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25 ハイエルフの戯言

2019/6/14 誤字修正しました。

あれからシャーネをなだめるのにかなりの時間を費やして最終的にそこそこ冷静さを取り戻したシャーネが「取り乱してすみませんでした。頭を冷やしてきます」と言って宿舎に戻りこの騒動は何とか幕を閉じた。


「・・・あー、さすがに意地悪しすぎたわねぇ」


苦笑いで少しバツが悪そうにシニカさんが呟く。


俺もさすがに可哀そうだと思ったがシャーネが暴走した理由が何とも言えないくらい気まずいものだったので黙っていた。


シニカさんは気を取り直すように一度咳払いをしてこちらに向き直った。


「とりあえず、何か聞きたそうな顔をしてるからそれから聞くわ」


俺の顔を見ながら「言ってみなさい」と目で語りながらそう言った。


「それじゃあ、なんでシニカさんは俺の教育役をしようと?、シャーネが言っている感じだと教育は本来シャーネの役目なんじゃないですか?」


俺がそう問うとシニカさんはどこか遠くを見るように目を細めて微笑む。


「そうね、理由の一つ目はあなたの力にかなり惹かれたからかしらね。相手の魔法を奪い、それを好きに行使することができるというその魔法はこの先天性魔法社会の中では最強と言っていいスキルなの。あなたはその力をうまく使えばこの世界のほぼすべてを手に入れることができると言っても過言ではないわ」


そんなになのかと内心驚く。


もともとは最強な魔法に対する対抗策として他の魔法が使えたりあわよくばその魔法を奪えればいいかなと思いこの恩恵を授かったが、これはかなり正解だったかもしれない。


「一つ目と言うことは二つ目もあるんですか?」


「えぇ、まあそうは言ってもこっちは大したことじゃないの」


シニカさんは目を細めたまま今度は俺の方から目を外し、まるで懐かしむかのような姿を見せる。


「・・・あなたが私の友人に似ているからかしらね」


どこか悲しそうな瞳を見て何と言ったらいいかを頭をフル稼働させながら考える。


さすがに千二百年もの長い時を生きる彼女を理解できるとは思えないが少なくとも俺に似ているという友人がいい死に方をしたとは思えなかった。


「そう、ですか。その人はどんな方だったんですか?」


やっと出てきた言葉は自分が思った以上に最低だったがシニカさんは割とすんなり口を開いた。


「そうね、とても運が悪くて可哀そうな人だったわ。でも、誰よりも優しい人だった、本当の優しさを知っている人だったわ」


そう言って目を閉じたシニカさんはどうやらその人のことを思い出しているようだった。


邪魔をしまいと少し黙って彼女が動くのを待つ。


それから数分してシニカさんはゆっくりと顔を上げた。


「ごめんなさいねなんだかすごく湿っぽい話になってしまって。さあ、本題に入りましょうか」


切られてしまった話の内容は正直めちゃくちゃ気になるがシニカさんのこれ以上話す気はないという雰囲気に俺は押し黙るしかない。


「それで、具体的に何をするかっていうと・・・そうね、とりあえず手合わせ願えるかしら」


「え?」


俺が状況を飲み込めず情けない声を上げるなかシニカさんはどこからともなく少し大きい両刃短剣を両手に取り出した。


俺はその剣に見覚えがあった。確かゲームかなんかで見たはずだ。


名前は確か、


「バゼラード・・・」


「よく知ってるわね。意外とみんな知らないのよ。イクスの方で作られる武器のひとつね」


そのイクスについてはよく知らないがバゼラードはよく知っている。


その長さはショートソードにひけをとらず、両刃短剣の中でも大型のバゼラードはそのリーチが最大の強み。


短剣と片手剣の中間というのもあり、それを使いこなすのは意外と困難で使い手を選ぶ・・・と、そのゲームの武器説明に書かれていた覚えがある。


意外と覚えているものだと自分に感心しつつ背中の長剣と腰の短剣を抜く。


「・・・見れば見るほど珍しいスタイルよね。でも、格好付けのためにやってるのなら今だけは辞めた方がいいわよ」


そんなシニカさんの言葉に俺は表向き「そうですか?」みたいな顔をしているが内心めちゃくちゃビビっている。


なんせシニカさんの目がマジだからだ。


「今回私は魔法を使わないわ。あなたは殺す気で来なさい。そうしないと・・・」


彼女はそう言いながら体勢を低くして合図をするように呟いた。


「今ここで死ぬわよ」


刹那、俺の目の前からシニカさんが消えた。

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