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06:ベースボール同好会での練習

 というわけで、対現野球部のために、俺たち元野球部兼未来の野球部はベースボール同好会を発足させた。

 問題の顧問は温厚柔和で生徒の頼みを基本的に断らない古典の先生に頼んだ。練習を見てもらうことはないが有難いことだ。

 で、顧問以上に問題だったのが練習場所だ。


「悪いな。グラウンド借りてしまって」


「べつにいいよ。ボール使うわけじゃないし。それに、お前の頼みだしな」


「今の野球部を倒してくれるんだったらいくらでも協力するぜ! あいつらのせいで俺たち三年の受験に影響が出かねないからな!」


「ありがとうございます」


 とりあえず、友人に頼んで陸上部のグラウンドを借りさせてもらう。

 ランニングだけならという許可の元、俺たちベースボール同好会は月・水・金は体力づくりに努めることになった。

 現野球部のチンピラぶりに初めて感謝した。


「よーし! 4時間しかないし、急いで練習始めるぞ!」


「うん!」


 火・木は県内のグラウンドを借りて本格的な練習だ。

 この辺はどこの学校も広いので、グラウンドを借りなければならない競合相手がいないので週に二回グラウンドを借りることに成功した。


「「「よろしくお願いします!」」」


「そんなにかしこまらなくていいって。俺たちは志築のOBが多いし、今の志築の噂は聞いているから、何とかしようとしている君たちに協力するのは当然さ」


 土曜日と日曜日はOBがいる大学やSNSで知り合った草野球チームに入れてもらう。

 経験者に野球を教えられる人がいないうちのチームにとって、唯一のアドバイスをもらえる時間だ。


 そんな風になんとか練習してきたが、試合の練習という大きな壁にぶち当たった。


 ベースボール同好会は野球経験者が俺含めて4人しかいなく、未経験者が半分以上だ。しかも、俺を除いた経験者の4人も基本的に弱いチームから来ているので試合の経験が圧倒的に足りない。俺も試合なんてしたことないし。

 9人揃ってるだけでも有難いけどな。


「まずはポジションだね」


「うん。まずは経験者の小澤君、須貝君、倉地君、そして、如月君から決めよう」


 ポジション決めは、野球をよく知っているマネージャーの徳井と樫原に任せている。

 彼女たち以外で野球に詳しいのは小澤ぐらいだが、彼には指導という大きな役割があるので彼女たちに任せることになった。


「タオル使いたかったらこっちに来てね~」


「あ、あのあの、スポドリはここにあります……」


 千田と西村の野球未経験のマネージャー2人も働いてくれている。


「……試合まであと2週間か……半分が過ぎたけど、どう思う?」


 小澤に聞かれる。


「どうって言われてもな……俺は試合とかしたことないから何とも言えないけど……みんなやっぱり上手くなったと思うぜ」


「じゃあ問題は……」


「攻撃力だな……」


 現状、うちは打撃が弱い。これは大問題だろう。


「いや、それもまあそうだが、一番はそっちじゃない」


「えぇ!?」


 しかし、小澤に即反対された。


「しょうじき、お前は優秀だから矢羽部から長打を打てると思うんだ。少なくとも、二週間後の試合では。向こうは盗塁対策してないし、お前は足もそこそこ速いから盗塁もできる。あとはバントでつなげていけば点を取れる」


「ゆ、優秀だなんてそんな……それほどでもあるけど」


「だが、それを守り切る守備力がない」


 ……まあ確かに。初心者の集まりだし、エラーも多い


 ちなみに、ここ二週間で気づいたことだけど、俺は結構強いスラッガーだ。自分で言うのもなんだけど。

 快晴島ではほとんどの道が整備されていないし、川とかの遊べる場所に行こうとすると結構な運動量がいる。それに、俺は小学生の頃から漁業を手伝っているので、足腰の強さはそこらの大学生よりもずっと上だった。そして、自然の中で培わられた動体視力もある。


「問題は攻撃か……」


「ああ。そこで考えてみたんだが……おーい! 徳井! 樫原!」


 小澤の呼びかけに徳井と樫原が来る。


「打順なんだが――」


 小澤君が提案した打順はかなり合理的だった……自惚れかもしれないけど。



1中 須貝

2遊 倉地

3補 小澤

4投 如月

5三 長瀬

6二 久野

7右 戸口

8左 浦山

9一 市原



 この打順の特徴はとにかく1~4を経験者で固めて、そこで点を取ることだ。というか、そこで取れないと終わる。


「いいかも」


「でも、俺が投手って?」


 俺は外野手希望だ。外野は俊足の須貝君以外は初心者だとしても、せめて内野においてほしいんだが。


「うちにピッチャー経験者がいないからね。だから、とりあえずピッチャーが決まるまでは強肩でコントロールもいい如月君にお願いしようと思って」


「そういうことなら、俺は大丈夫だぜ」


 サムズアップで答える。体力には自信があるし、いないのならば仕方ない。


「よし。じゃあ、今度からはこのポジションで練習しよう」


「ちょうど明日は日曜日で休みだし、最低限、自分たちのポジションについて勉強してもらお――」


「は、放して……!」


 ポジションが固まったと思った時……西村の叫び声が聞こえた。

 声の方に顔を向けると……そこには現野球部のチンピラたちがマネージャーに絡んでいた。

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