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12/12

12:ついに始まる

「いやー! アッハッハッハ! ついに明日だなー!!」


「あらあら。じゃあ、そんなに飲んで大丈夫なの?」


「問題ない問題ない!」


 対現野球部の一日前、乾家の食卓はいつも以上にやかましかった。

 我らが監督、上垣昌がいるからだ。


 上垣先生は静香先生と大学が一緒だったらしく、それ以来の大親友らしい。


「いやー! やっぱりこの島の食べ物は美味いなー!!」


 上垣先生はお酒もあってか上機嫌だ。

 ……いや、いつもと変わんねえな。


「それに、この島の食べ物は乳と尻をでかくする成分でも入ってんのかってぐらい栄養あるからな? んー?」


「「ひゃあ!」」


 訂正。やっぱり酔うと変わるわ。

 みゆとみうの胸とお尻を揉みしだく姿は教育者には到底見えなかった。


「私と静香もバストとヒップは3桁近くあるんだが……こいつらはそれ以上だな」


「……やめてあげてくださいよ。困ってるじゃないですか」


「シュウくん!」

「シュウさん!」


「おっ! かっこいいな。だが、これは私のものだ!」


「どこの悪役ですか……」


 呆れていると、ガハハハ! と笑う上垣先生の魔の手から逃れた二人が隣に来る。


「昌ちゃん、すごく酔っぱらっちゃてるから、悪いんだけど三人は秋真くんのお家に避難しといてくれる?」


「はーい。ごちそうさまでした」


「「ご、ごちそうさまでした」」


 食器を流し場に持っていき、俺たちは俺の家に行く。


◇◇◇


 俺の家の縁側で、俺はみゆとみうと喋っていた。


「ついに明日ですね」


「ああ」


「頑張ってくださいね。応援してます!」


「ありがとな」


 二人の頭を撫でる。

 二人は猫みたいに気持ちよさそうに頭をこすりつけてくる。


「シュウさん……コンディションはどうですか?」


「最高だ。絶対にホームランを打てる自信がある」


 かつてないほど集中した練習に絶対に負けたくないという闘争心……今の俺は負ける気がしない。


「あとは失点しないことだな。明日は俺が投げるから」


 変化球には不安が残るのでストレートで押し切るしかないが、前やったゲームでも打たれなかったし、この前の試合でも矢羽部以外打てなかったらしいし気負う必要はない。

 矢羽部さえ抑えれば勝ちだ。


「……勝ったら、告白の返事してね」


「ああ」


 告白の返事……か。

 彼女たちはどっちとも付き合ってほしいと言っていた。

 しょうじき、加奈子の浮気に傷つき、憤った身としては受け入れがたいことだ。

 だが、二人と付き合いたいと考えている自分がいるのもまた事実だ。


 ……それも含めた結論を出すには、明日の試合で勝つ必要がある。


◇◇◇


 そして、運命の日。

 俺たちは高校の野球場に来ていた。

 当然、伊津本や矢羽部、そして加奈子といった現野球部もいる。


 しかし、俺たちベースボール同好会は全員揃っているのに対して、向こうは全員で9人いなかった。

 というか、この前倒した奴らが一人もいなく、全部で5人ほどだ。


「どうしたんだ? そっちは人数が足りないようだが……」


「て、てめえらのせいだろ!!」


「……?」


 上垣先生が尋ねるも、伊津本はただ叫ぶだけで要領を得なかった。

 伊津本はダメだと、矢羽部や加奈子にどういうことだと視線で問いかける。

 すると、二人は恨めしそうな顔で唾を飛ばしながら言ってくる。


「先輩たちが急にお前たちに勝てるわけないって辞めたんだよ!」


「どうせ、あんたたちが何かしたんでしょ!!」


「はあ?」


 どうやら、辞めたらしい。

 まあ、理由はなんとなくわかる。この前ボコボコにしたし、恥をかく前に辞めてやろうという算段だろう。

 なんともまあ……チンピラに相応しい根性のなさだ。


「しかしどうします? あっちに人数が揃っていないと試合できませんよ?」


 上垣先生に聞く。

 さすがに、昨日あんだけ決意を固めたのに不戦勝は不完全燃焼すぎる。


「よし! ならば、タイマンと行こうじゃないか!!」


「……タイマン?」


「ああ! 如月と矢羽部の一打席勝負でどうだ!?」


 なるほど……それならいいかも。

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