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破綻少女は死に想う  作者: 七天 伝
第二章 欲するもの
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騒動前夜

 買い物を終え、再び拠点探しをしていると幸いにも町の外れの方に一軒空き家が見つかった。日も暮れ始めて暗くなってきたのでタイミング的にはちょうどよかった。


 周りに探知系魔法の痕跡がないことや誰にも見られていないことを確認すると2階の窓枠へと跳躍して戸に手をかける。鍵がかかっていれば出来るだけ静かに壊して入る予定だったが不用心なことに鍵がかかっていなかったのでそのままするりと入り込む。


 ストンと床に足をつけるとその勢いでほこりが宙を舞う。どうやらここの管理人はこの空き家に掃除に来ることはないらしい。きっと家を売る気がないのだろう。


 部屋の端に設置してある木製の小さな机と椅子の前にいくと腰に掛けてある小袋を解いてモップ代わりに使う。大雑把にほこりを取っていくと急に右肩が軽くなる。どうやらスイは軽くでも綺麗になるのを見計らっていたらしい。足にほこりを付けるのを嫌ったのだろうか。ちょこんとお座りしたのを見ると小袋を窓の方に持っていって叩きつけてほこりを落としていく。床や設置してある家具や小物は使わないうえに関心が向かないので放置して掃除を終える。


「『何とか拠点は見つかりましたですね』」


「うん」


「『欲を言えばもう少し綺麗な…いえなんでもないです』」


 人格内で総ツッコミでも喰らったのか慌てて言ったことをなかったことにしていく。私としてももう少し綺麗なところが欲しかったのはあるが、特に文句はない。


「『取り合えず、しぃは食事を済ませなさい。その間に我らは少し出かけます』」


「…どこに行くの?」


 椅子に座って小袋を開けながら行き先を聞く。あまり離れないで欲しい、ずっとそばにいて欲しいというのは私の我儘でしかない。一緒にいてくれるだけで心が落ち着いていられる。


 一人になるのが怖い。一人には慣れたつもりだったのになんでか今はそれが辛い。町はずれに拠点を作れたとしても町の中にはたくさんの人間がいる。それがNPCという偽物の命であっても。


 私が人間を憎む根底は恐怖からだ。奴らに脅かされるのを今も昔もずっと恐れている。だから私の心を壊そうとする原因を憎む。蚊や蜂のような害虫を嫌う心理にも似ている。


「『…大丈夫ですよ。そこまで遠くには行かないですし、帰るのも遅くはならないです』」

「ほんと?」


「『そんなに弱気になってどうするのですか。安心するです、あなたを殺すのは我らだけ。人間程度にやるつもりはないです』」


「…」


 眼に混じる色が赤へと変わっていく。同時にぴょんと跳ねて窓枠に立つ。


「『小娘、お前はそんなに脆くはないだろう。こんなくだらないことを考えるくらいならさっさと飯を食って作業を続けろ。今日中には終わるのだろう?』」


 私の悩みをしょうもないと一蹴して冷たく言い放つ。赤の混じった金色の眼をじっと私に向けて。


「『…すぐ戻る』」


 そう言うとばっと外へと飛び出していく。飛び出すように窓から顔を出して辺りを見回しても既に姿は見えなかった。


 私のこの想いをくだらないとアカは言った。実際に皆にとってはくだらないの悩みなのかもしれない。ならきっとそうあるべきなのだろう。皆のように無駄な悩みだと一蹴できるようにならないと。私を想ってくれているのなら、その想いには答えないと。


 この程度のことで弱気になっていてはだめだ。人間への憎悪を膨れ上げさせろ。そう自分に言って聞かせて奮い立たせる。


 取り出しかけていたパンを一つ口に頬張り咀嚼する。《命の杯(ライフ・オブ・アクア)》を取り出すと魔力を込めて水を生成する。口元まで持ち上げていくと口内に残るパンごと水で流し込んでいく。


 一時の満足感を振り切ると右手を机に上に持っていく。手のひらを上にむけるとそこからどす黒い色の魂が一つ現れる。すでに改造がほぼ終わっており、残っていた儚い自我もぐちゃぐちゃになっていることだろう。


「ふぅ…、《操魂(我に委ねよ)》」


 一息ついての魔法を発動する。魂の下に魔法陣が形成されバチバチと紫色の閃光を放ち始める。もう見慣れた光景だ。


 じっと魂の中を覗き込んでいくと残された自我、防衛本能のようなものが見えてくる。しかしその形はもはや元の姿には程遠い。砕き、壊し、練り返されてなお自らの姿形の変化に気が付くことなく。夢うつつの中異形の手足を引きずり無様に踊り続ける。


 でもまだ足りない、まだ完成していない。私に従順な化け物になってくれるように。私と同じ存在に貶めていく。意思を砕いて、自我を壊して、尊厳を悉く潰して、記憶を塗り替えていく。


 そうしていくうちに時間は過ぎ去っていって、どれくらい経っただろうか。固い椅子に座り続けるのが辛くなってくる頃合い。窓枠から声が掛かってくる。


「『今帰ったよぉ、契約主さま』」


「…!おかえり、…遅かった」


 立ち上がってそばに駆け寄る。ミカンはそれに合わせて跳んで私の肩に乗り移る。


「『何を言っておる、就寝時間には間に合っている』」


 アカに言われて端末を出して時間を確認すると21時と表示されている。確かにいつもの就寝時間よりは早かった。でも私の体感的にはとても長い時間を過ごしたような気がした。


「『主よ、改造は終わっているな?』」


「うん、いま終わったところ」


「『ならちょうどいいので明日の予定を話すのです』」


「うん」


 落ち着いて話せるようにと椅子に再び座りなおす。一度立ったからか座りなおしてもそこまで辛い感じはしない。スイも机の上に降り立つと早速話を始める。


 明日は5時に起きて行動を開始する。その時間が国境の警備が夜間組と早朝組で入れ替わる時間帯だ。早朝組が町を出る前に私の作り上げた化け物を町の中心地にある時計台の辺りで解き放つ。そうすることで早朝組がその対応で町を出ようにも出れない状況にする。


 やがていつまでたっても来ない早朝組に国境の魔法士たちは異変を感じ始めるだろう。その確認のために必ず一部の魔法士が国境を離れることになる。厳重な警備ではあるが疲労で行動が鈍くなることと一部が手薄になるのを狙って国境外に出るというプランだ。


 私の行動を怪しんで追跡してくる魔法士もいるだろう。そういうやつらには《偽魂》で幻覚を見せるか、走って振り切る。戦闘は最低限だ。ならしの運動ではあるが国境越えが本命である以上余力は残しておく。


 そのかわりに作った化け物()()はガンガン使っていく。私が力を温存するための道具として。私の代わりに人間どもを殺してもらう。


 ネックなのは魂の回収がはかどらないことだ。奪った魂の数=私の戦力に直結する以上出来るだけ多くの魂を奪うのは必要事項だ。私自身が殺せば魂は安易に回収できるが作った化け物にはそれが出来ない。プレイヤーであればそのまま現実でも死んでもらうことになる。

 町で回収できなかった分は国境での戦闘である程度賄えると想定している。


「『この町の形状は把握している。案内はいつも通り我らが請け負おう』」


「『今さっき巡回ルートも確認してきた。夕方から夜間にかけて巡回していた人間と深夜帯のものらのルートに変わりばえがないのを見ると、道順は決まっているようだ』」


「町からは簡単に出れそう?」


「『そうだねぇ、簡単かもしれない。でもプレイヤーの動向が不確定要素ではあるかな~?武器だとか固有魔法ならデータがあるから分かるんだけど行動原理まではわからいんだよねぇ~』」


「『ここに来る途中で会ったような人殺しを躊躇うような奴であればあなたの敵にはなりえないですよ。生半可な奴であれば相手にすらなりえないです』」


「ん」


「『…問題はないようだな。明日も早いことだ、主はもう寝ろ。時間になれば起こす』」


「大丈夫、起きられる」


 早起きには慣れている。少しでも行動が遅いと嫌な目に合ってばかりだった。だから自然と行動は素早くなった。悪い意味で忘れがたい経験を得ることが出来た。


 話はそこで終わり、端末を取り出していつものようにタイマーをセットすると机の上で右腕を枕代わりに顔を伏せて目を閉じる。固い感触だが木製故にほのかに温かみを感じる。隙間風の吹く部屋の片隅に転がされたり、木の枝の上で寝るよりははるかにましな環境だった。やがて少しずつ眠気が増していき、意識は落ちていった。



お酒の箱に付いているマルタイのラーメンをもらったんで食べてみたんですよ。


お湯沸かして2分半くらいゆでて附属してる粉末スープ入れて混ぜ混ぜしたら完成。

んでずずーっと吸って咀嚼してみるともちもち食感の麺がおいしいの。


下手なインスタントラーメン食べるよりおいしかったかも。

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