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先生も頑張ります!!

「ったくぅ!!授業プリント作ってたら遅くなっちまったぜ…天川まだ起きてっかな?それにしても、鍵開けてるから勝手に入っといてって…俺じゃなかったら絶対襲われるよな~全く教師ってのもつらい仕事だぜ~。」


 ぼやきながら男子寮の廊下を歩く。しかし言葉とは裏腹に、その足取りは軽く二歩進むごとにステップを踏むほどだった。目尻は下がり口角は自然と上がる。口笛をも吹き始める。

 そうして歩いていると向こうから、慌てて歩いてくる男性がいた。


「~♪~♪♪」

「ちょ…ちょっと!!虎山先生!!」

「お…布川君じゃねーか、どうした?」


「どうした?じゃないですよ!!今日、生徒の中でご家族が会いに来られている部屋があるんですよ!」

「へえ~そうなのか、それで?」

「"それで?"って…寮長なんだからそんな口笛吹いてないで、風紀を守って下さい!!」

「ああ~なるほどな、まあいいじゃねえか…どうせお飾りの寮長なんだし」

 

 自分は男性に警戒されにくい傾向のあるロリ体型…いや、少々小さめの体だから、教師の中から任命されただけだ。書類仕事も実務もこの事務職員である布川君に任せきっているお飾り寮長だ。


「"いいじゃねえか"って…もっと自覚を持ってですね!!」

「はいはい…またあとでな」

「ああ、ちょっと!!虎山先生!?」


 食い下がる布川君に軽く手を振り歩き出す。今はそんなものよりも夜に遊ぶ約束をしている天川夕希のことだ。男にあるまじき豪胆な性格をもつ気になっている少年に思いを馳せる。


「まあ、でもそんなどこぞの知らないご家族よりも今日の作戦だ…部屋着は精一杯おしゃれしてきたけど大丈夫かな…あとは臭いとかか…」


 窓ガラスに自分の体を映し、くるっと一回りしてみる。虎柄のショートパンツは苗字の虎山を、クマさんプリントの入ったトレーナーは名前の熊子を表しているお気に入りの部屋着コーディネートだ。同僚にはセンスが無いと一蹴されたがお気に入りったら、お気に入りなのだ。


「そ…それに、も…もしかしたら今日は自己紹介の時の"先生のことムチャクチャにしたいな…"って言葉を実行してくれるかもしれないし…」


 顔を真っ赤にしながら、今後起こりうるかもしれない期待に胸を躍らせる。気持ちの整理はつかないまま気付けば彼の部屋の扉の前だ。軽くノックをしてみる。


 ッコン、ッコン…


 中から返事及びそれに類するものは返ってこない。なるほど寝ているのか…これは勝手に入れという事か…恐る恐るドアノブに手をかけ、部屋の中に足を踏み入れる。


「おーい!天川ぁ昨日言ってたゲーム持ってきたぜ!昨日言ってた通り時間通りに来たぞー!!」

 

 廊下の途中で急に鼻の奥に忍び込んでくる異様に甘ったるい匂いを感じる。

 いつも天川から感じる落ち着いた、草原の様な香りとは違う。

 警戒をしながら少しずつ歩を進める。


「入るぜー天川ぁー、って、なんだこの臭い…なんかいつもの匂いとはちげーぞ…ってお前ら何してんの…?」


 何らかの機材を持って横たわっている天川、その上には二人の半裸女性がいがみ合っている。よく見れば天川の衣服もはだけているではないか!?

 気づけば天川を救うために女二人の中に飛び込んでいた。

 

「てめえら!!天川に何してやがる!!離れろ!!」


「はあ!?あんた何よ!!強姦魔!?そんな奴はもう飽きるほどいるのよ!!帰りなさい!!」

「そうですよ!!!お姉さんは忙しいんです!!幼女はおねむの時間です!!」 



「あたしはもう28歳だあぁあああああ!!!!お前らの倍近く生きてんだぞ!!すこーーーーーしばかり小っちゃくたってな年上に対しては尊敬の念をもって対応しろよ!!」



 二人の散々な言いように溢れていた怒りがさらに沸騰する。しかし、それに対して女性二人も黙っているわけではない。


「こんなちんまいのが28歳!?嘘つくのも大概にしなさいよ!!私より一回り以上小さいじゃない!!」

「それに、大人って言うには服が子供過ぎます!!くまさんプリントって!!それに虎縞を合わせるなんてわけわかんないですし!!嘘はやめて帰ってください!!」


 二人して入ってきた異物を除去するように熊子を排斥する。

 しかし、熊子を排斥した後はまたくるりと回り二人して取っ組み合いを始める。


「それよりも童貞を奪おうとするこっちの方が危ないわ!!」

「そうです!!幼女に構ってる暇はない!今が人生で一番大事な日なんです!!下がっていてください」


 しかし、仮にも自分はこいつの倍は生きているのだ!!負けてられるか!!


「ああん!?尻の青いガキには分からないのか!?このおしゃれさ加減を!!可愛いだろ!!くまさん!!」


 ――聖戦が始まる。

 ちなみに夕希はこっそりとジェイソンの部屋へと退避していた。



 ……


 …


「それでね、最後はお姉ちゃん大好きって言ってくれてね…夕希の良さはあの女を雌に返す、あの笑顔が最高ね!!」

「分かる!!それに天然で言うあのセリフも凶悪だよな!!」

「ですです!!しかもあの可愛らしいお口で言うもんだから相乗効果で頭がおかしくなるんですよね!!あの絵本でしか見たことが無いガンメンキジョウイ?とかいうのをしてみたくなります!!」

「確かにな!!でもあの感じだったら耳元で一時間ぐらい囁いてもらう方が憧れるぜ!!」

「あ!!あたし五分くらいなら頼んでやってもらったことあるわよ!!」


 三人は体中に絆創膏を張り、チップスにコーラで猥談をしていた。

 雨降って地固まるとはこのこと。果たして!!夕希の未来は大丈夫なのか!?

 

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