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デートのお誘い

 久しぶりに八雲ちゃんから連絡が来た。


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>『面白い店を見つけたので今夜空いてますか?』


『今夜は空いてるよ!面白い店って?』<


>『未成年でも楽しく飲めるバーみたいなところです!』


『へ~面白そうだね、でもちょっと危なそうかも…』<


>『大丈夫ですよ!ちゃんと合法ですし、むしろその辺にかなり気を遣ってる店なので安全です!アクアトリウムってお店です』<


>西園寺八雲がURLを送信しました


---------------------------

 URLの先には様々なレビューがあり、人気は高いようだ。その中には、"お酒みたいに酔えます!"や"未成年でも楽しみたい方にぜひ!"などと書かれており必然的に興味がわく。

 

「お酒みたいか…どんなかんじなんだろ…」


 しかし、夜に女の子とお酒を飲んで二人っきり…。男性の避けるべき状況第一位だ。でも、八雲ちゃんか…。

 長い付き合いで本当に家族のように思っているし、下手したらお姉ちゃんやお母さんよりも安全かもしれない。

 

「よし!行ってみるか!」


 決意を声と共に送信ボタンに込める。

 すると、台所から味噌汁をかき混ぜてる八兵衛から声がかかる。

 

「行ってみるって、どこにですか?」

「えっとね、アクアトリウムってお店なんだけど知ってる?」

「…うーん…いえ、存じ上げませんね…」


 顎に手を当てて首をかしげる八兵衛。しかし、その横で澄ちゃんが大きく手を上げる。

 

「はい!はい!私知ってますです!!」

「え!?ホントに?有名なの?」

「そうです!バーみたいに雰囲気は良い上に、出すのは未成年でも飲めるジュースだけなのでダントクの人たちは良くデートに使うらしいです!!」


 鼻息荒めに自慢をしてくる澄ちゃん。子供らしくて非常にかわいい。

 

「へーじゃあ、澄ちゃんも行ったことあるの?」

「まさか、行くわけ無いです。だって私一緒に行ってくれるような男の子いませんですし…」


 だんだん澄ちゃんの目のハイライトが消えていく。しかし、澄ちゃんが僕の匂いに弱い以上簡単に一緒に行こうとも言えない。

 

「この前も…アクアトリウムに一緒に行った後にしっぽり決めて処女を捨てられたって自慢してきた友達がいて…ほんとに…もう、許せないです!!」


 瞬間、部屋一面が怒気に包まれる。八兵衛だ。

 俯いて言葉を漏らしていた澄ちゃんはすぐさま背筋をピンと伸ばす。

 

「澄…?今の話は本当?」

「えとえと…お姉さま……どの話…ですか?」

「処女を捨てた友達の話」

「えと、あはは…どーなんですかねー?」


 八兵衛がその剣幕だけでなく、澄ちゃんの両肩を掴み逃げられないように問い詰める。

 

「澄?私はあなたに聞いているの…あなたは本当だと思ったのかしら?」

「え…えとえと…たぶんホントだと…思ったです…はい」


「分かったわ…澄」

「…ちょ…お姉さま!?ギャインッ!?」


 そのまま澄ちゃんを投げ飛ばして、すすすと物音を立てずに台所から出てくる。そして、僕の目の前に立ちにっこりと笑う。

 

「行くのやめましょう?」

「え…ええと、…なんで?」

「その理由はご自身で分かっているのではないですか?」


 そりゃそうだ。男児支援者として危険な場所に男児を送り込むのはタブーだ。実際に深夜に男児一人でコンビニに買い物行き危ないお姉ちゃんたちに夜の補講を行われた事件もつい先月ニュースになったばかり。

 

「で、でも大丈夫だよ!相手は信頼できる子だから!」

「相手はどなたですか?」

「えと、八雲ちゃん…前、西郷家のおじいちゃんと会った時横にいた子だよ。」


「じゃあ、ダメですね」

「え!?なんで!?長い付き合いだし…今までだって、特に危ないことは無かったよ!!絶対に何もないって!ただ久しぶりに少し会うだけだよ」


「いえ、ダメです!あの女は危険です、それも他の女とは比べ物にならないほどです」

「ええっ!?八雲ちゃんが!?いや、たまに視線は感じるけどそんなにひどくないよ!」


 八雲ちゃんの名前を聞いた瞬間から八兵衛の眉間には皺が寄りっぱなし。いや、でもな…今まで身の危険を感じるレベルまで行った事なかったし…。


「実際、僕を強姦未遂事件から助けてくれたのは八雲ちゃんだよ?そういう気が在るなら、もうあの時に混ざってるって…」


「そこです!!!あの女はあれだけヤバいのに危機感を抱かせない程、夕希様の懐に潜り込んでるのです!!その事実が途轍もなくおかしいのです!!」


「ええ…でもな…どうして…八兵衛はやばいって思うの?」


「あの女からは臭いがするのです…同性にしか、分からせない臭いが…雌臭ぷんぷんです!!だから後生ですどうか…どうか…」


 頭を下げ僕に頼みごとを繰り返す。

 携帯の画面と八兵衛を見比べる。どうしようか…。

 せっかく誘ってもらった。それにOKしてしまった。その事実が、断るという可能性を薄れさせていく。

 でも、八兵衛の言っていることを信じたいという気持ちもあるし、でも信じたら八雲ちゃんを疑うってことだし…

 

「ううん…八兵衛のことが信じられないという事じゃないんだけど…やっぱり行きたいな…それに、八雲ちゃんが万が一襲ってきても、そん時は僕の見る目が無かったって事で良いんじゃないかな?」


 出した結論は諦め。襲ってこられてもそん時はそん時という日和った考えだ。この世界おける男性の考え方としては失格かもしれないが、僕の女性に寄り添いたいという目標には合致しているだろう。それで良いのだ。

 

 しかし、僕ののんきな声を聞いた八兵衛は膝から崩れ落ちる。

 

「終わった…私の…私の聖域が…私のメッカが陥落してしまう…終わりだ…」

「え、ええと八兵衛?」


「もう終わりです…あの女がこんな絶好の機会を逃すはずがありません、『ちょっと、話疲れましたね…少し休憩していきましょうか…』とか言ってホテル街へ誘いますよ…しかも、当の夕希様も『ホントに休憩だけ?でもまあいいか』とか言って安心してホイホイついていきそうだし、この天然小悪魔のせいでくそぉ…私は天然小悪魔が本当の悪魔に食い物にされるのを黙って待つことしかできないのか!?くそぉくそお!!」


「いや…さすがにそんな誘われ方したら分かるよ」


 床にうずくまったまま周囲の空気をどんよりとさせて、地面に拳を当てる。いや、そんな事されても…断ったら八雲ちゃん悲しむだろうしな…。

 どうしようか途方に暮れる。

 そんな時、背中をちょんちょんとつつかれる。

 

「それならお姉さまとお兄様が一緒に行けば良いです。お姉さまがその八雲とかいう女から守れば良いではないですか!」


 天啓を得たり、八兵衛が勢い良く立ち上がる。

 

 

 

「そうです!夕希様!一緒に行きましょう!!」

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