夏と冬の怪談奇譚
夢見堂。黄昏時には気を付けて、ヤツがやってくるから。
真っ黒な顔と体。帽子とコートをつけて、口から人の精気を吸い取る魔物、ゆきふらし
怖いものは、夜でも朝でも現れるよ。
そんな時代になりました。
夏の記憶。
腕にこびりついた緑の錆び。
神社に詣でたら消えました。
向日葵の幽霊。
麦わら帽子の美しい少女。
すべてが色褪せて、古いフィルムに載っています。
でも、不思議なんです。
姉のいたところだけが、空席になっているんです。
踏切に飛び込んだまま、戻らない夏の記憶。
傍らにはお地蔵様の笑い声
あの人のつけた傷、日傘の影。
水瓶のメダカが、踊っている。
金魚鉢の中の歯。
水魚が人になって、たぶらかして食べようと竹藪の影でにたにた嗤っている。
お坊様のお化けが、夢の中に現れて殺そうとするので首をしめると、なんと、小金の山になるではないか。
緑色の錆びが、腕にできた。
あの電柱にも、公衆電話にも緑色の錆びが付着している。
どうやら、伝染性の病らしい。
宿場町のお地蔵様に、お願いして錆びを消してほしいと言って、鬼百合を飾ってやると、やがて錆びは消えていった。
街からも緑色の錆びは消えていった。
不思議な事もあるものだ。
風邪ひきそう
夢見堂の隅の彼岸花
雪が積もっています
月夜に狐がコンと鳴いて
寂し気な枯れ芒の上にも雪は降り積もる
黄昏堂、紅堂の夕日にも
座敷童が法螺貝を吹いている
閻魔堂は闇深く
魑魅魍魎が湧いて、宴会を開いている
雪見温泉の中で
冬でも化け物は出るのだなあ
満月ポン
袖引き小僧が、雪の中立ちん坊
どこからか、赤いトイレットペーパーが転がってくる
そこの郵便ポストの影から、おいでおいでをするなまめかしい女の手首
真冬の童話怪談