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転生したからには!!

 あれから一週間、すべては終わったのだ。もう道元がちょっかいをかけてくることも無くなった。噂では僕たちの悪口をグダグダ言ってるらしいが、手元には録音した彼の言質もあるし、実害はないので放っておくことしている。

 それにしても、成功するかどうかも分からない作戦だったが実行しておいて良かった。教室の夕日の中で微笑む彼女を見てそう思う。

 

「夕希様どうしました?、そんなに私の顔を見つめないでください…少し恥ずかしいです…」


 本当に八兵衛の雰囲気が変わった、言葉遣いや表面上の態度はあまり変わってないけど、なんて言うんだろう?深みが増した?あと、少しだけ物理的距離が近くなった気がする。

 

「八兵衛良く笑うようになったよね?」

「そ、そうですか?気が緩んでる証拠です…精進します…」

「いやいや?そういう事じゃなくて…なんていうだろう…可愛くなった?」

「…っつ!?……ありがとうございます…」

 

 そんな時、クマちゃんが教室に駆け込んでくる。

 

「おい、天川はいるか!?っといたぁ!!良かった!!なんか、西郷家の前当主と西園寺八雲ってやつがお前に会いに学校に来てて、呼んできて欲しいって!!んで、その!まあとにかく来てくれ!!」


 慌てた様子のクマちゃんがしどろもどろに説明する。

 クマちゃんは僕と西郷家のやり取りを全部把握しているから当然の事か。

 

 なにか僕にやり返しを企んでいるのか?それに、なんで八雲ちゃんまで一緒なのか? 疑問は深まる。

 

「何はともあれ…戦いはまだ終わってなかったようですね…どこまでもお供します」


「これが最後になるといいんだけど…いや、これを最後にしよう、クマちゃん!案内してくれる?」


「っておい!クマちゃん言うな!ってそれどころじゃねーな、まあいい!ついてこい!!」


 僕たち二人は連れ立って、クマちゃんの後についていく。






「この部屋だ入ってくれ…」


 通されたのは、学校の持つ客室の一つ。わざわざ学校側がこんな部屋を用意するということは相応の地位を持っているということの証左。

 

「何かあればすぐに私を呼ぶんだぞ、私はお前の先生なんだ。いくらでも頼ってくれ」


 クマちゃんが頼もしい言葉をかけてくれるが、これ以上迷惑をかけられない。心を引き締め直す。意を決してスライド式の扉を開ける。

 


「おお!来たか!!天川君!!」

「夕希君!お久しぶりです!待ってました!!」


 

 しかし、そこにいたのは笑顔の八雲ちゃんと…

 

「庭師のおじいちゃん?」

 

 初めて西郷家を訪ねた時にメイドさんを呼んでくれた庭師の人だった。

 

「そうとも、わしも久しぶりじゃの?天川君…」


 頭の中で疑問符が駆け巡る。西郷の前党首?このおじいちゃんは?それに八雲ちゃんもなんか笑顔だし…?

 

 不意にブレザーの裾が引っ張られる。

 

「ゆ…夕希様?これはどういうことですか?ご隠居様と顔見知りって?それに横の女の子は?なんか…見覚えがあるような気がするんですけど…思い出せない」


「ごめん!僕も状況が分からなくて…横の女の子は僕の友達の女の子で、このおじいちゃんは初めて西郷家に行った時に庭師をしてた人で偶然少し話しただけで……って、この人がご隠居様?ってことは前党首様!?」


 新しく出てくる情報に驚きが隠せない。そんな僕の様子に前党首様はご満悦のようだ。

 

「驚かせてしまったかの?わしが前党首の西郷門左衛門じゃ。隣にいるこの子の紹介は君らもよう知っとるじゃろ?西園寺八雲ちゃん、天川君の前の学校を経営している西園寺家のご息女じゃ」


「じゃ…じゃあ、なんであんな庭いじりを?」

「ただの趣味じゃ」

「しゅ…趣味ですか…」


 あんぐりと口を開ける僕。でも駄目だ。この人は敵である西郷家の最後のボス気を引き締め直して顔を作る。

 

「で…今日は何の用なんですか?」

「まあ、そう怖い顔をするでない、ほらニッコリスマイルじゃよ。ニィイイイって…」


 そんな、僕の気の尖りを察知して、必要以上に笑顔を作る前党首様。なんか気がくるうな…。

 

 

「まあ、そんなことは置いといて…このレンガ見覚えがあるかの?」



 ふと、ごそごそと胸ぐらに手を突っ込みごとりとレンガが欠片を机の上に置かれる。

 それは僕が壊した西郷家の客間の暖炉の欠片。道元との戦いの最中に落としたレンガの欠片だ。これは素直に謝ろう。許してもらえなかった場合はクマちゃん案件だ。だってクマちゃんも同罪なんだから。

 

「ええと…ごめんなさい!!ええと、その暖炉壊しちゃって…その」

「ほっほっほ…謝らなくても良い」

「っへ?」

「ほっほっほ…知らずにこのレンガを持ち去っておったのか?やはり君は持っておるの!ほっほっほぉ!」


 そして急にレンガの肩まりを…バキリ!!真っ二つにする。

 すると中から電子機器の類がばらばらと出てくるではないか…。

 

「これは…カメラと小型ハードディスク?」

「そうじゃ…その通り、そして中身は予想が着くかの」

「ええと、客間に会ったってことは、もしかして…」


 もしかして…もしかして…僕の胸が高鳴る。

 

「「犯行現場の映像!!?」」


 八兵衛と僕の声が重なる。

 

「そうとも…道元は自分の悪戯を映して楽しんでいたようでな…もちろん…八兵衛君が取り押さえられるまでの一連の流れも映像化されておったよ」


 悲しそうに…申し訳なさそうに…レンガをいじる。

 

「どこで、育て方を間違ったのか…わしが甘かった…男だからと大事に育てすぎたわい…本当に二人には申し訳なく思っている…現当主、道元ともにわし直々に教育し直す、民事裁判結果…西郷家の実態…すべて西郷出版の力を使い世間に公表する。本当に悪かったのぉ…」

 

 俯き首部を垂れたまま上げない、前党首様。その姿はとても小さく見えた。

 そんな姿に唇を引き結んだ八兵衛が答える。

 

「もう、いいです…もう、私は救われましたから…それに、西郷家を辞めたことで最高の男性に出会えましたから」


 笑顔を僕に向けてくる。憎い相手のはずなのに…強くなったな。

 そんな八兵衛に僕も笑顔を返す。

 

「八兵衛がこう言ってることですし、僕から言うことはありません」

「すまんのお…すまんのお…」


 

 ずっと頭を下げたまま謝り続ける前党首様。

 そんな状況に不意に八雲ちゃんが声を上げる。


「ご隠居様、話の続きを…」

「そうか…そうじゃな…」


 頭を上げ、真剣な表情をする前党首様。急にその姿から圧と威厳が発される。

 

「それで、このカメラをとハードディスクこの二つを君に渡そうと思っておるのだが、その代わりに一つ聞きたいことがあってな…」


「聞きたいこと…?」


「ほら…前に君の為したいこと、君のすべきことを聞いたことがあるじゃないか、あれをもう一度聞きたいと思ってな…」


 前と同じように、僕に質問を投げかける。

 しかし、前と違って一つも笑いなど無い。真剣そのものの表情だ。

 

 だから僕も胸に手をあてる。

 

 僕のやりたいこと、為すべきこと。八兵衛の涙を思い出す。八兵衛の謝罪を思い出す。胸に問いかける。

 僕は何をやらなければいけないのか?

 

 そんなことはとっくのとうに…あの夜に決めている。

 胸に浮かぶ考えを伝えるだけだ。

 

「僕は…女の子の味方になりたいです」

「ほう…」


「こんな世界で…いや、こんな世界だからこそ女の子を守らなければいけない男が必要なんだ…だから僕は、僕がそんな女を守れる男の中の男になるんだ!!」


 発した言葉は考えて出した結論でもない。しかし、それは僕の胸にすっと馴染んでいく。そうだな、僕は女の子を守るためにこの世界に転生したんだ。

 

「夕希様…立派です…」

「夕希君…やば…かっこい…耳孕む」

 

 頭の中で女神が<<そんなことないから…さっさとえっちシーンを私に見せてください…さっさと夕希えっちシーン回収させてくれないと…>>とのたまっているが無視だ。僕がそう感じたのだ。誰にも否定はさせない。

 

「ほう、そうか!それが天川君の結論か!ほっほっほ!それは良い!!そうか、そうか!」


 前党首様は嬉しそうに手を叩いて笑う。

 何がそんなにおかしいのか分からないが、僕も笑顔を返す。

 そんな僕に再度ニヤリとしたり顔を質問をしてくる。

 

「そうか…君の結論に当てはめると救わなければいけない少女がいるのではないか?」


 その質問にも自然と三人の顔が浮かんだ。

 僕のフェロモンにやられた三人のことだ。今どうなっているかは分からないが心優しい三人の事だ。何かしらの後悔を抱いているだろう。

 

「います、それも三人会いたい人が…僕が守らないといけないかもしれない人が」

「そうか…その子たちは今どこに?」


「前の学校に三人とも…」


 その瞬間に八雲ちゃんがいる理由を察した。この人どこまでわかってこの場所を用意したんだ!?

 

「そうか、なら前の学校に戻らないといけないとじゃな!!八雲ちゃん!学校の受け入れはできるかいの?」


「もちろんです!ただ…ダントクに転校した理由が理由ですから、戻るのには世間の反対があるかもしれません、だから…転校という形では無くて高等部からの入学という形のほうが良いと思います!」


「ほう!そうかい!なら決まりじゃな!」


 そして、そこからはお約束のように流れる僕の転学の会話。

 

「ちょ…ちょっと待って!それなら、八兵衛はどうなるの!?ダントクに置いていくなんてそんなことできないよ!?」


「大丈夫ですよ?学園は五条さんだけでなく虎山先生の受け入れを準備しています。だから、安心して戻ってきてください!」


 僕の心配事も八雲ちゃんにすぐさま返される。

 こうして僕がダントクから出ることが決まった。

 

 でも、再び級友たちと会える。そのことに胸が高鳴る。

 あの三人、

 赤髪の少女―相馬美晴

 緑髪の少女―山田一ネル

 蒼髪の少女―アスタージュ・メーランド

 

 その三人に会いたい。

まさかの締めの話を遅刻、寝るまでは今日ということで許してください。まさかの難産がここで発動してしまいまして…。

とりあえず、ここで二章終了です。色々書こうと思ったら、こんなに文量が多くなるとは…。次章はもうすこし考えまとめて書くことにします。とりあえず高校までの閑話を書くので、休むとかはしないです。むしろ更新速度上げたい。

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