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帰り道

 

 自己紹介以降は特に大きなことが無く一日が終わる。

 ダントクってかなり偏差値が高い事もあって、勉強についていけないかと思ったがそんなことは無かった。前世で薬学部の受験戦争を乗り切ってるだけあって、中学の内容くらいでは躓くことはなさそうだ。

 家で自習する必要もないので、片っ端から教科書を置き勉する。

 そんな時に声がかかる。

 

「ヘイ!天川?今日この後にナタちーとカラオケ行くんだけど天川と八兵衛も来る?」


 そう言ったのはホームルームで手をつないで怒られていたジェイソンという男だった。

 ジェイソンは金髪のハーフで身長も180に近い大男である。精子バンクからの購入が一般化しているため国境関係なくハーフの人が増えているのだ。

 そして、そのジェイソンはナタリアという金髪の男児支援者と腕を組みながら僕を遊びに誘ってくる。

 

「駅前のポケカラってとこに行くつもり、時間があったらでいいんだけど、良かったらどうかしら?」


 ジェイソンの影からナタリアも僕を誘ってくる。

 どうしよう…朝のことや現状のこの状況から見てジェイソンとナタリアの二人は恋人だろう。そんな二人と初見の僕…明らかに僕が浮くという状況が見える。というか、恋人の空間に転校生という異物をぶち込もうとするこの二人の胆力もなかなかすごいな…。

 まあでも、これが彼らなりの優しさなんだろう。だが、僕一人で着いていくのは少し遠慮したいな…。そう思い右横にいる少女に視線を向ける。

 

 ―五条八兵衛だ…。

 

「………」


 僕と同じ黒髪黒目の少女。

 そんな八兵衛は頬杖をついてジェイソンを見ている。そして、そのキリっとした目を僅かに眠たげに伏せる。

 これは一緒に着いてきてもらうのも申し訳ないな。

 

「ごめんね?今日は八兵衛と一緒に帰るからやめておいてもいいかな」


「そういうことなら仕方ないね…また誘うからそん時はみんなで行こうよ!」

「そうね、天川君の歓迎会もしたいしその時は前もって予定を抑えさせて頂戴ね!」


 ジェイソン&ナタリアさわやかに引き下がってくれた。さわやかな二人だ。

 

「歓迎会!?ありがとう!その時はまたよろしく!」

「ああ、男児支援者と仲を深めるのは大事だからね!八兵衛と帰り道仲良くね?」


 そう言ってナタリアと深く腕を組みなおすジェイソン。この二人は男児支援者の関係というものを良好に築けているのだろう。ここまでイチャイチャとは言わなくてもある程度見習わなければならないな。

 

「ありがとう!それじゃあ僕たちは帰ることにするよ」


 クラスメイトの誘いを断りながら、僕と八兵衛で一緒に帰ることにした。

 

 ……

 

 …

 

 街中は治安も良くやや閑静だ。

 そんな街路樹の並木の帰り道を僕たちは無言で進む。

 そして、朝と同じように八兵衛は一つにくくっている髪を左右に揺らしながら、僕の右後ろを歩いているのだ。

 僕は歩幅を少し抑えて八兵衛の横に並ぶ。

 

「八兵衛?今日は朝ありがとうね!危うく自己紹介のタイミングを逃すところだったよ!」


 顔を覗き込んでお礼を言う。すると、八兵衛はやや顔をそらして言葉を返してくれる。


「いえ…当然のことです。それに先ほど私に気を遣ってくれましたし…」

 

 そう言ってまたしばらく無言の時間が続く。

 しばらく歩きながら話題を探すが、そうそう簡単に出てくるものでもない。そんな時八兵衛から声が発せられる。

 

「あの…先生から私が前任者ともめた話聞いていますよね?」


「まあ、それなりには…」


「あの、失礼ですが…断ろうとか思わなかったんですか?…普通の人なら断ってますよ」


「いや…本当に失礼だね…あはは!まあ、朝会って普通な感じだったから別に断る必要が無いかなって思って…」


「それは…朝会っていなかったら断っていたという事ですか?」


「んー?断らないと思うけどな、たぶん結局会ってから決めると思う」


 聞かれたことに対し、自分の素直な気持ちを返す。だってそうだろ…特に確固たる理由もなく断るなどできるわけがない。


「ていうかなんでそんなこと言うの?」


「いえ…私って男児支援者に向いてないですし、私と一緒でも楽しくないでしょ…?今ならまだ間に合うので、断ってもらっても大丈夫ですよって伝えたくて」


「いや…だから断らないって…八兵衛はさ、気にしすぎだよ。もっとリラックスして」


 そう伝えると八兵衛の表情もやや緩んだように見えた。

 二人して夕日のに並木道を並んで歩く。

八兵衛さんはお堅い女の子です。絶対フェロモンなんかに負けないんだから!!

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