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08:双子と従姉妹

 快晴島に帰ってきた。

 最近はみゆとみうが港で待ってくれていて、一緒に帰っているので今も隣りに彼女たちがいる。


 ……力強く腕を絡ませて。


「今日の練習はどうでした?」


 みゆがぎゅ~と胸を押し付けてきながら腕を絡ませながら尋ねてくる。


「あ、ああ。トラブルはあったけど、みんな着実に伸びてきてるよ」


「今日は伊藤さんからカレイを貰いましたし煮物にしましょう。静香さんにも伝えておきますね」


 今度はみうがさらにぎゅ~と腕を絡みつけてくる。


 彼女たちの大きくて柔らかい胸が押し付けられて……。


「お、一昨日、松尾さんに貰った自然薯も余ってるし、それも使い切りたいな」


「わかりました。静香さんに伝えときますね」


 みうが言う静香さんとは、彼女たちの従姉妹の乾静香のことだ。

 静香先生は俺が小学5年生の頃から快晴の小中の先生をやっていて、それからちょっと経って二人が来た。


「今日は大量だったらしいし、明日は手伝いに行かなくてよさそうだな」


 快晴島は自給自足が基本だ。一応、商店もあるが、そこに売ってるのは電池とかこの島でとれないものだけで、肉・魚・野菜・米などの島でとれるものは自分たちで調達するのが普通だ。俺もそんなに広くはないが畑を持っている。

 とはいえ、俺たちと静香先生を除くと50以上しかいない超高齢社会なので、最近はどうしようか悩んでいるらしいが。俺が野球選手になって外に行ったら、山菜とか採れる人いなくなるし。静香先生は快晴島の食べ物は美味しい上に栄養価がすごく高いから、ネット販売すれば高く売れると何やらネットでしているらしいが。


「そうですね」


「だから、明日の試合、頑張ってくださいね」


「本当は見に行きたいんですけどね」


 二人にはメッセージアプリで、明日に試合があることを既に伝えている。


「ただ、明日は数学の補習があって……」


「意外だな。みゆはともかくみうもかかるなんて」


「いえ。私は付き添いです」


「……ごめんね」


 みゆは成績は悪いが、みうは成績がいい。

 運動神経といい、あべこべみたいな二人だ。


「まあ、明日は練習試合ですらないからな。見に来るなら大会にしてくれ」


「はい。楽しみにしてます」


「わかりました……じゃあ、もっとくっつきますね」


「……なんで?」


 わりと文脈が繋がってない気がするが、むにっという感触にその疑問は消えてしまう。


 ……なんというか、本当に変わったなぁ。前はこんなに近づくことなんてなかったのに……。

 今でもタコみたいに顔が真っ赤だが、それでもずっと積極的になった。


 道中で出会った島民にからかわれても、「自分たちはラブラブです!」とむしろ言うようになった。前までなら、恥ずかしくなって離れてたのに。


 そして、俺自身薄情だと思うが、すでに彼女たちに絆されつつあった。

 でも、加奈子の浮気が発覚した時の感情が二人を拒もうする。

 ……二週間後の現野球部との戦いに勝って、この気持ちにも踏ん切りをつけないとな。


 決意を新たに、俺たちは如月家に帰った。


◇◇◇


 如月家と乾家は隣同士にある。

 父さんと母さんが事故で亡くなってからは、家主の静香先生の厚意で夕ご飯はいただいていた。加奈子と付き合ってからは遠慮していたけど……。


「「「「いただきます」」」」


 でも、加奈子と別れた今はまた彼女の家でご飯を食べている。


「「あ、あーん」」


「い、いや……静香先生も見てるし」


「あら。私は別にいいわよ」


 みゆとみうの保護者兼従姉妹の静香先生が微笑ましそうに笑う。

 年齢は離れているが、その大きな目といいスタイルといい、みゆみうとの確かな血のつながりを感じる。


「最近は秋真くんもまた来るようになって嬉しいわ。二人も嬉しそうだし」


「し、静香さん! ……い、いや、攻めるって決めたんだった……はいあーん」


「あ、あーん」


 静香さんにあてられて二人がさらに近づいてくる。


「あ、あーん」


 仕方ないのであーんで食べる。

 ……美味し。


「このカレイの煮物はみゆとみうが作ったんですよ」


「そうなのか? めちゃくちゃ美味いぞ」


「「えへへ」」


 二人とも家庭科の成績は良かったから料理は得意だ。


「これ食べて、明日の試合頑張ってくださいね」


「絶対に勝ってくださいね」


「ああ。もちろん!」


 みんなにはべつに勝たなくてもいいって言ったけど、彼女たちのエールに俺は勝たなければなと決意を固めた。

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