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35.5 アサシン教団フゼーメ本部より1

「・・・報告を」


「はい」


マスター・ウェニズマの前に跪いた男は恭しく返事をする。


白いフード付きの装束を身に着けた男は位としては戦潜実行班や医療班の中でトップに立つ選りすぐりの人材であり、立場は緑フードのシャーネよりさらに一つ上になる。


「対象、コウヤ・キサラギについての調査を王国や日光大帝国の戸籍、カストドートでの住民証明書などを各支部の協力も含めて調査しましたが、出生や生活に関する形跡は一切見つかりませんでした」


「つまり、転生者で間違いないと・・・」


「はい。歴代の勇者や偉人、かの初代様と同じ人間であると思われます」


「ならば、あの異能も納得ではあるが・・・転生者は流れにして聖なるものではないのか?」


「そのはずですが・・・あれはもはや魔物や魔王、邪神の流れをくむものにしか思えません」


「だが、魔物の出であるという証明もなかろう。奴は自身の力を把握していなかった」


ウェニズマはその机を離れ、大聖堂の少し大きな窓から街を見る。


そこには活気づいた商業町の姿が変わらず映っている。


「魔王がいなくなった今、次期魔王の選定もじきに始まる。奴が寝返り力を持てば、初代様の目的も果たせぬどころかたとえ勇者が現れたとしても人類が負ける」


「あの男にそこまでの力が・・・?、我々に牙をむく可能性があるのならば今のうちに始末しておくのも手ではないかと愚考します。あの程度ならリクニスでも可能かと」


「奴本人はそこまでの力はないが、奴の中に潜む化け物が表に出たときに、何が起こるかわからん。あれが暴れるのだけは避けるのだ」


「至らぬ発言をお許しください」


「かまわぬ。引き続き、奴を刺激しないように調査せよ。出来れば魔物側や亜人などにも手を伸ばせ」


「承知いたしました。全てはマスターと教団の意思のままに」


一枚の羽根を残して一瞬にして男は姿を消した。


ウェニズマは疲れたように目を手で覆いながら椅子に腰を掛ける。


「・・・初代よ、見ておいでですか。貴方の依り代とならん器が今ここに現れてしまいました。貴方は私にどうせよと言うのですか」


その声に威厳はなく、とても人間らしく、困り果てたと言うのがすぐわかるような声音である。


「狩人に目をつけられる前になんとかしなければ・・・」


ウェニズマは覆った手の中の闇に何を見ているのか。


それを知るものは、今は彼しかいないのである。

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