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母:綾子

 夕希がこの世界に転生してから6年が経っていた。

 名前は前世と変わらずに、天川夕希、これは女神さまの好意で偶然にそうなるように設定されたようだ。


 現在、夕希の目の前には妙齢の女性がいる。


 黒髪ロングはつややかで、グラマラスでその身長はとても高く…というか夕希が小さいだけである。

 その女性とは夕希の母、天川綾子であった。そして夕希は現在6歳、その身長差は当然のことである。


「はーい、今日もお着換えしましょうねー」

「お母さん、僕ももう7歳なんだから、着替えは一人でできるよ…」

「何言ってるの!ゆうくんは大事な男の子なんだから、お母さんが手伝わなきゃダ~メ」


 といいながら綾子は夕希のシャツに手を入れて背中をなでる。


「お母さん!?なんで、着替えの途中に僕の背中をなでるの!?」

「んふふ~、手があたっちゃうのは仕方ないわ」


 こういって、綾子は毎日着替えという名目で堂々と息子にセクハラをしているのだ。

 もうセクハラはやめさせられないので、このお着替えタイムをやめさせるしかないのだが、夕希が強くやめてと言っても春に「ゆうくんはお母さんのこと嫌いになっちゃったの!」と泣かれるので、ついつい許してしまうのであった。


 それでも夕希は(いつか、このお着替えをやめさせなければ…)と思いながら転生されてからの7年間に思いをはせた。


 ここは、やっぱり異世界であって<<二の島>>と呼ばれる場所に住んでいるらしいということ。

 文明レベルは前世の日本と同等、というか社会構造もほぼ同じであるということ。

 しかし、何よりも男女比が1:100だということ!


 そのため、精子バンクが存在していて、多くの女性はそこから精子を得て子供を産んでいるという現状も存在している。

 その例に漏れず、綾子も同様に精子を購入して、夕希を産んでいるのであった。

 また、そのせいでこの世界の女子は男子に対して恐るべき肉食性を持っているのであった。


 (男であって、圧倒的フェロモン過多性質をもつ僕はこれから年を取るごとにやばい状況に会うんだろうなあ…)

と夕希は顔をしかめる。


「ふふ、ンっちゅ」


 チュッと綾子にキスされることによって思考を現実に戻された。もちろんおでこにだが。

 この世界では小さい子供であれ、男性の唇は神聖視されており、いくら綾子であれ軽々しくすることはない。

 まあ、実の母と息子がねんごろになるというのもこの世界では全然ある話なのだが。

(まあ、僕はないだろうなあー…)



 するとドドドという勢いのある音とドアが開けられた。姉である天川朝美であった。


「ゆうき!着替え終わった!?早く学校行くわよ!ってお母さん何してるの!」


 完全に母にキスされてるのを見られてしまった。


「ゆうくんが隙だらけだからしちゃった」

 語尾にハートマークを付けるように悪びれない母


「ゆうきもなされるがままにチュウされんじゃないわよ!」


 と怒る朝美が夕希に振る。

 女性同士の喧嘩は前世にトラウマがあるので夕希は


「姉さん!学校に遅れるから早く行こう!」


 と、朝美の手を握った。


「し…仕方ないわね////ほ、ほら、かばん準備しといてあげたから!」


 手を握られた朝美は少しほほを染め、怒りを完全に忘れていた。


(実姉はチョロインなのかもしれない)

 夕希はそう考えて姉の顔をみると今にも夕希を食べてやろうという顔していた。


(ブルッ…前言撤回だ、これはチョロインなんかじゃない虎だ!虎!いつでも僕を食べる準備はできてるんだ!?)

 夕希は少し不安になりながらも学校へ向かうために家を出た。

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