26 死陣の模擬戦
二か月以上お休みしてしまいすみませんでした。
またこれから定期的に書けるように頑張っていこうと思います。
一瞬だけ視界の端に見えた光に震え、俺は剣でその方向を守る。
すると車でもぶつかったかのような衝撃と共にやっとシニカさんが視認できた。
どうやら右側に握っていたバゼラードで殴られたらしい。
正式には切りつけられたのだろうがこの衝撃は殴られたとしか言いようがないものだった。
俺は身体強化の恩恵もありなんとかそこにとどまるが腕と足が痺れて視界がチカチカとしていた。
「よかったわ。今のは本気で殺すつもりだったから防げなかったらどうしようかと思ったの」
ふわふわとした雰囲気でさらっと「殺すつもりだった」とか言える心境をマジで知りたいが本気で今のは死んでてもおかしくなかった。
まだ手と足が震えてまともに動けない。
彼女の今見せた力は純粋に化け物としか言いようがなく、俺を恐怖させるには十分だった。
「今ので完全にわかったかしら?、本気でやってみなさい。全部受けるわ」
思考が固まらずぐちゃぐちゃになった頭のなかを無理矢理整理して俺はゆっくりと息を吸う。
『ダメージコントロール』
スッと痺れが消えて体が少しだけ軽くなる。
俺はゆっくりと短剣を逆手で前に構えて体勢を低くする。
「・・・っ!!」
一気に足に力を入れて前に飛ぶ。
そのまま距離を詰めて短剣と長剣の連撃でシニカさんの胸と腹を狙う。
しかし、それをわかっているかのように両手のバゼラードで軽く流され俺はすれ違うように彼女の後ろへ飛んだ。
予想はしていたがこうもあっさり防がれてしまうと圧倒的な力の差に笑えてくる。
だが、笑ってる暇さえもないのは明白なのでもう一度体勢を建て直し、今度は左手に力を入れる。
『雷槍!』
俺はシニカさんに向かって雷の槍を全力投球する。
それをまるで滑るように流すシニカさんを見るとこの程度の攻撃はどれだけ撃っても効かないというのを体で証明してくれる。
「起動が目でまるわかりよ。もう少し工夫して」
もう訓練は始まっていると言わんばかりにそんなアドバイスが飛んでくる。
俺は少し考えて今度は左手の奥から暗いモノを引っ張ってくる。
「・・・廻せ」
同時にイメージ通り、シニカさんの視界を遮るように深淵の火が渦を巻いた。
『雷槍!!』
暗い渦の中へ白い光の線を飛ばして貫く。
恐らくやれてないので俺は咄嗟に後ろを向いて手を突き出す。
『フレイムボール』
案の定後ろに回り込もうとしていたシニカさんを火球がとらえる。
しかし、そんな未来予知スレスレの技にすら動揺一つ見せずにまたも姿を消す。
完全に視界から消え、危険を感じた俺は深淵の火で体の全面を覆い防御をする。
展開と同時に頭上から凄まじい衝撃が走る。
たまらず炎をしまって後方へ逃げる。
だが、それすらも誘導したかのようにまたも凄まじい速さで距離を詰められてバゼラードの直撃をくらう。
二刀のうちの左で殴られたが威力に変わりはない。利き手との差を感じさせない重い一撃が俺をさらに後ろの壁へ飛ばし叩きつけた。
「がっ!!」
肺の中の空気が全て吐き出される。
またも視界が激しく揺れて目の前が一瞬真っ白の光に包まれる。
そんな満身創痍の俺にとどめだと言わんばかりに繰り出されたシニカさんの回し蹴りが首筋に直撃する。
掻き回されていた脳みそが最後の一跳ねを果たして俺の意識はスッと刈り取られた。
「・・・起きた?」
俺が次に光を見たのはシニカさんの膝の上だった。
「喋れる?、聞こえる?、一応ヒールポーションを使ったんだけど」
苦笑いとともに浮かぶ心配そうな顔に俺も誘われて口角が少しだけ上がる。
「あはは・・・ボコボコにしたのシニカさんですよ」
「ごめんなさい。久々の模擬戦だからつい熱くなってしまったわ。可愛い後輩を危うく殺してしまうところだった」
いや怖すぎだろ。と頭の中でツッコミを入れる。
「シニカさんはあの模擬戦で何か魔法を使っていたんですか?」
「いいえ?、あれは純粋に足で飛び回っていただけよ」
これでもだいぶ衰えたのよと笑いながら付け足すシニカさんに俺は今ぶっちゃけ恐怖しかない。
「せっかくだから教えておくけれど私の魔法は《メイク・シアンシャード》。毒性のある小さな結晶を生成する魔法よ」
「な、なるほど・・・どうりで魔法を使わないわけですね」
「あら、わかっちゃった?。コウヤが想像した通り、殺すことにしか向いてない魔法なのよ。だからこういう模擬戦とかでは使えないのよね」
つまり、この魔法で作った結晶を体に埋め込まれでもしたらほぼ確実に死に至るわけだ。
あの模擬戦の中で俺の中に結晶を埋め込む隙など腐るほどあった。
・・・考えるだけでもゾッとする。
「とりあえずもう少し休憩してからもう一度手合わせしましょうか。今度はもう少し手加減するわ」
「あ、はい。ヨロシクオネガイシマス」
この時、これからが地獄なんだと、俺は頭の隅の方で薄々感じていた。




