初登校!!_1
八兵衛は先ほどから僕のやや右後ろ1メートルにぴったりと着いてきている。
先ほどのあわあわしていたお転婆感は鳴りを潜め、またあの凛々しい顔に戻って何も話さなくなってしまった。
「あの…学校への道ってこっちであってますよね?」
「ええ、このままで大丈夫です」
八兵衛は淡々と業務的に僕の質問に答える。
そして、また静かになってしまう。
「あの…この辺っておいしそうなパン屋とか多いね?」
「そうですね」
「いい香りだよね~?」
「ええ…」
「え、、ええと…おすすめの店とかってある?」
「すみません…買い食いとかしたことなくて…」
「そ、そうなんだ…」
「はい…」
アイスブレイク失敗。また無言の時間が始まる。
テクテク、テクテクと二人の男女が無音で歩く。
周りの男女を見渡しても、仲良く腕を組むもの達、友達のように歩く者たち、やたらめったら話しかける女の子と不機嫌な男の子。だいたいこの三パターンだろう。 僕たちのように無言で歩く二人は稀有な例だ。
結局僕たちは無言のまま学校まで行くことになった。
……
…
しかし、そんな気まずさも学校の廊下まで。
転校の初日ということで僕は職員室に、八兵衛は普通の生徒なので教室へと別れることになった。
そして今、職員室の扉をノックして扉をガララッ!と開ける。
「すみません!!失礼します!!転校で参った天川夕希です!!虎山先生いらっしゃいますか?」
できる限り、大きな声で挨拶をする。
対応してくれたのは、でっかいゲーミングチェアに座っている人だった。
「おう、ようやく来たか待ちくたびれたぜ!それにしても元気のいい挨拶、気持ちのいい奴じゃねえか!!」
豪快な声を出しながら、ゲーミングチェアをくるりと回しこちらを向く。
ただ、そこに座っていたのは赤髪のちんまい少女。
なぜ、こんなところに少女がいるのだろう。思わず、一度部屋を出て表札を確認する。そこにはちゃんと職員室との表記がある。
「いや?見間違いかな?」
もう一度、職員室の中を見る。
でっかい椅子にちんまい少女。幻ではない、明らかに実体だ。
その少女が僕の様子を見て再度話しかけてくる。
「ん?どうしたんだ?そんなキョロキョロして?」
「あの…初等部の子かな?良かったら他の先生呼んでくれるかな?」
ホームルームまでの時間も迫ってきているので、はやく担当の先生に会わなければならない。そう思い少女に言伝を頼むが、少女はポカンとして何も動かない。
そして、その後しばらくしてから、「ああ~」と納得した顔をする。
「あのな…俺がその虎山熊子、おまえの担任だよ…」
今度は僕がポカンとして何も動けなくなってしまった。
今日は夜にも投稿します。




