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初登校!!_3

 

 教室の中では虎山先生が小さい体を精一杯動かして、ホームルームの進行をしている。先生曰く「俺が全力で盛り上げてやるから、呼んだら自信満々で入ってきな!!」らしい…。

 

 だが、当の本人は…

 

「てめえら!!いつもいつもイチャイチャ見せつけやがって!!だいたい俺だってなあ!!俺だって!!くそお!!」


 教室の隅っこの席の男女が、机の下でこっそり手をつないでいるのを見つけてしまい怒り狂っていた。

 

「ま、まあ?俺だってモテモテな訳…だから、て…手ぇぐらい?つないだことあるから羨ましくもなんともないけどよ?この場で見せつけてんじゃねーよ!!」


 完全に見栄を張って怒っている先生に対し、教室は苦笑いする者と爆笑する者の

半々に分かれている。こういう対応される先生ってのは意外とみんなからの信頼も厚いんだよな…と思いながら教室の様子を見守る。


「お、俺だってな…もう28歳だしな、30までには結婚したいって思ってるよ…本妻、第二夫人は無理でも第三くらいには何とか滑り込みたいって思ってるんだよ…そんな私に対して、見せつけやがって…コノヤロー!!」

 

「先生は年齢より若く見られるから、そんなに焦んなくても大丈夫ですよ…さ、ホームルームの続きしましょう、ね?」


 一人の女生徒が落ち着かせようとフォローに入るが、言葉の選び方が悪く潤滑油となってしまった。

 

「ああん!?年齢より若く見られる??幼女って言いたいのかよ、俺のこと!!ふざけんじゃねぇえ!!分かるか、結婚相談所に行って受付でキャンディ渡されて帰らされた私の気持ちを!!恥ずかしくてそれ以降相談所にもいけてないしよ!!つか、俺の眼鏡にかなう男がいないのが問題なんだ!うん、そうだ!そういう事にしよう!!」


 完全にプッツン後、泣きだしそうになっている。

 

「くそお、今日は調子が乗らねえ!朝のホームルームはもう終わりだよ!!」


 そして、その流れのままホームルームを閉めそうになってしまう。

 

 ……え?終わり?僕の紹介は?やばい、このままだと良くわかんないままそれとなくクラスに混ざって授業受けないといけないのか?絶対後ろの席に全く知らない人が座って授業受けてるんだけど…とか呟かれかねない。ていうか…自分の席自体も分からないから立って受けなくちゃなんない?

 

 教室のみんなは終わりの空気を出し始めていて、先生も締めに入りかけている。

 やばい?やばい!!どうしようこのまま教室に突っ込むか?

 

 そんなことを迷っていると教室の中で一つの手が上がる。

 八兵衛の手だ。まっすぐの姿勢で、そのすらりとした手を真上にピシッと挙げている。

 

「あの!先生!!転校生がいると聞いているのですが、、」


 その言葉を聞いた先生がようやく僕のことを思い出す。

 しまったという顔をして僕に合図を掛ける。

 

「天川すまない!!入ってきてくれ!!」


 最悪の事態にならなくてひとまず胸をなでおろす。八兵衛に感謝だな。

 扉を開いて教室の中へと入っていく。

 僕が入ると同時に教室がざわつく…。

 

「ねえ!あの子めちゃくちゃ可愛くない!?」

「男の黒髪って珍しいね!!」

「すんごぉ…レベルたっか…尊すぎるよ…」


 支援者の人たちは僕の姿を見て色めきだす。男子生徒の方はまあまあそれなりの反応って感じだ。たぶんフェロモンが効いてるんだろうな~と推量する。

 

 まあ、ざわめきの対処もほどほどに教壇に手をついて話しを始める。

 

「みなさん、こんにちは!!天川夕希です!みんなと仲良くしていけたらなって思ってます。これからよろしくお願いします!」


 こういう時に気を付けるべき点は大きな声を出すことと、笑顔を絶やさないことだ。そうすれば話す内容などなんでもいい。

 

「兄弟はお姉ちゃんがいて仲はいい方だと思います。それであとは…支援者は五条八兵衛さんです。……」


 自己紹介はそれなりにつつがなく終わるそう思っていた。その瞬間喉が熱くなる。

 

『<<ええと、僕はムグゥ!!!>>』


 ここで最高の瞬発力を見せる。口を両手でを抑えて声を漏らさないようにする。

 行き場をなくした言葉たちがプスープスーと呼吸になって口から漏れ出す。

 そんな僕の様子を見て、先生も訝しげだ。

 

「お、おい…天川大丈夫か?」


 恐らく大丈夫だ。女神様の力も無限ではあるまい。恐らくあと5秒耐えれば僕の勝ちだ。喉の熱さが収まってくるのを感じる。

 

「あ、天川…?」


 心配そうな先生に大丈夫だというアイコンタクトを送る。もうほとんど喉の熱さは無くなっている。あと3秒、2秒、1秒、終わった…。女神様のペナルティ攻略法を見つけてしまった。

 安心して口から手を外した瞬間。

 

「<<先生のことムチャクチャにしたいな…>>」


 先生にだけ聞こえる声で僕の口から発せられた。あの女神…やりやがった。残りかすみたいなものをこっそり残しておいて油断したところに発動したのだ。こんな所では知恵が回りやがって、あの女神…。

 

 僕に囁かれた先生は顔を真っ赤にして口をパクパクしている。


「せ、先生、ごめんなさい、口が滑りました!みんなも僕の自己紹介は以上です!今後よろしく!!」


 驚いている先生を尻目に席へ向かう。

 こうして僕の転校は完了した。

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