03:双子の幼馴染みと決意
「俺はまだ……お前たちに返事できない……」
俺は公園にあったベンチに座って、隣に座るみゆとみうに返事をした。
「……本当にごめん……まだ、気持ちの整理がつけれてなくて……」
なんとも情けない返事だ。ビンタされても文句は言えない。
でも、彼女たちはそんな俺に微笑み、優しく応えてくれた。
「いいですよ……私たちはいつまでも待ちますから……」
「でも、好きなってもらえるようにアタックしますからね!」
二人の言葉にむずむずとした感じを覚える。
加奈子と付き合い始めた時とはまた違う感じだ。
「……それじゃ、キャッチボールしましょう」
「ひ、久しぶりだけど……動けるかなぁ……」
甘酸っぱい雰囲気を払拭するようにみゆとみうが立ち上がる。みゆの手には、俺がこの公園に置いていた野球のボールがあった。
たぶん、二人も俺と同じで恥ずかしいんだと思う。ずっと顔真っ赤だし。
「……そうだな」
しょうじき、今野球はあんまりしたくなかったが、気を紛らわせたかったのもあるので乗ることにした。
「三人でキャッチボールするのも久しぶりだな」
「そうですね……えい……って、あぁ!」
みゆがあらぬ方向に投げてしまう。
まったく……何やってるんだか……。
みゆは運動神経自体はいいが、ボールを使ったりするのは苦手だ。水泳はめちゃくちゃ速いんだけどな……。
「こう投げるんだ……よっと」
みゆが投げたボールを受け取って、軽く放る。
コントロールには自信がある。一人で練習できるし。
「ほい」
みうにボールを渡す。
「ひゃっ! ……はい!」
みうが慌てながらもボールを受け取り、俺にかえしてきた。
「よっと……っと」
ボールを受け取め、今度はみゆに出す。
「ひゃあ!」
絶対に取れる力で放ったのに、オーバーリアクションで取る彼女がおかしいと思った。もっと信じてくれてもいいのに……。
「……良かったです」
みうが嬉しそうに微笑みながら言った。
「良かった?」
「だって、シュウくんがようやく笑ってくれましたから」
「……笑った?」
自分の頬を触る。
……確かに、俺は笑っていたらしい。
「落ち着きましたか?」
「ああ。ありがとな」
どうやら、彼女たちと野球しているうちに楽しくなっていたらしい。
「それで、どうするんです……か!」
みゆからボールを受け取る。
「どうするって?」
「当然、野球部のことです。このまま引き下がるだけじゃないんですよね?」
野球部……上垣先生が誘ってくれて、みんなで練習して、そして、少しずつ上手くなっていったところ。
なのに、今は真面目に練習していなかったチンピラたちに占拠されてしまっている。真面目に練習してきた同級生はみんな辞めていってしまった。
……許せない。
「ああ。俺は絶対に野球部を取り戻してみせ……る!!」
山に向かってボールを投げて、宣言する。
「プギイ……!」
こちらに突進してきていた猪がボールに当たって倒れた。
「い、いたんですね……」
「ああ。早々ないが、ここには時々猪が降りてくるからな。ほら、痛い思いしたくなかったら帰りな」
猪を立たせ、山へと促す。
そして、二人に向けて頭を下げる。
「ありがとな。ようやく立ち直ることができた。負けっぱなしはいけないよな」
そうだ。このまま引けるか。
「うん! それでこそシュウくん! 私たちにできることがあったら、何でも言ってくださいね!」
「私たちも応援しています!」
二人の言葉に、俺は絶対に取り戻そうと決意を固めるのだった。
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