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久しぶり?

 内股にあたるスースーした感触に不和と羞恥を感じながら、少しでも足を隠そうとスカートの端っこを引っ張る。しかし、そんなもので学生ズボンのような安心感が得られるのかというと答えは否だ。

 

「ほんとになんでこーなっちゃったの!しかも、初日に生徒会室に来て欲しいなんて…」


 入学式が終わった後に来て欲しいと書かれた八雲ちゃんからの通知を見てぼやく。ただ行くだけでそんなに文句を言うなという人もいるかと思うが仕方のない事なのだ。

 だって、入学式会場から生徒会室って遠いんだもの!

 

「なんかじろじろ見られるし…スカートで階段とか怖すぎ…」


 なんなら、一言文句言ってやりたいを通り越して、怖いから早く知り合いに会いたいまである。

 

 ひーひー言いながらなんとか目的地にたどり着きドアを開ける。

 ドアに両手を引っ付けながら恐る恐る声を上げる。

 

「…八雲ちゃーん?…いるー?」


 シーンとした部屋の中に僕の声が響く。あれ?いないのか?

 気を取り直してもう一度。

 

「やーくーもーちゃーん?」


 しかし、状況は変わらない。声が通り過ぎるのみ。入学式会場から急いで来すぎたか?まだ八雲ちゃんが着いていないのかな?

 中で待たせてもらおうとした瞬間、何者かが僕のお腹に手を回す。

 

「ちはーどーしたのー?カワイ子ちゃん?」


 背筋にゾクリとした感触が突き抜けて、回された手を振り払おうとするが力が強く身動きが取れない。

 

「まーまーお姉さん、そんなに暴れないで?ちょっとお茶しよーよ!ねえ…だめぇ?ちょっとだけ…ちょっとだけだから!」


 耳元に温かい吐息を感じる。甘ったるい声で囁かれる。猫なで声だ。でもなんか聞いたことがあるような声でもある。

 いや!そんなことよりも引きはがさなきゃ!

 

「や、やめてよ!とりあえず離して!」

「いーじゃん!あたしら女同士だよ?これぐらいイーじゃん?ねえ、ほら…お姉さん清楚美人だねえ、それにこんな薄い胸って…ハァッハァ…」

「女の子同士って言ってもこれはやりすぎだよ!!ちょ…服の中はダメ!!ダメだから!ん…ふぅ!」


 おへその周りをクルクルと撫でまわされ、思わず声が漏れる。

 

「あは!色っぽぉい!しかも髪も良い匂いするし、もうさいっこう!!ねえ、お姉さん、女同士のめくるめくアバンチュールしようよ!初めてでうまくできるかどうか分かんないけどできる限り優しくするから!」


 荒い吐息を首にかけられながら、スカートの裾に指をかけられる。

 それはやばいさすがに性別がバレる!!

 

 

「何をしてるのですか?」

 

 僕に張り付いている手や足がミシミシという音と共に一つずつゆっくり剥がされていく。背中に感じる熱が引きはがされ、一息つく。

 

 ゆっくり後ろを振り返ると首根っこを持ち上げる八雲ちゃんと…緑色の髪の毛、小さい体躯の女の子。

 

「なにすんの!会長!もう落とせそうだったのに!せっかく入学式で見かけてさ!ここまで追いかけてきたんだよ!これで落とせなかったら責任取ってよね!!」


 緑髪の少女がぼやく。この感じなんだろう…なんかすごく見覚えがあるような…。

 

「何言ってるんですか!いつもそうやって色んな女性に迷惑かけて!」

「こんどのは運命なんだもん!絶対!今度のは違うもん!」

「この前もそう言ってたでしょう!いい加減やめなさい!」

「今回のはほんと!だって、こんなに肉食的になったの初めてだもん!いっつもはもっとかまととぶって、最後に本性出してひかれるだけだもん!今回は初めっから魂のぶつかり合いしたもん!」


 八雲ちゃんに叱られながら、手をブンブンと振り回す少女を見て心に引っかかる。緑髪…子供ぽくって…でも、なんか憎めなくって…。

 

 

「ねる…ちん…?ねるちん…だよね…?」


 間違いない、というかなんですぐ気づかなかったんだろ?身長が伸びて、少し大人っぽくなったからか?いや、そんなことはどうでもいい。会いたかった三人のうちの一人、山田一ネルだ。


「え?お姉さんあたしのこと知ってんの?うそ!運命じゃん!!」


 しかし、向こうはこちらのことに気付いた素振りもなく。事件以降一年間以上放ってしまったからすねているのか。分からないが、気付いてもらえないのは少し寂しさがある。

 

「僕だよ、ねるちん分からない?」


「しかもぼくっこ!?あたしのッ時代来た!ぼくっこ清楚美人があたしの彼女!?うそ!?ほんと!?いや…でも、こんな美人の知り合いいたかなぁ?もしかして…新手の詐欺!?駄目だよ!あたし引っかかっちゃうから!まあ、詐欺だとしてもこんな美人と一晩できる一緒にできるならいっか」


 驚きの言葉を上げながら、思案顔と困り顔を繰り返すネルチン。全く、僕のことに気付く様子もない…。

 何かを察した八雲ちゃんが僕とねるちんの間に割って入る。

 

「ネルさん?この娘…いや、この人は天川夕希さんですよ」

「天川夕希…うへへぇ、可愛い名前……て、天川夕希?」


 人差し指を顎にかけて思案顔で僕の顔を覗き込む。

 

「そうだよ…僕の名前は天川夕希…」

「天川夕希…天川夕希…聞いたことあるような……って、もしかして…もしかしする?」


 急に冷や汗をかき始めるねるちん。


「ええ、あなたが今考えている人で間違いないと思いますよ?」

「え、え、ええ、ええええええ!?…もしかして、男?」


 甘ったるさの失われた焦り交じりの声が部屋に響く。

いつも読んでくださりありがとうございます!

みなさん良いお年を!

(新年入ってもすぐ書きます)

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