30 初仕事
「仕事・・・ですか」
「えぇ。そろそろコウヤにも本当の仕事を経験してもらわないといけないもの。仕事しないと階級ももらえないしね」
シニカさんの部屋についたとたん、そんな話になった。
「ウェニちゃん曰く、『私は構わないが、他の団員たちがどうにも逆立っておる。ここは結果で示すしかあるまい』って」
そんな風に老いたような声を出してマスター・ウェニズマのまねをする。
それにはツッコミをしないが・・・やっぱり団員から反発が来たんだ・・・
想像はしていたが、いざ言われるとくるものがある。泣きそうだ
「団員の中でも頭脳派というか、政権保守派ね。今この教団は他国の政治と結構絡まってるんだけど、上の方でこのまま他国政治との交流を強めて世界的に強い権力を握ろうとしてる人達と今までのようにグランドナイフたちの意志のもとに殺しを続けて力を得ようとする反政権派に分かれちゃってるの。長く続くと組織はどんどん複雑になっていくのよ」
「その反政権派はどう思ってるんですか?、俺のこと」
「どちらかと言えば歓迎しているほうね。怖がってはいるみたいだけど。あのこともあるし・・・」
良いづらそうなシニカさんに俺も「あー、なるほど」と納得する。
あのこととはおそらく昨日の復活の件だろう。
怖がってたもんなぁ、他の人たち・・・
「というわけで、あなたがウェニちゃんの前で宣言したようにこの教団に盾突かないことを結果で示すしかないってわけ。ウェニちゃんも議会でそう通したらしいわ」
「それって、相当難しい任務ってことですかね」
「・・・まあ、今ある仕事の中では最上位と言ってもいいかしらね」
なんだろ、要人の暗殺とかかな。国の貴族とか・・・ベタな感じの
「とりあえず、仕事の内容はウェニちゃんから直接聞きなさい。あの子は自分で言うと言っていたわ」
「わかりました。ありがとうございます」
そう言って俺はとりあえず部屋を出た。
・・・まさか、いきなりあの四人のうちの誰かを殺してこいとかじゃないよな?
そんな懸念を抱きながら俺は久しぶりのアリシアテラ大聖堂の本堂へと向かった。
正直いい思い出はないので修行期間はほとんど近寄らなかったが、こうして来てみるとなんだか身が引き締まる。
そこで緑のフードを被った男が目の前にあらわれた。
「キサラギだな。こっちだ」
俺はその男に連れられて入団試験という名の拷問を受けた広い場所へと連れられる。
そこに立った瞬間、男はいなくなり上にある台のような場所に立っていた白いフードの男が声を上げる。
「マスターがいらっしゃる。頭を下げろ」
言われた通りに跪いて頭を下げた。
足音が聞こえ、誰かが座る気配がする。全員が跪く音がした。
「顔を上げよ。若いの」
おそらく俺のことだと思うので言われた通りに頭を上げた。
「・・・まずは最初の非礼を詫びよう。すまなかったな」
予想外の言葉に俺は一瞬どう返すか迷うがとりあえず何か言わねばと口を開ける。きっと深淵が何とかしてくれる。
「いえ、このような大きな組織を治めるお方として、警戒されるのは当然でしょう。私はそのようなウェニズマ様の行動に感嘆こそすれど、非礼などとは決して思いません。お気になさらず」
「そうか、そう言ってもらえるのであればありがたい。そのまま受け取らせてもらおう」
・・・マジで口が達者だなこいつ、ほんとに俺か?
『本物だ馬鹿。ここは誇れよ』
怒られてしまった。
「さて、本題に入ろう。今、我々はお前の処遇について大変もめている。その強大すぎる力は、我々の手の中に置いておくにはあまりにも危険すぎるというのが現状じゃ」
俺自身が強いわけではないが、深淵の力が大きすぎる・・・らしい
まだ全力で解放したことがないからよくわからんが、俺のイメージではゲーム二週目で手に入るバグレベルのチートアイテムくらいだと思っている。
『そんな軽いもんじゃねぇよ、あと、そこまで強くねぇ』
例え話だよ。というか自分で強くないとかいうなよ
「というわけで、と言うには少し失礼とは思うが、お前には一つ、任務を与えるという決断に至った。これはこの教団に国家連合から来ている最重要任務だ。これはこの教団の存続にも関わる」
国家連合・・・?、俺たちの世界で言うところの国連みたいなもんか
「お前には・・・〈強奪者〉、イツキ・クジョウを討伐してきてもらう」
「・・・は?」
俺は自身の耳を疑った。
確かに、シニカさんは最高難易度だとは言っていたが・・・
「盗賊被害が相次ぎ、他国の村や、積荷、町にまで被害が出ている。これはこの大陸を揺るがす大問題だ。わかるな?」
「は、はい」
「頭を潰せば被害は納まり、統率もなくなる。できる限り一般の盗賊も始末しつつ〈強奪者〉を叩け。期間、手段は問わぬ。できる限り早い方がいいがお前の力と意思を示すものだ。全力を尽くがよい」
・・・フラグ、効いたのか。
体の中が黒い炎で熱くなる。何興奮してんだ
「物資などのサポートはできる限りしよう。任務の難度を考慮し、医療班からはアシェット、技術開発班からシロガネ、戦潜実行班からはアザレアをつける。その他教団のことについてはこ奴らから聞け。何かわからぬことは?」
「あ、ありません・・・」
「ならばよい。今後の活躍に期待しよう」
「ありがたきお言葉、ありがとうございます」
そうしてウェニズマは去っていった。
俺はしばらくその場から動けずにいた。
他の団員が同情するような、蔑むような、いろいろな目で俺を見る。
残念ながら、俺はお前たちが期待するような絶望など、これっぽっちも抱いちゃいない。
あるのは心の底から叫ぶ、喜びだけ。
「『ハハッ・・・』」
体が震える。
まさか、こんなにも早くチャンスが回ってくるとは思わなかった。
こいつは、もしかしたらアクサスのおかげなのかもしれない。
そうと決まったらさっそく準備だ。
まあ、準備とは言ってもどうしたらいいかわからないので、とりあえずは一番顔見知り(?)であるアシェットに会いに行くことにした。




