やりたいことやらなければいけない事_2
西郷家の前へ二人で立つ。そしてそのまま、インターホンを押す。
そして昨日のごとく出てきたのは真っ白いフリルの翻しながらのメイドさん。
「ようこそいらっしゃいました夕希様、それと…」
そしてメイドさんは僕の後ろにいる八兵衛に冷たい一瞥をくれ、僕へ向き直る。
そして、低姿勢で僕にお願いをして来る
「申し訳ありませんが後ろの方の入館は控えていただくよう…」
「それはできません」
しかし、そのお願いを僕は途中で遮る。
「すみませんが、この子を道元君に会わせたいんですが!」
「は?その子を…?」
交渉は強気一歩も引かぬ姿勢を見せる。その様子にメイドも少したじろいだ。
しかし、そんな攻防も八兵衛に裾を引っ張られることによって中断。
耳元に顔を近づけ囁く。
「…夕希様!夕希様!…私は西郷家のブラックリストに載っているような女ですよ…入れてくれるわけ無いじゃないですか!?どういうつもりなんですか?」
「ん?大丈夫だって!頼んでみたら行けるんじゃない?ていうか通れるまで頼むつもりだし」
迷惑行為上等!むしろ、そうしなければ自分の意思を通すことができない。
八兵衛の静止を振り切ってもう一度頼んでみる。
「一緒に入らないと意味が無いんです、お願いします!!」
「…そう言われましても…、」
困った顔をするメイドさん。メイドさんも仕事だからなんだかんだ引く気はないみたいだ。
「夕希様のみでしたら入館は許可しますが、後ろの方も入れたいようでしたら事前に当主様にアポイントメント取ってから再度お越しください」
ぐうの音も出ない正論を突き付けてくる。
その時、頭の中に一つの声が響く。
<<やり方が下手くそですよ…ゆう様>>
「…!?」
急に響く声に驚いて周りを見渡す。
その僕の動きに八兵衛とメイドさんは怪訝そうだ。
<<こっちです…こっち…頭の中ですよ…ふふふ…ほんとに可愛らしいですね…>>
頭の中!?鮮明に響く聞きなれた声。そうか…あのくされ女神様か…
僕は回りに聞こえない様に携帯電話を取り出して、通話をするふりをしながら女神様に返答する。。
「女神様ですか?…何ですか…何なんですか…この忙しい時に…」
<<ふふふ…そうです…あなたの女神ですよ。うふふ嬉しいですか?>>
「そんなのいいですから…用事がないならもう無視しますよ…いいですか?」
<<あ~ん、待ってくださいよ~!ゆう様のいけずぅ~>>
「じゃあ早く話してくださいよ…!手短に…!もうこのやり取り面倒くさいです!」
<<仕方ないですねえ…なら単刀直入に言います。あのメイドに色仕掛けしなさい…>>
「は?」
嬉々とした声で提案してくる女神様。色仕掛け…?僕がやるのか…?
<<さっきから、あのメイドに入れてくれの一辺倒、それでは通りませんよ。しかも、このまま上の立場の方が出てくるとますます難しくなりますよ!だって八兵衛ちゃんはこの家にとってやばい女なんですから>>
「いや…たしかにそうだけど…色仕掛けって、僕そんなことしたことないよ…」
<<大丈夫ですって…ゆう様は美人さんですから…あのメイドもちらちらとゆう様の胸元見てましたよ…ほら、今もゆう様のお尻を舐めるように見てます>>
そう言われた瞬間、驚いてガバリと振り返るとメイドさんとガッツリ目が合った。
メイドさんは恥ずかしそうにプイっと目を逸らす。
<<ほら…雌の顔をしてたでしょう…あんなものちょっとあそこ握らせてやれば、この門もガバガバになりますよ…うふふ>>
「はぁ!?…それを僕が言うの!?」
<<私が言葉を乗っ取って代わりに話してもいいですけど…最後まで行っちゃう可能性大ですよ?それでもいいんですか?>>
女神様に言葉を乗っ取られて、メイドさんに門を通してもらう所を想像する
だめだ…通されても、西郷道元の所ではなく、寝室に通されている未来しか想像できない。
「それは絶対にダメ…でも、自分でやるのも…」
<<どっちにしてもやらなきゃなんないですよ…さあ!!いざ!!>>
女神様の言葉に冷や汗をかく。やんなきゃなんないのか…?
恥ずかしい上に失敗したら寝室直行のこの大博打を…。
その時、後ろから肩を叩かれる。
「夕希様?大丈夫ですか?顔色が優れないようですけど…?お電話の相手ですか?」
心配そうな八兵衛の顔。
手は震え、目は潤んでいる…。
そうだ…この八兵衛のために全力を尽くすと誓ったことを思い出す。
僕は何を呆けているんだ。気を引き締め直す。
「大丈夫だよ!八兵衛!心配しないで」
そう言いながらメイドさんへと歩を進める。絶対に引かないぞ…強い意志を持つ。
ツカツカツカ…メイドさんとは後20センチ程という所まで近ずく。
「な…なんでしょうか…?」
グィッ!!顔を吐息のかかる距離まで近づける。
頭の中で<<いけえええ!!やれえええ!!ぶっちゅうううだああ!!>>と上品な声質で下品な言葉が響く。
そんな言葉も無視して、僕はメイドさんの喉に手を置く。
「ちょ…ちょっと…ふぇえ!?」
メイドさんの顔は真っ赤だ。恐らく、僕の顔も真っ赤だろう。恥ずかしくてたまらない。
でも、やると決めたことだ。動きを止めてなるものか。メイドさんの喉をゆっくりとなでる。メイドさんは身を捩るのみ、攻めるなら今だ。
「や…やめて…くじゃしゃい…の…喉はよわいんじぇしゅ…」
「そ、そのぉ…こね…くぅ…駄目だ言えない…」
だ…駄目だ。自分で考えたセリフでも恥ずかしさが勝る。言葉が詰まる。
<<何やってるんですか!!もう、ここで完堕ちさせなきゃ逆に危ないですよ!!やるなら徹底的にやりなさい!!>>と頭の中で檄を飛ばされる。うるさい!!僕だってやるって決めてるんだ!!少し待っとけ!!
大きく息を吸い覚悟を決める。
「こ、こねこちゃん!!か、かわいいぜ!お、お前は!!」
「…!?ふぇ!?い…いまなんて!?」
「こ、こねこちゃんはそんなふうには…な、鳴かないぜ!」
「え…ええ!?ええと…みゃあ、みゃあ!」
「そ…そうだ…いい子だ…」
「みゃああ…みゃああ!みぃい!!」
顔を真っ赤にしながら、喉を僕の手にこすり付けてくるメイドさん。
でも、あえて僕はここで手を後ろに隠す!!
「みゃああ!…はっ…何で隠すんですか!!も…もっと!!」
涙目に懇願してくるメイドさん。メイドさんはセクハラを気にしているようで、自分からは手を出さない。だからこそ、僕が餌をちらつかせても、鳴いてガン待ちをする以外はないのだ。
「ほーら、ほーら!」
僕が手を左右にひらひらと動かすと、メイドさんは目だけが物欲しそうに見るのみ。
「こ、この手が欲しいんですよね!」
「ふしゅーー!ふしゅーーー!!しょ…しょうでしゅう…欲しいんでしゅうぅ」
メイドさんの目はハートに輝いている。手足はがくがくと震えているが、表情は喜悦そのもの。機は熟した。
「じゃ…じゃあ!!門を開けてください!!それなら考えます!!」
「…で…でもぉお…」
まだ少し理性が残っているようだ。僕は最後の理性を崩すようにメイドさんの唇をプルンと一撫でする。
「ん~、&~!#+*!!???」
「はやく開けないとこの話は無かったことに…」
「あ!!あけましゅ!!あけましゅう!!門も私の下の門もあけましゅうう!!」
そう言いながら震える手でリモコンを操作し、その大きな門を開ける。
メイドはこと切れたのか、その場で失神した。
瞬間…
「八兵衛!!開いた!!行こう!!」
「ふぇえええ!?」
八兵衛の手を取り館の中へ走り出す。
西郷道元に会いに、真っすぐと館の中へ!!
<<ゆう様…これは、予想以上です…くふふふふ>>
頭の中で女神様の声が響くがそんなことも気にしてられない。
いざ!!対面へ!!
食あたりしました…みなさんも食べ物には気を付けてください…




