う

「うん、今日は何かあるのか?マリア 明日は休みだろう?それじゃ 今日はこれから… 友人との食事の約束でもあるのか?」

マリアが苦笑して言う

「あ… そう言えば 以前は そんな感じでしたが 2人とも ちょっと 遠くなっちゃって…」

レイが言う

「そうなのか?遠いのなら 俺が連れて行ってやるぞ?」

マリアが苦笑して言う

「いえ、遠いと言っても 物理的な距離ではなくて… まぁ 1人はそうですけど そう言う誘いをする機会が 無くなってしまったと言う 意味で…」

レイが言う

「そうか じゃぁ 今日も この後は 家に帰るのか?」

マリアが言う

「はい そのつもりです」

レイが言う

「なら そっちは 俺と一緒でも良いよな?」

マリアが疑問して言う

「え?あ、はい…?」

レイが言う

「よしっ じゃ 帰るぞ!マリア!」

マリアが言う

「はい…?」

レイがマリアを包み 風に消える


自宅 前


レイとマリアが到着する レイが言う

「はい 到着!マリアー!」

レイがマリアに抱き付く マリアが溜息を吐いてから 思い出して言う

「い、いつも有難う御座います… そう言えば 今日 奉者の友人に聞いたのですが この移動魔法って 風魔法の中でも とっても難しい魔法だそうですね?」

レイが言う

「ん?ああ そうかもな?けど、慣れちゃえばどうって事無いよ!ウィザードなら これ位出来なきゃ カッコ悪いぜ?」

マリアが苦笑して言う

「先日ウィザードになった その友人のウィザード様は まだ風を操る事が出来ないので 移動魔法は出来ないと言っていました …あ、でも ウィザード様は そうなる以前から 風の魔法使いさん だったので 出来たのでしょうか?」

レイが言う

「ああ!そうかもな!俺は元々 ウィザードになるつもりなんて 無かったからさ!便利な風魔法を ただ使ってただけだよ~?」

レイがマリアに甘える マリアがげっそりして思う

(便利だから 使ってただけなんだ… そうなんだ… 確かに便利だけど)

マリアがふと 窓の外に居たレイの事を思い出して言う

「あ、ウィザード様 今日」

レイが言う

「うん?今日が何だ?マリア?」

マリアが言う

「お昼過ぎに 会社の窓の外にいらっしゃいましたよね?」

レイが言う

「そうそう!それこそ 風魔法の移動の途中でさ たまたま 通り掛ったから マリア居るかなーって?」

マリアが苦笑して言う

「もぅ… ビックリしちゃったじゃないですか?お陰で ちょっとリスクのある商談を 成立させちゃいましたよ?」

レイが言う

「ん?そうなのか?大丈夫だよ!マリアが良いと思ったんなら きっと上手く行くって!」

マリアが苦笑して言う

「ビジネスは そんなに簡単なものじゃ ないですけど… 今はもう そうなるようにって 信じて待つだけです」

レイが言う

「うん!ビジネスなんて 俺には分からないけど 何にしたって 相手は同じ人間だろう!?そいつを 信じるかどうかって事じゃないか!」

マリアが驚き呆気に取られる レイが言う

「それに 人間が出来る事なんて 大した事無いよ 何も心配する事 無いって!」

マリアが気付いてから苦笑して言う

「…確かにそうですね」

マリアが思う

(そっか… 私たちにとっては大切な事でも 万物を動かせるほどの ウィザード様たちからしてみれば 本当に大した事じゃないんだろうな …お仕事なんて)

マリアがふと思い出して言う

「あ、そう言えば ウィザード様!?ウィザード様は 今 何か…」

レイが思い出して言う

「あっ そうだった!…それじゃ!」

レイが離れる マリアが疑問して言う

「え?」

レイが言う

「うっかり忘れる所だったよ!ありがとな マリア!助かった!」

マリアが言う

「は?…え?え?」

レイが言う

「お仕事お疲れ様!明日は ゆっくり休んでな!?お休み マリア!」

レイが風に消える マリアが言う

「え!?あっ!ウィザード様っ!?」

マリアが呆気にとられて言う

「きょ… 今日もまた 消えちゃった…」

マリアが疑問して思う

(何か思い出して 急いでいたみたいだけど…)

マリアがふと思い出して言う

「そう言えば…」

マリアが玄関ドアの鍵を開けながら思う

(ウィザード様って いつも 急いで消えてしまう気がする 何でだろう?…もしかして)

マリアが玄関ドアを開けながら言う

「やっぱり お仕事でもしているのかな?」

マリアが思う

(丁度 聞こうと思ったのに… まぁ いっか また明日で…)

マリアがドアを閉めながら言う

「ただいまー」

玄関ドアが閉まる


玄関ドアに鍵を掛けつつマリアが思う

(と言っても 返事は無いよね お母さんは9時頃まで戻らないし 昨日みたいに もっと遅く…)

遠くから ソニアの声がする

「お帰りなさい マリア」

マリアが驚いて言う

「え?お母さん?」

マリアが家に上がりキッチンへ向かいながら思う

(あれ?何でだろう?まだ9時所か 6時過ぎなのに… それに)

マリアがキッチンへ入りながら言う

「良い匂い… もしかして?」

ソニアが料理を作りながら振り返って言う

「ええ トマトの煮込みマリネ 今日は久し振りに マリアの大好物を作ってみようかと思って もうすぐ出来るから」

マリアが言う

「わぁ 久し振り!時間の掛かる料理なのに 今日は随分早かったんだね?お母さん」

ソニアが言う

「あら やっぱり気付いていなかったのね?お母さん今日は1日お休みで 今朝マリアが家を出る時も居たけれど 貴方 行って来ます も言わず出て行っちゃったから お母さんも声を掛けられなくって」

マリアが驚いて言う

「え?あっ そうだったんだ?まさか お母さんが居るとは思わなかったから つい、いつもの調子で出て行っちゃった」

マリアが思う

(それに今日は寝不足だったから ボーっとしちゃってたし…)

ソニアが言う

「そうね いつも お母さん朝早くに出て行ってしまうから しょうがないわね」

マリアが言う

「何だか久し振り お手伝いするね!」

ソニアが言う

「ええ お願い」


マリアが料理をよそりながら言う

「そう言えば お母さんが お休みなんて 久し振りだよね?昨日は…」

ソニアが食事の仕度をしながら言う

「ええ 昨日は大灯魔台の灯魔儀式だったから 今日は1日ゆっくり休むって たまには 君も休みを取れって言われて それで」

マリアが微笑して言う

「”お母さんのウィザード様” 私、少ししかお話しなかったけど とっても ウィザード様らしい方だよね?なんて言うか 本当に見透かされている感じ 雰囲気も 凄く落ち着いているし」

マリアが思う

(でも お陰で 凄く緊張したけど…)

ソニアが苦笑して言う

「そうね 本当に」

マリアが思う

(きっと ”私のウィザード様”とは まったく違うんだろうなぁ… あ、でも)

マリアが言う

「あ、でもね ”私のウィザード様”は ”お母さんのウィザード様”の事 先輩って呼んだりして 何だかとっても仲が良さそうなんだよ?あ、それにね!お母さん知ってた?前回の灯魔儀式の時 あの最後の灯魔は 殆ど ”私のウィザード様” と ”お母さんのウィザード様”の2人だけで やったんだって!」

ソニアが一瞬驚き動作を止める マリアが言う

「それで ”私のウィザード様”は 風の魔法が得意で だから 灯魔を受け止める事が出来たけど ”お母さんのウィザード様”は 大変だったみたい それでも そう言う事を何も言わなかったって 巡礼者の人たちに不認定票を入れられる事に対しても 何も言わない… それが とってもカッコ良いって ”私のウィザード様”ちょっと 焼き餅焼いていたみたいなの!…うふふふっ」

ソニアが苦笑して言う

「…そうだったの」

マリアが料理を運びながら言う

「それに今回も 前回の時は ”私のウィザード様”が 結果として 1人で合計9回の灯魔をしたけど 9灯目の灯魔の威力は ”先輩”が 殆ど押さえてくれてたから 俺はちょっと手を貸しただけだって 今回は 先輩が1人で9回の灯魔をしたって言ってたよ?やっぱり ”お母さんのウィザード様”凄いんだね?不認定票0票だし… あ、でもそれは 奉者のお母さんの お陰でもあるのかなぁ?」

ソニアが微笑して言う

「お母さんは そう言う事は何も知らないし ”お母さんのウィザード様”は”マリアのウィザード様”と違って 何も仰らない方だけど 昨日の灯魔儀式が終わってすぐ 控え出口に戻った時にね?仰っていたわ」

マリアが振り返って言う

「え?何て?」

ソニアが言う

「”また優秀な後輩に助けられた”って?」

マリアが驚く ソニアが微笑して言う

「ホント… あの人は何も仰って下さらないから お母さんは分からない事も多いけれど… でも それで良いの 一緒に居れば …分かるから」

マリアが言葉を失う ソニアが微笑して言う

「さ、食べましょう?マリア」

アリアが微笑して言う

「うん!いただきます!」


翌朝


マリアがベッドから起きて言う

「ふぅ… 久し振りに ゆっくり寝た…って えっ!?」

マリアが時計を見て驚き 苦笑して言う

「もう お昼…っ」

マリアが部屋を出て言う

「でも いっか…?今日は 久し振りの休日だし… あっ」

マリアが思う

(そう言えば お母さんも 今日も休みって言ってた お母さんが2連休なんて… 今まであったかなって位?…そっか それで… それだけずっと一緒にいたから…)

マリアが思い出す


ソニアが微笑して言う

『ホント… あの人は何も仰って下さらないから お母さんは分からない事も多いけれど… でも それで良いの 一緒に居れば …分かるから』


マリアが苦笑して言う

「凄いなぁ… 私とウィザード様じゃ 全然そんな… って!?」

マリアが思う

(違う違う!私は別に!”私のウィザード様”と そんな風になりたいだなんてっ!?大体 あの人 ”お母さんのウィザード様”と違って一杯仰るけど!でも それ以上に 何考えているんだか 分からな…っ!)

マリアが言う

「あ… えっと でも… 相変わらず ”マリアの為に” なのかなぁ?だとしたら 私が…」

マリアが思う

(でも 私は… 私も ちょっとは ウィザード様の事 知りたいかも…?お母さんは ”お母さんのウィザード様”の事 どれ位知っているんだろう?…でも 何も言ってくれないんじゃ 分からないような気もするけど…)

マリアがリビングに入ると ソニアが身支度を整えた状態で振り向いて言う

「あら マリア お早う …と言うには もう お昼ね?」

マリアが苦笑して言う

「う、うん ちょっと 寝過ぎちゃった …あ、お母さん 何処かへ行くの?今日もお休みだって」

ソニアが言う

「ええ 休むようにと言われているけど やっぱりちょっと 様子を見に行こうと思って… 何も無ければ 久し振りに ショッピングにでも 行こうかなってね?」

マリアが言う

「あぁ そうなんだ?お母さん たった2日なのに ウィザードさまの事 気になっちゃうんだね?」

ソニアが苦笑して言う

「そうね 何かご不便は無いかしら?って …外出する予定もないし 特にこれと言って無いでしょうけど」

マリアが言う

「それじゃ ショッピング決定かな?」

ソニアが軽く笑って言う

「ええ きっとね?たまには 良いかもしれないわ」

マリアが言う

「うん!行ってらっしゃい!お母さん!」

ソニアが言う

「はい、行って来ます …あ、マリア 悪いけど 鍵を閉めてもらっても良いかしら?」

マリアが言う

「うん 分かった」

ソニアが玄関のドアを開ける マリアがそれを見つつ ふと思う

(あ… そう言えば… ”私のウィザード様”は 今日は どうしているのかな?)

ソニアがドアを出る マリアが何と無しに見つめながら思う

(いつもなら そのドアを出ると マリアー!って… はっ!?)

マリアが慌ててドアを押さえてソニアへ言う

「お、お母さんっ!気を付けてっ!!」

ソニアがハイヤーへ向かっていた所 一瞬驚いて 振り返って言う

「え?どうしたの?マリア?」

マリアがハッとして 慌てて言う

「あ、いやっ その…っ!」

マリアが思う

(うっ 言えない… ”私のウィザード様”が 間違えて 抱き付いて来るかも!?だなんて…)

マリアがぎこちなく言う

「…えっと その、何か… 当ってくるかも!?そ、その… 突風… とか?」

ソニアが疑問して言う

「え?突風が?」

マリアが周囲を見てからホッとして言う

「あ、ごめん何でもない 突風… で 物が飛んで来たりしたら 危ないかなって…?」

マリアが苦笑して言う思う

(あぁ… 私 何言ってるんだろう?我ながら 意味の分からない事を…)

ソニアが軽く笑って言う

「心配してくれて有難う マリア でも大丈夫よ 同じ家に住んでいたって ”マリアの風の魔法使いさん”が間違えてお母さんの所に 飛んで来たりなんかはしないわ?…うふふっ」

マリアが衝撃を受けて思う

(うっ!?見られてたっ!?)

ソニアが言う

「それじゃ 行って来ます」

マリアが言う

「い、いってらっしゃい…」

ソニアがハイヤーに乗る ハイヤーが発車する マリアが家に戻り溜息を吐いて思う

(とりあえず 着替えよう…)

マリアが部屋に戻る


マリアがリビングにやって来て言う

「う~ん 朝食兼 お昼を食べるまでは 良かったけど… 後は何をしよう?ホントは お掃除でもしようと思ってたけど 流石 お母さん 昨日の内に済ましちゃってたみたい 私がやるより 断然綺麗だし…」

マリアがリビングの床を見て思う

(やっぱり 雑巾掛けしたのかなぁ モップで簡単にすましちゃうより ずっと気持ち良い…)

マリアが苦笑して言う

「家事は負けない つもりだったんだけどなぁ~」

マリアがソファに座り息を吐いてから言う

「う~ん 折角のお休みなのに 困っちゃった 私も ショッピングでも行こうかなぁ?…マキはきっと ”マキのウィザード様”に 掛かり切りだろうし…」

マリアが窓の外を見てから息を吐いて思う

(そう言えば いつも お話しようとすると 消えちゃうから 結局 ウィザード様が 今何処に住んでいるのか 私 知らないのよね…?これじゃ 会いにもいけない… でも?)

マリアが気付いて言う

「今は ウィザード様の方が 私が 家や会社を出ると すぐに飛んで来てくれるから …もしかして?」

マリアが席を立ち 玄関へ向かいながら思う

(もしかして 何処か… 空の上からでも見てるのかな?さっき お母さんを見送った時には 居なかったけど …でも あれは 家を出たのが お母さんだったから?…そう言えば お母さんも よく考えてみたら そんな様な事言ってたし…)

マリアが思い出す


ソニアが軽く笑って言う

『でも大丈夫よ 同じ家に住んでいたって ”マリアの風の魔法使いさん”が間違えてお母さんの所に 飛んで来たりなんかはしないわ?…うふふっ』


マリアが玄関を出て進みながら思う

(あれは いつもの マリアー! を見られたって 訳じゃなくて 別の意味だったりして?)

レイが言う

「マリアー!」

マリアが驚いて言う

「ウィザード様っ!?」

レイがマリアに抱き付いて言う

「お早うー!じゃなくて こんにちは!だな!マリア!」

マリアが言う

「は、はい そうですね こんにちはです ウィザード様」

マリアが思う

(ホントに来たっ!?)

レイが言う

「でも今日は マリアも ゆっくり休めたみたいだな!それなら良かったよ!」

マリアが言う

「は、はい お陰様で… と、それより っ ウィザード様!?今 何処から 飛んで来たんですか!?」

レイが言う

「うん!俺は 今 南の方 から飛んで来たよー マリアー!」

マリアが衝撃を受けて思う

(南の方ってっ!?)

レイがマリアに甘えている マリアが思う

(そんな アバウトじゃ 全然分からないっ!?だから そうではなくて!)

マリアが言う

「そうではなくてですね!?私は ウィザード様が 今 どちらに住んでいらっしゃるのかと!?大体 そんな大まかに飛んで来たりして 間違って 私のお母さんにでも 激突してしまったらどうするんですか!?この家には 私の他にも お母さんが一緒に住んでいるんですから!」

レイが言う

「大丈夫だよ マリア!ちゃんと マリアのお母さんが 家を出て行くまでは 俺は近付かないようにしているから!」

マリアが呆気にとられて言う

「え!?そ、そうなんですか?」

レイが言う

「もちろんだよ マリア!」

マリアが息を吐いて思う

(そうだったんだ… なら 心配は無いのかな?…って 私っ 何の心配をっ!?)

レイがマリアを強く抱き締めて言う

「マリア~ 今日もマリアに会えて 俺すごく嬉しいよ~」

マリアが苦笑して思う

(そ、そうだったっ これを見られてしまうのが…!だって ”お母さんのウィザード様”に比べて ”私のウィザード様”は こんなだからっ だから!…別に それが嫌って訳じゃないんだけど… って はっ!?)

マリアが衝撃を受ける 玄関の前を通行人が通り マリアとレイを見て一瞬驚いた後 失笑を隠しながら言う

「あらあら… うふふっ」

マリアが赤面して レイを剥がしながら言う

「ヴィ、ウィザード様っ ですから 何度も言っていますがっ 外で 抱き付くのは…っ!」

レイが言う

「だって~ ここ以外は みんな”外”だろ~?マリア?」

マリアが言う

「ここだって 外 ですよっ!」

マリアが思う

(しかも 家の前で!それも 玄関の前でってっ!?いかにもっ!?)

マリアが困っていると 更に 若者たちの集団が 玄関前の道へ向かっているのが遠目に見える マリアが衝撃を受け思う

(だ、駄目っ!もう これ以上 人に見られるのは 我慢出来ないっ!そんな目に会う位ならっ もうっ!)

マリアが意を決して言う

「ウィザード様っ!その…っ 一緒にお茶を飲みましょうっ!」

レイが言う

「え?本当か!?マリアっ!?」

マリアがレイを引き剥がして言う

「ええ!ですから どうぞっ!中へっ!」

レイが言う

「そうだな!マリアのお母さんも 出掛けたし それなら この家でも 大丈夫だな!」

マリアが衝撃を受けて思う

(それは どう言う意味ですかっ!?)

レイが言う

「それじゃ お邪魔します するぞ?マリア!」

レイが玄関へ向かう マリアが困惑しつつ言う

「は、はい… ど、どうぞ…」

レイとマリアが玄関の中に入る 玄関前の道を 若者の集団が通り過ぎる


玄関の中 マリアがそれを確認して ホッと胸を撫で下ろす レイが疑問すると マリアがハッとして言う

「あ、そ… それでは リビングの方へ …私は お茶の用意をして来ますから 適当に座っていて下さい」

レイが言う

「うん!分かった!」

マリアがキッチンに入って来て ティーセットを探しながら言う

「えっと… 確か ティーセットがあったはず …あ、あった!」

マリアがティーセットを確認して 続いて棚を探りながら言う

「後は 紅茶がここに…」

マリアが用意しながら思う

(まさか 家でウィザード様と お茶を飲む日が来るだなんて 考えてもいなかった… それに 家にお客さんが来る事もなかったから このティーセットを 使う日が来るなんて事も 考えてなかったのに… でも、あるって事は知っていたから 良かった)

マリアが言う

「所で… さっきの…」

マリアが思い出す


レイが言う

『そうだな!マリアのお母さんも 出掛けたし それなら この家でも 大丈夫だな!』


マリアが思う

(…あれは ど、どう言う 意味だったんだろう…?ウィザード様って いつも言う事が極端だから 私も 変に誤解する事が多くて… 今までは それで失敗しちゃってたし… でも)

マリアがポットの火を止め ティーセットと一緒に運びながら思う

(”何処から来たんですか?”の質問に ”南の方から”って答える人なんだから 私がおかしいんじゃないよね?だから こう言う時は お互い 誤解の無いように…?)

マリアがリビングへ入りながら思う

(面倒でも 細かい所から しっかりと ちゃんと お話をして お互いに 分かり合わないと 駄目なんだよね?うん!)

マリアが言う

「お待たせしました ウィザードさ… ま?」

マリアが思う

(…って 思った 矢先から…)

マリアが疑問して言う

「あの… 何を しているんですか?ウィザード様?」

レイがTVをまじまじと見て言う

「マリア… この黒くてデカイ板は何だ?」

マリアが衝撃を受けて思う

(…え?えっと… もしかして…?)

マリアが苦笑して言う

「て… TVですが?…ごく普通の…」

マリアが思う

(め、面倒でも… 細かい所から しっかりと ちゃんと…)

レイが言う

「じゃぁ TVって何だ?」

マリアが衝撃を受けて思う

(お話を …って やっぱり そこからっ!?)

マリアが言う

「え~っと… あのぉ 多分」

レイが言う

「うん?」

マリアが微笑して言う

「ウィザード様は お気になさらなくて 良いと思います お茶にも 魔法にも関係ないですから」

レイが言う

「そうなのか マリアがそう言うのなら それで良いや!じゃぁ あっちの白い箱は?」

レイがエアコンを指差す マリアが言う

「…そちらも 気にしなくて良いと思いますが …あ、ちなみに ウィザード様は 気温が暑かったり寒かったりした時は どうするんですか?」

レイが言う

「ん?そうだな?暑かったら 水や風の魔法で周りを涼しくすれば良いし 寒かったら火の魔法で 周りを暖めれば 良いんじゃないか?」

マリアが閃いて言う

「あ!では そちらは そう言う事をする… 機械ですよ!」

レイが言う

「へぇ~ そうなのか 魔法が使える機械か」

マリアが苦笑して言う

「ああ… 言われてみれば そんな感じですね!」

マリアが思う

(エアコンの説明は ある意味 魔法に近いから 良かったけど TVの説明は… 無理…)

マリアが気を取り直して言う

「それより ウィザード様 お茶にしましょう!」

レイが言う

「そうだな!」

マリアがソファに腰掛け ポットにお湯を入れながら言う

「ウィザード様も 立っていないで どうぞ座って下さい」

レイが言う

「うん!」

レイが座る マリアが思う

(…で、やっぱり こうなるんですね?)

レイがマリアの横に座っている マリアが視線を逸らして思う

(ソファは4方にあるのに… そこに2人しかいなくても やっぱり…)

レイがマリアに抱き付く マリアが思う

(こうなった…)

レイが言う

「あの部屋は追い出されちゃったけど マリアと一緒に こうして 仲良くお茶を飲めるって 俺 すげぇ嬉しいよ!お茶は飲めても やっぱ店じゃ ”外”だからな!」

レイがポットに魔法を掛ける マリアが他方を見ながら言う

「そうですね…」

マリアが思う

(一応 お店では こうしては来ないから良いけど… 確かに あのお部屋以外ってなったら ここしか…)

マリアが思い出して言う

「あっ!そっ!そうですよ!ウィザード様!?」

レイが疑問して言う

「ん?何だ?マリア?」

マリアが言う

「ウィザード様は 今 どちらに住んでいるんですか?以前 ”お部屋に住んでいる” とは伺いましたが… えっと…」

マリアが思う

(えっと ここで… 住所を聞くなんてしても 良いのかな?私とウィザード様は… 恋… いやっ!お友達っ!…なんだから そ、そうよね?お友達だとしたら!)

マリアが言う

「何処かの近くですか?…って 言っても 南の方とか この町の近くとか そう言う 極端な答えじゃなくてですね?例えば… 中央公園の近くとか?その… も、もし 私がウィザード様のお部屋で また 一緒にお茶を飲もうと思ったら 何処へ行ったら良いか とか そう言う…っ」

マリアがハッとして思う

(え!?あっ 私 つい…っ どうしよう!?そんなつもりじゃないけど でも… もしかしたら また ウィザード様が お部屋で 餓死しかけていたりしたら 私が行って また…)

レイが言う

「えーっと… そうだなぁ?何か近くにあったかなぁ?あの近くは そんなに目印になるようなものはなくって… 俺も慣れてるから 感で飛んじゃうからなぁ?」

マリアが衝撃を受けて言う

「か、感で!?」

マリアが思う

(あ… でも 私も 家に帰る時は そんなに意識しないで 帰路に着いちゃうかも… って そう言う感覚なの?)

レイが言う

「あ、それに」

マリアが疑問する レイが紅茶の様子に気付き お茶をカップに注ぎながら言う

「マリアと仲良くお茶が飲めるのはさ?もう ここしかないんだよ」

マリアが疑問して思う

(え?それはどう言う意味?)

レイがマリアに顔を寄せて言う

「だから マリア ここに マリアのお母さんが居ない時に また俺を誘って欲しいんだ …な?良いだろう?マリア?」

マリアが思う

(お母さんが居ない時に 俺を誘ってって!?そ、それは どう言うっ!?…ううんっ 駄目よっ!また誤解がっ!!だから しっかりと 確認を!)

マリアが顔を赤面させると レイの顔が更に近付く マリアが驚いて思う

(か、確認しなきゃっ!…でもっ!)

レイが言う

「あ…」

マリアがドキッと胸を高鳴らせつつ レイを見る レイが他方を見ている マリアが疑問してレイの視線を追うと レイの視線の先レイのが手を伸ばした先 ティーソーサーが僅かに届かない マリアが衝撃を受けて思う

(え…?)

レイが軽く魔法を掛けると ティーソーサーがレイの手に向かって来る マリアが呆気に取られていると レイがティーソーサーごと紅茶を注いだカップを持ち上げ マリアへ向けて言う

「はい、どうぞ マリア!」

マリアが受け取りつつ言う

「あ… 有難う御座います…」

マリアが紅茶を飲みつつ思う

(い、今のは… た、たまたま偶然 手が届かなかっただけで…っ べ、別にっ 変な 意味では…っ って… 動作の説明にはなっても さっき言ったのは… えっと~!?)

マリアが強く目を閉じた後思う

(駄目っ!とりあえず 後にしてっ 今は 話題を変えようっ!)

マリアが言う

「そっ!そういえばっ!?ウィザード様は いつも 私を送ってくれた後… い、急いで 何処かへ飛んで行っちゃうみたいですが …その 何かお仕事でも しているんですか!?それとも…?」

マリアが思う

(そんなに急いで 家に帰りたいって 思うのかな?)

レイが言う

「お仕事?ああ… そうだな?一応 お仕事って言うのか?俺は今 燭魔台の 格安 灯魔屋さん をやってるんだよ~」

マリアが驚いて言う

「灯魔屋さん!?ではっ!ウィザード様は あの燭魔台の 灯魔作業をっ!?」

マリアが思う

(…で、格安って?)

レイが紅茶を一口飲んでから言う

「うん!燭魔台の灯魔作業なら 魔法使いの杖で 丁度 良いからな!」

マリアが言う

「な、なるほど… 杖も壊れないし 灯魔もされて そ、それは… とても 良い事ですね!それで… か、格安… と言うのは?」

レイが言う

「うん いくら こっちから行って やってやるぞって言ってもさ 突然なもんだから 断られたり 日時を改めてくれって 言われるんだよ そうするとメンドクサイからさ?だったら 少し安ければ やっちゃおうって気にも なるだろう?」

マリアが言う

「あ… なるほど それは良い案ですね?」

レイが紅茶を一口飲んでから言う

「うん!ついでに 2倍の金額なら 灯魔の持ちも2倍にしてやるよって言えば 大体そっちにするからさ?だから 格安にしてやっても 結局 2倍払ってくれて 普通にやるより 早く金になるんだよ!」

マリアが呆気にとられて言う

「そ… そうだったんですか…」

マリアが思う

(ウィザード様… 意外と商売上手かも…?それに 燭魔台の灯魔作業なら 出来る人も限られて ウィザード様なら 普通の魔法使いさんの 倍の期間を持たせる事も 出来ちゃうんだから お金を稼ぐには 凄く良い方法だと思う)

マリアが紅茶を飲もうとして気付いて思う

(あ、あれ…?お金を稼ぐ?)

マリアがレイを見る レイがマリアを見て疑問する マリアが思う

(ウィザード様が 今 どんな お部屋に住んでいるにしても 燭魔台の灯魔作業に掛かる費用は 確か 1回で120万から150万だって… だったら 倍にすると240万から300万… 格安にしたとしても それだけやっているのなら 凄い金額になる… そんなお金で ウィザード様は何を?)

レイが紅茶を飲んだ後マリアを見る マリアがハッとして視線を逸らしてから 紅茶を飲みつつ思う

(どうしよう?ウィザード様の事を知る所か どんどん分からなくなっちゃう… こういう時 どうしたら良いんだろう?お母さんと違って 一杯お話しているのに 一杯分からなくなっちゃって… これって本末転倒って事?それに えっと 確か 他にも気になっていた事が)

マリアが思い出す


ソニアが軽く笑って言う

『でも大丈夫よ 同じ家に住んでいたって ”マリアの風の魔法使いさん”が間違えてお母さんの所に 飛んで来たりなんかはしないわ?…うふふっ』


マリアが閃いて思う

(そ、そうだった!)

マリアが言う

「あ、あのっ ウィザード様!?」

レイが言う

「なんだ?マリア!」

マリアが言う

「そう言えば 私、気になっていたんですけど ウィザード様は 私が朝 出勤の為に家を出る時も 夕方 帰宅の為に会社から出てくる時も いつもすぐに 文字通り 飛んで来てくれますよね?」

レイが言う

「ああ!もちろんだよ マリア!」

マリアが言う

「今日もまた 全くいつもと違う時間でも 飛んで来てくれましたし… ウィザード様 どうして 私が家を出たりする そのタイミングが 分かるんですか?」

マリアが思う

(お仕事もしているんなら ずっと 何処か見える場所で 監視しているって訳ではないよね?まさか それも 感だとか言われたりして…?)

レイが言う

「ああ、それは簡単だよ マリア!俺は その どちらの建物にも 結界魔法を掛けているからさ?」

マリアが呆気に取られて言う

「結界魔法?」

レイが言う

「うん!って 言っても 会社の方は 正面の出入り口だけだよ だから その他の出口から出られたら 分からないけど 家の方は全体的に掛けてあるから 何処から出ても分かるからな!」

マリアが言う

「そ、それは… 一体どんな魔法なんですか!?も、もしかして あのお部屋の前にあった 監視カメラや防犯カメラみたいな!?」

マリアが思う

(って 言っても そもそも TVを知らない ウィザード様は その2つの機能が 分かっているのかな?)

レイが言う

「俺は正直 その2つの機械の事は よく分からないんだけどさ?誰かの目に その光景を見せる 機械だって聞いたよ?で、結界魔法って言うのは そう言うんじゃなくて」

マリアが言う

「”そう言うんじゃなくて”?」

レイが言う

「うん そうだなぁ えーっと なんて言うのかな?悪い魔力が入り込まない様に 見張っているって感じか?でも 会社の方は いろんな奴が出入りするから そんなの感知してたら やってらんないからさ?そっちは マリアの出入りだけを 感知させているよ」

マリアが言う

「私の出入りだけを 感知させているって?つまり 私が出入りしている光景を ウィザード様が見ているって事ですか?」

レイが言う

「光景は見えないけど マリアの魔力が結界の中に有るか無いかを まず感知させているんだよ この杖に」

レイが杖を取る マリアが言う

「え?」

レイが杖の飾りを指差して言う

「マリアが会社の入り口を入ると マリアの魔力を込めた この宝石がこっちにいって 外に出ると こっちに移動する こっちは 家の方 こっちにある時は 結界の外 で、今は中に居るから こっちにある」

マリアが言う

「わ… 私の魔力って?私は…」

レイが言う

「魔法を使えるほどじゃないけど 生き物は皆魔力を持っているんだよ 人種によっては別の言い方をするかな?極端に言えば 魂とか 生命力とか言ったりして」

マリアが衝撃を受けて言う

「じゃ、じゃあっ!? この宝石に私の 魂や生命力が!?」

レイが軽く笑って言う

「あっはははっ 大丈夫だよ マリア 魂とか生命力って言っちゃうと そう思うかもしれないけど 魔力は放出する事も 自然界から吸収する事も 出来るものだから 魂や生命力も同じだよ?ここへちょっと入れたくらいなら 減っちゃったりは しないからさ!」

マリアがホッとして言う

「そ、そうなんですか… それなら 良かったです… それに」

マリアが思う

(結界の中の様子が 監視カメラで見られている ようなものじゃ無いって言うのなら…)

レイが言う

「けど これは 簡易的な物だから 実際に マリアがどうしているのかなー?って言うのは 俺の魔力で確認するんだけどさ?」

マリアが衝撃を受けて言う

「え!?そうなんですかっ!?」

マリアが思う

(ちょ、ちょっと待ってっ それってまさかっ!?)

レイが言う

「うん!だって そうしないと マリアが何で結界の外に出たのか 分からないからな?もしかしたら 昼休憩とか ただ 他の会社の奴を 迎えに出ただけとか そう言うのは 実際に俺自身で確認しないと 分からないんだ それでいつも 迎えに行くのが 一歩送れちゃうんだよ」

マリアが言う

「な… なるほど…」

マリアが思う

(そう言われてみれば 確かに ウィザード様が迎えに来てくれるのは しっかり そう言うタイミングが計られている感じ… でも それって事は やっぱり)

マリアが言う

「では 会社は正面の出入り口だけですが この家は 全体的にって… それじゃ 私が 部屋に居るとか リビングに居るとかって事も 分かるんですか?」

レイが言う

「俺は この家の間取りを知らないから マリアの魔力がどの位置にあるかって事しか分からないよ でも ここがリビングだって分かったし さっき居た場所がキッチンなんだろ?玄関は知ってるし いつも深夜に止まっている位置が マリアの部屋かなー?って そんな感じだ」

マリアが言う

「あ… なるほど そんな感じなんですね?魔法で家の中を 目で見るように 覗ける訳じゃないんですね?」

レイが言う

「それは出来ないな 空間があるとか 障害物があるって事ぐらいは 分かるけど」

マリアがホッとして言う

「そうでしたか… それなら良かったです」

マリアが思う

(それくらいなら 別に良いよね?)

マリアが紅茶を一口飲んでから言う

「あ、それじゃ さっき言っていたのは?」

レイが言う

「ん?」

マリアが言う

「悪い魔力が入り込まない様に 見張っているって… 会社の方は出来ないけどって事は この家には?」

レイが言う

「そうそう!だから マリアのお母さんが この家に居る時には 俺は入れないんだよ」

マリアが疑問して言う

「え?お母さんがって?それは どうしてですか?悪い魔力って…?」

マリアが思う

(悪い魔力って言うのは… まさかっ ウィザード様 自身の事っ!?わ、悪いって それは… まさか それはっ!?)

レイが言う

「悪い魔力って言うのは まぁ 言っちゃえば 強すぎる思いを持っている奴とか 後は 魔法使いやウィザードとか 魔法を使えちゃうような奴はさ?もし この家に入って来たら マリアやマリアのお母さんの身に 危険が迫るって思うだろ?」

マリアが衝撃を受けて思う

(や、やっぱりっ!?で、でも 待ってっ!?落ち着いて!1つ引っ掛かるものっ!勇気を出して聞いちゃおう!ここで引き下がったらっ!!)

マリアが言う

「あ、あのっ!それでっ なんで お母さんが 居るか居ないかが 関係するんですかっ!?だって もしこの家に 悪い魔力が入り込んで 私が1人だったら!?お母さんは助かったとしてもっ!?まさか 私1人ならっ!?」

マリアが思う

(私1人なら 襲われちゃっても良いとか!?襲っちゃおうとかっ!?)

レイが言う

「え?マリアが1人の時に 悪い魔力が入り込んだら?そんな時はもちろん 俺はマリアのもとへ飛んで行くよ!元々結界魔法はその為に 張っているんだからっ マリアの出入りを見ているのは そのついでだよっ!」

マリアが思う

(…って あれ?何かおかしい?)

マリアが言う

「あ、あの… ウィザード様?」

レイが言う

「マリアが1人の時は 俺がちゃんと守っているから 大丈夫だよ!だって俺は ”マリアのウィザード様”なんだから!それをするのは 当然だろう?」

マリアが言う

「”マリアのウィザード様”だから当然?…それじゃ 逆に私が居なくて お母さんが一人の時はどうなるんですか?珍しい事ですけど 昨日はそうでした 実際 そんな時に この家に 悪い魔力が入り込んだら ”私のウィザード様”は 私のお母さんを助けては くれないんですか?」

レイが言う

「そりゃ気にはするよ?でも 俺は来ないな?」

マリアが怒って言う

「ど、どうしてですかっ!?折角 結界魔法を張っているんですからっ お母さんの事だって 助けて下さいよ!」

レイが言う

「大丈夫だよ マリア マリアのお母さんの事は もちろん マリアの”お母さんのウィザード様”が 助けてくれるさ!」

マリアが言う

「…え?」

レイが言う

「だから俺は入れないんだよ マリアのお母さんが家に居て 俺がそこに入ったら 先輩はきっと怒って来ちゃうだろ?俺だって 逆の事をされたら 飛んで来るからな!」

マリアが衝撃を受けて言う

「なっ?!”お母さんのウィザード様”が 怒ってって… そんな事…?」

マリアが思う

(ど、どうなんだろう?考えてもみなかった… でも よく考えたら お母さんは あのウィザードさまの奉者なんだし …確か以前 ウィザード様が ウィザードは自分の奉者は守るものだって…)

マリアが考えながら 紅茶を飲もうとすると カップが空になっている レイがそこに紅茶を注ぎながら言う

「俺が清掃員になって マリアをストーキングして この家を確認したらさ?かなり強い 結界魔法が張ってあって すぐに分かったよ 10年前に大灯魔台で 俺に力を貸してくれた あのウィザードの結界だって」

マリアが驚いて言う

「え?10年前に ”力を貸してくれた”っ!?」

マリアが思う

(だって お母さんのウィザードさまは ”私のウィザード様”が 暴走した魔力を収めたって!?私を守ってくれたって!?)

レイが言う

「ああ、あの時 マリアの頼みを聞いたのは 俺だったけど やっぱ 俺1人じゃ無理だったよ 魔力はあっても 杖は無かったし それに精神力も足りなくて …だから 言っただろう?あの先輩 何も言わないんだよ そう言う事」

マリアが呆気に取られる レイが自分に紅茶を注ぎながら言う

「それで 普通 結界の2重張りなんて 杖を貸すのと同じ位 許さない事だけど 俺は この家に 2重目の結界を張っちゃった!きっと あの先輩なら それも 許してくれるだろうって思ってな!けど 流石に 自分の奉者が 結界の中に居る時に 俺が入り込んだら あの先輩だって 怒ると思うんだ それで もしそうなったら…」

マリアが苦笑して思う

(ウィザード様… やっぱり 2人は仲良…)

レイが言う

「デカイ魔法の 1発勝負なら 俺は負けないけど この住宅地じゃ それやると 軽く周囲の民家が 吹っ飛ぶから!」

マリアが衝撃を受けて思う

(戦う気ですかっ!?)

レイが言う

「そうしたら マリアは怒るだろう?だから 被害が無いようにやるとしたら 持久戦になっちゃうんだよ?そうすると 俺に不利になっちゃうし!」

マリアが叫ぶ

「怒るに決まっているじゃないですかっ!?っていうか そもそも 戦わないで下さいっ!」

レイが言う

「分かってるよ マリア それに きっと マリアのお母さんも困るだろうから それなら 先輩も分かってくれるよ!」

マリアが息を吐いて言う

「はぁ… それなら 何と言うか… とりあえず 平和的にお願いします」

レイが言う

「うん!マリアがそう言うなら 俺はそうするよ!」

マリアが言う

「そうですか… でも、私がそう言うからとか お母さんが困るだろうとか そうじゃ無くて…」

マリアが思う

(あ~… でも ”お母さんのウィザード様”はともかく このウィザード様は 本当に 私の為だったら やりかねない様な気もするし… ん?そう言えば)

マリアが言う

「ウィザード様 この家に お母さんが居る時は 近付かないと言う その理由は 一応 分かりましたが… それなら どうして ウィザード様のお部屋では お茶を飲む事が出来ないんですか?」

マリアが思う

(そうよね?だって この家に入る事が そんなに大変なら むしろ そんな事を気にしないで ウィザード様の部屋においでって 言うのが普通だと思う)

レイが言う

「ああ、それは 俺の住んでいる場所は 外みたいなもんだから」

マリアが衝撃を受けて言う

「え!?でも 確かに ウィザード様は ”お部屋に住んでいる”と」

レイが言う

「うん 部屋は部屋だけど そこには 俺以外の奴も 居るんだよ」

マリアが言う

「ウィザード様 以外のって… ウィザード様っ 今 お1人で住んでいるんじゃ ないんですか!?」

マリアが思う

(どう言う事っ!?そんなっ!?まさかっ!?)

レイが言う

「俺は1人で住んでいるんじゃ ないよ?だって」

マリアが思う

(だってっ!?)

レイが言う

「俺が今住んで居るのは 住所で言うなら サウスサイドストリート216!」

マリアが言う

「サウスサイドストリートの216… って…」

マリアが思う

(え?あれ?私、その住所を 知っているような?)

レイが言う

「そこの 魔法使い見習いの 寮の相部屋に 住んでるからさ?」

マリアが驚いて言う

「寮にっ!?どうしてっ!?」

レイが言う

「うん!そこなら 食堂があるからな!」

マリアが衝撃を受けて言う

「しょ、食堂…っ!?」

レイが言う

「ああ!折角マリアに お米の焚き方を教わったけどさぁ 俺がやると どうしても上手く行かないんだよ それに俺 長い時間待ってられないし 元々機械って奴も 好きじゃない だったら 食堂がある所に行こうって!でも あの食堂は 開いている時間がスゲー短くてさ?夜は1時間しか空いてなくって だから 急いで行かないと 閉まっちゃうんだよ」

マリアが呆気に取られた後 ハッとして言う

「あっ!そ、それじゃ!いつも 私を送った後 急いで消えちゃうのは その…」

レイが言う

「夕食の時間に遅れちゃうからな!それで急いでるよ!昨日なんて 後ちょっとで ヤバイ所だった!」

マリアが衝撃を受けた後呆れて言う

「あぁ… そ、そうだったんですね てっきり お仕事にでも 向かわれているのかと…」

レイが言う

「え?そんな筈無いだろ?確かに 灯魔作業はやってるけどさ?そんなに急いでないし 大体 マリアと居られる時間を そんな事で削るなんて 俺は絶対にしないよ?」

マリアが思う

(でも 夕食の時間は大切なんだ… それは確かに そうかもしれないけど… ん?)

マリアが言う

「急いでないって… それじゃ?」

マリアが思う

(豪華なお部屋に住んでいる所か 目的はともかく 寮の相部屋に住んでいながら 燭魔台の灯魔をして 得られるほどの大金を何に?それとも もしかして…)

マリアが言う

「もしかして 魔法使い見習いの寮って そこに入るには 凄い大金が必要なんですか?だって 燭魔台の灯魔費用は かなり 高いですよね?いくら格安にしても…」

レイが言う

「寮は そんなに高く無いよ?えっと いくらだったか忘れたけど あそこは 税金で賄われているから!ひと月 夕食込みで 2万くらいだったかなぁ?」

マリアが思う

(安いっ!!それじゃっ!?)

レイが言う

「そっちは どうでも良いんだけど 俺には今 杖のローンがあるからさ?」

マリアが呆気にとられて言う

「え?…杖のローン?」

マリアが思う

(…あ、そうだったっ 杖は あの中央公園の灯魔作業で 壊れちゃって…)

レイが言う

「あの杖は 中央公園の灯魔作業をやったら 買って5分で ぶっ壊れちゃったから もう 魔法使いの杖なんか 買うつもりは無かったんだけど 金で買える杖って これしかないんだよ ウィザードの杖は 非売品だから」

マリアが思う

(買って5分だったんだ…)

レイが言う

「でも マリアがウィザードからは 取るなって言っただろう?だから しょうがないから また買ったんだけど それでローンが倍になっちゃって でも よく考えたら ウィザードの杖じゃ 燭魔台の灯魔作業は やり辛いから やっぱ この杖で 丁度良かったな!流石 マリアだよ!」

マリアが衝撃を受けてから思う

(う、う~ん 褒められているんだか…?でも きっと ウィザード様としては 褒めているんだろうなぁ だから)

マリアが言う

「そ、それは 良かったです?」

レイが言う

「うん!ありがとな!マリアー」

レイがマリアに抱き付く マリアが呆れつつ紅茶を飲み思う

(まぁ… いっか… …それにしたって)

マリアがレイの杖を見て思う

(この杖って いくら位するんだろう?燭魔台の灯魔作業をしても ローンはまだ 返しきれていないって事?えっと… でも こんな事を聞くのは やっぱり 失礼かな?)

マリアが言う

「あの、ウィザード様?もし良かったら 教えて貰いたいんですけど?」

レイが言う

「何だ?マリア?俺に分かる事なら 何でも教えてあげるよ!」

マリアが苦笑して思う

(それなら 良いのかな…?)

マリアが言う

「では… その… 魔法使いさんの杖って そんなに お高い物なんですか?燭魔台の灯魔費用で補おうにも 時間が掛かってしまう程…?」

レイが言う

「そんな事無いよ マリア 心配は要らない!俺はしょっちゅう 杖をぶっ壊しちゃうからさ?だから ちょっと 金をためて 今度は また壊しても 大丈夫なようにって してみようと思ってるんだ!」

マリアがホッとして言う

(ああ、なんだ そう言う事なんだ… 予備の杖を用意しようって?…それじゃ もう ローンじゃなくて それは 貯金って言うんじゃ?)

レイが手にしている杖を見て言う

「俺の使っているのは 魔法使いの杖の中でも 一番上の奴で 金額は 1本で 1億だよ!」

マリアが衝撃を受けて思う

(1億っ!?…しかも 以前は それを たったの 5分で…っ!?)

マリアが石化する レイが言う

「だから今は ローンが 1億8千万くらい この町の残りの燭魔台の数が112台だから この町が終わったら 今度は別の町へ行くつもりだよ!費用も 3ヶ月の灯魔なら1回100万で 引き受けてるから 分かりやすいだろう?燭魔台の灯魔作業を200台分やれば とりあえずローンは終わりさ!」

マリアがハッとして言う

「あ、な、なるほど…」

マリアが思う

(そっか… それなら そんなに 遠い金額じゃないような… 1億なんて言われると 私には 手の届かない金額だけど… 結局)

マリアが苦笑して言う

「ウィザード様は… 凄いですね?」

マリアが思う

(私たちとは 規模が違い過ぎて…)

レイが言う

「ん?ああ!もちろんさ!だって 俺は ”マリアのウィザード様”だからな!凄いに決まってるだろ?」

マリアが呆気に取られた後 苦笑して言う

「…そうですね!」

レイが喜んで言う

「ああ!」

レイがマリアに抱き付く マリアが思う

(そんな凄い人なんだけど この人は相変わらず ”私のウィザード様”で…)

マリアが苦笑して息を吐く


夕方


玄関を開けて ソニアが言う

「ただいまー」

マリアが言う

「お帰りなさーい お母さん」

ソニアが気付きキッチンへ向かうと 苦笑して言う

「あら、マリア 折角の お休みだったのに 風の魔法使いさんと外へ デートにでも 行かなかったの?」

マリアが料理を作っている手を止めて 衝撃を受けてから慌てて言う

「え!?な、何っ 言ってるのっ お母さんっ!?私とウィザード様はっ そう言うんじゃなくてっ!」

ソニアが荷物を置きつつ言う

「良いじゃない?魔法使いなら 別に 何の制約も受けないんだから 仲良くお外でお茶でも飲んで」

マリアが言う

「そ、それは そうかもしれないけど…っ ウィザード様は 相変わらず… じゃ無くてっ!その前に 私とウィザード様は 普通のお友達ですからっ!」

ソニアが手を洗いつつ 軽く笑って言う

「うっふっふ 相変わらず 男の人が苦手なのね マリアは」

マリアが言う

「苦手と言うか… 仕事とかで 普通にしている分には 良いけど… それ以外で 特に人前で べたべたしていたりするのとかは… は、恥ずかしくないのかな?って…」

ソニアが手伝いをしながら言う

「良いじゃない?恋人同士なら?」

マリアが言う

「違いますからっ」

ソニアが洗われたティーセットに気付き苦笑して言う

「それで 外では恥ずかしいから お家で お茶を飲んでいたのね?」

マリアがハッとして思う

(あっ …お母さんが 帰って来る前に 片付けておくつもりが…っ)

マリアが言う

「あ…っ そ、その… た、たまたま 家を出たら 彼が飛んで来たから… 家には お母さんも 居なかったし…」

マリアがハッとして思う

(あっ しまったっ!?)

マリアが慌てて言う

「ああっ!て、言ってもねっ!?別にっ 変な意味じゃなくてっ この家に お母さんが居る時に ”私のウィザード様”が入ると ”お母さんのウィザード様”が 怒って来ちゃうとかっ!?そう言う事への 心配が無いって意味で!」

マリアが視線を逸らす ソニアが呆気に取られて言う

「え?あら そうなの?」

マリアが言う

「え?あ、あれ?やっぱり 知らなかった?お母さん?この家の 結界魔法の話…」

マリアが思う

(ま、まぁ… よく考えたらそうよね?いくら傍に居れば 分かるって言っても… 私だって 今日 ウィザード様から 一杯説明を聞いて やっと理解出来たんだし… あ、でも それなら?)

マリアが言う

「…あ、でも お母さん言ってたよね?”私のウィザード様”… 私のお友達の 風の魔法使いさんが 間違えて お母さんの所に 飛んで来ちゃう事は 無いって?」

ソニアが言う

「ああ、あれはね?ただ そうだろうな~?って 思っただけよ?」

マリアが衝撃を受けて思う

(思っただけっ!?)

ソニアが軽く笑いながら言う

「だって、ウィザード様も ウィザード様だった その風の魔法使いさんも お母さんからしたら とっても理解を超える方だから 私たちの常識では 計れないと思って」

マリアが思う

(そっか… 確かに 私たちの常識とは 全然違う… 結界魔法も移動魔法も… そもそも 魔法を使えるって事が 私たちの常識には無いものだし… そう考えれば良いって事?)

ソニアが微笑し作業をしながら言う

「でもね?昨日マリアから ”マリアのウィザード様”との お話を一杯聞いて お母さんも少し気になっちゃって それで 今日はお母さんも ”お母さんのウィザード様”と 魔法に関する お話をしてみたの」

マリアが言う

「え?あ… そうだったんだ?」

マリアが置かれている荷物をみて思う

(そっか… だから… いつもなら お母さんは 普段お休みを取れない分 ショッピングに行ったら 結構 沢山お洋服とか買って来るのに 少ないなって…)

ソニアが言う

「それでね お母さん 今までずっと 自分はウィザード様と 苦しみや喜びを共にしている って 思っていたけど… それは そうじゃなかったんだって… 気付かされちゃって」

マリアが驚いて言う

「え?」

ソニアが言う

「昨日 マリアに ”ウィザード様の法魔帯の切り替えは どう判断したら良いか”って聞かれたでしょ?」

マリアが言う

「あ、うん! 法魔帯が ”魔傷印に焼かれていたら” って… はっきり目に見えるものだから分かる って教えてくれたよね?」

ソニアが言う

「そう」

マリアが思う

(ついでに その”魔傷印”って言うのが 魔法を使う為の 焼き印だって話を聞いた… だから 魔法使いやウィザード様たちの法魔帯は その火傷によって弱められてしまった 皮膚を守る為のものだって言うのも 改めて教えてもらって… 結局 私が 奉者協会の講習会の 前半を受けていなかったと言う事が ついに… って)

マリアが気を取り直して思う

(それは 今は良いとしてっ!!)

ソニアが言う

「だから 法魔帯の切り替えについては 奉者は気を抜けない事で 常に心配をしなければいけない所だけど  ウィザード様たちにとっては 魔力を高める事が修行なのだから 法魔帯の色が白色に近づく事は 喜ばしい事だって」

マリアが言う

「うん だから お母さんも 新しい色の法魔帯を巻く時には ”お母さんのウィザード様”と 喜びを共にしていたって 言ってたよね!」

ソニアが言う

「ええ… そうだと思ってた …でもね いつも気になってたの お母さんは もちろん喜んで見せていたけど ウィザード様ご自身は そんなに喜んでは居ないように見えて… それに そんな時よりも あの人は 私がマリアのお祝い事なんかを 喜んで話して居る時の方が 一緒に 喜んでくれているような そんな気がしていたのよ」

マリアが呆気にとられて言う

「え?私の話を ウィザードさまと?でも お母さんは ”お母さんのウィザードさま”は 何も仰らないって?」

ソニアが苦笑して言う

「ああ、それはね?魔法や灯魔儀式の話に関してよ?そう言った事は 魔法を使わない 私たちには とても理解出来ない事だと思って… お母さんも聞かなかったし あの人も話さなかった …だから マリアから あの大灯魔台での話を聞いて 驚いちゃったわ?だって ウィザード様たちが お互いに助け合ったり 認め合ったりするなんて事は 奉者の知る常識では 有り得ない事だもの」

マリアが言う

「え?奉者の常識では 有り得ない事って?どうして?だって 大灯魔台の灯魔儀式は 7人のウィザード様が力を合わせているのに?」

ソニアが言う

「確かにそうだけど その大灯魔台の灯魔儀式だって 最終的には たった1人のウィザード様を選出する為の審査でしょう?灯魔を行うと言う目的の為に 行動を同じくする事はあっても あの7人は皆 ライバルなんだから」

マリアが呆気にとられて思う

(そう言えば…)

ソニアが言う

「それに ”マリアのウィザード様”は マリアの間違えで ウィザードの称号を奪われて 杖も失ったと言うのに 恨む所か 仲良くお茶を飲んで お話をしているのでしょう?」

マリアが衝撃を受けて言う

「あ、う… うん…」

ソニアが軽く笑って言う

「うっふふっ それで、お母さんの固定観念も すっかり壊れちゃって だから思い切って 聞いてみたの マリアに聞かれた時に話した 法魔帯の話 おとといの大灯魔台の灯魔儀式を終えた後 法魔帯がボロボロになってしまっていて 腕にも酷い怪我をさせてしまったって お母さん 驚いて 奉者としての不手際を謝ったって」

マリアが言う

「でも ”お母さんのウィザードさま”は ”余剰魔力を使った影響だから 奉者のせいじゃない”って…」

マリアが思う

(その”余剰魔力”って言葉も 私は分からないんだけど…)

ソニアが言う

「ええ、ウィザード様が そう仰るのだから お母さんも それで納得しちゃっていたんだけど でも、マリアと同じ様に ”普通に考えてみたら”ね?おかしいんじゃないかしら?って思ったの …だってウィザード様は魔力を高める為に 修行をしているのだから もし、余剰魔力と言うものがあるなら 常に使っている方が もっと 修行になるんじゃないかしら?って」

マリアが思う

(た、確かに!?…って言うか 大体 余剰魔力って何なんだろう?…でも ここで聞いたら また 私の奉者としての知識不足が…)

ソニアが言う

「だから お母さん思い切って 聞いてみたの 余剰魔力って何ですか?って …うふふっ」

マリアが衝撃を受けて思う

(お母さんも 知らなかったのねっ!?)

ソニアが言う

「そうしたら 返って来た答えが ”法魔帯の色を上げない為に 意図的に抑えていた魔力だ”ですって?」

マリアが言う

「え!?」

ソニアが微笑して言う

「おかしいでしょう?だって 法魔帯の色が白色に近づく事が 何よりの喜びの筈の ウィザード様から返って来た答えが そんな答えなのだから」

マリアが言う

「た、確かに…」

マリアが思う

(え?え?…どう言う事?だって ”私のウィザード様”だって いつも ”俺は強い”とか”最強のウィザードだ” って 魔力の強さを 自慢しているくらいなのに?)

ソニアが言う

「それに 法衣の色も… お母さんはずっと 10年前の大灯魔台の失敗を 気にしているんだと思っていたから それは 前回や今回の灯魔儀式で もう良いんじゃないかって 次の大灯魔台での灯魔儀式では 新調した法魔帯の色と同じ 白色か せめて もっと明るい色の法衣にしましょうか?って伺ったのだけれど」

マリアが言う

「けれど?」

ソニアが言う

「次の大灯魔台の灯魔儀式は 10年前の再戦になるから 同じ法衣で行くんですって?…お母さん 奉者として ウィザード様の事は 十分分かっていたつもりだったのに マリアと違って 魔法や灯魔儀式の話になると 分からない事ばかりだわ」

マリアが言う

「え?あ… 私も いつも分からない事ばかりだよ?でも… 今日は時間もあったし 一杯 話を聞いてみたら 分かったけど …お母さんは それ以上は 聞かなかったの?10年前の再戦って?」 

マリアが思う

(次の大灯魔台の灯魔儀式が 10年前の再戦 …どう言う意味なんだろう?)

ソニアが苦笑して言う

「ええ、お母さんも あの大灯魔台での事は覚えていたから 聞いてみたの 場所も人も 10年前とは異なるのに どうしてそれが 再戦なんですか?って」

マリアが言う

「そうしたら?」

ソニアが言う

「次の大灯魔台は 10年前と同じ 水属性の大灯魔台だから ですって」

マリアが驚いて言う

「水属性の大灯魔台?…そうなんだ?…え?でも 確か…」


翌朝


マリアが言う

「大灯魔台の属性と言うのは 最初から分かるものなんですか?確か それが分からないから…」

マリアが顔を向ける レイがマリアに抱き付いていて言う

「ああ!分からないな!実際 先輩だって 大灯魔台の属性は 起動作業が終わるまでは 分からないって 言ってたぜ?マリアー?」

マリアが首を傾げて言う

「しかし、その”先輩”が そう仰ったそうですが?」

レイが言う

「そうなのかー まぁ 先輩が そうだって言うんなら そうなんじゃないか?」

マリアが衝撃を受けて思う

(そうなんじゃないか?って!?)

マリアが言う

「そうなんじゃないかって!?そんなんで また 失敗しちゃったら 大変じゃないですか!?」

マリアが思う

(あ、でも… また ウィザード様が…)

マリアがレイを見る レイが言う

「大丈夫だって!」

マリアが微笑して言う

「そうですね!また」

レイが言う

「ああ!また そうなったら 今度こそ 先輩は 引退 出来るからな?俺も 今度こそ 手伝わないよ~」

マリアが怒って言う

「手伝わないんですかっ!?」

マリアが思う

(どうして!?それに なんで 引退が ”出来る”って!?…って それよりも!もし 失敗しそうな時は!)

マリアが怒って言う

「そんな事 言ってないで 手伝って下さいよっ!ウィザード様っ!」

レイが言う

「ああ!分かってるよ!マリア!」

マリアが微笑すると 体が浮き上がる マリアが呆気に取られて言う

「え?」

レイとマリアが風に消える


会社 前


レイが言う

「はい 到着~!」

マリアが疑問して言う

「到着って…?」

レイが言う

「そんなに力一杯 頼まなくったって 俺は何時だって マリアの移動を手伝ってあげるよ!」

マリアが衝撃を受けて言う

「そうじゃ無くてっ!」

レイが浮き上がって言う

「ああ!もちろん!」

マリアがホッとする レイが言う

「帰りも ちゃんと 迎えに来るからな!安心して良いぞ!マリア!」

マリアが衝撃を受け思う

(だから そうじゃ無くてっ!!)

レイが言う

「それじゃ マリア いってらっしゃいだな!俺も今日は 西の方の 燭魔台に 行って来るよ!」

マリアが衝撃を受けて思う

(今日は 西の方ですかっ!?)

マリアが言う

「ですから 西とか南とかじゃなくて… 大体 どうして ウィザード様は いつも そんなに極端で …はっ!?」

マリアがハッとして時計を見てから言う

「キャァーッ!ホント もう こんな時間っ!で、では 行って来ます!ウィザード様も いってらっしゃ!あ、有難う御座いました!」

マリアが会社へ走る


中央公園


マリアが弁当箱を片付けつつ思う

(…と、結局” お母さんのウィザード様”も分からないけど ”私のウィザード様”も 相変わらず 分からない人で… ウィザード様って 皆そんな感じなの?それこそ お母さんの言っていた通り 私たちの常識で計っちゃいけないとか…?それとも)

マリアが言う

「何となく ズレていると言うか… はぁ…」

マキが言う

「あれ~?何だか久し振りの マリアの溜息だねー?」

マリアが衝撃を受けてから苦笑して言う

「あっ!?はは… そ、そうかも?あっ!でも 言っとくけど マキ!?この溜息は!マキやリナが考えるみたいに そのぉ… れ、恋愛事に関してのものじゃなくてっ!」

マキが言う

「うん、分かってる!私も 奉者になったんだもん 奉者が考える事は 皆同じでしょう?」

マリアが言う

「あ、そ、そうだね!」

マリアが思う

(と、言ってみたけど 奉者が考える事って …何だろう?)

マキが言う

「奉者は 常に 自分のウィザード様の事に気を配って お茶の用意をしたり 夕食を作ったり 掃除したり 洗濯したり」

マリアが衝撃を受け続けて思う

(う…っ 私は どれも やってませんでした… とは 言えない… …でも)

マリアが苦笑して思う

(私のウィザード様は ”マリアのウィザード様”だから それで良いんだって 言ってくれたし…)

マキが言う

「灯魔儀式の場所や 予定を考えて立てたり 連絡をしたり」

マリアが反応して微笑して思う

(うん… それは 私もやってた… …こ、後半は 連絡だけだった… とは やっぱり 言えないけど…)

マキが言う

「後はウィザード様の 魔力が高くなりますようにって 法魔帯の管理をしたり」

マリアが苦笑して言う

「う、うん…」

マリアが思う

(それこそ 私は やる必要すら無くって… …最初から 魔力も それを示す法魔帯も 一番上だったから …そもそも 法魔帯を知らなかったとか…)

マリアが落ち込む マキが言う

「本当に ありがと マリア!お陰で 法魔帯の切り替えに付いての心配は 無くなったから これで安心!マリアのお母さんにも お礼を言っておいて!」

マリアが微笑して言う

「うん、分かった 伝えておく」

マキが立ち上がって言う

「それじゃ 私 行かないと!」

マリアが言う

「あれ?今日は随分お昼短いね?私より後に来たのに?」

マキが言う

「うん 今日来たのは マリアから法魔帯のその話を 教えてもらえるかな?って 後はちょっとでも 話がしたかったから」

マリアが言う

「ああ、そうだったんだ …あれ?でも… マキお弁当は?」

マキが言う

「私も もう少しでも ”私のウィザード様”と 気持ちを1つに出来ないかなー?ってね?試しに彼と同じ様に お昼をお茶だけにしてみようと思うの!」

マリアが衝撃を受けて言う

「え!?奉者まで 食事制限を!?」

マキが苦笑して言う

「でも、流石に 1日1食はキツイから 朝と夜の2回にしてみるつもり …何日続くかは 分からないけどね~?にゃははっ」

マリアが苦笑して言う

「凄いね マキ でも あんまり無理はしないでね?ウィザード様を支える奉者が 倒れちゃったら大変だよ?」

マキが言う

「はーい 気を付けます!マリア先輩ー!それじゃ また明日!」

マリアが言う

「うん!行ってらっしゃい!」

マキが走って行く マリアが手を振った後 息を吐いて言う

「ふぅ… 凄いなぁ マキ 本当に”マキのウィザード様”の事 大好きなんだろうなぁ… 私は…」

マリアが空を見上げてから 苦笑して言う

「どうなんだろう?」

マリアが噴水を見て微笑する


会社


マリアが書類作成をしながら思う

『マキはこれから ウィザード様の食事制限に付き合うって言ってたから お昼もあんまり話せないかもしれない… 今日も法魔帯の話の他は ほんの少し… それもやっぱり ウィザード様の話で…』

マリが書類を見て軽く息を吐いて言う

「まぁ… 話題は別に それでも良いんだけど それに…」

マリアが思い出す


マキが言う

『はーい 気を付けます!マリア先輩ー!それじゃ また明日!』


マリアが苦笑して思う

(一応 私は マキにとっては ”奉者の先輩”みたいだから… 本当は何も 分かってないんだけど…)

マリアが言う

「明日も また ウィザード様の お話かな~?」

課長がやって来て言う

「マリア君」

マリアが衝撃を受け慌てて言う

「は、はいっ!課長!」

マリアが思う

(う… また 課長に…)

課長が言う

「明日から この部署に 新人社員を3名入れる事になった」

マリアが一瞬呆気に取られてから慌てて言う

「…え?あ、は、はいっ!?」

課長が言う

「リナ君に続きマキ君も 居なくなってしまったからな?そこで 新たに迎え入れる その3名へ 彼女たちがやっていた仕事を教えて欲しいのだが 頼めるかね?」

マリアが言う

「は、はいっ!」

マリアが思う

(そうよね やっぱり2人も抜けちゃ… 新しい人を入れるしかないよね?)

課長が言う

「うん、では 明日改めて紹介するから よろしく頼むよ」

マリアが言う

「はい 分かりました」

課長が立ち去る マリアが思う

(新人指導かぁ… そう言えば マキの時には 元々の知り合いだったから お昼休みや退社後にも リナも一緒に 教えたりしてたっけ…?とは言っても 最初は仕事の話をしていても いつの間にか 別の話に切り替わっちゃったりしてて…)

マリアが苦笑して言う

「ふふ… 懐かしいなぁ…」

課長が咳払いをして言う

「うんっ!…くれぐれも 仕事以外の事を考える その癖まで 教える事は無いように」

マリアが衝撃を受けてから言う

「う…っ は、はい…」

マリアが表情を困らせつつ仕事に戻る


会社 外


マリアが会社を出て来て言う

「あ~ やっと終わった~」

マリアが思う

(やっぱり 1人だと作成書類が多くて 他の商談なんかを考える時間も無い… でも これも明日から 新入社員が入るなら 楽になるだろうし)

マリアが言う

「良かった…」

レイが言う

「マリアー!」

マリアが苦笑して振り向く レイが言う

「お仕事お疲れ様ー!マリアー!」

マリアが苦笑して言う

「ウィザード様も 今日は”西の方”の燭魔台へ 灯魔をしてらしたんですよね?お疲れ様です」

レイが言う

「うん!これで この町の西の方は 全部終わったよ~!」

マリアが思う

(あぁ… やっぱり ”西の方”とか ”この町の西の方”って規模で話が進むんだ… それじゃぁ…)

マリアが苦笑して言う

「では 明日からは 今度は”東の方”へでも 向かわれるんですか?」

レイが言う

「うーん 東でも良いんだけど 東側は先輩の町があるからさ?そっちの灯魔台の効力が十分にあるから 東の方は 最後にするつもりだよ!」

マリアが一瞬驚いて言う

「あ… なるほど」

マリアが思う

(そっか… 西とか東とか ただ大雑把なだけじゃなくて そちら側にどんな町があって その灯魔台の状況が… とか そんな事も考えていたんだ…)

マリアが微笑した後言う

「では 明日は東ではなくて?」

レイが言う

「そうだな!明日は”北西方面”へ 飛んでみるよ!」

マリアが衝撃を受けて言う

「北西方面…」

マリアが思う

(う~ん やっぱり 私では この規模での会話には 付いていけそうにない…)

レイが言う

「それより マリア!この後は 何処かへ行く予定なのか?家に帰るなら さっさと 帰ろうぜ?」

マリアが苦笑して言う

「はい… では家へ …あ!」

マリアがふと気付いて思う

(でも 折角だから ちょっと聞いてみようかな?)

マリアが言う

「あの ウィザード様?ちなみに この場所から 私の家へ向かうと言う時には どちらへ飛ぶと考えるんですか?」

マリアが思う

(この会社から考えれば 家は確か 南東方向?だから当然 答えは)

マリアがレイを見る レイがマリアを包んで言う

「ああ!もちろん!」

レイとマリアが浮かび上がる マリアが微笑して思う

(南東方面へ!)

レイが言う

「マリアの家へ!って思うだけだよー!」

マリアが衝撃を受けて言う

「えっ!?」

レイとマリアが風に消える


自宅 前


レイとマリアが現れ レイが言う

「はい、到着!」

マリアが思う

(到着した…)

レイがマリアに抱き付いて言う

「マリアー!大丈夫だよ マリア!何も考えなくったって 俺は マリアの家を 見失う事は無いよー!」

マリアが思う

(そうなんだ… 見失う事は無い…?それは)

マリアが言う

「どうしてですか?」

レイが言う

「それはもちろん!」

マリアがハッとして思う

(まさか…っ 愛の力 …とかって 言うんじゃ…)

レイが言う

「この家ほど 強力な結果が張られている場所なんて この町には ここしかないからな!」

マリアが一瞬驚いてから言う

「あ… なるほど そう言う事…」

マリアがホッとして言う

(何だ… そう言う事なら… ちょっとは 分かるかも?)

レイが言う

「ああ!だって 俺と先輩の結界二重張りだぜ?これだけ強力なら 隣町からだって 一発で分かるよ!」

マリアが思う

(そんなに強力なんだ…)

レイがマリアに甘えて言う

「だから この家は 絶対 安全~ マリアは何があっても 心配しなくて良いぞ~」

マリアが呆れて思う

(元々 何の心配があるんだろう…?でも 確かに このウィザード様と …あのウィザードさまが 守っていると考えれば 鬼に金棒と言うか… …あっ!?)

マリアが思い出して言う

「あの、ウィザード様」

レイが言う

「なんだ?マリア?」

マリアが言う

「今朝の話の続きなんですが… 大灯魔台の属性の事は ウィザード様は分からないと仰いましたが それなら 法魔帯の事は分かりますか?」

レイが言う

「ん?法魔帯の事って?」

マリアが言う

「”お母さんのウィザード様”は 法魔帯の色を上げないために わざと魔力を抑えていたみたいなんです …でも、ウィザード様たちは 食事制限はもちろん 魔力を上げる修行をなさっているんですから どうして 怪我をする危険性まであるのに その魔力を抑えて 法魔帯の色を上げないようにする 必要があるのでしょう?」

レイが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う

「うん!それは 普通はしないな!」

マリアが言う

「あ… やっぱり そうなんですか?」

レイが言う

「もちろんだよ!けど なるほどな?…それで 何回 大灯魔台の灯魔儀式を 免れたんだろうな?」

マリアが驚いて言う

「え?それは?」

レイが言う

「だって 大灯魔台の灯魔儀式をやるには 6人のウィザードの総魔力が 一定以上無いと無理だからサ?その儀式を管理してる奉者協会の奴らは 申請されている法魔帯の色で 総魔力を計算しているんだろ?」

マリアが気付いて言う

「え!?」

マリアが思う

(知らなかった… じゃなくてっ!)

マリアが言う

「それではっ!?法魔帯の色を上げないでいれば!」

レイが言う

「そうそう!法魔帯の色が低ければ 総魔力も足りなくて 儀式はやらないで済むだろ?俺も参加してみて分かったけど 俺や先輩以外のウィザードは 全然弱いからな?」

マリアが思う

(それじゃ”お母さんのウィザード様”は 10年前の失敗が 再び起こらないように その為に 自分の法魔帯の色を抑えて 総魔力を上げないようにしていたって事…っ!?)

マリアがレイを見る レイが言う

「けど、急ぎだか何だか知らないが 1人増やして7人にされて おまけに その1人が俺だった訳だから!いくら先輩が法魔帯の色を下げて誤魔化したって 大灯魔台の灯魔儀式は 開始される事になっちゃったな!」

マリアが衝撃を受けて言う

「そ、それじゃっ!?今は大変じゃないですかっ!?やっぱり次の大灯魔台でも ウィザード様は 儀式を手伝って上げて下さいよっ!?」

レイが言う

「マリアが言うなら 俺はそうするよ …けどさ?」

レイが離れる マリアが言う

「けど?」

レイが浮き上がって言う

「次の大灯魔台の灯魔儀式は 10年前の再戦だって言ってるんだろ?だったら 大丈夫なんじゃないか?それに そんな事より」

マリアが言う

「そんな事より?」

レイが言う

「ああ!早くしないと 食堂が閉まっちゃうから 俺は 帰るよ!」

マリアが衝撃を受ける レイが言う

「それじゃ!お仕事お疲れ様!お休み!マリア!」

レイが風に消える マリアが言う

「お、お休み…なさい… って もう居ないし… はぁ…」

マリアが思う

(大灯魔台の灯魔儀式が 失敗してしまうかも …って事より 食堂の空き時間の方が ウィザード様にとっては 大切なんだ…)

マリアが溜息を吐きつつ玄関の鍵を開けて言う

「確かに …1日1回の食事だもんね 大切かもしれないけど …やっぱり」

マリアがドアを開けて思う

(”私のウィザード様”と比べると ”お母さんのウィザード様”の方が ウィザード様らしいような…?)

マリアが苦笑して言う

「でも… ”私のウィザード様”は 今は風の魔法使いさんだし それに」

マリアが思う

(神様に選ばれる為の ウィザード様じゃなくて …”マリアのウィザード様”だもんね?)

マリアが微笑した後顔を上げて言う

「ただいまー」

マリアが玄関ドアを閉める


翌朝


マリアが玄関を出て思う

(今日は頑張って 早起きしちゃった!…って言っても 以前までは この時間に起きるのが 当然だったんだけど… でもきっと!)

マリアが歩みを進めて思う

(今日も あの人は 来てくれるっ!)

レイが言う

「マリアー!」

マリアが言う

「ウィザード様!」

レイがマリアに抱き付いて言う

「お早うー!マリア!今日は いつもより早いな!何かあるのか!?」

マリアが言う

「はい!実は 今日から私 新入社員に お仕事を教える事になったんです!」

レイが言う

「そうなのか!マリアは マリアの後輩に仕事を教えるんだな!?」

マリアが言う

「はい!そう言う事でして 最初は肝心!遅刻厳禁はもちろん!早めに出社している方が お手本になるかと思って!」

レイが驚いて言う

「おお!?凄いなマリアは!流石マリアだ!俺たちの世界じゃ 誰かに何かを教えるなんて事は 考えられないよ!」

マリアが衝撃を受けて言う

「えっ!?そうなんですか!?」

レイが言う

「もちろんだよ!マリア!」

マリアが思う

(そ… そうなんだ?そう言えば…)

レイが言う

「あ!それじゃ!急いで 連れて行ってやらなきゃだな!?マリア!」

マリアがハッとして言う

「あっ は、はいっ!宜しくお願いします!」

レイが言う

「ああ!任せとけっ!」

レイとマリアが風に消える


会社


マリアが思い出す


レイが驚いて言う

『おお!?凄いなマリアは!流石マリアだ!俺たちの世界じゃ 誰かに何か教えるなんて 考えられないよ!』

マリアが衝撃を受けて言う

『えっ!?そうなんですか!?』

レイが言う

『もちろんだよ!マリア!』

マリアが思う

《そ… そうなんだ?そう言えば…》


マリアが思う

(そう言えば… お母さんが言ってた ウィザード様たちが お互いに助け合ったり 認め合ったりするなんて事は 本来なら有り得ない事 大灯魔台の灯魔儀式をする7人のウィザード様たちだって 皆ライバルなんだって… そう考えたら 今朝 ウィザード様が言っていた あの言葉は頷ける… でも、それなら)

マリアが書類を見て思う

(どうして ”お母さんのウィザード様”は 法魔帯の色を上げなかったんだろう?大灯魔台の過去の失敗を気にしていたとしても 結果として 灯魔儀式は開始されたんだし そうなったら もう 自分は白い法魔帯に… 白い法衣にして 他のウィザード様たちとの差を 積極的にアピールした方が良い筈だし ウィザード様と協力して 自分が不認定になるリスクを負ってまで 灯魔を成功させるなんて事は…)

マリアが悩んで思う

(”私のウィザード様”は 理由は兎も角として 白い法衣を着たがっていたし 灯魔の失敗に対するリスクは無かった それじゃ ウィザードらしくないのは むしろ”お母さんのウィザード様”なの?昨夜ウィザード様から 法魔帯の話を聞いた時は すぐにでも お母さんに知らせてあげようと 思ったけど …う~ん 分からないなぁ?)

マリアが溜息を吐いて言う

「はぁ… やっぱり 難しいなぁ~」

後輩が困って言う

「あのぉ~ やっぱり 私の作った書類じゃ まだ 駄目ですかぁ?マリア先輩?」

マリアがハッとして言う

「へ?…あっ!」

課長が叫ぶ

「マリア君っ!!」

マリアが衝撃を受け慌てて言う

「は、はいっ!すみませんっ!課長っ!!」


中央公園


マリアが手作り弁当を食べつつ言う

「はぁ~ 折角 朝は早く来て 先輩らしさをアピールしてたのに また課長に怒られちゃったなぁ… しかも 今日は…」

マリアが思う

(”私のウィザード様”の事じゃなくて ”お母さんのウィザード様”の事を考えていて…)

マリアが言う

「どうして こう… ウィザード様たちって…」

マキが言う

「マーリア!」

マリアが驚き慌てて言う

「マ、マキ!?び、びっくりした~」

マキが言う

「あっはは!ごめん!ごめん!」

マリアが苦笑して言う

「もぉ~」

マキがマリアの隣に座る マリアがふと思って言う

「あ、そうだ マキ?」

マキが言う

「ん?」

マリアがマキへ向いて言う

「”マキのウィザード様” って どんな人?」

マリアが思う

(”私のウィザード様”は 今更だけど… もしかしたら ”お母さんのウィザード様”も 実は少し変わった ウィザードだって可能性も…?)

マキが呆気にとられて言う

「え?どんなって言われても… ごく一般的な ウィザード様?」

マリアが衝撃を受けて思う

(え!?一般的なって…?)

マリアが顔を逸らして思う

(…いや、もちろん ”私のウィザード様”が その一般的の定義から外れている事は もう分かってるんだけど… あ、でも?)

マリアが苦笑して言う

「あ、うん!それは そうかもしれないけど… その… 一般的なウィザード様の事が 分からなくなっちゃって…」

マリアが思う

(そうそう ある意味”私のウィザード様”に限定すれば 分かって来た様な気もするんだけど… その…)

マリアが言う

「普通のウィザード様って どんな人なのかなぁって?だから ”マキのウィザード様”は 普段どんな感じ?話とかしてるんでしょ?」

マキが言う

「え~?普段も何も 別に変わらないよ?一応外出する時は あまり話はしなくなるけど 部屋に居る時には… いつも ”どうしたらもっと魔力を高める事が出来るかな?”って」

マリアが言う

「魔力を高める事?」

マリアが思う

(あ… そうだった ウィザード様たちは そもそも その修行を 行うのが普通で…)

マリアが言う

「やっぱり いつもその修行をしているの?ちなみに…」

マリアが思う

(そもそも… 修行って どんな事しているんだろう?)

マキが言う

「ねぇ マリア」

マリアが言う

「うん?」

マキが言う

「”マリアのウィザード様”は この町の灯魔台の灯魔儀式を終わらせても居ないに 大灯魔台の灯魔儀式に参加したって事はさ?それだけ 魔力が高かったって事でしょ?」

マリアが衝撃を受けて言う

「あ、う、うんっ… そう… かも?」

マリアが思う

(ま、まずい… この前は何とか誤魔化せてたのにっ また 法魔帯の色を聞かれちゃうかもっ!?)

マキが言う

「それじゃぁさ?マリア 教えて欲しいんだけど」

マリアが観念して思う

(う、嘘を言うなんて事 出来ないっ 今度こそ…っ!)

マキが言う

「”マリアのウィザード様”って 普段どんな修行をしていたの?」

マリアが衝撃を受けて言う

「えっ!?」

マリアが思う

(そっちっ!?)

マキがマリアに押し迫って言う

「ウィザード様たちは 皆他のウィザード様たちとはライバルだからさ?効果的な修行方法があったとしても 教え合うような事はしないでしょ?でも ”マリアのウィザード様”は もう大灯魔台の灯魔儀式には出ない訳だし …だったら 教えてもらっちゃ 駄目かな?マリアっ!?」

マリアが押されつつ思う

(え、えーと…っ その前に 私はウィザード様が 修行している姿なんて 一度も見た事が無いなんて…っ むしろ その方法は何だろう?なんて 考えていたとか…)

マキが言う

「やっぱり… 駄目… だよね …ごめん マリア」

マリアが言う

「あ、いやっ 違うの!マキ 私ね?私も… 知らないのっ 本当にっ」

マキが言う

「え?でも ウィザード様は一日の大半は 魔力を上げる為の修行をしているんだから そのウィザード様に仕えている奉者なら 知ってるでしょう?」

マリアが思う

(う… そ、そうなんだ?知りませんでした… ごめんなさい… だって 私は…)

マリアが言う

「あ… その… 私は その間は 仕事をしていたから… 本当に見た事が無いの …あ、でも 一度だけ 魔力を測っていたって 言うのを見たことはあるけど… それも途中までだったし」

マキが言う

「そっかぁ…」

マリアが心配して言う

「マキ?どうかしたの?」

マキが言う

「うん… 私のウィザード様ね 魔力を高める その修行方法が 分からないって 困ってるの」

マリアが呆気に取られて言う

「え?」

マキが言う

「ウィザードはライバルである 他のウィザードから 指導を受ける事も出来ないし どうしようって …私も このままじゃ 次の灯魔儀式の予定も立てられなくって… こう言う時 どうしたら良いか なんて言うのも 講習では習ってないから…」

マリアが言う

「そうなんだ… それは… 困っちゃったね?」

マリアが思う

(講習で教えないんじゃ… そもそも ウィザード様同士で教え合わない事を 奉者の先生に聞いても 分からないだろうし…)

マキが言う

「うん…」

マリアが困ってから言う

「…それじゃ マキ 私、一応聞いてみるよ ”私のウィザード様”に」

マキが言う

「ほ、本当!?マリアっ!?」

マリアが言う

「うん あ、でも その… 余り期待しないでね?”私のウィザード様”も 今朝丁度 自分たちは他の人に何かを教える事は無いって 言ってたから」

マキが苦笑して言う

「うん 分かった …いつも ごめんね?マリア」

マリアが言う

「良いのよ 気にしないで だって ほら?私は マキの先輩でしょ?ウィザード様たちとは違って 協力したり 教えあったりするのは 当然だよ!」

マキが苦笑して言う

「マリア… ありがとー!マリア大先輩ー!」

マキがマリアに抱き付く マリアが一瞬驚いた後笑って言う

「キャッ!?もぅ マキってば 大げさなんだから~」

マリアとマキが笑う



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ