そして、デスゲームは始まる
7/30 本文内容を見直し、一部表現・内容を大きく書き換えました。
『それでは転送を開始します』
声が聞こえ、私の足元に魔法陣が展開される。魔法陣から放たれる光はは少しずつ強さを増していき、やがて私を包み込んだ。数秒もすると光が消えて視界が戻ってくる。そこで私が目にしたものは____
延々と続く真っ白い空間であった。
「…まだ開始時間じゃないんだっけ」
キャラクターメイキングがサービス開始1時間前から出来るだけであり、正式にサービスが開始されるのは13時頃からということを私は忘れていた。1度変身を解除しようと端末を出す。
出し方は簡単だ。手を軽く開いて端末を握るような形を作る。あとは手元に意識を集中するだけだ。程なくして光こと魔力が集まって端末を形成する。
解除方法は変身する時とほぼ同じ動作だ。再び《展開》と表示されているアイコンに触れる。すぐに足元に魔法陣が現れるのでその上にのって「解除」と声を発する。足元に広がる魔法陣から光があふれ出して私の姿は元に戻った。
魔法少女の姿から戻った姿は黒いローブを着たものになっていた。さらっと自分の姿を確認したあとに端末に表示されている時刻を確認する。始まるまで大体10分くらいあることを確認した私は端末に意識を集中させて手元から消失させる。
ふと顔を上げ、そこでようやく私は周りに自分以外のプレイヤーがいることに気づいた。変身を解除して色とりどりのローブ姿になっている者もいれば、変身したままプレイヤー同士で集まって談笑していたり、私のようにスクランブル交差点の中心で立ち止まり続けているような人まで。
「…」
するりと人混みを抜けていくと、誰も周りにいないところで憂鬱そうなため息を出す。
あと10分が待ち遠しく感じる。感じることの無かったもの、好奇心が刺激されているのだろうか。
好奇心、というのは好意的な解釈でしかない。実際は違う。もっと何か、ドロドロとしているような。そんなものを感じ続けている。
「…そうだ」
紛らわすように思考を変える。端末を手元に出し直ぐに魔法陣を《展開》する。変身した私は手に持つ端末を消した後に今度は同じ要領で大鎌を出す。右手に現れた大鎌を両方の手でしっかりと握りしめる。
現実で使うことのない大鎌をいきなり使いこなせるかと言われると難しいだろう。しかし、このゲームには《イメージコントロールシステム》と言われるものによってある程度思い通りに動けるようになっているのだとか。だが、何も動き方を想像出来なければなんの意味もない。
まずは大鎌を振り下ろすように意識する。すると私の体は私の考え通りに上から下へと振り下ろす。
続いて横に薙ぎ払うイメージ。ヴォンという音とともに大鎌は右から左へと薙ぎ払われる。
自分の体なのに自分が動かしていないような、そんな不思議な感覚がする。
時間が来るまで何度も繰り返し続ける。何度も何度も繰り返す。この作業をやっている時は大鎌を振るうこと以外何も考えなくていいから気が楽だ。
大鎌を上に振り上げ、振り下ろす。その瞬間手元がフッと消える。不格好な振り下ろしは勢いあまって転びそうなる。
「えっ?」
体制を立て直しつつ思わず声を出す。手もとを確認すると持っていたはずの大鎌が消えていた。すっぽ抜けたのかと思って後方や周りを見てもどこにも大鎌は落ちていない。
その過程で自身の袖に目が入る。ゴスロリのワンピース姿ではなく、ローブ姿。変身状態が解除されていることに気がついた。
ふと周りを見てみると周りの変身していたプレイヤーもいきなりのことで驚いている様子だった。不満を覚えているとどこからともなく声が響き渡る。
『これより、オープニングセレモニーを開始します。強制的に一度を変身を解除させていただきました。ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません』
声とともに空中に巨大な人型のキャラクターが映し出される。変身が解除された理由も分かったので黙って声に耳を傾ける。
『ようこそ新米魔法少女、及び少年、他諸々の皆さん。私の名前はハーデス、このゲームの管理者をしている』
そう名乗り深くお辞儀をする。ハーデスとはまたご大層な名前だなと思いつつ話に耳を傾け続ける。
『…突然ですが、あなたがたの《魂》をこの世界に繋ぎ止めました』
「…?」
何を言っているのかまるで理解できない。魂を繋ぎ止めたとはどういう意味なのだろうか。考える前にハーデスの口が開かれる。
『言い方を変えましょう。この《Magic&Girls Online》の世界にはログインすることが出来てもログアウトすることが出来ないようになっております。ログアウト不可能はバグや不具合ではない。このゲームの仕様です』
何を言っているのだろうかこの人は。そんな風に思っていると辺りがざわつき出す。皆一様に端末を出しては何かを探しているようだ。ハーデスとやらの言うログアウトの手段を探していのだろう。
『さて、一通り確認したようなので分かったであろうか。このゲームにはログアウトは存在しません。このゲームからログアウトをするにはラスボスである《邪神》という存在を倒すしかありません』
あの管理者の言う邪神という存在を倒せばログアウトということをすることが出来るということは理解した。
しかし私はともかく他の人達は外から親しい人たちの手で《第二世界》、及び他のVR機器の電源停止、もしくは破壊という方法でログアウト出来るのではないか。そう考えていたがすぐに否定される。
『外部の人によってVR機器の電源停止、分解などを試みた場合あなたたちは死にます。また、このゲーム内で死んだ場合もあなたがたは死にます』
死、という言葉が脳内を木霊する。私を含め誰も声を出すことなく、しんと静まり返る。
『それでは、これでオープニングセレモニーを終わりにします。これより順次、転送を開始します』
何か悪いことしたかな?みたいな平坦とした声色で締めくくり管理者は始めからそこになにもなかったように消えていった。
途端に、
「う、嘘だ!こんなの嘘だ!」
「冗談だよね…。これも演出なんでしょう…?ねぇ!そうなんでしょ!」
「こんなことして許されるとおもっているのか!出しやがれ!」
「ちくしょう!なんでこんなことにいいい!」
「ねえどういうこと!?何が起こっているの!?」
「出しなさい!ふざけないでよ!」
「どうするの?ねぇどうするの!?」
悲鳴や怒声、絶叫、嗚咽、懇願、困惑。悲痛そうに助けを求める声が響く。この場のプレイヤー達ははたった今このゲーム、この世界の囚われの身となった。小説やら漫画やらのお話の内容が現実になるなんて誰一人思っていなかったのだろう。
私はと言うと、囚われたという感覚はなかった。ただ私の中で死という言葉だけが何度も繰り返され続けている。頭の中で死という言葉を繰り返しながら惨憺たる光景を眺めていた。
少しずつ響いていた絶叫が消えていき、周りの人も減っていく。その様子を見ながら待っていると、私の番がきたのか魔法陣が足元に広がって光を放ち始める。
あっという間にホワイトアウトしていく視界。違和感レベルの浮遊感と、地に足をつけた感覚が転移されたことを思い知らされる。
私の視界の先には青々とした緑色の草原が広がっていた。
アドバイス等があればよろしくお願いします。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
12/8 誤字訂正しました。