事後処理
もう一度、真っ白な空間で目を覚ます。しかし、今度は先ほどのように何もない空間ではない、学校の保健室だ。棚、水道、椅子、色々なものが確認できている。それに…
「ベッドが普通だ…」
先ほどの悪夢を思い出しながら小さな声で独り言ちる。まさか、女神様が夢にまで出てくるとは…あれが本物の女神様なのか、僕の夢が生み出した偶像なのかは分からない。そのため先ほどの夢は完全に忘れることにした。
そんなことを考えていると何かが右横から突っ込んでくる。
「ゆうき!!?よがぁっだぁあ!よがったよおぉお!!」
姉の朝美である。朝美が泣きながら夕希を抱きしめる。
「ごめんねぇ!ごめんね…お姉ちゃんがついてればこんなことにならなかったのに…」
朝美は何度も何度も夕希に泣きついて謝る。なんでこんなに泣いてるんだろう?
とぎれとぎれの記憶を探る。
(ええと、女神様はたぶん関係ないだろうし…もっと前からか…昨日は、普通に過ごして、今日は放課後みんなと勉強して…!?…ああそうか)
僕は三人の少女に襲われたことを思い出す。
ええと…でも、襲われた後どうなったんだっけ?とりあえず朝美から話を聞くためにも一旦落ち着かせよう。
「ええと…お姉ちゃん?一回放してね…大丈夫だから、僕は大丈夫…痛いところも無かったから…たぶん?」
覚えてないので憶測で話すしかない。ただ、あの状況からヤラレていないと断言できるほどの根拠もないから自然と発言にも自信が無くなってくる。
そんな僕に横のベッドから声がかかる。
「お姉さま、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。」
八雲だ。八雲が横のベッドに腰掛けながら話を続ける。
「夕希くんを襲っていた三人とも直接的に性交はいたしてないと思います。私が突入したときにはみんな衣服を着けていましたし、発言も処女のそれでした。」
冷静にそれでいて自信満々といった説明だ。まるで、その一部始終を見ていたといった感じである。
しかし、その説明によって僕が安心したのは確かだ。
それに…記憶なし童貞卒業式にならなくて本当に良かった。初体験の記憶がないなんて恥ずかしすぎる…そう思い八雲にお礼を伝える。
「そうなんだ…ありがとう、八雲ちゃんが助けてくれたんだね」
それにしても、このフェロモン体質…忘れてたけどやっぱりパワーあるな。あんなに良い子達だったのに、一瞬にして狼に変えてしまうとは…悪いことをしてしまった。
僕がもう少し気を付けてさえいればそう思わざるを得ない。しかし、当然の如く朝美の考えは違った。
「そうね、八雲ちゃんがいなければ危なかったわ。今後はそうならないためにもあの三人は警察に突き出したほうがいいわね」
は?え?彼女たちが警察?未遂なのに?それは納得がいかない。朝美の言ってることも分かるが、納得は行かない。彼女たちは僕のフェロモン体質に引っかかってなおかつ耐えてくれた子たちなのだ。そう思うとあの三人にも感謝の気持ちしか湧いてこない。
「あのさ…三人を警察に通報するのはやめてあげて欲しいんだ」
そう発言した瞬間に、朝美と八雲の目のハイライトが消える。
「それはあれですか、あの三人と和姦だったから罪には問わないということですか?私が一人でいる間、あの三人は夕希君と気絶するほどのえちえちをしていたわけですか。そうですか。服を破ったのも、ズボンの中に頭を突っ込んでいたのも合意の上ということですか。そして、夕希くんを気絶させるほど気持ちよくさせて、雌の悦びという悦びを味わい尽くしていたわけですか。なぜ私も入れてくださらなかったのですか。もうほんと辛い。辛い。私のしたことは無駄骨で、NTRだったということですか…ハイ」
「え?ゆうきって彼女たちと致すつもりだったの?駄目よ。初めてはお姉ちゃんとでしょ。なおさら彼女たちには消えてもらわないと…本当に危ないところだったわ。ゆうき!あとは全部お姉ちゃんに任せておいて!」
二人して早口にまくしたてる。なんかよく分からなかったがたぶん反対意見だろう。
この二人を何とかして説得しなければ三人の未来は潰えてしまう。責任は重大だ。
「あの…違うから、本当に違うから…あの僕のフェロモンがね悪いんだよ」
「は?そんなこと理由になんないわよ!結局欲情したってことじゃない!」
「え?いや!違って扇風機が僕の臭いを拡散して!」
「いえ、でも私は耐えられましたよ!何ですか?やっぱり強姦願望ありってことですか?」
「いや…あの…」
完全に2:1の構図が完成している。
駄目だこの二人は頑なに三人を豚箱にぶち込みたいんだろう。
それでも諦めない!三人の人生がかかってるんだ!
「で…でも、本番はしなかったから!!ちょっとお触りしただけだもん!!三人は悪くないんだから!!!」
僕の決死の言葉に朝美は…
「お触りした時点でアウトじゃああああ!!!」
朝美はかなりの剣幕でまくしたてる。ああもう無理かもしれない…そんな不安が過る。
しかし、よく見れば八雲の方は思案顔でぶつぶつとつぶやいている。
「…いや…夕希くんがここまで反対するってことは…もし通報したら好感度下落?…それだけは…それだけは駄目だ…」
八雲はずっとぶつぶつと繰り返した後、急に付き物が取れたみたいに静かになった。
これはもしかしたら八雲ちゃんは説得できるかも?
「これは合意じゃないけど合意だから!!だから許したげてよ!!」
「…そうですね……分かりました。お姉さま!警察はやめましょう。でもお姉さま心配しないでください。私がそれ以外の方法で安心できる方式を探しますから!!」
そう強く言う八雲に対して朝美も怯む。
さらに八雲は朝美に対して耳打ちを仕掛ける。
「それにお姉さま…このまま続ければ、夕希くんに嫌われますよ」
「え?な、なんで?」
「いや…よく考えてください…このままいけばお姉さまは夕希くんにとって友達に臭い飯食わせた悪役ですよ」
「え、ああ…確かに」
「だから、ここは夕希くんに従いましょう」
「わ…分かったわ…」
八雲の説得で朝美は一瞬で意見を変えた。
かくして三人の未来は守られ、平穏が訪れた。
昨日の予約投稿ミスってた…




