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破綻少女は死に想う  作者: 七天 伝
第二章 欲するもの
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再び逃避行の日々

えっ、2章始まるまでに4年かかる人がいるんですか?(´・ω・`)



 ―――《レベー・ルミナス王国》、その首都には過去の魔法少女の偉業を称える石像が建てられている。だからと言って町の人はそれに祈りを捧ぐなどという行為はしない。熱心な信者や旅行者が時々一見しようと訪れて、それ以外は一般人や魔法士が仕事柄通るものばかりだ。


 しかし、最近になって訪れる者が増えた。異世界からきた魔法使いたち…所謂プレイヤーと呼ばれる者たちだ。

 彼ら彼女らは熱心な信者なのだろうか、いや違う。彼らにしか分からないものがあり、それを知るために訪れるのだ。


 いつしか石像に刻まれた未知の文字。町の者は誰も、それも高名な学者の頭脳を持ってしても解読できない不思議な文字は想像を捗らせていく。神からの啓示、遠くの仲間との通信装置、予言のたぐい。事情を知らぬ町人らは井戸の端で噂話に花を咲かせる。


 だが、町のものらは知らない。そこに刻まれているのは死の宣告だということを。各々の家族の、友の、素顔知らぬ知人の死を知らせる掲示板だということを。


 また今日もプレイヤー達はそこに訪れる。デスゲームが始まった日に分かれた友人知人の安否を知るために。


 そしてその死を知って慟哭し、石像の前で祈るように地に頭をつけるのだ。



×××××



「…ふぅ」


 くるりと大鎌を1回しして()()を振り払い左肩に担いで一息つく。あの遺跡で過ごした時間は決して長くはなかったが、いざ外に出てくるとすごく久しぶりなような気がする。


 遺跡から出て2日経った。森からの脱出はおおむね順調…というのは好意的解釈でしかない。実際は少しまずい状況だ。


 私が姿を消してから数日間、どうやら私の討伐隊なる組織は未だに活動を続けていたらしい。そしてその組織のメンバーと昨日、今日と遭遇し続けている。


 いずれも全滅はさせたので連絡がいくことはないと思っていた。しかし実際には優秀な中継役の魔法少女がいるらしく部隊の全滅と、その地点がが伝わっているらしい。


 またティエル・アーディアと相対すれば今度は死ぬ、それは間違いない。あの人間が私を探していると考えると怖い。想像するだけで冷や汗をかくほどに。


 だけど、今は精神的に少し楽だ。私を殺してくれると約束してくれた仲間がいるから。


「『だいぶ魔力の使い方が上手くなったではないか、小娘』」


 右肩からアカの声がかかる。金色に赤の混じった眼をこちらに向けて首を長くしていた。最初は首の後ろから体を軽く伸ばして両肩に足を乗せていたが「『一方に預ける方が楽』」とかで結局右肩に体を乗せている。重心が右に寄るのもこの2日である程度改善できたので問題にはなっていない。


「そう?」


「『ええ、この短期間で想定より早く上達したです』」


 眼に混じる色が赤色から緑色になる。体の主導権がスイに移動したのだ。同時に5本の尻尾を巧みに動かし、風と戦闘で荒れた髪を整えていく。


 スイは私の身だしなみによく気を遣う。今のように髪をよく整えて、服に付く葉や小枝を振り払い、おまけに「『服が全体的に汚いから一度再構築するのです』」とまで言ってくる。それを汚れの塊みたいな大呪塊(アーク・カース)が言うのだからおかしなものだ。


 でも私を一番想ってくれているのは言葉に直接出すことはなくとも分かる。それだけで十分だ。


「取り合えず、ここから離れよう」

「『…そうだな』」


 眼下に広がる肉片や無数の血だまりを視界から外し、いつの間にか入れ替わったアオのナビゲートに従っていく。皆のおかげで《地図》機能とはおさらばした。


「今更だけど、どこに向かってるの?」


 枝から枝へと跳び乗りつつ、時には 進路の邪魔になる枝葉を伐り払いながら話しかける。森の外へ出るということは知っている。でも明確な目的地をこの2日間ずっと聞き忘れていた。


「この森の先に何があるのか知らない」


「『主よ、聞かないものだから知っていると思っていたが…まあよい。この森を出ればすぐ国境の付近の平原にでる。その国境を越えて隣のトリストリアン公国に行く予定だ』」


「『だけど困ったことにぃ、契約主さまのことで国境は厳重警戒なのさ』」


 アオとの話の間に入ってミカンが入れかわる。困ったと口で言いながらあまり困っているようには見えない。


「…ティエルも来ている?」


「『そこは大丈夫、彼女もあなたのことにご執心だけど、仮にも国の防衛の要。だから一度首都へと戻っているよ。いくら強いからと言ってそんなすぐには追いついてこないさ』」


 それを聞くと安心した。彼女の強さは実際に戦ったことで知っている。もう一度やりあうなんてことはあまり考えたくない。


 皆は私が知らないことをたくさん知っている。天気はどうと聞けば「『その日の天候設定は~』」と朝から晩までのすべてを教えてくれる。このゲームの仕様について聞いてみれば懇切丁寧に教えてくれる。


 それでもわからないことの方が多いという。ティエルのような重要NPCの居場所も確定している訳ではなく予測した結果なのだとか。その重要NPCの動きを元に他NPCの動きを予測するから大きく予測がずれるのだとか。私には何を考えているのかまるでわからない。


「でも、国境の警備はどうするの?」


「『強行突破だ、その為に手が空けば作業させているだろう』」


 再びアカが肉体の主導権を奪い話しかけてくる。アカの言う作業というのはティエルと戦った時に使った化け物を作る作業だ。休憩の時や夜寝る前に《操魂(我に委ねよ)》で魂を魔改造している。《操魂》は実はあまり魔力を使わない魔法なので休憩しながらでも魔力の回復の方が上回っていてコスパがいい。

 あと、ミカンが言うには「『もっとクリエイティブなものにすればいいよ!化け物ばかり作る必要はないんじゃない?』」とのことなので頑張って改造している。試しにどんなものがいいかと聞いたら「『動物を元にしてみたら?』」とアドバイスをくれた。


 その改造した魂を利用して国境の奴らをねじ伏せて国を出ていくという強引なプランのようだ。否定するところはない。むしろそれぐらい無理やりなやり方でないと国境を超えるのは難しいのだろう。皆の言うことだから間違いはないはず。


「…ちょっと疲れてきた」


「『魔力が減ってきたようだな…』」


 魔法士、魔法少女は様々な行動に魔力を使う。今みたいに常に全力で魔力を使って跳び続けていれば回復量を上回る。やがて底が近づけば体力が残っていても疲労する。だから定期的に休むか変身を解除する必要がある。だが解除すると全く魔法を使えなくなってしまうので今の私にとって一瞬でも解除するのは悪手でしかない。


 ちなみに、わたしの魔力量は多い方で回復速度は速い方らしい。普通がどのくらいかわからないから反応を返しづらい。


「『一度休憩にするですよ』」


 スイの意見に皆異論はないらしく一度休息をとることになった。木の下には降りずにそのまま枝に座って休む。寄りかかれるものがないとよく吹く風で落ちそうになる。皆は一度肩から降りて体を丸めている。ずっと乗りっぱなしというのも疲れるらしい。


「…ねぇ」


「『どうしたですよ、しぃ』」


 休憩がてらに《操魂》で適当な魂を改造しつつ話しかける。今までは話相手がいなかったから無言だったけど、いざ相手ができると無性にお話をしたくなる。あと、作業だけでは暇だからという理由もあったりする。


「国境を出たらどうするの?その後は?あなたを結界から解くにはどうすればいい?」


「『そうですね、まずはもっと強くならないといけないです。ティエル・アーディア、彼女を倒せるレベルにです』」


「…そう」


「『もう一つは我らの作り主…ということになっている邪神の復活ですね』」


「邪神ってなんなの?」


「『一応この世界を壊す者、ということになっています。あとは、邪神になる前は魔法少女だったということ。それ以外は我らにもわからないのです。ハーデスに秘匿されているのようです。だから詳細なことは知らないです』」


「ふーん」


「『現状、正体は管理者たるハーデスというのが最有力候補なのですが、ハーデスの性別が不明なので断定できない状況ですね』」


 そんなふうに休憩中は作業しつつ色々お喋りして、移動の時は大鎌を片手に木々を跳び移る。一昨日も昨日もやった流れを今日もやって就寝についた。



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